大塚角満の ゲームを“読む!”
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【MHP 2nd G】第174回 角満カップ−もうひとつの、物語−
『角満式モンハン学』発売記念&祝『逆鱗日和』2周年イベントが終わってから、早くも1ヵ月近い時が流れてしまった。この間、俺は燃え尽き症候群に罹ることもなく、イベントリポートの最後に記したように非常に前向きな気持ちで、相棒の江野本ぎずもとともにつぎに作りたい本やイベントに向けてのアイデアを出し合ったりしている。
さて、そんな『角満式モンハン学』発売記念&祝『逆鱗日和』2周年イベントだが、じつは全5回に及ぶリポート(しかも全部長文)ですべてをお伝えできたわけではない。もうひとつ(もしくはふたつ?)、どうしても書きたい文章があるのだ。非常に気持ちを込めて書くので、下手をすると支離滅裂な文章になってしまう可能性もあるが(プロとは思えない発言だがな!)、ぜひぜひ読んでほしいのよ。テーマは……。
『ゲネポの想い、エフォクリの想い』
というものだ。我々が作る読者参加型のイベントに1回目からゲストとして登場し、圧倒的に俺以上に会場を盛り上げてくれるのが、モンハンフェスタ`08チャンピオンの“もうゲネポ”のふたりと、同準優勝の“Effort Cristal”のふたりなのである。
そんな2チームであるが、今回の『角満式モンハン学』発売記念&祝『逆鱗日和』2周年イベントで開催した“第3回角満カップ”においては、あまりにもくっきりと明暗が分かれてしまった。勝者がいれば敗者もいるのが世の理だが、第1回目からいっしょにイベントを“作ってきた”この2チームに突きつけられた現実は、ちょっと直視することがためらわれるほど強烈だった。でもだからこそ、俺は思ったのだ。硬質なイベントリポートでは伝えられない2チームの間にだけある空気感を、ぜひ別の文章で表現してあげたいな、と……。ということで、『角満式モンハン学』発売記念&祝『逆鱗日和』2周年イベントにおける2チームのドキュメンタリーを、筆者の想いも絡めながら綴りたいと思う。
◆◆◆
イベントを翌日に控えた2009年4月18日。俺と江野本はビデオカメラを担いでJR上野駅へと向かっていた。イベントのオープニング映像として、第3回角満カップにゲストとして招いた4チームへのインタビューを流そうと考えたのだ。4チームにぶつけようと思っていた質問はただひとつ。“どのチームが優勝すると思うか”という、優勝チーム予想だ。
最初にインタビューしたのは、Effort Cristalだった。毎回イベントに参加してもらっているし、しょっちゅういっしょに遊んでもいるので、God&Jackのふたりと俺たちは、すっかり気心の知れた仲になっている。当然のようにインタビューも、軽口が随所に出てくるリラックスしたムードの中で行なわれた。しかし、俺がその流れの中で「じゃあインタビューの核心ね。ズバリ、どこのチームが優勝すると思う?」と訊いた瞬間に、Godの表情は一変する。にこやかだった顔は瞬時にこわばり、声も多少上ずり加減になったことから、彼が緊張していることがよくわかった。Godは緊張感を漲らせた顔を俺のほうに向け、意を決したように予想通りのチーム名を口にした。
「ゲネポですね」
そして相棒のJackも同じように「やっぱりゲネポですよね」と言う。モンハンフェスタ`08の決勝で唯一自分たちの上をいったもうゲネポのふたりを、彼らは誰よりも尊敬するとともに絶対的なライバルと認めているのだ。
そして2時間後。俺たちはもうゲネポが宿泊するホテルの部屋を訪ね、Effort Cristalにしたのと同じ質問を唯&MASAKIコンビにぶつけた。プレッシャーを力に変えてきたもうゲネポのふたりは思ったとおり「優勝? ここ(ゲネポ自身)しかないでしょう」と口を揃え、モンハンフェスタ`08チャンピオンらしい自信とプライドを見せる。そこで俺は質問を変えて、「じゃあ、ライバルとなるのはどのチーム?」と水を向けてみた。するとふたりは顔を見合わせたあと、決意をにじませた表情で、
