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【MHP 2nd G】第133回 あるハンターの栄光・挫折・再生 〜Jast25's物語〜 その1
抜群のセンスと適応力で一気に全国のトップに駆け上った”もうゲネポ”。大剣・大剣による超絶シンクロプレイで全国のハンターを震撼させた”Effort Cristal”。今年の春に行われた”モンスターハンターフェスタ`08”は、際立った個性と才能がぶつかり合う非常に印象深い大会だった。
そんな、新たなヒーローが現れた影で、無念の涙で頬を濡らすふたりの若者がいた。昨年の第1回モンスターハンターフェスタで全国の頂点に立ち、”タイムアタックを突き詰める”という『モンスターハンター』シリーズが持つもうひとつの顔をハンターたちに知らしめた伝説のコンビ”Jast25`s”(kohei&raven)だ。
彼らが昨年のモンハンフェスタ全国決勝大会で見せた数々のプレイは、現在の”理詰め『モンハン』”の礎となるそれはそれは見事なものだった。モンスターとハンターの立ち回りを研究し尽くし、”モンスターがこう動いたら、ハンターはこう動く”、”こう来たら、こう逃げる”とすべての動きをフローにして対応する立ち回りは、全国大会の決勝戦で極限に達した。ラージャン相手にくり出した狩猟笛・狩猟笛によるコンビプレイはまさに”詰め将棋”の極みで、このときのJast25`sのプレイにインスパイアされて、1年後にEffort Cristalが大剣によるシンクロプレイを完成させてトップハンターに上りつめたのは有名な話だ(顛末は拙著『本日もニャンと! 逆鱗日和』に収録)。
そんな伝説のハンター・Jast25`sに会うために、俺は長崎県に赴いた。『本日もニャンと! 逆鱗日和』の発売を記念して行った”地方出張狩猟企画”に絡めて彼らと会い、ふたりの人となりからモンハンフェスタにかける思いまでを掘り起こしたいなと思ったのだ。もともと俺は、Jast25`sのふたりとはイベントで顔を合わせるたびに『モンハン』論を語り合う”狩り仲間”のような関係だったが、じっくりと腰をすえてインタビューすることは一度もなかった。それが、今年のモンハンフェスタで頂点を争ったもうゲネポとEffort Cristalに出会い、彼らの情熱とひたむきさを知って、俺の中の(Jast25`sにも話を聞いてみたい!)という気持ちは大きく膨れ上がった。ディフェンディングチャンピオンとして大会に臨み、敗れ去ったいまだからこそ、さらに彼らの人間性に踏み込んで話が聞けるのではなかろうか? そう思ったら居ても立ってもいられなくなって、俺は長崎へ向かう機上の人となったというわけだ。
というわけでこれから数日に渡って、”あるハンターの栄光と挫折と再生 〜Jast25's物語〜”と題したドキュメンタリーを連載します。彼らと会って話を聞くまで、通常の一問一答形式のインタビュー記事にしようかと思っていたのですが、ドラマチックで情熱的な彼らの歩みに心打たれ、久しぶりにドキュメンタリーとして記事にまとめたいなと思ったのです。かなりの長文を覚悟して(笑)、ぜひ読み進めてみてください。
◆◆◆
「あれ? なにそのゲーム。おもしろそうやな」
koheiが久しぶりに故郷である長崎県松浦市に帰省し、小学校時代からの腐れ縁であるravenのもとを訪れると、親友は真剣な表情でPSP(プレイステーション・ポータブル)の画面に見入っていた。”楽しそう”というより、どちらかというと苦悶の表情で。ravenは、画面を覗き込むkoheiに向かって、ため息とともに言葉を吐き出した。
「クックが、狩れん……」
クック? クックって、なんだ? 言われたkoheiはわけがわからぬまま、親友を圧倒しているゲームの画面をさらにじっくりと覗き込む。見ると巨大な鳥のようなモンスターが、ravenが操っていると思われる人間を弄ぶように啄ばみまくっていた。まもなく、ravenの分身が天に召されたメッセージが画面に流れる。それが、Jast25`sのkoheiが『モンスターハンター』シリーズに最初に出会った瞬間だった。
