大塚角満の ゲームを“読む!”
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“『別冊『逆鱗日和』 角満式モンハン学〜ハンター編〜』発売記念イベント in ロックラック”リポートの続きです。……っていうか、ここからが本編のスタートです。
前回のブログでも書いたが、今回のイベントはエンターブレインの通販サイト“ebten”で『ハンター編』を購入してくれた人を対象に行ったものだ。厳正なる抽選で選ばせてもらった18名のハンターさんたちとチャットやクエストで遊んじゃう……という主旨で、要するに行き当たりばったりのネットイベントというわけですね。「それ、野良で遊んでんのと同じじゃん!!」なんて言わないで。
イベント開始時間が近づくにつれて、俺が抱いた不安と焦燥は急激に大きくなっていった。緊張という名の風船を胃に詰め込まれ、問答無用で空気を送り込まれているような感じ……と言えば、このときの俺の情緒不安定っぷりが少しは伝わるだろうか? 開始1時間まえには呼吸をするのが辛くなり、30分まえには腹が痛くなってトイレに駆け込み、10分まえには意味もなくゲハゲハと笑いだして止まらなくなってしまった。「何もそこまで……」とお思いかもしれませんが、参加者の表情が見えず、声も聞こえないネットのイベントというものは一種独特な雰囲気があるのだよ。
俺もこういう仕事をしているのでイベントでステージに上ったり、映像メディアに出させてもらうこともわりとよくあるのだが、何気にそういうときってまったく緊張していないのです。それがネットイベントになった瞬間に「みみみ皆さんに楽しんでもらうことできるかな……」、「粗相がないようにしないと……」、「かかか活躍せねば!!」なんていう思いで心が満たされてしまって、胃が口から出てきてしまうほど余裕がなくなってしまうんですねえ。昨年の秋にプレイステーション3のアドホックパーティーを使ったイベントをしたのだが、そのときもまったく同じ状態だった。
「ああああ!! もうどうすりゃいいんだ俺は!!」
居ても立ってもいられなくなり、俺はトイレの個室にこもってヒンズースクワットを37回した。でもそんなことで、緊張が中和されるわけもなかった。
仕方ないので俺は、ロックラックの酒場に入ってすぐにステップのボディーアクションを始めた。緊張していることをごまかすための、緊急回避的な手段である。そして、ステップの周回数が12周を数えたころ、キャラクターにかけておいた隠密の設定を解く。するとその瞬間に、9名のハンターが我が酒場に現れた。
「はじめましてー!」
「こんにちはー!」
「うれしーー!!」
「おどってるーーーwww」
挨拶の言葉と感嘆のセリフで、小気味よくスクロールしていくチャットウインド。それを見た瞬間にあれほど巨大だった緊張はどこかに消し飛び、俺は一気にフィーバー状態となってイベント参加者に挨拶を行った。
「このたびは『ハンター編』をご購入いただき、本当にありがとうございました! 今日はいっしょに楽しみましょーーー!!」
というわけでようやく、イベントが始まりました。今回は参加者のハンターランクに準じて3人1組のチームを3つ作り、そこに俺が加わってクエストに行く……という段取りとした。前述のとおり今回の試みは“大塚角満が読者の皆さんとふつうに遊ぶ”というものなので、チーム分け以外はなーんにも決めていない。本当に野良で遊ぶのと同じように、その場でチームの人と相談して出撃するクエストも選ぼうと思ったのだ。
なんて言いつつ、けっきょくは俺が行きたいクエストに参加者の皆さんを連れまわしていた……って感じがしなくもない。いや、確実にそうでした! 参加者の皆様、その節はありがとうございました。リオレイアもチャナガブルもラギアクルスも、俺が「欲しい!」と思っていた素材はことごとく出ませんでしたが、本当に楽しかったです。参加者の中には「雌火竜の逆鱗が出た!!」、「ラギアの逆鱗が出ました!!」と大喜びしていた方もいらっしゃいましたが、ボクはそのような素材は『3(トライ)』を始めて以来一度としてお目にかかっていないので、きっと見間違いなのでしょう。レイアの逆鱗もラギアの逆鱗も、都市伝説に違いないのですから(半泣き)。
さて今回のイベントで特筆すべきは、俺がまだお目にかかったことのない逆鱗……じゃなかった、数々のモンスターが出現するクエストに連れて行ってもらえたことだ。この日のためにあえて行かなかったのでは……と自分で勘ぐってしまうくらい、俺は『3(トライ)』のモンスターは手付かず状態なのである。
