大塚角満の ゲームを“読む!”
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【MHG】第5回 誕生日の夜に
5月9日午後10時30分。江野本ぎずもから「『G』やりましょう!」と連絡があった。俺も江野本もハンターランク12の緊急クエスト“巨大龍の侵攻”が出た状態でハンターランクポイントがカンスト(カウンターストップ)しており、「この週末にラオシャンロンを片付けて、上位ハンターになろう!」と約束していたのである。
さっそく待ち合わせ場所に出向くと、すでにそこでは江野本と狩魂Tのたけちよ(通称・たけちー)が待っていた。聞くと、午前0時まえにはEffort CristalのGod君(通称・ゴッディ)もやってくるという。ハンターランク1のころからいっしょに歩み続けてきた、気心知れたハンターたち。こういう仲間たちといる場所はやはり、この上なく居心地がいいものだ。
さてさて、とりあえず酒場に3人のハンターが揃った。それぞれのハンターランクは、前述のとおり俺と江野本が12、たけちーは13だ。このメンツで、果たして迫り来る巨大龍を退けることができるのだろうか? 一抹の不安はあるものの、この3人で出撃すればきっとおもしろいことになるだろう。なので俺は提案した。「3人で、やってみない?」と。当然のようにふたりは同調して、「いいっすねw やりましょう!w」、「撃退してやりましょー!!」と元気がいい。俺はふたりの様子を頼もしく眺めながら緊急クエストを受注し、若干緊張しながらラオシャンロンが待つ砦へとくり出した。ちなみに武器は、俺とたけちーがバベル(ランス)、江野本はポイズンタバルジン(片手剣)だ。
ラオシャンロン撃退クエストは、初代『モンハン』だろうが『2nd G』だろうが『G』だろうが、やるべきことは変わらない。ずんがずんがとエリアを通過しようとするラオシャンロンを、ズバズバと斬り刻むだけだ。
最初にやってくるのは、エリア2。でも、歩みの遅い巨大龍がやってくるまでには数分間の空き時間がある。ここで何をするのかは挑むハンターによって異なるところだが、我々3人は申し合わせたように“肉焼き”を始めた。
しばらくのあいだ、視界の端に映った江野本の肉焼きの様子を眺めていた。いま彼女のモニターからは、軽快な肉焼きの音楽が流れていることだろう。さあぼちぼち、焼けるタイミングかな? そう思って画面を凝視していたら、江野本の分身が「ガクッ」と肩を落として、生焼け肉を生産してしまったことを態度で示した。「ぷぷ。失敗してやんの」と笑う俺。しかしチャットでは何も言わず、さらに彼女の分身の様子を眺め続けた。江野本は懲りずに肉焼きセットを地面に放り出して、肉を焼こうとし始めたからだ。しかし……。
ぽよよん
生焼け肉になってしまった!
ぽよよん
生焼け肉になってしまった!
ぽよよん
生焼け肉になってしまった!
あろうことか、4回連続で肉焼きに失敗した江野本ぎずも。俺、ゲラゲラと腹を抱えてのたうちまわり、さすがにチャットで指摘した。「なんか、とてつもなく連続で肉焼きに失敗してる人がいるんですけどwww」。江野本、本気でうなだれながら「ことごとく失敗してもうた……」とボソリ。その様子を見て俺は“肉焼きの天才”を自認する腕を見せてやろうと、肉焼きの構えに入った。そして……。
シュタッ!!
ズバンと股間の真下に出現したナマナマしい生肉……。や、やべえ……。『モンハン』を始めて5年にもなるのに、肉焼きセットと間違えて生肉を地面に置いちまった……。でも幸い、この様子を江野本は見ていなかったようだ。しかも具合のいいことにラオシャンロンが現れてくれたので、俺は失敗を誤魔化すために「さ、さあ来たよ! ガンバロー!」とかなんとかテキトーなことを言って、ラオシャンロンの元に駆け寄った。しかし、残念なことにたけちーがしっかりと俺の惨状を目撃しており、我が分身のいた場所に現れた生肉を見て吹き出した。
「なんかここに、生肉が落ちてるんですけどwwwww」
俺、モニターの前で本気で赤面し、「たけちー……。今度会ったら真っ先にデコピンしたるど……(怒)」と憤怒の炎を燃やしたのであった。
でも失敗と言ったらこれくらいで、ラオシャンロン撃退クエストは思いのほか滑らかに進行した。当初、「討伐はムリでも、撃退だったらなんとかなるかな……?」とかなーり気弱な態度で臨んでいたのだが、終わってみたら残り時間もたっぷりと残した中で見事討伐。「すごいですね、ウチたち!」、「いけましたね!」、「やればできるもんだなー!w」と心の底から感動し、俺たちは胸を張ってミナガルデに凱旋したのだった。
ミナガルデに戻ってしばらくすると、Effort Cristalのゴッディがやってきた。時間は、5月9日午後11時40分くらいだったろうか。酒場に到着するなりゴッディは挨拶もそこそこに「なんとか間に合いました!w」とひと言。俺は(何が間に合ったんだろう……?)と不思議に感じながらもその思いは口に出さず、「ゴッディ、えのっちの緊急ラオ、いっしょに行こうよ!」とクエストに勧誘した。ゴッディは目を輝かせて「行きます! ラオの素材、ちょうど欲しかったんです!」と言って笑った。
