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大塚角満の ゲームを“読む!”

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【MH3】第34回 ハチミツ狂想曲

 出社するなり、中目黒目黒に思いもよらない言葉を突きつけられた。

「大塚さん、ハチミツ調達しました?

 え……? ハ、ハチミツ? なんのことだ? 確かに俺はハチミツが大好きで、家にはつねに原産地や花の品種が違うハチミツが数種類常備されている。こいつを夜な夜な皿に取って、スプーンですくってペチャペチャ舐めるのが我が至福の時だったりするのだ。……って俺は行灯の油を舐めるバケネコかっ!! と、わけのわからぬみずからツッコミをしてしまうくらい、ハチミツが大好きなんです。

 しかしこのときの目黒の言葉は、そういう類のものじゃないらしい。俺は言われた意味がわからず、スタミナ切れのクルペッコのように「ぐるるるる?」とヨダレを垂らしながらポカンとしていると(大丈夫か俺)、目黒は急にニヤけた顔になって衝撃のひと言を発した。

「夕べ、ロックラックの交換所でハチミツがリストに並んでいたんですよ。けっこうチョロい素材と交換できたんですけど……って、その顔じゃ、知らなかったみたいですね」

 え。

 え……。

 ええええええ!!!???

 みみみ魅惑のハチミツデーは昨日だったのかーーーーーーっ!!! ああああ……気づかなかった……。

 目黒が言うハチミツの日、俺はしっかりと明け方までロックラックに滞在していたのだが、友だち連中とクエストにも行かず、酒場に置かれたタルを囲んで踊りほうけていたんです(笑)。でもまさかそのときに、密かに(?)交換所にハチミツが入荷されているなんて思いもせず、「踊れ踊れーーっ!!」、「飲め飲めーーーっ!!」と大騒ぎしていたのだ(このときのこと、いつかどこかで書くと思います)。嗚呼……。なんたる失態……。『3(トライ)』はこれまでのシリーズ作品と比べてハチミツはかなーり集まりやすくなっているが、それでも採集ではなく、購入や物々交換で手に入るなら「ここぞ!」とばかりに大量入手したくなるのが人の子というもの。これが俺だけでなく、目黒もハチミツの日に気づかずに「しまったー!!」と慟哭しているのならあきらめもつくのだが、目の前にいる男は「ザマミロ」と言わんばかりの勢いでニヤついているのである。そんな目黒が、茫然自失となっている俺に向かってトドメとばかりにこんなことを言った。

「大塚さんがロックラックにいるのは知っていたので、電話して教えてあげようかと思ったんですけどねぇ……。まあでも、僕はありったけの素材をつぎ込んでハチミツを400個手に入れておきましたよ^^」

 するとそこに、逆鱗日和ファミリーのひとりである女尻笠井がやってきて「あ、僕も300個ほどハチミツ確保しておきました^^」とシレっと発言。さらにふたりは勝ち誇った顔で「もしもハチミツにお困りになったら言ってください。ハチミツ、あげなくもないですよwww」と声を揃えた。

 ところがその翌日、暇にまかせてロックラックに出向いていた目黒が痛恨の表情を浮かべながら、部下の原稿チェックをしていた俺に低い声でささやいた。

「今日もロックラックの交換所でハチミツが手に入るんですね。大塚さん、もう手に入れちゃいました?」

 え。

 え……。

 ええええええ!!!???

 ハチミツの日は継続していたのかーーーーっ!! 天は我を見放さなかったっ!!

 俺はすぐさま原稿を脇に押しやり、「マママ、マジか!! いますぐ行くぞロックラックにっ!!」と悲鳴にも似た大声をあげる。それを聞いた目黒は「あ、しまった……。余計なこと教えちまった!!」と部下とは思えない失礼なことをぬかしていたが、ハチミツに取り憑かれた俺の耳にはまったく入ってこない。俺はクマのように鼻を鳴らしてネットワークに接続し、震える手を必死に押さえながらロックラックに進入。勢い込んで、交換所のおばちゃんに話しかけた。今日ばかりはこの太ったおばちゃんが、絶世の美女に見える。嗚呼……アナタは砂漠の街に咲いた一輪のドクゼリモドキ……。

