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【MH3】第59回 ハットトリックの記憶

 先日、火山に棲まう炎の化身・アグナコトルと初めて遭遇したときのことをつらつらと書いた。でも、そのときいっしょにクエストに出向いたメンバーが、フラリとフィールドに行けばモーゼの十戒のようにモンスターが道を開ける……という伝説まであるツワモノ中のツワモノだったので、アグナコトルはいつまでも地面に刺さったまま動けず、そのまま天に召されてしまった(要するに連続して落とし穴に落とされてそのまま息絶えてしまった、ってことね)。指をくわえて見ているだけで屈強なモンスターが斃れてくれるなんて楽でいいじゃないかと思われるかもしれないが、これじゃあ、アグナコトルがどんなモンスターだかさっぱりわからん!! ナゼか俺は怒り心頭に発し、「もういい! ひとりで行く!!」とゲラゲラ笑う3人の悪魔の子に捨て台詞を吐いてロックラックをあとにしたのである。そう、モガの村に向かうのだ。ひとりで行くなんてかっちょいいことを言いつつ、ロックラックの高難度クエストではなくて、基本的にひとりでも立ち向かえるように調整されていると思われる村のアグナコトルを選ぶあたりが俺のカワイイところだ。

 さてちょっと話は変わりますが、皆さんは『3(トライ)』においてハットトリック(ひとりで3回オチること)を経験されたことはありますか? まあ、『3(トライ)』でモンハンデビューしたルーキーハンターさんなどはハットトリックは日常茶飯事かもしれないね。クルペッコについばまれ、ロアルドロスに水浸しにされ、チャナガブルに食われまくり……。無印(初代『モンハン』)のときの俺が、イャンクックに小突きまわされ、ゲリョスに毒まみれにされてのた打ち回っていたのと同じように。でもそんな俺も5年もこのシリーズをやってりゃ成長するもので、『3(トライ)』ではなかなかオチなくなった。……いま俺の仲間どもが「えーwww」と蔑みの笑いを浮かべたのが見えたような気がしたが黙れ黙れ。ダンコとして俺は、『3(トライ)』ではオチる回数が少なくなった。もう、言ったモン勝ちだ。

 で、問題のハットトリックだが、俺は『3(トライ)』では2回しか経験していない。ハットトリックの苦い思い出はなかなか消えないので、この“2回だけ”という数字は誰がなんと言おうと間違いないところである。

 初めての3オチは、村★5のクエスト“大海の王、捕獲大作戦!”だった。思いのほか順調にラギアクルスの討伐を果たし、しかもそのときよりもワンランク上の武器を作ることに成功してから臨んだのが件のクエスト。武器が強くなっていることに加えて捕獲で事足りるので、俺に失敗する要素はなかったはずだった。しかし狭い水没林の沼(なのか?)を舞台に巨体のラギアクルスを相手にすることは困難を極め、俺は屍を積み上げ続ける。けっきょく「アレヨアレヨ」と踊っているうちに3オチしてしまい、俺の『3(トライ)』プレイ史に初めて、“ハットトリック”の文字が刻まれたのであった。

 そして、2回目のハットトリックは……ということで、本題に戻ります。

 モガの村にやってきた俺はさっそく、★5のクエスト“火の海に棲む竜!”を受注した。茨城の魔人3人にあっさりと屠り去られてしまったアグナコトルではあったが、もとより慎重なこの俺。「あれは連日の疲れが見せた白昼夢だ」と思うことにして、万全の準備を整えることにした。回復薬、回復薬グレート、薬草を限界数持ち(いまだ秘薬を作れるほどの余裕はない)、俺にとってはまだまだ貴重なシビレ罠、落とし穴、閃光玉もアイテムポーチにぶち込む。そして、さすらいのコックに体力がMAXになる食事を食べさせてもらい、いまの俺にできる対アグナコトル用の限界装備が整った。ちなみに防具は、当時はそれしか持っていなかったので全身ロアルドロスシリーズ……。恐ろしいことに“火耐性−15”という、おまえ本気でアグナコトルを討伐する気あんのか的な、ナメきった防具である。そして武器は、このころからハマり始めていたスラッシュアックスのバンカーバスター。この俺が、初めてサシで挑む屈強なモンスターにガードのできないスラッシュアックスで臨もうとするあたり、ここにも“慢心”が見て取れる。やはり直前に見た白昼夢が、俺の心を存分に蝕んでいたようだ。

