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大塚角満の ゲームを“読む!”

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【MHP 2nd G】第73回 見極めのできない男

2008年07月16日

 『2nd G』から新たに導入された素敵スキルの中に”捕獲の見極め”がある。ペイントボールをぶつけてあったり、自動マーキングのスキルが発動しているときに、マップに出るモンスターのカーソルが黄色に変化して捕獲可能になったことを知らせてくれるという、親切度で言ったら堂々の第4位くらいには入ると思われる正義の味方のようなスキルだ。

 さて、過去の経験に則して言うと、こういうマジメなことを冒頭に書いて、まともなコラムになったためしがない。なので今回も非常にイヤな予感がするのだが、そういうことを気にし始めると俺のコラムは少なくとも半分以上はボツになると思われるので、そろりそろりと忍び足で本コラムも書き進めてみたい。

 で、問題の捕獲の見極めだが、じつはこんな書き出しにしていながら俺はこいつが発動する防具を持っていない。なので一度として、モンスターのカーソルが黄色くなったところを見たことがない。こういうことを書くと「なんでこんな便利なスキルを使ったことがないのか?」と疑問を呈するベテランハンターが全国に120万人くらい出現しそうだが、俺ほどのベテランになれば捕獲の見極めなどなくとも、ビリビリボンボンキュッキュ(シビレ罠にハメて捕獲用麻酔玉をぶつけて縄でふん縛って捕まえた音)ってな具合にいくらでもモンスターを捕獲できてしまうものなのです。

 そんなある日、逆鱗日和ファミリーの一員であり、7月24日発売の新刊『本日もニャンと! 逆鱗日和』の編集担当、江野本ぎずもと何かのクエストに出かけた。”何か”というのもじつに乱暴な書きかただが、ここではモンスターがナンだったのかは問題ではないので、テキトーに読者の皆さんの頭の中で好きなモンスターを思い浮かべてもらって問題ありません。G級の激昂ラージャンあたりでいいです。ここのところ毎日のように江野本と単行本の打ち合わせをしているのだが、ちょっと頭を休めたくなったときなどに軽くひと狩り行くことにしているのである。このときもまさに、単行本やら7月27日に予定しているサイン会&オフ会について長時間打ち合わせをしていて、ウニのようになってしまった脳ミソを再び人間のそれに戻すために「息抜きにひと狩りやろか……」ってなことになったのだ。

 で、何かのクエストに行ったわけです。狩猟はハンターサイドに有利なまま順調に進み、終盤あたりに差し掛かった。そこで俺は敢然と言い放ったわけです。「ぼちぼちいけそうなので、捕獲っちゃうよ!」と。これを受けた江野本、「え! もう平気なんですか? さすがベテラン、よくわかりますね。お願いします!」と珍しく尊敬の念がこもった口調で明るく言う。俺、すっかり気分をよくしながらモンスターの足元にシビレ罠を設置し、首尾よくこれにハメて、捕獲用麻酔玉をボンボンとモンスターにぶち当てた。

 しかし、捕まらない

 うーん、やっぱりちょっと早かったか。せっかちだからな、俺。でもまあいい。シビレ罠、まだあとふたつあるしな。俺は江野本に「ごめん。ちょっと早かったわ。もう5分ほど斬ったら捕まえよう。もしかしたら討伐しちゃうかもしれないけどな(苦笑)」と伝える。江野本、元気に頷いて「はい! そうしましょう!」と爽やかに言った。

 そして5分後。

 捕獲失敗

 お、おっかしいな……。もうぼちぼちだと思ったんだけどな……。俺、若干蔑みの色を顔に滲ませている江野本に向かって「え、えのっち、シビレ罠持ってきてる?」と確認の言葉を飛ばす。江野本、それでも務めて明るい声を出して「ありますよ、1個だけですけど。設置してよければ合図してくださいね♪」とニッコリ笑う。俺、すぐに元気を取り戻して竜撃砲を1発モンスターにお見舞いしたあと、江野本に向かって大声を出した。「えのっち!! 今度こそいけるぞ!! 罠作れワナつくれ!!」。江野本、いつにない俊敏な動きで華麗にシビレ罠を地面に設置し、「できました!!」とはじけた声を出した。よーし。今度は余裕で捕まるぞ。捕獲用麻酔玉をボンボン……ボン……?

