【MHP 2nd G】第162回 ヤバいんです!!
2009/01/08 (木曜日)
もう昨年の話になるが、とある屈強なハンターと狩りをともにする機会に恵まれた。そのハンターは、”DRAGON GATE”というプロレス団体で活躍している”K-ness”(クネス)さんという覆面レスラーで、プロレスファンのあいだでは”ゲーム通レスラー”として知られている。モンハン4人衆の藤岡要ディレクター、小嶋慎太郎プランナーから「こういう方と飲むんですが、来ませんか?」と声を掛けていただき、「行きます行きます!!!」とふたつ返事で応えてタクシーに飛び乗った次第だ。
クネスさんは自身のブログで遊んだゲームのインプレッションや評価までつけているゲームフリークだが、『モンスターハンターポータブル 2nd』にハマってからは「『モンハン』にどっぷり」だそう。当然ながら『2nd G』もやり込んでおり、ハンターランクは当然のように9。でもそこにたどり着くまでの道のりは平坦なものじゃなかったらしい。
「『2nd』のころから、基本的にずっとひとりで狩りをしていたんです……。『2nd G』でハンターランクが9になりましたけど、『2nd』を遊び始めてから2年かけて、最近ようやくたどり着いたんですよ!」
大きな身体で包み込むようにPSPを持つクネスさんはそう力説して、うまそうにグビリとビールをあおる。その真剣な表情を見て、俺は(この人も本当に『モンハン』が好きなんだなぁ……)とわかり、薄暗い新宿の居酒屋の片隅でひとりホンワカした気分になった。
そんな彼のまわりにいるプロレスラーが数人、クネスさんがあまりにも夢中になって『2nd G』で遊んでいる姿に影響されて”ハンターデビュー”した。ずっとひとりで孤独な狩りを続けていたクネスさんはすっかりうれしくなり、彼らと顔を合わせるたびに協力プレイ。新人ハンターも着実にハンターランクを上げていった。
しかしあるとき、新人ハンターのひとりがこんな相談を持ちかけてきた。「アカムトルムが強そうなので手伝ってください」と。これを聞いたクネスさんは、顔を真っ赤にして激怒した。
「アカムトルムですよ大塚さん! どのハンターにも立ち塞がる、偉大な壁じゃないですか!! 僕はこのモンスターをソロで狩るために、ひとりでコツコツと戦略を練って、それこそ2年を費やして目的を達成したんですよっ!! そ、それなのにいきなり、誰かに手伝ってもらってこの壁を越えようだなんて……。僕は言いましたよ! ”まずはひとりでやってみろ! 俺なんて何十回も挑戦してやっと狩ったんだぞ!!”って」
この、いかにも熱血体育会系なノリに感銘を受け、俺は腹を抱えて大笑い。『2nd』のときの”最後の招待状”、『2nd G』の”モンスターハンター”、”武神闘宴”に鼻血を噴き出しながら挑んでいた自分とクネスさんがオーバーラップしてすっかりうれしくなってしまったのだ。
そんなクネスさんは、たったひとりでハンターランク9まで上りつめただけあってハンティングの腕には相当な自信を持っている。この日も、ビールのジョッキ越しに俺たち3人の顔を見渡して「まわりにいるハンターたちの腕がまだまだなので、いつも僕が手伝ってあげているんですよ」とニヤリ。しかし彼はすぐに笑顔を消して、「そんな僕でも、どうしてもクリアーできないクエストが存在するんです……」と顔を曇らせ、沈んだ声でこんなことを言った。
「何度挑んでも、どうしてもあの3つのクエストをクリアーできないんです……。ひとりでだとまったく歯が立たないので数人の仲間と連れ立って出かけたんですが、もっとダメで……。どうすればいいんだ……。あれをクリアーできるような屈強な男が、存在するんですか!? ああ……いつになったらあいつらを狩ることができるんだ……」
