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【MHG】第17回 森と丘のデッドヒート

 最初は、何事もなかった。

 目の前にあるのは、いつもと変わらぬのどかな森と丘の風景と、気の置けないステキな友だちたちの姿。このまま、清流きらめくエリア11あたりにテントを張り、よろず焼きセットなんかも広げちゃって、釣ったばかりのサシミウオやハリマグロを焼き、山菜(薬草や特産キノコあたりか)もちゃちゃっと料理しちゃって、贅沢なキャンプの夕食に雪崩れ込もうか……。いやあ、いいですわねえ、アウトドアライフ。子供のころ、家の近くの河原に拠点を作り、とっ捕まえてきた魚を焚き火で炙って塩をぶっ掛けてムシャムシャ食ってた山猿のような俺には最高のシチュエーションだなあ^^ しかしサシミウオあたりはうまそうだけど、バクレツアロワナやカクサンデメキンなんかを食った日にはどうなっちゃうのかな? 噛むたびにバチバチボカンと口の中で爆ぜまくって痛いやらうるさいやらでたいへんなことになるのではあるまいか? ……って、ここに書いた333文字は、これから書こうとしている本日のテーマとはまるで関係がないことを、読んでもらったあとではなはだ恐縮ですがご報告させていただきます。

 まあ、最初は平和だったのよ。出向いたクエストは、集会所上位の運搬クエスト“潜入!飛竜の巣”で、メンバーはおなじみ、俺、江野本ぎずも、Effort Cristalのゴッディ、狩魂Tのたけちーの4人。エリア5にある飛竜の卵を3個、ベースキャンプまで運ばなければならない根気と冷静さが必要なクエストだが、この4人で何度も何度も成功させたことがある。なので、それぞれの役割も相談して決めるまでもない。すばやく飛竜の巣(エリア5ね)に駆けていったたけちーが「卵、割りました」と報告すると同時に、俺がエリア1に、江野本がエリア2に、ゴッディがエリア3に入り直して、そこに現れたランポスの群れを狩りにかかる。たけちーはそのまま、新しい卵を1個抱えて、エリア4→エリア3→エリア2……と移動。無事、ひとつめの卵を納品することに成功する。

 その間、エリア3のランポスを瞬時に絶滅させたゴッディは、頻繁に卵運びのルートを飛び回るリオレウスを足止めし、尻尾切断の作業に従事していた。江野本は麻痺属性の片手剣・デスパライズを持っているので、迷わずゴッディのサポートに回る。すぐに、ベースキャンプから駆けつけたたけちーも狩りに加わって、リオレウスと対峙するには十分な戦力が整った。これを見届けた俺は安心してエリア5に侵入し、ホカホカの飛竜の卵を胸に抱える。そしてエリア6の断崖絶壁を下りて(運搬物を持ったままここを下りられることを知らない人、けっこう多いみたい)、エリア2→エリア1と移動。無事に2個目の卵を納品することに成功する。

 ちょうどそのころ、リオレウスを相手にしていた3人から「尻尾斬ったよー」という報告が入った。そして、俺が現場に駆けつけるのを待っていたかのようにリオレウスは「ぐぉぉおお……」と断末魔の悲鳴を上げて昇天。これで、最後の1個を運搬するのを妨げる要素は、何もなくなったと言える。

 最初に動いたのは、ゴッディだった。ひと足先にエリア5に入って飛竜の卵を抱え込み、エリア4→エリア3へと移動しようとする。それを見て俺も卵を持ち上げ、エリア6の断崖絶壁に取り付いて崖を下り始めた。ふたりで運べばどちらかはベースキャンプにたどり着くだろうと、江野本、たけちーのふたりは運び屋の護衛に回る。もう、完璧すぎるチームワーク。失敗する要素は、どこにもない。

 そんな、運搬を担当する俺とゴッディが、エリア2の中央付近でばったりと出会った。もちろん、「よう!」も「久しぶり!」も「重いね!」もない。運搬中は緊張するのだ。チャットをしている余裕などないのである。