 「ちょっと」と江野本が低い声で言った。「捕まりませんけど」。俺はもう、顔面蒼白である。3回も連続で捕獲時期を見誤るとは……。いったいどうなってんだ……。しかしまだ俺にはシビレ罠がひとつ残されている。これを外さなければいいんだ。終わり良ければすべてヨシ! 俺は軽蔑光線を無遠慮に照射している江野本に向かって声を荒げた。「うるせえ!! まだ罠はある!! これで捕まえればいいんだ!! 文句あっか!!」。

 そして5分後、俺たちは4個目のシビレ罠にモンスターをハメて、内心祈るような気持ちで捕獲用麻酔玉をボンボンとぶつけた。結果……。

 「ちょっとおおお!! 捕まらないじゃないですかーーーっ!! もう、どんだけ見極めが甘いのよーーーっ!!

 江野本、さらにブチ切れる。

 「もう3クエスト連続で同じことやってるじゃないですかあ!!!」

 そう。じつは最近俺は捕獲するための見極めをミスりまくり、まったくモンスターを捕まえられなくなっていたのだ。なので俺は何の反論もできず、江野本のドデカい非難の絶叫を聞きながらひたすら平身低頭で「し、しぃましぇん……」とくり返すばかりであった。

 この”見極めが悪い”という現象、ていうか性癖!? は、いまに始まったことではない。そしてゲーム内に限定される話ではないからたまらない。

 こういう職業だから、会社の机で校正や原稿が回ってくるのを待っているときなどを利用して、オンラインゲームのロビーや街にくり出しては、一般の友だちとチャットに勤しむことがよくある。ゆっくりチャットができるのはたいがい深夜。深夜ともなるとボチボチ仕事の終了が見え始めるころなので、俺は記事に入った修正点や部下が書く記事の質を見極めて、チャット相手にキチンと、会話ができる時間の目処を報告することにしている。「今日はあと30分ほどで仕事が終了するので、そしたらオチるね」てな具合に。こうすればチャット相手も時間のさじ加減ができるようになるので、残っている時間に言いたいことが言えるようになるだろう……という配慮のもとの行動である。10年以上もファミ通で記事を作っているベテラン編集者ともなると、こういったこともできるようになるのだ。その日も俺は「あと30分でオチまーす」と宣言して、チャットのラストスパートに入ったのであります。

 それから3時間

 いまだ仕事終わらず……

 完璧な読みによると、どんだけかかっても1時間もありゃ終了したはずなのに、その3倍の時間を費やしてもまだ、俺は会社の机で仕事が終わるのを待っている。呆然とする俺に向かってチャット仲間たちはニヤニヤ笑いながら、「また今日もはずれたね(ニヤニヤ)」、「いつものことじゃん、読みが外れるのは(ニヤニヤ)」とチクリ。そう……。じつはこうやって仕事が終了する時間をチャット仲間に宣言して、当たった試しがないのである。それでもたとえば、10分とか20分程度ハズすのだったらわかるのだ。ところが俺の場合はそうじゃなくて、2時間とか3時間とか、この世のものじゃない大ハズシをすることがザラにあるのである。

 そして、話はこれでは終わらない。

 以前何度かこのコラムでも書いたが、我が家には2匹のネコがいる。オスネコのミュウとメスネコのアクア。ふだんこいつらは気持ちが悪いほど仲がよくて、寒い冬などはグネグネと絡まりあって暖をとりながら、くーくーと寝息を立てていたりする。

 しかしこやつら、何かの拍子にスイッチが入るととたんに積年の恨みか親の敵か、とにかく相手の存在を消し去らんとするかのような途轍もない大喧嘩をおっ始めるのだが、つい先日、1年ぶりくらいにこの状態になった。そうなると2匹のアホネコは我が家の1階と2階にそれぞれ隔離され、ベルリンの壁のごとき1階と2階のはざまにあるドアの隙間から相手の顔が見えようものなら、「フーッフーッ! ウニャーーーーーッ!!!」ってな具合にいつまでも元気なうなり声を上げるようになるのである。それがつい2、3日まえ、隙間から相手の顔が見えても、2匹のネコがうなり声をあげなくなった。おお、これぞ仲直りの証。俺はマップに映った2匹のネコのカーソルが黄色くなったのを確かに感じ、ベルリンの壁を壊すかのように2匹を隔てていたドアを開放してやった。ところが……。

 「ンギャラギャーーーーッ!!! フニャーーーーッ!!! ギャギャギャーーーッ!!!」

 世紀のアホネコ、怪獣大戦争のような大立ち回りを演じて、再び1階と2階の隔離生活を始めたのであった……。

 つくづく俺は、見極めのできない男……。

投稿者 otsuka-eb : 2008年07月16日 00:00