最初に俺の前に立ち塞がったのは、凍土に棲まう白銀の牙・ベリオロスだった。『3(トライ)』の先行体験イベントで流れたプロモーション映像で躍動する姿を見て以来、俺はこのモンスターのことが気になって気になって仕方がなかったのである。いよいよ、噂に聞く“超っぱやモンスター”と渡り合える……。コントローラーを持つ手に、じっとりと汗が滲むのがわかった。
ベリオロスは、凍土のエリア6にあるステージ(高台ね)の上でハンターたちがくるのを待っていた。恐る恐る遠くから眺めると、冷たい氷河に溶け込むような、純白の衣に身を包んでいる。本当に、ベリオロスは真っ白だ。穢れない白いタキシードを纏って、結婚式に臨もうとしている新郎のようにも見える。これほどまでにキレイな白い鎧に身を包んだモンスター、俺はフルフルとウカムルバス、あとチョメチョメ(自主規制)くらいしか知らない。ドドブランゴやキリンも白が基調のモンスターだが、ところどころに別の原色や特徴的な模様が入っているので、ベリオロスの白とはちょっと雰囲気が違う。ベリオロスはその白さに加えて頭が小さく、スタイリッシュなボディーデザインも相俟って、なんとなくだが“悲壮な天才”という言葉が似合う気がした。
「うーん、じつにかっちょいいモンスターではないか……」
4人のハンターを高台からねめつける神々しいまでのたたずまいにホレボレとしていると、いきなりベリオロスは静かに空中に飛び上がり、ヒュンという効果音を残して俺の前から消え失せた。
「え……? べ、ベリオはいったいどこに……」
ファーストコンタクトのモンスターが、いきなり視界から消えてしまうことほど怖いことはない。思わず、条件反射的にランスの盾に身を隠す俺。しかしまったく予期していなかった側面から強烈な打撃を受けて、哀れ我が分身は高台から叩き落されてしまった。「貴様はまだ、我の前に立つ器ではない」と言わんばかりの、問答無用の手荒い洗礼である。落下した我が分身に餓鬼のように群がり、カプカプと甘噛みをしてくるバギィたち。それを必死になって振り払いながら、悠々と空中を泳いで3人のハンターを相手にしているベリオロスの躍動を眺めた。凍土に充満する刺すような空気を切り裂き、空を翔る純白のモンスター。そのスピード、その斬れ味は、刃物を連想させてやまない。俺は会社の自席で呆然とモニターを眺めながら、小さな声でつぶやいた。
「白刃……」
ベリオロスの躍動は、凍った大地を切り刻む抜き身の刀そのものだった。生半可な気持ちでは、一度もまともにその姿を確認できないまま屠り去られてしまうに違いない。
でもこれこそが、新しいモンハン世界の最大の魅力なのだ。まったく知らない未知のモンスターと実力の探り合いをする瞬間の高揚感が得たくて、俺はこのロックラックにやってきたのである。さあ、ここからだぞベリオロス。いまの俺の持てるものを、すべておまえにぶつけてくれるわ!! そう気合を入れて美しい氷牙竜に挑みかかろうとした瞬間、画面に信じられないメッセージが表示された。
「通信エラーとなったので回線を切断します」(うろ覚え)
なんでいつもステキな場面でこういうことが起こるねん!!!! ……まあ、俺らしいっちゃ俺らしいけどな……。
ロックラックに戻ると、イベント参加者にやいのやいのと言われること言われること……(苦笑)。「なんでいなくなるんすか!!w」、「敵前逃亡したなー!w」、「ベリオにビビって逃げましたね!!w」などなどなど……。まあビビっていたのは事実なので、あんま否定できませんでしたけどね(笑)。
このあと、「仕切り直しを!!」ってことで、同じメンバーで再度ベリオロス討伐に。俺はやたらと逃げ惑うばかりで何もできなかったのだが、屈強な3人のハンターの手にかかって、生ける白刃は凍土の氷河に突き刺さるように息絶えた−−。
このあと、さらに俺は驚くべきクエストと、チビリそうになるほど物騒なモンスターに会いにフィールドに出向くのだが……。
続きは次回!
大塚角満
週刊ファミ通副編集長にして、ファミ通グループのニュース担当責任者。群馬県出身。現在、週刊ファミ通誌上で“大塚角満のモンハン研究所”というコラムを連載中。そこら中に書き散らした『モンハン』がらみのエッセイをまとめた単行本『本日も逆鱗日和』シリーズ(4巻)が発売中。また、そこからのスピンオフとして別の視点から『モンハン』の魅力に迫る書き下ろし作品『別冊『逆鱗日和』 角満式モンハン学』シリーズも。このブログではさまざまなゲーム関連の話題を扱うつもり。一応、そのつもり。
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