【MHP 2nd G】第119回 角満出張狩猟企画・下関編 その2
クマさんが運転するクルマに乗り込んで、北九州空港から下関市を目指す。山口県に足を踏み入れるのは、俺も江野本も今回が初めて。やっぱり行ったことのない土地の空気に触れることは、ドキドキワクワクと心躍るものがあるね。前回の佐賀県も長崎県も初上陸の地だったが、見たことない景色や土地の言葉、珍しい食べ物や独特な風習なんかに触れると、もうそれだけで「今回の企画を立てて本当によかったっ!!!」となってしまいますねぇ。
クマさんカーは苅田北九州空港インターチェンジから九州自動車道に入り、一路、関門海峡を目指す。本州と九州を結ぶ要所、関門海峡は、幾多の歴史の舞台となってきた文化と文明、栄華と終焉が折り重なる場所で、源氏と平家が最後の決戦をくり広げた壇ノ浦、武蔵と小次郎が決闘したという巌流島もここ、関門海峡にある。昭和33年に、関門海峡をくぐるトンネル、関門トンネルが開通。なんと歩行者も通れる海底トンネルとなっている。海の下を歩いて通るという行為にかなり心惹かれたが、我々は海峡の上にかかる雄大な橋、関門橋を渡って下関市に入った。まずは観光がてら、関門橋のたもとにある”みもすそ川公園”で休憩。ここは前述の源平合戦の古戦場であるとともに、幕末時代の下関戦争で長州藩が外国船に砲撃した舞台でもある。そのときに使われたものと同じ形の長州砲のレプリカも置かれていて、見ているだけでキュっと引き締まった気持ちにさせられる。

▲関門海峡の脇にある”みもすそ川公園”にある源義経と平智盛の像。
「帰りに、壇ノ浦のほうに寄ってみましょうか」
とクマさん。クルマの中でもそうだったが、クマさんもKEIさんも本当に誇らしげに、下関や関門海峡の歴史を話して聞かせてくれた。じつは今回の出張企画でもっとも印象的だったのが、会った人すべてが、自分の住む土地の景観や歴史をきちんとリスペクトしていて、それを外部からきた俺たちに誇りを持って紹介してくれたことだ。「本当に田舎で、何もないところなんですよー」と言いながらも「ここはこういう土地です」、「こんなものがありますー」と話してくれるときの顔は皆一様に輝いていて、とても強烈に俺の中に残った。なので出張から帰ってくるたびに俺と江野本は、「逆に俺たちが故郷に誰かを招いたとき、今回会った人たちのように誇りを持って地元を紹介してまわれるだろうか?」とマジメな顔して話し合っていのだが、残念ながら出てきた答えは「……ちょっと無理かも」という情けないもの。今回のクマさんたちを見習ってキチンとイチから生まれ故郷の歴史や文化を学ばないといけないね……と、俺と江野本は神妙に頷き合ったのであった。

▲これは長州砲。レプリカだが、大迫力。この中のひとつは、音と煙を発する。
関門橋に別れを告げた俺たちが向かった先は、海峡の程近くにある”唐戸市場”という市場である。水産物が豊富な関門地区でもとくに賑わっている市場で、その道のプロだけではなく、一般市民や観光客にも開放されているところなので、安くておいしい海産物を一年中食べることができるというのだ。じつは今回の下関行脚の中で、俺と江野本が最上位クラスに楽しみにしていたのがこの市場(笑)。ふたりとも縁日や出店で買い食いすることが大好きなものだから、クマさんから唐戸市場の情報を聞いたときはそりゃあもううるさかった。「大塚さん!! 下関の市場に連れて行ってくれるそうですよっ!! 海の幸の買い食いができますよっ!! やっべえ!! めっちゃテンション上がる!!」と江野本が言えば、「市場最高!! 来ちまったことを後悔するくらい食いまくるぞ!!」と俺が返す。にわか山岡・栗田コンビはヨダレをたらしながら、「早く行きましょ! 市場いちば!! フグだサバだウニだクジラだっ!!」とわめきまくって、クルマを運転するクマさんを盛んに急かせたのであった。まったく、何をしに下関まで行ってるんだ、って感じではありますがね。