 それでも、クエスト開始当初はワクワクしっぱなしだった。火の精霊のようなアグナコトルの姿はどっからどう見てもかっちょいいし、熱線を吐くときに「カカカカッ!」とクチバシを鳴らしたり、反動で後ずさりするところなんて心に刺さりまくってしかたないではないか。そして何より、ザッパンザッパンと火山の大地を泳ぐように高速移動するその姿……。俺は、ここが鬼気迫る決戦の場だということも忘れてしばしその様子を眺め続け、ホレボレとした口調でつぶやいた。

「こいつはまるで、太陽のプロミネンスだ……」

 プロミネンスは簡単に言うと、太陽のガスが吹き上がって火柱のように見える現象のこと。日本語では“紅炎”という。吹き上がる炎の姿そのままに火山の大地を縦横無尽に駆け巡るアグナコトルの躍動は、じつにじつにかっこよかった。「このまましばらく見続けたい!」と本気で思ってしまうほどに。

 しかし俺の想いとは裏腹に、サシでのアグナコトルとの生存競争は苛烈を極めた。見惚れてしまうほどかっこいいプロミネンスの跳躍も当然ながら当たり判定があり、直撃すると思わず「……………………」と三点リーダーがとめどなく頭から飛び出てしまうほどのダメージを被る。怒り時に攻撃を食らおうものなら、MAXだった体力が半分以下にされてしまうほどだ。まあこれもひとえに、突然の豪雨でずぶぬれになってしまったダウンジャケットのようなロアルドロス装備の火耐性のおかげなのだが、それにしたってアグナコトルの攻撃力は尋常ではない。俺はただただ回復薬をガブ飲みするしかなく、しかもアグナコトルの行動パターンをまったく知らないので回復した端から追撃を食らい、「ハイ、いまの回復薬グレートぜーんぶ無駄ネ」という不毛な自転車操業をさせられるハメに……。2オチしたころには回復薬軍団は底をつき、道端に生えてる薬草も食べつくして、俺はキャンプと狩場を往復するしか手段がなくなってしまった。久しぶりの、壮絶な消耗戦である。

 それでも、時計の針が40分を過ぎたころにアグナコトルが脚を引きずる仕草をした。うおおおお!! 逃げ惑いながらもきっちりと、アグナコトルにダメージを負わせることができていたんだなぁオイ!! よよよよし、捕獲しよう。こうなったときのために、虎の子のシビレ罠をひとつ、使わずに取っておいてあるんだ!! 火山の最奥部、エリア10にアグナコトルが逃げ込んだのを確認し、アイテムカーソルにシビレ罠をセットしてから最終決戦場へと飛び込んだ。そして、すぴーくかーとかわいい寝息を立てている炎の精霊の足元にシビレ罠を設置。よし! かかった!! あとは捕獲用麻酔玉をぶつけるだけだ!! グルグルグルとアイテムウインドを回転させる俺。ほとんどのアイテムを使いきってしまっているので、すぐに捕獲用麻酔玉が出てくるはずだった。しかしすでに、ペイントボールのアイコンを8回くらい見ている気がする。な、ない……。いくら回しても捕獲用麻酔玉が出てこないよーーーーっ!! そう、持ってきていなかったのだ。捕獲用麻酔玉を持ってくるのを忘れてしまったのだっ!!

「ぎゃおおぉぉぉおおお!!」

 眠りを妨げられたうえに、いきなりビリビリと痺れさせられたアグナコトルは激怒していた。や、やめろやめろ。おまえ、脚引きずっていただろう! とっとと斃れてくれえええ! ヤケクソになって斬りかかろうとする俺の耳に、いつもより大音量で「カカカカカッ!!」というクチバシを叩く音が聞こえたような、聞こえなかったような……。

 これが俺の、2回目のハットトリックの瞬間です……。

投稿者 大塚角満 : 14:05

大塚角満

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週刊ファミ通副編集長にして、ファミ通グループのニュース担当責任者。群馬県出身。現在、週刊ファミ通誌上で“大塚角満のモンハン研究所”というコラムを連載中。そこら中に書き散らした『モンハン』がらみのエッセイをまとめた単行本『本日も逆鱗日和』シリーズ(4巻)が発売中。また、そこからのスピンオフとして別の視点から『モンハン』の魅力に迫る書き下ろし作品『別冊『逆鱗日和』 角満式モンハン学』シリーズも。このブログではさまざまなゲーム関連の話題を扱うつもり。一応、そのつもり。


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