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【MHP 2nd G】第117回 寝るな!!

 よくあるお話。

 とある深夜。仕事帰りにひとりで行きつけのバーの扉をくぐり、うまい生ビールをグビグビと飲んでいた。この当時はまだ最凶クエスト”モンスターハンター”へのチャレンジを始めるまえで、俺の『2nd G』ライフはじつに牧歌的な空気が満ちていたのである。

 このころの俺が没頭していたのは、未クリアーとなっていた集会所の下位や上位のクエストをこなすことと、G級のイャンガルルガを狩ること。もちろん、ガルルガを追い回していたのにはキチンとした理由がある。じつは俺、昔からディアブロZシリーズのデザインが大好きで、「ハンターライフに余裕ができたら絶対にひと揃いは欲しい」と思い、『2nd G』においても作れる部位から防具を作っていたのである。ところが、G級ディアブロス亜種のレア素材のひとつである”堅牢な黒巻き角”がなかなか集まってくれない。「だったら何度でもトライすりゃいいじゃんか」と言われちゃいそうだが、G級のディアブロス亜種と言ったらアナタ、タフさ、攻撃力、存在感などをひっくるめた”総合力”では、『2nd G』に登場するモンスターの中でベスト5には入ると思われる強豪中の強豪ではないですか! こやつを相手にすると俺の腕とガンランスでは絶対に討伐するのに40分以上かかり、しかも前述のとおり堅牢な黒巻き角はレア素材なので、そんだけ時間と労力を費やしても手に入る可能性ははなはだ心許ない。……まあ要するにG級のディアブロス亜種は「ひとりじゃ極力相手にしたくない」って思えるモンスターなわけですよ。

 で。

 そこで登場するのがG級のイャンガルルガなのです。

 G級イャンガルルガの素材から作る”ガルルガX”シリーズが持つスキル系統は、じつはディアブロZシリーズが持つそれと酷似している。どちらもスキル”斬れ味”と”聴覚保護”を持っているので(部位によってはないものもあるが)、うまい具合に組み合わせるとマイナススキルを消したうえでこれらの優秀なスキルを発動させることが可能なのである。本当はディアブロZシリーズで全身を固めたいところなのだが、どうにもこうにもひとりやふたりでG級ディアブロス亜種を狩るのがツライので、「もうこの際、ガルルガで手を打とう!!」と日和ったわけである。

 でもだからと言って、G級のイャンガルルガが御しやすい相手かというとそんなことはまるでない。G級ディアブロス亜種とG級イャンガルルガを並べて「サァ、好きなほうと戯れていいよ!」と言われたら、きっちり3分は悩んでしまうくらいG級イャンガルルガは手強い。でも3分悩んだ末に「うん……、まぁ、どっちか選べって言われたら、やっぱ、ガルルガかな……。ディアは潜るしタフだし……。ガルルガは吠えるし、凶暴だけど、それでもディアよりマシなんかな……」ってことでG級イャンガルルガを選ぶわけです。もう、苦渋の選択。ドスランポスあたりの防具にディアブロZと同じスキル系統がついていればいいのに……と思ったりもするが、そうすると青い装備のハンターで村が溢れかえることになるからそういうわけにもいきませんね。

 で、ようやくこの話の舞台は冒頭のバーに戻り、核心に入り始める。つまり、いままでダラダラ書いてきたことは、ただの導入部分ってわけだ。はっきり言って、核心のほうが短いです(苦笑)。

 バーに入って行ったとき、客は俺ひとりだった。いつもの席に腰をかけ、うまい生ビールを飲みながらマスターと四方山話をする。話題の中心はもちろん『モンハン』だ。俺はビールで喉を潤しながらマスターに言った。「いまガルルガ狩りに凝ってるんだけど、マスター、手伝わない?」と。これを受けたマスター、「それって、G級のガルルガのことですよね……?」と一瞬顔を曇らせるもすぐに目を見開き、「試したい武器があるので、お供します」とじつに頼もしいセリフを吐いた。

 集会所で待っていると、片手剣を携えたマスターのキャラがヨチヨチと現れた。この人は一応、俺の一番弟子なのでメインで使う武器はガンランスとなっている。片手剣を使うなんて、じつに珍しい。俺は言った。「マスター、片手剣使えんの?」と。マスターはひと言、「まったく使ったことありません」と言い、ニヤリと笑った。

 マスターが持ってきた片手剣は”ハイガノススパイク”だった。そう、睡眠属性の片手剣である。自慢げにマスターは言った。「がんがん眠らせるので、竜撃砲で丸焼きにしてやってください!」。俺、有頂天で「おお! いいねいいね!! 頼もしいね!!」とツバを飛ばしまくった。

 イャンガルルガは、それはそれはよく眠った。さすが、属性攻撃に長けた片手剣である。マスター自慢のハイガノススパイクから睡眠のエフェクトが飛び散るたびに、屈強なG級イャンガルルガのヒザが「カックン」と折れる。眠っているあいだは、言ってみればやりたい放題だ。イャンガルルガのヒザが折れるたびに、俺は心の中で(いける!)と快哉を叫んでいた。

 しかしやはり、マスターは片手剣使いではなかったようだ。睡眠攻めのときにやってしまいがちな”あのミス”を、くり返しくり返し、俺の目の前で展開してみせたのである。要するに、こんな感じ。

マスター 「よし寝た!! わあ、自分で起こした!!

 3分後。

マスター 「また寝た!! ……わあ! また自分で起こした!!

 5分後。

マスター 「ま、また寝た!! ……ま、また自分で起こした!!!
  
 さらに5分後。

マスター 「ままま、また寝た!! ……ま、また自分で起こしちゃった!!!

 呆れて俺は叫んだ。

 「このバー、居眠り禁止なんか!!!」

 けっきょく睡眠の恩恵をまるで受けぬまま、俺たちは力技でイャンガルルガを討伐し、半ばぐったりしながら村へ帰ってきた。やはりひとつの武器に長じるには、それなりの時間と努力を費やさないといけないんだなということを、俺はこのクエストを通じて思い知った次第だ。

 その特性を活かせずただの短い剣を振り回していたマスターは、小さな声でこんなことを言った。

 「片手剣の、奥は深い……」

投稿者 大塚角満 : 14:40

大塚角満

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週刊ファミ通副編集長にして、ファミ通グループのニュース担当責任者。群馬県出身。現在、週刊ファミ通誌上で“大塚角満のモンハン研究所”というコラムを連載中。そこら中に書き散らした『モンハン』がらみのエッセイをまとめた単行本『本日も逆鱗日和』シリーズ(4巻)が発売中。また、そこからのスピンオフとして別の視点から『モンハン』の魅力に迫る書き下ろし作品『別冊『逆鱗日和』 角満式モンハン学』シリーズも。このブログではさまざまなゲーム関連の話題を扱うつもり。一応、そのつもり。


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