俺は、天を仰いで嘆息するクネスさんを緊張の面持ちで眺め、ゴクリとツバを飲み込んでから「そ、それはどのクエストですか……?」と低い声で尋ねた。クネスさんは「なんて恐ろしいことを聞いてくれるんだ!」という心の声を隠せない顔で俺に向き直り、丸太のような腕に血管を浮き上がらせて震える声で告白した。
「しゅ、集会所G級★3、”黒のファランクス”と”破壊と滅亡の申し子”、そしてウカムルバスです……。ああ、なんて恐ろしい……」
俺、藤岡さん、小嶋さんの3人は酒を持つ手の動きをピタリと止めて顔を見合わせ、声を揃えて「なるほど」と言った。そしてゴソゴソとPSPを取り出し、口々に「じゃあやってしまいましょう!」、「今日クリアーしちゃいましょ♪」、「やろうやろう!」と明るい声で発言。クネスさんは最初、はしゃいでる3人の顔を呆然と眺めいたがすぐに真剣な表情になり、「皆さんのお気持ちはありがたいんですが、本当にヤバいクエストなんですよ! 僕はレスラー仲間ではダントツの手練ハンターですが、それでも歯が立たないんです。生半可な気持ちで行くとあっというまに葬り去られてしまいますよ!」と悲痛な声をあげる。そんな彼を俺たちは、「まあまあ^^」、「なんとかなりますって^^」、「がんばりましょうよ^^」とニコニコ顔でなだめながら、ディアブロス亜種2頭が待つ旧砂漠フィールドへと連れ出した。武器は確か、俺がガンランス、藤岡さんがランス、小嶋さんとクネスさんが太刀だったかと思う。そして……。
10分針でクエスト終了。
黒のファランクスは確かにヤバいクエストだが、『モンハン』開発者のふたりと、初代『モンハン』からディアブロスを追い回している世界一のガンランサー(笑)にかかればこんなものであろう。クネスさん、「絶対に無理!」とクリアーすることをあきらめていたクエストが僅か10分ほどで終ってしまった事実を受け止められず、「え……、あ、その、なんで……?」と半ばパニックになり、酸欠の鯉のようにパクパクと口を動かしている。そんなクネスさんを尻目にすっかり興が乗った3人は「つぎ行こつぎ!!」と叫んで、G級最後の緊急クエスト”絶対零度”に赴いた。ウカムルバスが待つ雪山深奥フィールドに着くころにはクネスさんのパニック状態も解け、再び彼は「このクエストこそヤバいですよ!! 僕らのまわりでは絶対に越えられない壁になっているんですから!!」と声を荒げた。そして……。
15分針でクエスト終了(笑)。
ウカムルバスは確かにヤバい相手だが、『モンハン』開発者のふたりと、『サヨナラ! 逆鱗日和』に盛り込む書き下ろし原稿のために何度もソロでこのモンスターに挑んだ経験のある世界一のガンランサー(笑)にかかればこんなものであろう。この勢いのまま、俺たち4人はクネスさんの”越えられない壁・その3”だった激昂ラージャンを撃破。クネスさんは限界まで見開いた目と口が閉まらなくなり、アウアウアウと何度も息を継いでから何とか声を絞り出した。
「こ、こんな強い男たちがいたのか……。僕は仲間内では、本当にダントツのハンターなんです。なのでかなり腕に自信があったのですが、お三方の足元にも及んでいない……。せ、世界は広い……。僕は井の中の蛙でした……」
そう言ってクネスさんは、しばらくじっとPSPの画面を見つめていた。が、チビリとビールを舐めてから毅然と顔を上げ、俺たち3人の顔を眺めながら明るい声でこんなことを言った。
「自分がハンターとして、まだまだヒヨっ子だということを思い知りました。精進して、もっと強いハンターになりますよ!! いやあ燃えてきたー!」
切り替えの早い体育会系の男をすがすがしい気持ちで見つめながら、俺は(またひとり、どっぷりとハマってしまうハンターの誕生に立ち会った)と確信し、ニヤリと笑った。
投稿者 otsuka-eb : 14:01