さあ、2回目のラオシャンロン討伐だ。これをクリアーすれば江野本も晴れて、上位ハンターの仲間入りである。江野本がクエストを受注したのを確認してから、これを受ける3人。出発口でクエスト出発ボタンを押し、ほかの3人が同じようにするのを待った。しかしなぜか、江野本、たけちー、ゴッディの3人は出発ボタンを押そうとせず、出発口で佇んだまま動かない。?? どうしたんだろう。なんで出発しないんだ? まだ準備が整っていないのかな? 不思議に思いながらも俺は何も言わず、3人に倣って出発口に佇み続けた。
そして、5分ほどが経過したころだろうか。3人が同時に、大きな声をあげた。
「あ!!! 日付が変わったよ、みんな!!」と江野本。
「0時過ぎましたね!」とたけちー。
「5月10日になりましたね!!」とゴッディ。時計を見ると確かに日付が変わって、5月10日になっている。でも、それがどうしたって言うの? 俺はますますわけがわからなくなり、ポカーンとしながらチャット画面を眺め続けた。すると3人のキャラは俺の分身を囲むようなフォーメーションをとり、“拍手”のアクションを始めるではないか。そして、そのままの態勢で3人は声を揃え、思いがけないことを口走った。
「おめでとうございます!!」
え……? それ、俺に言ったの? しかし、おめでとうと言われる覚えがまったくない。俺は戸惑いながら3人にこう言った。「な、なにが?w」と。すると江野本が「ホントに察しが悪い!」とでも言いたげな口調で、こんなことを言った。
「『逆鱗日和』2周年、おめでとうございます^^」
あ……。そうか……。そういえば2年まえのこの日に、1冊目の『本日も逆鱗日和』が発売になったんだよな……。1日まえまで覚えていたんだけど、いまこの瞬間はすっかり忘れていたよ……。俺、突然の祝福になんとも言葉が出てこず、「あの……。皆さんのおかげです。本も、イベントも……」とかなんとか、無理矢理キーボードを引っ叩く。その様子を見て、3人は口々にこんなことを言った。
「全部、大塚さんから始まったことですよ^^」と江野本。
「『逆鱗日和』がなかったら、僕なんてこの場にいませんからね!」とたけちー。
「この瞬間に立ち会えていることがうれしいです!!」とゴッディ……。いやあ、まいったなこりゃ……。
聞くと、何かお祝いができないかと考えた江野本がたけちーとゴッディに「10日になった瞬間にみんなで「おめでとう」って言いたいんだけど、来れるかな?」とメールし、たけちーとゴッディは急いで駆けつけてくれたんだそうだ。ふたりとも社会人で、土日も仕事でいっぱいいっぱいになっていることを、俺はよく知っていた。たけちーは金曜の夜も徹夜で仕事し、土曜日の昼すぎに家に帰ってきたと言っていた。ゴッディは最近、0時まえにオンラインすることが稀だったくらい、仕事に忙殺されていた。それでも俺に「おめでとう」と言うためだけに、急いで仕事を切り上げて駆けつけてくれたのである。そう、ゴッディがミナガルデに着くなり「間に合った」と言ったのは、「祝福の瞬間に間に合った」という意味だったのだ。「正直、間に合わないんじゃないかと思ってアセりましたw」とゴッディ。まったく、こいつらはいい年のおっさんを泣かせてくれる……。そんな、感激に浸る俺に向かって江野本はこう促した。
「大塚さん、『逆鱗日和』3年目の決意表明は?」
しばし考えたあと、俺はしっかりと前を向いてこう言った。
「いろいろ悩むこともあるけど、まだまだ止まるわけにはいかないね。いまはひたすら、いい仕事をして、いい作品を作りたい……。……というわけで、よろしくな、相棒w」
言われた江野本、元気な声で「はい! ウチも全力でがんばります! そして来年の今日も、ステキな誕生日にしましょうね^^」と言ってニッコリ。そしてたけちーとゴッディは声を揃えて「僕らは全力で応援させてもらいますよ!!」と言ってくれた。俺は感激のあまり本気で「ううう><」と涙を流し、膝の上に乗っていた飼い猫のアクアに「何を泣いてんだこのおっさん」と言わんばかりの怪訝な表情で見られてしまった(苦笑)。
このあと、俺たちは「じゃあ、記念にウチの緊急ラオ行きましょう! 2周年記念ラオー!」という江野本の言葉に乗せられて、ラオシャンロン討伐クエストに出発。見事これを打ち倒して、俺たち4人は全員、上位ハンターになったのだった。
大塚角満
週刊ファミ通副編集長にして、ファミ通グループのニュース担当責任者。群馬県出身。現在、週刊ファミ通誌上で“大塚角満のモンハン研究所”というコラムを連載中。そこら中に書き散らした『モンハン』がらみのエッセイをまとめた単行本『本日も逆鱗日和』シリーズ(4巻)が発売中。また、そこからのスピンオフとして別の視点から『モンハン』の魅力に迫る書き下ろし作品『別冊『逆鱗日和』 角満式モンハン学』シリーズも。このブログではさまざまなゲーム関連の話題を扱うつもり。一応、そのつもり。
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