「エフォクリ(Effort Cristal)です」
ときっぱり。彼らもまた、Effort Cristalのふたりが自分たちと同じステージにいる存在だということを十二分に認めているのだ。
迎えた2009年4月19日。いよいよ第3回角満カップのスタートだ。イベントリポートで何度もお伝えしているが、今回の角満カップはゲスト4チーム(もうゲネポ、Effort Cristal、Jast25`s、狩魂T)に当日予選勝ち上がり組を2チーム(NAMAZONE 6&13、NAMAZONE No.0&5)を加えた6チームで競い合ってもらった。下馬評ではやはりと言うべきか、モンハンフェスタ`08の優勝、準優勝チームであるもうゲネポとEffort Cristalの2チームに人気が集中している感じがした。実績、そして実力でも、いまの『モンハン』タイムアタック界において、この2チームが放つ存在感は別格のものがあるのだ。
1回戦。種目は、ナルガクルガ2頭を連続で討伐するチャレンジクエスト07だ。2番目にステージに登場したEffort Cristalのふたりは、若干のミスはありながらも来場者の誰もが息を呑む超絶プレイを連発して、間違いなく“速い!”と確信できるパフォーマンスを演じてみせた。
しかし、チームリーダーのGodはこの結果にまったく納得していなかった。このとき、彼の頭の中にあった思いは「こんなタイムじゃ、ゲネポに上をいかれる」というものだけ。モンハンフェスタ`08の決勝でもうゲネポに敗れ去って以来、彼はつねに「ゲネポには負けたくない!」という負けん気を頼りに誰にも真似できないほどの努力を続けてきたのだ。まだ1回戦とは言え、納得のいく動きができなかったうえにライバルの後塵を拝するようなことになったら……。平静を装いながらも、Godの心は焦燥感で満たされていた。
一方のJackは、God以上に自分の立ち回りの不甲斐なさを責めていた。いまや実力ナンバーワンと言われるとてつもないパートナーを持つ彼の心の中には、つねに「自分が相方でいいのだろうか……?」という疑問が渦巻いている。Godが本来の力を発揮できさえすれば、そうそうなことでは負けないだろう。でもそれはGod個人の力であって、Effort Cristalが“コンビ”として機能していることになるのか……? いくら考えても、その答えは出てこなかった。
でもだからこそ、Jackは人一倍の努力をしてきた。自分が相棒のような才能を持ち合わせていないことを誰よりもよくわかっているから、Godが導き出した作戦を実行できるだけの力と、彼が真の実力を発揮するための“相方としての立ち回り”を努力の末に身につけてあげたい……。チーム名に“Effort(努力)”という単語を組み入れたのは、じつはJackだ。自分が懸命に努力をすれば、必ずチームとしての結実を見ることができるはず。だから彼らは、Effort Cristal(努力の結晶)なのだ。
そんなEffort Cristalに続いてステージに現れたのが、圧倒的なセンスと臨機応変さを武器とするチャンプ、もうゲネポのふたりだ。きっと彼らも、Effort Cristalに匹敵する立ち回りを披露してナルガクルガを翻弄するに違いない。会場にいた250人の観衆すべてが、そう思っていたことだろう。
しかし、我々の目に飛び込んできたのは、ちょっと信じられない光景だった。もうゲネポのチームリーダーで、個人技においては間違いなく全国のトップクラスにいる唯が、1頭目のナルガクルガ討伐で1オチしてしまったのである。このときのことを、唯は痛恨の表情で述懐する。
「完全に、僕の油断です。“ナルガクルガ相手に自分がオチるわけがない”って過信していました……。一発勝負の舞台では何が起こるかわからないって自分たちがいちばんよく知っているはずなのに、よりによってあの舞台で、やっちゃいけないことをやってしまったんです……」
MASAKIも、まさか唯がここでオチるとは思っていなかった。ウソだろう……? 自分たちが、こんなところで負けるっていうのか……? でも、まだ結果が出たわけではない。ミスは取り返さないと!
