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【MHP 2nd G】第57回 生臭いカバン

 某週末。モンハン4人衆の一角である藤岡要ディレクター、小嶋慎太郎プランナーとアレやコレやといろいろなことをしてきた。プライベートで。プライベートな出来事なのでコラムにするかわからないが、もしかしたらそのうち、何か書くかもなー。

 でね。

 途中で(どこのだ)藤岡さんと別れ、俺と小嶋さんのふたりは日曜の夕方に東京に戻ってきたわけだが、ここで小嶋さんがじつに魅力的な提案をしてきた。「大塚さん、ちょっとどこかでひと狩りいきませんか?」と。目をギラリと光らせる俺に向かって小嶋さんが続ける。「何人かメンバー集めますので、賑やかにやっちゃいましょう!」。

 さあ狩りだ狩りだ。狩猟の時間だ。小嶋さんは手早く何人かの狩り仲間に連絡を取ってニヤリと笑い、「僕の同期入社組を中心に、5、6人は集まりますよ」と俺に告げる。で、俺と小嶋さんが新宿駅に到着するのを目処にパラパラと狩友が集結し、じっくりと狩りができる狩場へと歩みを進めた。メンバーは、俺、小嶋さん、アリフネさん(男性)、カナさん(女性)、ミトさん(女性)、ギンジさん(男性)。その後、アヤさんという女性が加わり、計7人での狩猟会である。アリフネさん、カナさん、ミトさんはカプコンの人だ。ちなみにカナさんはカプコンのネットショッピングサイト”e-CAPCOM”で”プチカプ!”というブログを連載している”あの”カナさんです。

 狩場に落ち着いて飲み物などを注文して、すぐに我々6人は「ひと狩りいこうぜ!」と合唱した。テキトーにメンバーを決めて、黙々と狩り始める。俺はまず小嶋さん、アリフネさんと組んで、アリフネさんに出ていたG級の緊急クエストのお手伝い。俺は相変わらずのガンランス、小嶋さんとアリフネさんは弓を持って、風船のような巨大古龍を難なく討伐した。

 そして早くもメンバーチェンジ。俺のパーティーから小嶋さんが抜けてギンジさんが加入。小嶋さんは女の子チームに混ざって、どうやらリオレウス希少種、リオレイア希少種の討伐に出向くようである。俺たちはアリフネさんのリクエストでディアブロス亜種2頭討伐クエストに。俺、心の中でG級のディアブロス亜種にビビりまくりながらも、なんとか1オチもせずにこのクエストをクリアーすることに成功。なんとも言えない安堵の空気が、俺たち3人のあいだで流れる。しかしそのとき、狭い狩場にうら若き女性の悲鳴が轟いた。

 「なにこのカバン! 超生臭いよ!

 悲鳴を発したのはカナさんである。ナンダナンダ? 間違えてカバンの中にネコのエサでもぶちまけてしまったのか? 固唾を呑んでカナさんを見つめる男性陣。カナさんが続ける。

 「砥石はどうしたの砥石は!?

 見るとカナさんは、ミトさんのPSPを手に持ち、彼女がクエストに持ち込んだアイテムリストを見て悲鳴を上げたようである。いったい何が、彼女たちのあいだで起きているのだろうか? 我慢しきれずに俺は聞いた。「どどど、どうしたんですか?」。するとカナさんは「よくぞ聞いてくれました!」と端整な顔の表情で語り、つぎのようにまくしたてた。

 「ミトが”砥石”を使ったことがない、って言うんです!」

 む。ミトさんは生粋の太刀使いである。どうやったら砥石を使わずに狩猟できるのだろうか……? 俺が知らないだけで、斬れ味ゲージが全部紫の天上界的な太刀が存在するのか……? 困惑する俺を見ながら、カナさんが続ける。

 「大塚さんが不思議そうな顔をするのもわかります。私も不思議に思っていま、彼女の持ち物を見てみたんです。そしたら……」

 ゴクリ、とツバを飲み込む俺。神妙な顔のまま、カナさんが爆発した。

 「砥石の代わりに”キレアジ”が10匹いるんです!! なんでわざわざキレアジを!? カバンが生臭くなるでしょう!! あなた、女の子なんだから!!」

 俺はゲラゲラゲラと腹を抱えて笑い、生臭いカバンを持ち歩くミトさんに向き直って「なんで砥石を使わないんすか?(笑)」とたずねた。するとミトさんは(なんでみんな、そんなに不思議がるんだろう?)という心の内を隠さないキョトンとした表情のままこんなことを言った。

 「えー。だって砥石って、ポッケ農場でろくに出てこないじゃないですかぁ。キレアジだったら、たくさん釣れるもん

 え。ということはミトさん、砥石を店で購入したことは……。

 「ないよー。だって、お金もったいないじゃないですかあ。ポッケ農場でお魚釣ればいいんだもん

 そういえば俺のまわりには「回復薬を買ったことがない」っていう女性が何人かいた。そういう人がどうしているのかというと、クエストに行くたびに薬草とアオキノコを一生懸命集めて調合し、回復薬を自家生産しているというのだ。男性ハンターでこういった節約術を実践している人はどれくらいいるだろうか? 何となくここまでマメな作業ができるのは女性ハンターだけのような気がするのだが、どうでしょうか? まあ、今回の”生ぐさカバン事件”はそれとはちょっと違うのかもしれないが、俺はミトさんの使のような自さに大いに心癒された。

 そして翌日、俺は事の次第を同じ女性ハンターの江野本ぎずもに話して聞かせた。「砥石じゃなくて、キレアジがカバンにパンパンに入っててカバンが超生臭くなってるんだってー!!(爆笑)」と。しかし江野本、まったく笑わず、腹を抱えて笑う俺をキョトンとした顔で見ている。俺は自分の話しかたがそんなにつまんなかったのかと瞬時に落ち込み、江野本にたずねた。「……いまの話、おもしろくなかった?」と。すると江野本はデカい目をギョロギョロと動かしたあと、つぎのように発言して俺にトドメを刺した。

 「えーっと。……キレアジって、何に使うんですか?

 天然ハンター、最強です。

投稿者 大塚角満 : 19:30

大塚角満

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週刊ファミ通副編集長にして、ファミ通グループのニュース担当責任者。群馬県出身。現在、週刊ファミ通誌上で“大塚角満のモンハン研究所”というコラムを連載中。そこら中に書き散らした『モンハン』がらみのエッセイをまとめた単行本『本日も逆鱗日和』シリーズ(4巻)が発売中。また、そこからのスピンオフとして別の視点から『モンハン』の魅力に迫る書き下ろし作品『別冊『逆鱗日和』 角満式モンハン学』シリーズも。このブログではさまざまなゲーム関連の話題を扱うつもり。一応、そのつもり。


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