 しばらく、肩を並べるように駆け足で前方に移動していたふたりだったが、スタミナが減ったのだろう。ゴッディのキャラがスピードを緩め、歩きモードになった。当然ながら、俺のキャラとのあいだに1馬身(?)ほどの空間ができる。よし、1歩リードしたぞ。しかし俺のキャラもスタミナが無限にあるわけじゃないので、まもなく歩みを緩めるハメとなった。すかさず差を詰めるゴッディのキャラ。またまた俺たちは、肩を並べて歩むこととなった。

 そしてエリア1。競馬で言ったら、第4コーナーを回ったあたりであろうか。同時にエリア1に現れたふたりは、無言のまま脇目も振らずに猛ダッシュ。俺のキャラが前に出れば、瞬時にゴッディのキャラが抜かしにかかる。その逆も然り。抜きつ抜かれつのデッドヒートが、エリア1で展開された。

 「このふたり、いきなり無言で競争始めたww」

 観衆(江野本だが)の声援が、レーサーふたりの背中を押す。最後の坂(ベースキャンプに入る手前あたりねw)を上り、競馬で言ったら、残り1ハロンってところに差し掛かった。ベースキャンプに到達したのも、まったく同時だ。どっちが勝つ? 俺か? ゴッディか!? 俺のスタミナは、すでに真っ赤っか。いつ卵を落としてもおかしくない! 持ちこたえてくれ、俺の身体よ! “タイムアタックの絶対神”と呼ばれる、この男に勝たせてくれええ!!

 そして……。

 本当にハナの差で、俺のキャラが納品ボックスに卵を収めたグラフィックが表示された。か、勝った! ただの卵の運搬だけど、俺が一等賞だああ!

 「ま、負けた……w」

 とゴッディ。やっぱり彼も、俺とレースをしているつもりだったらしい。べつに「競争しようぜ」と取り決めをしたわけじゃないのに、自然発生的にそういう流れになるのが、じつにおもしろかった。

 翌日。

 前日と同じメンバーで、リオレウス捕獲クエストに出向いた。俺たちのやりかたでは、まず最初にエリア6に行って、リオレウスと小競り合いすることになっている。エリア6に行くルートは当然、エリア1→エリア2→エリア6。この、エリア2からエリア6に向かう道は高台にあるが、短いツタを上ると早く移動することができる。

 このとき、俺とゴッディはまったく同時にツタに取り付いた。

 上る速度も、完全に同じ。このままいけば、間違いなく同着になるだろう。ところが!

 ヒュン!

 と青い影が視界に現れ、ゴッディのキャラにぶつかったではないか! その勢いで、高台にスタッ! と立つゴッディのキャラ……。彼は、ツタに取り付いたまま呆然とする俺に向かって、つぎのような言葉を吐いた。

 「ランポスがぶつかって残り数歩がキャンセルされましたww 僕の勝ちですね!!www

 俺は一瞬絶句したあと、なんとか肺に空気を貯めて腹の底から絶叫した。

 「きき、きったねー!! っていうか、いつから競争になってたんだよーーー!!!」

 そんな、どっちもどっちな大人気ないやり取りを見ていた江野本はひと言、

 「……子供かww」

 と言って呆れ果てるのであった。

投稿者 大塚角満 : 16:23

大塚角満

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週刊ファミ通副編集長にして、ファミ通グループのニュース担当責任者。群馬県出身。現在、週刊ファミ通誌上で“大塚角満のモンハン研究所”というコラムを連載中。そこら中に書き散らした『モンハン』がらみのエッセイをまとめた単行本『本日も逆鱗日和』シリーズ(4巻)が発売中。また、そこからのスピンオフとして別の視点から『モンハン』の魅力に迫る書き下ろし作品『別冊『逆鱗日和』 角満式モンハン学』シリーズも。このブログではさまざまなゲーム関連の話題を扱うつもり。一応、そのつもり。


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