イャンクックに打ちのめされたravenの説明によると、このゲームは『モンスターハンターポータブル』というタイトルで、いま、密かなブームになっているという。巨大なモンスターを狩り、狩ったモンスターから得た素材をもとにいろいろな武器、防具を作って、再び狩場に飛び出していく……というアクションゲームの王道的な作品で、顔を突き合わせて4人まで協力プレイができるという手軽さがウケているらしい。koheiは不思議と、このゲームに心惹かれた。(自分もやってみたい!)と、出会った瞬間に思った。
それからひと月ほどが経過し、再び松浦市に帰省してきたkoheiの手には真新しいPSPが握られていた。中に入っているソフトはもちろん、『モンスターハンターポータブル』。ファーストインプレッションで得た(おもしろそう!)という予感はものの見事に的中し、彼は瞬時にこのゲームの虜となっていた。
そして同じころ、ravenもイャンクックの壁を乗り越えてリオレウスを狩れるまでに成長していた。これを、『ポータブル』を遊び始めたばかりというkoheiに見せてやろう。きっとkoheiは、クックあたりで挫折しているはずだ。驚くぞ。わくわくしながら、ひと月ぶりに親友に会うと……。
「驚いたことに、koheiのほうが圧倒的にうまくなっていたんですよ……。彼は片手剣専門だったんですが、モンスターにピタリと張り付いて華麗に立ち回っているんです。驚くと同時に、悔しくて。”負けてられん!”って奮起して、僕も本気でこのゲームに取り組むようになったんです」(raven)
それからというもの、ふたりはkoheiが帰省してくると必ずPSPを持って落ち合い、お互いのプレイを見せ合ったり、協力プレイをして遊ぶようになった。しかし当時はまだ「きちんと狩れて、それなりの素材が出ればいいや、っていう遊びかたでした」とkoheiが語るように、彼らがモンハンフェスタの決勝で見せたような”理詰め『モンハン』”は萌芽していない。すべてが始まるのは、あるときkoheiが持ってきた”とある情報”からだった。koheiはいつものようにravenと落ち合ったとき、本当になんとなく、つぎのように打診した。
「”モンハンフェスタ”っていうイベントが開かれるらしくて、そこでふたりひと組のタイムアタック大会があるんだって。ウチらふたりで、出てみない?」
本当にふつうに、「楽しければいい!」というスタンスで『モンハン』に向き合っていたravenにとって、koheiの提案は寝耳に水だった。このゲームで、タイムアタック? そんなこと、いままで一度も考えたことないぞ……。それにkoheiのように、自分はたいして上手じゃないし……。
しかし戸惑うravenとは裏腹に、koheiにはある種の確信があった。(ravenとだったら、本気でタイムアタックに挑めるはずだ)と。その裏づけは、ふたりの『モンハン』に対するスタンスにあった。
ふたりの『モンハン』をプレイするときの絶対的な方針として、”すべてのクエストを1回は必ずソロでクリアーする”というものがある。でもこれ、ふたりで申し合わせて決めたものではなく、お互いが心の内で思い、温めていたもので、口にして相手に伝えることはなかったそうだ。それがあるとき、どちらからともなく「必ず1回は全部のクエをソロでクリアーするんだ」と話したところ、「え? おまえも?」となり、知らぬうちに心がシンクロしていたことを笑い、同時にうれしく思ったのだという。koheiは、親友のravenがハンターとして同じ思いを共有していると知っていたので、ふたりひと組で大会に出ることに思いを馳せたとき、隣にいるのはravenしかいないと思ったそうだ。
そして25歳(当時)の幼馴染コンビ”Jast25`s”は誕生した。九州各地から手練のハンターがやってくる大会を勝ち抜けるとは思えなかったが、出ると決めた以上、やれるだけのことはやってみよう。熱血漢であるkoheiが牽引する形で、Jast25`sは”ゲームアスリート”としての道を歩み始めた。
