大塚角満の ゲームを“読む!”
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その日は朝から、腹の調子が悪かった。そこらに落ちているものを拾って食った覚えはないので、この微妙な胃腸の不具合は精神面からの圧力で引き起こされている可能性が高かった。
「ああ……。なんて心が落ち着かないんだろう……」
この独り言に、グルゥゥ〜コキュゥゥゥ〜……と腸の蠕動が応えた。
発表会が行われる数日まえから、俺と江野本は顔を合わせるたびにヒソヒソ声で「3月16日って、どんなことが発表されんのかな……?」といったことを話していた。『モンスターハンターポータブル』シリーズの最新作が発表されるであろうことは当然ながら予想していたが、それ以上のことは何も知らなかったのである。
しかし情報が何もないと妄想ばかりが膨らむもので、俺の頭の中では8本首のリオレウスと体長18メートルのオトモアイルーがガチンコのケンカを始めたりしていた。中途半端な情報と暴走した妄想は“緊張”に変換され、俺は完全に追い詰められていた。明らかに、末期症状であった。
そんな精神状態で発表会当日を迎えてしまったものだから、俺はすっかりパニック状態。迷子のケルビのように落ち着きをなくし、江野本とふたりで発表会場に向かう道すがら、思わず良三さんにつぎのようなメールを送った。
「緊張して行きたくない……」
30秒後、発表会の準備に忙しいプロデューサーから怒りの返事が返ってきた。
「ダメ!!! 来なさい!!!!」
そんなことをしていたら会場に到着してしまった。
恐る恐る会場に入って受付前に並んでいると、さっそく良三さんと、ほろ酔いのハギーことカプコンパブリシティー企画推進室のボス・萩原さんがやってきた。「ちょっと。行きたくないってどういうことですか」と言いながら俺のわき腹を小突くふたりとしばし談笑。「ホントに何も仕入れずに来たので、存分に驚かせてくださいね!」と注文をつけてふたりと別れた。その後、おなじみ小嶋慎太郎アシスタントプロデューサーや、『ポータブル』シリーズのメインプランナーをしている江口勝博さんらを捕まえて雑談する。ここでいきなり「どどどどんなゲームなんスか!? 武器は?? モンスターは??? フィールドは!!??」と切り込むわけにもいかないので、「江口さん、また痩せました??」って程度の、本当の雑談である。このあと、一瀬泰範ディレクターとも挨拶をすることができたのだが、残念ながら発表会が始まる直前だったため話ができたのは2秒だけ(泣)。今回の発表会のカギを握る人物とじっくり雑談することができず、俺の緊張はますます高まっていった。妄想の中のオトモアイルーは、体長50メートルを突破した。
そんな俺の混乱をよそに、ついに発表会が始まってしまった。司会進行はおなじみのウサミス(宇佐美有紀さん)。ステージ目の前の席で、ジロジロと彼女の顔を眺める。場馴れしているはずのウサミスも、どこか緊張しているようだ。そんな彼女に招かれて、ステージにはカプコンの辻本春弘社長が登壇。よどみのない挨拶をしたあとに「こちらをご覧ください」のひと言を発し、これを合図にステージ上の大型スクリーンで“例の”プロモーションビデオが初公開された。そう、PSP用ソフト『モンスターハンターポータブル 3rd』の映像である。ついに、発表されたんだ。400万本ソフト『モンスターハンターポータブル 2nd G』に続く、『ポータブル』シリーズの最新作が!!
この映像を観たときの興奮は、尋常ならざるものがあった。「何にも例えることができない!」ってくらいの、とてつもない興奮に襲われたのである。例えるなら(けっきょく例える)、なぜか砂漠に迷い込んでしまったサンマがカピカピの身体を引きずりながら何日間も砂の海を彷徨い、嗚呼、もうダメだ……。水がないと焼き魚になってしまう……と思った瞬間に、豊富に水をたたえた大海原を発見して狂喜乱舞した……ってときと同じくらい興奮したのです。この表現で、わかっていただけたでしょうか?