しかしシロウト目で見ても、闘技場にいるナルガクルガともうゲネポのふたりの立ち回りはうまく噛み合っていなかった。いつものセンス溢れる躍動感が影を潜め、どこか後手に回っている印象だったのだ。でも、さすがは全国チャンプ。2頭目のナルガクルガ戦でなんとか軌道修正し、他のチームが驚くほどの戦術を披露して猛る迅竜を圧倒する。本来の力を発揮できれば、やはりもうゲネポのスピード感は群を抜いていて、思わず「すげえ!」とうならずにはいられなくなる。結果、かなりの速さで2頭目は切って落とした。
しかし。
ガチンコの一発勝負は、やはり非情だ。優勝候補の筆頭、もうゲネポは1頭目の1オチで背負ったタイムロスが響き、1回戦の順位はまさかの5位……。4位のJast25`sにも40秒もの差がついた、ひっくり返しようのない“完敗”だった。
唯とMASAKIは、この結果が信じられなかった。決勝を戦うのは間違いなく自分たちとEffort Cristalのふたりだと思っていただけに、そのショックは計り知れないものがあったろう。
じつはもうゲネポは、モンハンフェスタ`08優勝という実績があまりにも輝かしいために見落とされがちだが、ずっと勝利から見放されてきたチームでもある。よくふたりは俺や江野本に向かって、「ボクら、ずっと2位のチームなんですよ」と苦笑交じりに話してくれるのだが、過去の成績を見ると「なるほど……」と思わせられる。モンハンフェスタ`08の大阪予選は2位通過。同決勝大会1回戦は3位、準決勝は2位、そして決勝ではEffort Cristalを撃破して優勝。しかしモンハンフェスタ`08決勝の再戦と題して行った1回目の『逆鱗日和』イベントでは、激昂ラージャン相手のタイムアタックでEffort Cristalに敗北……。いまにも悔し涙が頬を伝いそうな表情で、唯は言葉を搾り出す。
「フェスタの決勝で勝っただけで、じつはずっと2位とかばっかやったから、今回は絶対に勝ちたかった……。でも負けたのは、完全にチームリーダーの僕の責任なんです。相方はどうかわからんけど、僕は完全に1回戦のナルガクルガをナメてた。だから練習の配分も、ナルガはそこそこで準決勝以降のものに絞ってしまって。明らかに、戦略ミスでした」
MASAKIが続ける。
「負けたとわかった瞬間、なぜかフェスタ`08のことを思い出してました。本当に悔しくて、勝ったときの気持ちにすがろうと思ったのかな……。準決勝、きっとチャレンジクエスト04が選ばれるとヤマを張って、徹底的に立ち回りを詰めていました。これを披露できれば、観衆はもちろんライバルチームの度肝を抜けるぞ、って思っていて。それができないのが、悔しかったし、悲しかったですね……」
そして当事者のふたりとともに、もうゲネポの敗北に心からショックを受けた男がいる。誰あろう、Effort CristalのGodだ。その瞬間を振り返って、Godは言う。
「正直、信じられなかったです。“決勝の相手は絶対にゲネポだ!”と確信してがんばってきたので、ちょっと彼らが負けてしまったことを受け入れられなかった……。……うん、ものすごく、ショックでしたね……」
ちょっとおこがましいかもしれないが、俺と江野本が作る『逆鱗日和』イベントの歴史は、そのままもうゲネポとEffort Cristalの歴史にリンクする。彼らのライバル関係があったからこそ我々はイベントの核を構成しやすかったし、それを見る観衆たちも“安心感”を得られていたのだと確信する。そういう意味ではこの2チームに関しては、ゲストというよりもいっしょにイベントを作ってきた同志というイメージが強い。もうゲネポのふたりもEffort Cristalのふたりも、きっとそう思ってくれている。だからこそGodは、最強のライバルであり、最高の同志が早々に敗れ去ってしまったことがショックだった。Jackにしても、準決勝が始まるまでは自分の立ち回りの不甲斐なさに茫然自失となり、どのチームが敗退したのか気づかなかったが、ステージに上がった人々を見て、「あれ!? ゲネポはどうしたの!?」と驚いたそうだ。
けっきょく第3回角満カップは、Effort Cristalのふたりが圧倒的なパフォーマンスを展開して、1回戦、準決勝を1位通過したのち、決勝でも激昂ラージャンを瞬殺して優勝。いまの『モンハン』タイムアタック界において彼らに比肩するチームは存在しないんじゃないかと思える“完全優勝”を果たした。