モンハンフェスタ2007の地区予選の種目は、イャンクック討伐だった。これにJast25`sのふたりは、片手剣(kohei)、ハンマー(raven)という武器で挑んでいる。「かなり練習を積んだ」(raven)とのことだったが、この武器の選択にしても立ち回りにしても、「自分たちのいちばん得意な武器で、ただガムシャラに斬り込んでいただけ」(kohei)だというから驚く。モンスターの動きを研究し尽くして詰め将棋を詰めていくJast25`sらしい立ち回りは、この段階でもまだ、生まれていないというのだ。たとえば落とし穴にモンスターが落ちたとき、いまのJast25`sだったら「どのタイミングで武器を振れば頭に攻撃が当たるのかを考える」そうだが、当時のふたりは「落とし穴に落ちたのを見て喜んで、ただただ攻撃ボタンを連打していた」と苦笑する。実際に福岡大会の予選でも、「落とし穴に落ちたモンスターがハンマーの攻撃でスタンしたのを見て”奇跡が起きた!”って叫んでいました(苦笑)」とraven。しかしこの”奇跡”によって、Jast25`sは予選1位で福岡大会の決勝ステージまで上りつめた。
しかし、困ったことになった。まさか自分たちが決勝ステージに残れるなんて1ミリも想像していなかったので、決勝の種目であるティガレックス討伐の練習がまったくできていない。武器の選択も「なんとなく……」という頼りない理由で片手剣と弓に設定していたが、戦術の青写真はまったくできていなかった。「エライことになった」とふたりは顔を見合わせた。
でもいつまでも「困った困った」と言っていても始まらない。決勝ステージが始まるまでの2時間を練習に充てて、なんとか活路を見いだすしかないだろう。ふたりは焦りながら会場の片隅に陣取り、必死になって練習を始めたが、これまでの蓄積がまったくないので確信を持てる立ち回りがどうしてもできなかった。
そこに、見知らぬふたりのハンターが通りかかった。彼らはJast25`sが決勝に残ったのを知っていてそれを激励する意味で声をかけてきたようだったが、Jast25`sのティガレックスタイムアタックのベストタイムを聞いて、「え……。それ、かなり遅くないですか?」と困惑の表情を浮かべたという。実際、見知らぬふたりのベストタイムを見せてもらうと、自分たちが片手剣・弓のコンビで出したタイムより1分以上速いタイムが刻まれているではないか。Jast25`sは驚いた。そして、「やっぱりエライことになった!」とあたふたと右往左往した。
そんなJast25`sを眺めていた見知らぬふたりは苦笑いを浮かべながらも、まるで夢破れた自分たちの思いを託すようにこんな提案をしてきた。
「僕らの立ち回りを、教えますよ」
見知らぬふたりが選択した武器は、片手剣・片手剣だった。片手剣をメイン武器としていたkoheiは問題なかったが、ハンマーオンリーで『モンハン』に向き合ってきたravenはなんとそれまで、片手剣を使ったことが一度もなかったという。自分たちの脆弱な戦術を選ぶのか、速いのはわかっていながらも慣れない武器を使うことになる新たな戦術を選ぶのか。究極の選択を迫られた形になったが、Jast25`sは”新たな戦術”を選んだ。しかし、わずか2時間足らずの練習で片手剣の立ち回りを完璧に身につけることなどできるものでもない。そこで、ravenは考えた。(これまでの蓄積を、利用してやろう)と。
「このゲームをやり込んでいる方だったらわかったと思いますけど、福岡大会での僕の動き、片手剣を持っていながら完全にハンマーの立ち回りなんです。ハンマーの動きを、片手剣に置き換えただけ。なので狙いはすべてティガの頭で、ハンマーだったらスタンプをするところを、ジャンプ斬り→斬り上げ→回転斬りとつなげているんです」(raven)
それでも、納得のいく動きは最後までできなかった。見知らぬハンターに教えてもらった立ち回りは、半分も実践できていないだろう。Jast25`sは不安だけを抱えて、福岡大会の決勝ステージに上った。
