« 【MHP 2nd G】第123回 テオ物語 最終章 | 大塚角満の ゲームを“読む!”のホーム | 【MHP 2nd G】第125回 ”静”から”動”へ »【MHP 2nd G】第124回 武神の名のもとに 最終章2008年10月17日挑戦回数が27回を過ぎたころから、数を数えるのをやめてしまった。積み重なっていく数字が「またクリアーできなかった……」、「もう無理かもしれない……」といういらぬプレッシャーに変換されて、隙あらば俺と江野本を押しつぶそうとしたからだ。 とは言いつつも、俺たちは楽しかった。失敗はくり返していたが、必ず1回、1回のクエストから新しい発見を持ち帰って、つぎのチャレンジへ組み込むことができたから。「つぎは落とし穴に落ちたら睡眠弾を撃ちます!」、「ティガには閃光玉は3発まで使って大丈夫そうだ!」などなど、歩みは遅いながらも確実に前に進めている実感を得ることができたので、俺と江野本がめげることはなかった。「つぎはもっと詰められる!!」。これが、武神闘宴に挑み続けているときの、俺たちの合言葉になった。 挑戦回数が30回を越えたころ、江野本が誤ってデータをセーブしてしまった。キッチンスキル”ネコの火薬術”が発動したところでセーブしておき、クエストに失敗したらリセットする作戦だったのだが、間違えてクエストが失敗したところで上書きしてしまったのである。江野本のキッチンアイルーからは奇跡のような確率でしか発動しないスキルなだけに、俺たちの落胆は大きかった。そして思ったとおり何度ネコメシを食べても、江野本の分身にネコの火薬術が発動することはなかった。 ところがある瞬間に、江野本のキャラに”ネコの調合術[大]”が発動した。調合確率が上がるこのスキルがあれば、調合書を1冊減らすことができる。そのぶん、アイテムポーチに1枠の空きができるので、ネコの火薬術が発動したときよりも有利な戦局に導けるものを、クエストに持ち込めるかもしれない。 俺たちは考えた。江野本の武器はライトボウガンなので、強力な弾丸を追加で持ち込むのも悪くない。トラップツールをふたつ持って、罠を増やすこともできるぞ。……でも、なぜかしっくりこなかった。何かを見落としてはいないか? もっと冷静に、俯瞰して自分たちの持ち込みアイテムを見直したほうがいいのではないか。そんなとき、江野本が言った。 「大塚さんのキャラは、火薬術が発動しているんですよね? それをもっと有効に使えないのかな?」 あ……。そうだ!! その手があった!! 俺は「がおおお!!」と一発気合を入れて吠え、勢い込んで江野本に言った。 「えのっち! 1枠空いたところに”大タル”を入れてくれ! 俺も切り詰めて1枠空けて”爆薬”を持っていく! そうすれば大タル爆弾Gを10個も追加できるんだよ!」 江野本は躍り上がった。 「それ、ものすごい火力アップですよっ!! それでいきましょう!!」 そして挑んだ30数回目。俺たちの作戦はついに、大将・ラージャンを追い詰めるところにまで極まった。序盤から遠慮なく大タル爆弾Gを使いまくり、ナルガクルガを44分残し、ティガレックスを34分30秒残し、グラビモス亜種を24分残し、ディアブロス亜種を13分30秒残しで退けることに成功。必要十分と思われる時間を残して、最後のラージャンの前に立つことができたのだ。「これでいける!!」と俺と江野本は力強くうなずき合った。 ところが、それでも俺たちに勝利の女神は微笑まなかった。ラージャンが激昂すること4回。捕獲用麻酔玉があれば、余裕で捕獲できるところまでラージャンの体力を減らせていたと思う。しかし、無情にも時間切れ。もしかしたらあとひと突き、あと1発の弾丸が当たっていればクリアーできたかもしれない……。時間はすでに、深夜3時過ぎになっていた。俺たちは深くうなだれながら「明日、なんとかしたいな……」と言って、人もまばらになった編集部をあとにした。 そして失意を胸に抱いたまま、俺と江野本はある人物と対面した。芸能界随一のハンター、次長課長の井上聡さんである。