 褒め言葉もそこそこに、さっそくアイテム交換リストを眺める。すると……おおお!! 目黒が言ったとおり、ハチミツが入荷しているではないか!! しかも……。

「あれ……? このハチミツ、“彩鳥のコイン”と物々交換できるぞ。しかもコイン1枚につき、ハチミツ5個という交換レートだ……。ってことは……!!」

 俺はこの間、江野本ぎずもとふたりで闘技場に入り浸り、クルペッコ討伐ばかりしていた。狩王決定戦に備えたタイムアタックの特訓だったわけだが、これをクリアーするといくばくかの報酬がもらえるのである。そのひとつにあるのが、件の彩鳥のコイン。もらえる個数は毎回違うが、たいてい1枚か2枚は報酬リストに入っている。しかしこのコイン、あまり使い道がなく、アイテムBOXにいたずらに積み上がっていく様子を眺めながら俺たちは、「このコイン、べつのものに換えられればいいのにね」と苦笑いをしながら話していたのだ。俺と江野本がクルペッコ討伐に費やした時間は、余裕で『3(トライ)』の総プレイ時間の半分は超えている。結果、このとき俺のアイテムBOXに入っていた彩鳥のコインの数は……!

 875枚(笑)

「わああああああああああっ!!!!」

 俺ははしたなく絶叫した。本気でチビってしまうところだった。えええ、えーっと、コイン1枚がハチミツ5個だから、どういうことになるんだっけ? えっとえっと……ハチミツは何個になるんだ……!!! 難しくて計算できねえ!! 目から血が出るほど画面を凝視したまま、「ひぃぃぃ!!」とか「きゃあああ!!」とか悲鳴を上げている上司をいぶかしみ、目黒と笠井が「どうしたんですか?」と言いながら俺の画面を覗き込んでくる。そして……。

「わああああああああああっ!!!!」

 肝を潰してその場にへたり込む逆鱗日和ファミリー。ロト6で3億円が的中している投票シートを見せられたときのような反応である。

「えーっと、彩鳥のコインが900枚あるとすると……よ、4500個ものハチミツが手に入ることになりますよ!!」

 と笠井。あまりの衝撃に身動きが取れなくなり、いまや信楽焼きのようになっている。つい数時間まえまで「ハチミツに困ったときはいつでも言ってくださいウヒヒヒヒ」とニヤニヤしていた無礼な部下は地底人に連れ去られたようだ。

 けっきょく俺は、「ま、何個でもいいんだけどネ、フフン!」とふんぞり返りながら、所持できる限界個数と思われる999個のハチミツと、「ま、あんま使わないかもしれんけどネ、フフフン!!」と腹を叩きながら300個ほどの回復薬グレートを調合してアイテムBOXにぶち込んだ。気分は完全にゴールドラッシュ。『モンハン』を遊び始めてから5年になるが、かつてこれほどセレブな状態になったことがあっただろうか? いや決してない。

 でも。

 無尽蔵と言えるほどのハチミツがアイテムBOXの中にあるというのに、俺はモガの森やクエストに出向いて虫の巣を見かけるたびに、その下で腹這いになっている。口から出る言葉は、昔と変わらぬ「ハチミツくれハチミツくれ!」というもの……。「あさましい……」と思わなくもないが、染み付いてしまった清貧時代の想いは消えることがなく、俺は虫の巣を見かけると条件反射でクマになってしまうらしい。でも、莫大な貯金があるのに1円たりとも無駄にしないという現在の境遇を省みて、俺は初めてこう思ったのだ。

「金持ちって、こういうものなのかもしれないなぁ……」

 と……。

投稿者 大塚角満 : 15:19

大塚角満

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週刊ファミ通副編集長にして、ファミ通グループのニュース担当責任者。群馬県出身。現在、週刊ファミ通誌上で“大塚角満のモンハン研究所”というコラムを連載中。そこら中に書き散らした『モンハン』がらみのエッセイをまとめた単行本『本日も逆鱗日和』シリーズ(4巻)が発売中。また、そこからのスピンオフとして別の視点から『モンハン』の魅力に迫る書き下ろし作品『別冊『逆鱗日和』 角満式モンハン学』シリーズも。このブログではさまざまなゲーム関連の話題を扱うつもり。一応、そのつもり。


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