▲いかにも市場な賑わいをみせていた唐戸市場。言うまでもなく、海産物の宝庫だ。あらゆる形に加工されたフク、関門海峡名物のサバやアジ、そしてクジラ……。どれも目が覚めるほどおいしかったっす!
というわけで下関が誇る一大マーケット、唐戸市場にやって参りました!! 休日のお昼時とあってか、ものすごい賑わいである。この混みようを東京近郊の表現で文字にすると、まるで年末のアメ横か、三が日の大宮氷川神社のようである。要するに、1歩歩くごとにゴツゴツと人にぶつかってしまうくらいの混雑で、なかなか商品が並ぶ店の軒先にたどり着けないような状態。それでも俺たちはクマさん、KEIさんの案内で下関自慢の海産物をピックアップし、手当たり次第に買い込んで、市場のフリースペースのテーブルに戦利品を並べた。俺たちが購入した食料は、以下のようなものだ。
・フクのから揚げ(※下関ではフグのことを、縁起を担いで”フク”と言う)
・フクの味噌汁
・フクのコロッケ
・フクの刺身
・握り寿司(大トロ、ウニ、アジ、シメサバ、アナゴ、白子、サーモンなどなど)
・ウニ丼(※下関はウニの名産地でもあるのだ)

▲こんだけ買い込みました。そして、すべて食い尽くしました。しかもこのあと、江野本に白い目で見られながらもハチミツ味のソフトクリームも購入しました。おいしかったです。
これに、「ぜひこれを食べてください!」と、クマさんからクジラのお寿司のおすそ分け。これらをバクバクバクと片っ端から摂取すると自然と……。
「う、うますぎるーーーーーっ!!」
という絶叫が轟くわけです(苦笑)。この、甲乙つけがたい豪華メニューの中で、俺と江野本がふたりして「これがいちばんおいしい!」と意見が一致したのは、なんとクジラのお寿司。これまでの人生でほとんど食べたことがなかった食材だったので(ど、どんな味なんだろう……)と少々ビビっていたのだが、まさかこれほどまでにおいしいとは……。極上の霜降り国産牛の刺身、もしくはトレトレピチピチの最上級中トロの刺身を食っているかのような見事な味わい。意外なまでのおいしさに限界まで目を見開いている俺と江野本を見て、クマさんは満足そうに「うんうん」と頷いたのだった。
さて、予想どおりこの市場に来たことを激しく後悔するくらい海産物を過剰摂取した俺たちを乗せて、クマさんカーはこの日のメイン会場である海峡メッセ下関に到着した。ここで、下関&北九州リアル集会所と山口県西部集会所の合同集会による毎月定例の狩猟会が開かれているのだ。前回のコラムでも書いたが、この集会はネットの掲示板を母体に複数存在した山口県の中規模団体と、大手SNSをのモンハンコミュニティーを中心に活動していた下関・北九州地区のモンハンサークルが協力して開催しているものだ。
海峡メッセ下関の会議スペースに歩を進め、クマさんのアナウンスに乗せられて会場入りする俺と江野本。と同時に、室内から割れんばかりの拍手が轟いた。ざっと見たところ、30人ほどのハンターが集まっているようだ。かなりの規模である。3〜4人のパーティーを作って時間ごとにメンバーをシャッフルし、いろんな人と遊べるような仕組みにしているとのこと。8月最後のこの日は午前10時から会議スペースを確保し、8時間から9時間におよぶロングスパンでの狩猟を行っているという。いやはや、並々ならぬ情熱だ。