しかし不安とは裏腹に、ravenはティガレックスの攻撃をほとんど食らわなかった。閃光玉を投げるタイミングも爆弾を置くタイミングも、完全に教えられたとおり。「奇跡だ!」と、koheiは相棒の立ち回りを見て心の中で叫んでいた。
そしてティガレックスはあっと言う間に脚を引きずり、隣のエリアに逃げようとし始めた。ここで逃がしてしまうと、とんでもないタイムロスになってしまう。koheiは逃げるティガレックスの脚元に駆け寄り、片手剣でザクザクと斬り刻んだ。この攻撃を嫌がって、ドゥ! と雪原に倒れ伏すティガレックス。その直後、画面には”目的を達成しました−−”の文字が躍ったではないか! かなり速いタイムが出たはずだ。その証拠に、スクリーンを凝視していた観衆から、怒号とも言える歓声が上がっている。それを聞いたJast25`sのふたりは、いままで感じたことのない高揚感と充実感が心を満たすのを感じていた。「なんて気持ちいいんだ!!」と、自分たちに浴びせられる喝采に酔いしれた。
けっきょくJast25`sは福岡大会2位となり、全国大会への切符を掴む。しかしこの結果を受けたふたりはさらに有頂天になった……のではなく、まったく違う気持ちに苛まれていた。本来ならばもっと喜んでいてもよかった場面でふたりを襲ったのは、とんでもない”重圧”と”責任感”だった。koheiが、このときの心境を振り返る。
「僕らよりももっともっと突き詰めて練習してきたチームって、たくさんあったと思うんです。でも結果、そんな人たちを差し置いて僕らが全国に行くことになった……。その人たちに対して恥ずかしくないプレイをするには、一生懸命練習するしかないじゃないですか? 全国へ行くことが決まった瞬間に、僕らの中で何かが変わったんです」
これが、これ以上ないくらいモンスターと立ち回りを突き詰める、Jast25`sの”詰め将棋プレイ”が産声を上げた瞬間だった。
次回に続く
※モンスターハンターフェスタ`07福岡大会の模様、動画はこちらから!
※『サヨナラ! 逆鱗日和』最新情報※
11月20日に発売される拙著『モンスターハンタープレイ日記 本日もサヨナラ! 逆鱗日和』の発売を記念して、11月23日(日)にイベントを行います! 詳細は追って発表しますが、今回のイベントに参加したいと思ってくれた皆様は、本日よりアップする”Jast25's物語”と、 ”もうゲネポ”インタビュー、そして『ニャンと! 逆鱗日和』に収録されている”Effort Cristal”インタビューを熟読すると吉! っていうか、そのほうが絶対に楽しめます!! なんか謎めいていますが、ホントにそうなのでぜひぜひ読んでおいてください。ちなみに『サヨナラ! 逆鱗日和』イベントは招待制で、応募方法については11月7日発売の週刊ファミ通(大塚角満のモンハン研究所のコーナー)と、同日アップ予定の本ブログでご確認ください!
※お知らせ※
現在、週刊ファミ通のwebサイト”ファミweb”にて、”俺たちモンハン族”という企画記事が展開されています。興味のある方は、ぜひぜひ。ちなみに、ファミwebを閲覧するには会員登録が必要ですので、トップページの注意事項をよく読んでくださいね。入れたら”俺たちモンハン族”のアイコンがあるので、そちらをクリックして入ってくださいね〜。
大塚角満
週刊ファミ通副編集長にして、ファミ通グループのニュース担当責任者。群馬県出身。現在、週刊ファミ通誌上で“大塚角満のモンハン研究所”というコラムを連載中。そこら中に書き散らした『モンハン』がらみのエッセイをまとめた単行本『本日も逆鱗日和』シリーズ(4巻)が発売中。また、そこからのスピンオフとして別の視点から『モンハン』の魅力に迫る書き下ろし作品『別冊『逆鱗日和』 角満式モンハン学』シリーズも。このブログではさまざまなゲーム関連の話題を扱うつもり。一応、そのつもり。
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