この映像と、週刊ファミ通4月1日増刊号(3月18日発売)に載っているスクープ情報を合わせて見ると、『3rd』の全貌が少しだけ見えてくる。映像の中で、美しい渓流の風景を見せていた場所はまさに新フィールド“渓流”で、そのほかの場所は『3(トライ)』で見覚えのあるところが多かった。インタビューを見ると、『3rd』のフィールドは『3(トライ)』に登場したものに渓流を加えたものになっているとのこと。しかも『3rd』には水中で狩りをするエリアが存在しないので、『3(トライ)』に登場したフィールドにも手直しが加わっているという。これに合わせてモンスターは、ボルボロスやアグナコトルといった『3(トライ)』で暴れている連中はもちろん、新モンスターが多数登場。プロモーションビデオの中で存在を強烈に主張していた青くてデカいオオカミのようなモンスターは“雷狼竜・ジンオウガ”と言うらしく、どうやらこやつが『3rd』を象徴するモンスターになるらしい。同じくビデオの中にいたクマのようなモンスターは“アオアシラ”、鳥型のモンスターは“ガーグァ”と呼ぶようだ。
これら新モンスターと並んで衝撃を与えた……というか発表会場が沸いたのが、ティガレックスとナルガクルガが映像に登場したとき。どちらもおなじみ中のおなじみモンスターというくらい『ポータブル』シリーズに定着しているし、何百回とフィールドで対峙しているわけだが、やっぱり俺もこの2頭が映像に現れたときには心が奮えたね。ていうか、ティガとナルガの存在を確認した瞬間に初めて、「ああ、本当に『ポータブル』シリーズの新作が出るんだ……」と実感したような気がするよ。さすが、『ポータブル』シリーズの看板を守ってきたメインモンスターだわい。
武器についてはやはり、ガンランスの躍動に目を見張ってしまった。今回上映されたプロモーションビデオではかなーりガンランスがフィーチャーされていて(贔屓目?)、砲撃、竜撃砲といった既存の攻撃以外に、明らかな新モーションも多数確認することができる。プロモーションビデオのガンランスの部分だけ目から血が出るほどくり返し観たが、どこをどう切り取ってもかっこよすぎてチビりそうだ。
そうか……。またガンランスを持つときがくるのか……。
遠い目をしながら、俺はそうひとりごちた。
ちなみに武器については、前出の週刊ファミ通のインタビューに「すべての武器に手を加えている」という記述がある(ガンランスだけでなく、プロモーションビデオには映っていない双剣、弓、狩猟笛も『3rd』には登場するのだ)。どの武器をメインに使っている人もワクワクしていて損はなさそうだぞ。いやあしかし、どんだけ欲張りなゲームになるんだコレは……。
……てな感じで、プロモーションビデオと件の週刊ファミ通を合わせて見るといろいろな要素が窺えてくるのだが、実際にどちらもじっくり見ていただきたいのでこれ以上詳しく書くのはやめておこう。ファン必見の内容なので、コンビニや書店で見かけたらぜひ手に取ってみてくださいな。
◆◆◆
じつは発表会が行われる数日まえに、江野本ぎずもと以下のようなやりとりをした。どうでもいいことなのだが、最後にそれを紹介しよう。
妄想含みで3月16日の発表会について話していたとき、江野本が笑いながらこんなことを言った。
「このニュースを聞いた大塚さんがエッセイのシメに何を書くのか、あっしは完全にお見通しです」
俺は目を丸くした。
「ええ? マジで?? ……俺、ぜんぜんわからないけど??」
江野本は「あははは!」と大笑いしながら俺に向き直り、「じゃあ教えてあげます」と告げたあとにこんなことを言った。
「絶対に“またガンランスを持つときがきたのか……”って書くんです(笑)。わかっているんです♪」
このときはもちろん、ガンランスが『3rd』に導入されることなど知りはしない。俺は顔を真っ赤にして怒りながら「ガンランスが発表されたとしても、そんな単純なこと書かないぞ!!」と言い、さらに勢い余って思わず、こんな誓いを立ててしまった。
「もしもその類のフレーズを使ったら、モスの突進で10回オチてやるわ!!!」
……10回オチて、お詫びします。
大塚角満
週刊ファミ通副編集長にして、ファミ通グループのニュース担当責任者。群馬県出身。現在、週刊ファミ通誌上で“大塚角満のモンハン研究所”というコラムを連載中。そこら中に書き散らした『モンハン』がらみのエッセイをまとめた単行本『本日も逆鱗日和』シリーズ(4巻)が発売中。また、そこからのスピンオフとして別の視点から『モンハン』の魅力に迫る書き下ろし作品『別冊『逆鱗日和』 角満式モンハン学』シリーズも。このブログではさまざまなゲーム関連の話題を扱うつもり。一応、そのつもり。
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