▲会場の海峡メッセ下関は、こう言ってしまってはナンだが一般のサークルが借りられるとは思えないほど立派な建物だった。運営サイドが手を尽くしてこの会場を借り、さらに参加者がゆったりと楽しめるように飲み物やお菓子も準備していた。合同集会の発起人であるクマさんは「僕が規模を大きくしてたくさんの人と遊べるように動きたい、って言ったとき、相棒のKEIたちが全面的に協力する、って言ってくれたんです。それがなければ、とても実現できませんでした」と語る。身を粉にして縁の下で働く運営チームがあって初めて、こういった立派な集会は開かれているのだ。
さっそく俺たちも、パーティーに混ぜてもらった。クマさんや集会の局長であるルシアーノさんの計らいで、すべてのメンバーと遊べるよう、1クエストをクリアーしたら隣のパーティーに移動できるように手はずが整えられる。俺が最初に加わったパーティーは、女性ふたり、男性ひとりの3人パーティー。聞くと、3人のうちふたりはこの会合に参加するのが初めてで、当然のように初顔合わせであるという。初参加のふたりは普段はソロで狩りをしているのだが、どうしても協力プレイをしたいと思っていろんなところにアンテナを張って、この団体の存在を知ったのだそうだ。
「朝からたっぷり皆さんに遊んでもらって、ハンターランクも上がりました!」
と初参加の女性が言った。その目は、夢が叶った喜びと、協力プレイの楽しさを知った感動でキラキラと輝いている。うんうん。やっぱり楽しいよね、協力プレイ。本当によかったね、こういう元気な団体を見つけられて……。
その後、俺と江野本は9つのパーティーを回った。ちなみに俺がやったクエストはほぼすべて、配信クエストの”覇王烈昂”(笑)。正式配信されたのでいまでは全国のハンターが遊ぶことができるが、俺たちが下関に行った当時はモンハン夏期講習で先行配信されたものしか出回っておらず、当然ながら下関にはこのクエストを持っている人はひとりもいなかった。そこで俺は、1ミリも俺の手柄ではないのだが都会の風を吹かすがごとくふんぞり返って、「ボクね、まだほとんど出回っていないG級アカムトルムのクエストを持ってんの。いっしょに遊ばなぁい?」と自慢たらたら。この会合に来ていた人はほとんどがハンターランク9で、ひととおりの遊びはやり尽くしてしまっている人が多かったから、俺のこの誘いに皆、目を輝かせて食いついてくれた。おかげで俺は『2nd』時代からの合計討伐数よりも多い数のアカムトルムをわずか数時間のうちに狩り尽くすという快挙を成し遂げ、このクエストでだけ得ることができるレア素材”グレートストーン”も20個以上集めることに成功した(笑)。
そして午後6時。参加者の皆さんからいろいろなお土産までいただいて、俺たちは海峡メッセ下関をあとにした。名残惜しく、飛行機の時間ギリギリまで会場に居座ってしまった。
それでも帰り際に、「関門海峡と関門橋がとてもきれいに見えますよ」ということで夕暮れ時の壇ノ浦パーキングエリアに立ち寄った。遠い昔にここから、源氏や平家の武人や、維新の志士たちも同じ黄昏を見ていたのかと考えて、ちょっと胸が締め付けられるような思いに駆られる。そんな俺に向かって、強い目をしたクマさんが熱っぽい声でこんなことを言った。
「今回、大塚さんと江野本さんを我々の会合に招くことができて本当によかった……。地方だってこんなに盛り上がっているんだよ、こういうところにも『モンスターハンター』が大好きな人間がこんなにいるんだよ、ということをどうしても見てほしかったんです。僕ら一般人の力なんて本当に小さいですけど、地道に活動を続けていれば、今日みたいなことも実現できるんですよね。そして大塚さんたちが見たものをどこかで発信してくれれば、それがまた別の力になる。僕らの団体にも、もっともっと人が集まってくれるかもしれませんし」
力強く語るクマさんに、俺は言った。『モンハン』を作っている人たちに、何か伝えたいことはあるかい? と。クマさんはこれを受けて、やさしい口調でこう言った。
「伝えたいことはひとつだけです。”本当にありがとうございます”。それしかないです。僕らがこうやっていろんな人と交流できたり、大塚さんたちに会えたのも、すべて『モンスターハンター』というゲームのおかげですから……。あ、そうだ。伝えてもらうとしたら、”地方でもがんばって『モンハン』を盛り上げていますよー!”ってことでしょうか(笑)。ずっと待ってますから、ぜひまたステキな『モンハン』を作ってもらいたいですね」
俺は『モンハン』制作チームの人間じゃないけど、彼の言葉に強く強く心を撃たれた。ちょっと涙目になってしまったくらいに……。俺はクマさんに対して「うん、そうだよね……」としか言えず、そんなことしか言えない自分に戸惑いながら、隣にいた江野本に小さい声でつぶやいた。
「いますごく、藤岡さんと酒飲みたいわ……」
そんな俺を見て江野本はゆっくりと頷き、夕暮れの関門海峡に向き直りながら歌うようにこう言った。
「はい^^ いろいろ伝えたいんですね、藤岡さんに。……でも本当に、『モンスターハンター』って、すごいなぁ^^」
俺たちのまわりにある、いろいろな『モンスターハンター』の風景。すべてを見たわけではないけれど、今回の出張狩猟企画がなければ絶対に出会えなかった人や団体、家族に触れて、俺がこのゲームをリスペクトする気持ちはさらに強くなった。またいつか機会があったら、いろんなハンターに出会う旅に出てみたい。壇ノ浦の風に吹かれながら、俺は静かに、そう思った。

▲黄昏の壇ノ浦。夕焼けに関門橋がよく映えた。
※大塚角満コラム情報※
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