大塚角満の ゲームを“読む!”
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最初に宣言しちゃいますが、本日ここに書くことはゲームとはまるで関係がありません。でも昨夜、俺がこの道に入るきっかけをくれた30年来の親友と十数年ぶりに再会するという出来事があったので、ちょっと昔を振り返りながら随筆っぽい文章を書きたいと思います。と、言いながら『3(トライ)』プレイ日記のカテゴリーに入っているのは、後半にちょっとだけ『ただいま!』についての記述があるからです!!(苦笑) まあ、ざっと読み流していただければ……。
◆◆◆
昨夜、久しぶりに小学校時代からの親友と会って酒を飲んだ。
会うのは、じつに10年以上ぶり。10年も経てば著しく容貌が変化していても不思議はないので、俺は若干心配だった。「ヤツとすれ違っても気がつかないかも……?」と。しかし、待ち合わせ場所の秋葉原の駅前で携帯電話を左手に持ったスーツ姿の男を見て、俺の顔は自然にほころぶ。軽く右手を上げてからその男に接近し、笑い含みの声で俺は言った。
「おう、久しぶり。……おっさんになったな、Y(笑)」
いきなりヒゲ面のおっさんにそんなことを言われてYは苦虫を噛み潰したような顔を作ったが、すぐに笑って俺の肩を叩き、こんな失礼なことを言った。
「おめえだって十分おっさんになったよ! お互い様だ(苦笑)」
笑った顔は確かに、30年近くもまえにいっしょに野山を駆け巡っていた(比喩ではなく)ころのYそのものだった。俺たちは、会うことがなかった十数年のあいだに確実に年輪が刻まれた顔を並べて、秋葉原の街を歩き出した。
Yという名のその男は、小学校5年生のときに埼玉県の川口市から、俺が生まれ育った群馬の山奥に引っ越してきた。都会の雰囲気を鎧のようにまとったいけ好かない野郎で、群馬の山猿そのものだった俺はどうにもそれが気に食わなくて、しばらくのあいだは「おはよう」のひと言すら交わさなかったと思う。でもいつの間にか、いまとなっては何がきっかけだったのかさっぱり思い出せないが、俺たちは何をやるときでもつるむようになった。気の合う仲間5、6人でグループを作り、昼間は川や山で遊び、日が暮れたらテレビゲームをたくさん持っていた仲間の部屋に陣取ってゲームばかりしていた。ファミコンやディスクシステムが全盛のころで、俺たちは時が経つのも忘れて『魔界村』や『スーパーマリオブラザーズ2』といった高難度アクションゲームのクリアーを目指し、ディスクシステムの『プロレス』や『バレーボール』で熱い対戦をくり広げていた。
そんなグループの中で、Yとは遊びだけではなく勉強や運動の面でもつねに張り合っていた。中学生になってそれなりに勉強がおもしろくなってくると、クラスや学年内での成績順位が気になるようになってくる。俺たちは、テストの結果が返ってくるたびにお互いの順位を比べあい、「ち、負けた」、「今回は勝った」とドングリの背比べをくり返していたのだ。運動も、そう。何をやるにもYはつねに真横にいて、気がつくといつも、俺たちは熾烈な争いを展開していた。俺は球技が得意でYは陸上が得意……という違いはあったが、それを度外視した分野、たとえば懸垂でYが19回を記録したら俺は20回やるまで鉄棒にぶら下がっていたし、1500メートル走で俺が5分ジャストで走ったら、Yは4分59秒で走った。俺たちはいつも、お互いの影を追いかけて全力疾走していた。
そんな、中学2年の夏。
読書家でもあったYが学校に1冊の単行本を持ってきて、俺の机の上にポンと置いた。分厚い、ソフトカバーの単行本だった。Yはパラパラとその本をめくりながら俺の顔を見て、その後の俺の人生を方向付ける強烈なひと言を放った。
「この本、メチャクチャおもしろいぜ。大塚に貸すわ。おまえ、文章書くの好きだからハマると思うよ」
その本の黒いカバーには、『あやしい探検隊北へ』という、じつに怪しくも魅力的なタイトルが書かれていた。作者の名前は、椎名誠。ぼんやりと名前は聞いたことがあったが、その作家が書く文章を読んだことは一度もなかった。当時、俺も中学生にしてはかなりの本の虫だったと思うが、読むのはミステリーやドキュメンタリーものばかりでYが言う「エッセイ」とやらがどんな読み物なのか見当がつかなかったし、「笑える文章だよ」という説明の意味もわからなかった。でも俺は素直に、この本を受け取った。こいつが「おもしろい」と言うなら、それは俺にとってもおもしろいに違いない。そんな予感めいた思いがあったんだと思う。