『2nd G』のプレイ時間はとっくに1000時間を超え、この武神闘宴も単独クリアーを成し遂げている”『モンスターハンター』の求道者”は、情熱に満ちた目で「僕なんて、まだまだです。もっともっと突き詰めて、自分の限界を知りたいんです」と熱い口調で語った。真剣極まるアスリートの言葉に、俺と江野本が刺激されないわけがなかった。 その夜、俺と江野本は強烈な決意を持って顔を合わせた。手にはもちろん、PSP。静かに電源を入れながら、俺は江野本に言った。 「えのっち、必ず今日、クリアーするぞ」 気合が入りすぎたためかちょっと目を潤ませながら、江野本が力強く頷いた。 「はい。井上さんの言葉を聞いた今日、絶対にクリアーしたいですもんね!!」 そして始まった何度目かもわからぬチャレンジ。失敗をくり返し、何度も何度もチャレンジしたからこそ得ることができたスムーズな立ち回りで、俺たちは最初のナルガクルガを翻弄した。そして開始8分。討伐。回復薬も、ほとんど使用していない。 2頭目のティガレックス。じつはこのモンスターが、武神闘宴の序盤の山なのだ。防御力の低いガンナーの江野本は、ティガレックスの怒り攻撃をくらうと、体力が満タンでもほぼ確実に息の根を止められてしまうのである。なるべく、最後のラージャンまではオチないで行きたい。そのためには、1秒でも速く危険なこのモンスターを屠り去る必要があった。 俺たちは会話も交わさぬまま、アイコンタクトだけでいつもどおりの動きをした。30回以上同じ作戦で臨んでいるのだ。言葉などなくとも、お互いがやるべきことはすっかり刷り込み済みなのである。まず江野本が、ティガレックスが登場するときの着地地点に落とし穴を設置。ここに、ふたりして4個の大タル爆弾Gを並べる。首尾よく、俺たちの落とし穴に落下してきたティガレックス。ガンランスの怒りを固めたような竜撃砲という名の凶暴な火の玉と、大タル爆弾Gの巨大な爆炎がティガレックスの全身を包み込む。それを合図に、江野本は睡眠弾を連続発射。俺は江野本の弾丸が当たらない位置に大タル爆弾をふたつ、風のような勢いで並べた。もちろん、ネコの火薬術が発動しているから大タル爆弾は自動的に大タル爆弾Gとなる。俺が2個の爆弾を並べ終わるのと同時に、江野本の睡眠弾でティガレックスは深い眠りの世界へ。俺、「起きろ!!」とばかりにガンランスの砲撃でこれを起爆し、ティガレックスに大ダメージを与える。さらに、落とし穴からティガレックスが飛び出すまえに1個の大タル爆弾Gを轟竜にお見舞いする。大成功だ。序盤で与えられ得る、最大のダメージをティガに刷り込むことができたぞ!! そして32分を残して、ティガレックスは闘技場の土となった。惜しくも江野本が1オチを計上したが、俺たちはまったく落ち込まなかった。「絶対にこの回でクリアーする!」という決意が、落ち込むことを許さなかったのだ。 勢いに乗って、グラビモス亜種、ディアブロス亜種を難なく撃破。大将・激昂ラージャンに残せた時間は……12分30秒だ。14分残しても、歯が立たないこともあった。1オチもしていなくても、ラージャンで3オチしたこともあった。でも、今回は違う。30数回失敗してようやく、俺たちはラージャン用の作戦も携えた状態で、怒れる牙獣王の前に立つことができるのである。俺は江野本に言った。「今度こそ決着つけよう!!」と。江野本も元気に応えた。「はい! ラージャンを撃破して、井上さんに報告しましょう!」。 そして始まった最後の決戦。終わったあとにどちらが立っていたのだとしても、この日はこれが最終クエストと決めていた。 俺と江野本はラージャンがこちらに気づくまえに、闘技場に落とし穴とシビレ罠を設置。罠が設置されたのを見届けてから、ガンランスの武器出し攻撃と砲撃で会戦の銅鑼を鳴らした。プライドの高い牙獣の王は俺の狼藉を許さず、丸太のような腕をブンブンと振り回してくる。そんなラージャンに向かって、江野本はシビレ罠の向こうから麻痺弾をボンボンボン……。これに気づいたラージャンが突進し、首尾よくシビレ罠にかかったところで、俺は素早く大タル爆弾G2個を鼻っ面に設置した。そしてこのときのために溜め込んでいた竜撃砲を、爆弾の炎とともにラージャンにプレゼント。