そして、決勝の舞台でハンマー×ハンマーを振り回して激昂ラージャンを手玉に取るEffort Cristalの立ち回りを目の当たりにして、大きなショックを受けた男がひとりいた。もうゲネポの唯だ。ちょっと遠い目をしながら、唯がしみじみと語る。
「もしも僕らが決勝でエフォクリと戦ったとしても、まったく歯が立たなかったと思います。僕が激昂ラージャン相手の立ち回りを考えたとき、“こいつ相手にハンマーはないやろ”と早々にハンマーの可能性を切り捨ててしまっていたんです。それがエフォクリのふたりはハンマー×ハンマーでとてつもない立ち回りをして、激昂ラージャンを瞬殺してみせました。僕らは大剣×大剣でやっていたと思いますが、完璧な立ち回りができたとしてもエフォクリには遠く及ばない。ハンマー×ハンマーの可能性を切り捨ててしまった時点で、僕は負けていたんだと思います。チームリーダー、失格ですね。いちから、出直しです」
そしてMASAKIは、決勝の舞台に立つEffort Cristalの姿を見たとき、こんなことを思ったという。
「1回戦で負けたときはあまりのショックで頭の中がゴチャゴチャになり、わけがわからなくなっていました。でも決勝戦になって、エフォクリの隣に僕らがいない現実を目の当たりにしたとき、本気でエフォクリのふたりに対して「すまない」って思いました。いつも必ず、僕らがそこにいたし、エフォクリのふたりも待ってくれていたはずなのに……。……また彼らの横に立てるように、いちから出直しですね」
大会が終わったあと、俺はゲストチームの面々を連れて馴染みのバーで打ち上げをした。店に入るやいなや、Godはさっそく唯とMASAKIを捕まえて「準決勝のチャレクエ04の立ち回り、見せてくださいよ!」と迫り、言われたふたりは関西弁で「ええで! ……ったく、これをステージでできてたら、エフォクリに完全優勝なんかさせへんかったのになあ!」と返している。それを聞いて狩魂TのMizunoe、たけちよのふたりは「ウチらにも見せて見せて!」と大騒ぎ。その横で、いつまでも1回戦での立ち回りを悔いていたJackはウーロン茶を飲みながら、「はぁ……。やっと心が落ち着いてきた……。これでようやく、ふつうに笑うことができるぞ……」とボソリとつぶやく。それを聞いて俺、江野本、Jast25`sのこんぺいは、「ジャッ君、まだ引きずってたのか!! かわいそー!!w」と大笑い。笑う俺たちを見てJackは怒り、「笑いごとじゃないですよ! たいへんなんですよ、こういう相棒を持つと(苦笑)」と苦笑いをした。
◆◆◆
さて。
長文、読んでくれてありがとうございました。今回はあえて、もうゲネポ、Effort Cristalという2チームにフィーチャーしたドキュメンタリーにしてみましたが、いかがだったでしょうか? 彼らに着目したのは、傍から見てもゾクゾクするくらい、2チームがステキなライバル関係にあるから。つねに互いを意識しあい、「あそこにだけは負けたくない!」と強く思いながらも、じつはいちばん尊敬しあっている2チームのまわりには、いつも書き手を刺激してくれるドラマがあるんです。今回、くっきりと明暗が分かれたことでドラマは切ないものになりましたが、だからこそ僕は「ドキュメンタリーとして残しておきたい」と思いました。
もちろんこの2チームだけじゃなく、角満カップに参加してくれたほかのゲストチーム、そして当日予選を勝ち抜いたNAMAZONE軍団にも、伝えたいドラマがあります。なかなかすべてを書くことができなくて今回はもうゲネポとEffort Cristalにフィーチャーしましたが、いつかほかのドラマも、皆さんにお伝えできればいいなって思っています。
大塚角満
週刊ファミ通副編集長にして、ファミ通グループのニュース担当責任者。群馬県出身。現在、週刊ファミ通誌上で“大塚角満のモンハン研究所”というコラムを連載中。そこら中に書き散らした『モンハン』がらみのエッセイをまとめた単行本『本日も逆鱗日和』シリーズ(4巻)が発売中。また、そこからのスピンオフとして別の視点から『モンハン』の魅力に迫る書き下ろし作品『別冊『逆鱗日和』 角満式モンハン学』シリーズも。このブログではさまざまなゲーム関連の話題を扱うつもり。一応、そのつもり。
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