俺はその晩、本当にむさぼるように『あやしい探検隊北へ』のページをめくった。Yが言ったとおり椎名誠が書く文章はあまりにもおもしろく、先へ先へと読み進めたくなって、まだそのページを読み終えてもいないのにページをめくってしまったりした。つぎのページには、どんな表現があるんだ? どのような笑いの種があるんだ!? 中学2年生という若輩ながら“文章の可能性”というものを生まれて初めて感じることができ、少年・角満の心はシビレ罠にかかったイビルジョーのように震えまくっていた。あっという間にすべてのページを読み終え、心地いい疲労に身をゆだねながら俺はこんなことを思った。
「こういう文章を、書いてもいいんだ……」
と。そして、
「俺もこういう文章を書いてみたい!!」
強く強く、そう思った。
この日を境に、俺の将来の夢は“モノ書きになること”になった。椎名誠が書く文章はすべて読み、彼の歩みをなぞるように雑誌編集者に憧れ、自分もそうなるにはどうすればいいのか、必死になって考えた。その後運よく、俺は雑誌編集者となり、さらに運よく『モンスターハンター』というコンテンツに出会って、中学2年のときに夢想した「モノ書きになりたい!」という夢を実現するに至るのである。
酒を飲みながらそんなことを思い出していたら、ふいに当時から25歳も歳を取ったおっさんのYがこんなことを言った。
「おまえ、本を出しているんだって? すげえな。よくまあ、夢を実現できたもんだ」
俺はグビリとひと口、少々甘すぎるジントニックを飲んでから頷き、カラカラとロックグラスに入った氷を鳴らしている親友に向かって正直に告げた。
「うん、まあな。……でもこうなれたのも、中学2年のときにおまえが貸してくれた椎名誠の本がきっかけなんだよ」
これを受けて、Yは愉快そうに笑った。
「あはは。そんなこともあったな。最初に貸したの、『あやしい探検隊北へ』だったっけ? 懐かしいなあ……」
俺はカバンから『本日もただいま! 逆鱗日和』を取り出し、「それが、出たばかりの最新刊だよ」と言いながらYに手渡した。受け取ったYは物珍しそうに『ただいま!』のカバーを眺めてから適当なページを開き、黙って文章に目を通す。そして「うーん……。さっぱりわからん。暗号だらけだ」と悲しそうに言い、「もう何年もゲームをやっていないんだわ、俺……」と、かつてのゲーマーは申し訳なさそうに俺に告げた。小学1年生の息子がゲームばかりやったら困るということで、奥さんがYの行動に目を光らせているらしい。俺は腹を抱えて笑った。
「へぇ〜(笑)。Mがそんなきびしいママさんになっているとはねえ(笑)」
MというのはYの奥さんで、中学時代の俺の同級生でもある。Yは頭を掻きながら「そうなんだよ……」とため息をつき、それでもうれしそうに『ただいま!』を顔の前に持ってきて、「『モンスターハンター』は名前しか知らないけど、せっかくだから読んでみるよ」と言って笑った。
※イベント情報!※
2010年3月7日(日)に開催される『本日もただいま! 逆鱗日和』発売記念イベント“『ただいま! 逆鱗日和』発売記念! 『モンハン』6周年を勝手に祝おう会”(詳細はこちら)。たくさんのご応募、本当にありがとうございます!! 今回もビックリするほど応募多数でうれし涙に暮れているわけですが、この応募受付の締切が本日いっぱい(2月25日午後11時59分送信分まで)となっております!! 「応募し忘れていた!!」という方、これを見たらすぐにご応募を!! お待ちしておりますよー!
大塚角満
週刊ファミ通副編集長にして、ファミ通グループのニュース担当責任者。群馬県出身。現在、週刊ファミ通誌上で“大塚角満のモンハン研究所”というコラムを連載中。そこら中に書き散らした『モンハン』がらみのエッセイをまとめた単行本『本日も逆鱗日和』シリーズ(4巻)が発売中。また、そこからのスピンオフとして別の視点から『モンハン』の魅力に迫る書き下ろし作品『別冊『逆鱗日和』 角満式モンハン学』シリーズも。このブログではさまざまなゲーム関連の話題を扱うつもり。一応、そのつもり。
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