いいぞ。作戦どおりだ!! このあと、俺たちの攻撃に怒り心頭に発したラージャンが予想よりも遥かに速い時間で激昂。無残にも落とし穴を壊されてしまう。しかし、俺たちはめげない。「激昂が解けたら、もう1個落とし穴行くから!」と俺が言えば、江野本は「シビレ罠を設置したのでハマったら爆弾お願いします!!」と元気に告げる。大将のラージャンを屠り去るために30数回の失敗の末にたどり着いた”罠+爆弾”作戦を完遂するために、俺と江野本は大闘技場の中をドタドタと走り続けた。 しかし、時は無情に過ぎてゆく。もうずっと昔に、画面上に「残り時間5分」の表示が流れた気がした。左上にある時計も、いつのまにか真っ赤になってしまっている。もう、残り時間は1分を切っているのかもしれない。でもこのラージャン、まだ3回しか激昂していないよ……。焦りに満ちた早口で、江野本が言う。 「大塚さん! もしかしたらもう1回、麻痺弾で麻痺するかもだから、麻痺弾撃ちます! 麻痺ってくれたら、残りの爆弾をお見舞いしてください!」 確かに、俺はまだ大タル爆弾Gを2個も残していた。こいつをもっと速く使うことができていたら、クリアーしていたのかもしれないのに……。俺は江野本を上回る早口で「うん、わかった!」と返事をしながらも、そんなチャンスは巡ってこないだろうな……と思っていた。もう余計なことは考えず、時間の限り攻めるしかない。武神のようなラージャンの攻撃で俺の体力は3分の1ほどにまで減っていたが、回復薬を飲んでいる時間も惜しかった。俺はそのままの体力で、猛り狂う武神に突っ込んで行く。それを見て江野本が「大塚さん!! 回復してくださいっ!!」と悲鳴を上げるも、もう時間がないのだ。俺は江野本に向かって怒鳴った。「時間がねえんだよ!! 回復するヒマがあったら、一撃でも多く攻撃を食らわせないと!」。しかし江野本は1歩も引かず、怒った口調でこう叫んだ。 「危ないよぉ!! あっしが麻痺らせますから!! オチちゃダメ!!」 俺を助けようとして江野本が放った麻痺弾レベル2の黄色の帯が、激昂するラージャンの身体に着弾したことを俺に教えた。そしてその瞬間、視点操作もしていないのにカメラが勝手に俯瞰視点になり、崩れ落ちていく牙獣の王の身体を映し出した。ポカンとする俺と江野本。そんなふたりのPSPの画面には、「目的を達成しました−−」の文字が流れた。江野本が呆然とした表情のまま、震える声でささやく。 「えっと……。これは、大塚さんが、オチたの? なんでカメラが、切り替わったの……?」 刹那、俺も完全に思考が停止して何が起こったのかわからなかったのだが、俺の分身は元気に、闘技場にたたずんでいる。そしてそのうしろに、動かなくなったラージャンの亡骸。と、いうことは……!!! 俺は喉も割けよとばかりに大声でわめいた。 「ええええのっち!!!! やったんだよ!!! クリアーしたんだよ俺たち!!」 呆然としていた江野本、俺の絶叫でようやく現実世界に戻ってきたのか瞬時に顔を紅潮させ、俺以上の大きな声で快哉を叫んだ。 「ホントに!? クリアーできたの!!? わーいわーい!! やったやったーーーー!!! やったんですね、あっしたち!! ついにこのクエストを制覇してやったんですねっ!!」 2008年10月15日26時30分。武神闘宴、クリアー。残り時間、わずか36秒の激闘だった。 すぐに俺は次長課長の井上さんに連絡し、武神闘宴をクリアーしたことを報告した。まもなく返ってきた『モンハン』求道者からの返事には、こんなことが書かれていた。 「おめでとうございます! ……でも大塚さん、本当の狩りは、これからですよ」 井上さんの言うとおり、モンスターハンターをクリアーしたときに感じた「これが始まりなんだよな」という思いは、武神闘宴を乗り越えたいま、より強く感じるようになった。 そう。 『モンスターハンターポータブル 2nd G』の旅は、まだ始まったばかりなのだ。今日もガンランスを片手に、フィールドを駆け巡るぞー! <完> 投稿者 otsuka-eb : 2008年10月17日 00:02 |






