「あ! 大塚さん! ちょっとこっちこっち!」
モンハンフリークでごった返す福岡会場の片隅でウロウロしていると、聞き覚えのある声がしきりに俺を呼んでいるのが聞こえた。声のほうを見ると、『2nd G』のプロデューサー、辻本良三さんが、明らかに何かを企んでいる怪しいニヤニヤ笑いを浮かべながらしきりに手招きしているのが見えた。彼に近づきながら俺は言った。「なになに? どうしたの?」。
見ると良三さんの脇では、ご両親といっしょにこの会場に来た、小学校低学年と思われる腕白を絵に描いたような坊主頭の少年ふたりがギャースギャースと喚きながら暴れまわっていた。このふたりを指しながら、良三さんはニヤニヤ笑いをさらに強めてこんなことを言う。「いまからこのふたりを交えて、いっしょにクエストに行きまひょ(ニヤリ)」。
聞くと、このふたりは良三さんの姿を会場で見つけるやいなや飛んできて、「つじもとぷろでゅーさー!! いっしょにクエストしようよ!!」と挑みかかってきたのだそうだ。で、「こりゃおもしろそうだ」と思った良三さん、俺の姿を捜し出して声をかけてくれたのだという。とたんに俺も良三さんと同じニヤニヤ笑いを顔に浮かべて、「そりゃあおもしろそうだ。行きましょ行きましょ」と言った。ちなみに4人でいっしょに行くクエストは、会場でイベントのひとつとして行われているナルガクルガ2頭討伐のチャレンジクエストにするという。これを聞いて、急にビビり始める俺。先日このブログで思い入れたっぷりにナルガクルガのことを書いたが、そうそう連続で何度も挑戦できる相手ではないので、俺が狩ったナルガクルガの数は記事で書いたときの1頭だけとなっている。そう、あまりにも経験値が低すぎるのだ。(こいつはエライことになった)と俺は心の中で思った。(歯に衣着せない少年どもと、よりによって良三さんの前でオチたりしたら、一生言われ続けるぞ……)。俺は全身にイヤな汗をかきながら、暴れている少年Aを見る。すると少年Aはピタリと立ち止まり、不思議そうな顔で俺を見たあと「ところで、おじさんは誰?」と言った。俺はニヒルな顔を作りながら「辻本プロデューサーの友だちの、さすらいのガンランサーさ。ふふふ……」と答える。しかし言い終わらぬうちに少年Aは俺にすっかり興味を失くしたらしく、再び少年Bと暴れ始める。俺と少年Aの不毛なやりとりを見て、良三さんが「あはははは!!」と大笑いした。
まあとにかくクエストスタートだ。チャレンジクエストなので、装備は用意されているものの中から選ぶことになる。残念ながら選択武器の中にガンランスはなかったので、俺は以前メイン武器として使っていたランスを選択。良三さんはいつもどおり弓を、少年Aは片手剣、少年Bが俺と同じくランスを選ぶ。「お。キミはランサーなのか」と少年Bに話しかける俺。しかし少年Bは「ランスって、どうやって使うんだっけ?」なんて言っている。俺、若干の不安を覚えながらも「まあテキトーでいいよ! 思うように使ってくれ!」と少年Bを激励して、勇躍、ナルガクルガの待つ大闘技場へと足を踏み入れた。
チャレンジクエストではそれぞれの装備ごとに、いくつかのアイテムを所持している。これの使いかた次第で、狩猟は楽にも苦にもなるからおもしろい。ただ狩猟のセオリーとして、シビレ罠や落とし穴を設置して手ごわいモンスターを足止めして攻撃をする……という手段はここでも当然当てはまる。このセオリーに則って、少年A、Bが手早く、大闘技場の中心付近にシビレ罠を張り巡らせたのが目の端に見えた。しかし俺はこのとき、迫り来るナルガクルガの攻撃を防御するのが精一杯でシビレ罠に誘導する余裕がなかった。そんな俺の姿を見た少年Aは容赦がなかった。
「ちょっとランスの人!!」と少年Aが俺に言った。「シビレ罠作ったんだから早くこっちに来てよ!!!」。
俺、とたんに平身低頭となり、「す、すんません(苦笑)。い、いま行きますです……」とか細い声で平謝り。このやり取りを見ていた良三さん、弾けたように「あははははは!!!」と大笑いし、「言われてやんの!!(爆笑)」と腹を抱えた。
しかしこの数分後、弓で遠くから攻撃していた良三さんにナルガクルガが大激怒。怒りモードに突入したかと思ったら猛る長い尻尾でバシーン! と良三さんのキャラをぶっ叩いた。「あ!!」と叫ぶ良三さん。見ると、体力ゲージが一気に1ミリまで減っている。これに恐怖した良三さんは「もう怖くて近寄れない!!」と弱音を吐いて、ますますナルガクルガから距離をとって逃げ惑うようになった。これにキレたのが少年Bだ。
「ちょっと! ぷろでゅーさー!!」と少年Bが良三さんに言った。「逃げてないで攻撃してよ!!!」。
良三さん、とたんに平身低頭となり、「す、すんません(苦笑)。が、がんばります……」とか細い声で平謝り。俺、ここぞとばかりに「あはははは!!!」と大笑いし、「言われてやんの!!(爆笑)」と腹を抱えた。
チームワークもへったくれもなく、傍若無人に暴れまくる4人のハンター。それでも俺は何とかクリアーしたかったので、まだ慣れていないナルガクルガの動きを必死で目で追いながら懐に潜り込んで、ツンツンツンとランスの切っ先で攻撃をくり返した。しかしそのとき、背中に強烈な痛みを感じたと思ったら、俺のキャラはナルガクルガを飛び越えて壁際まで吹っ飛ばされてしまった。「なんだなんだ!」と思って振り返ると、少年Bがランスの突進で突っ走っている姿が目に入った。「あ、ごめん!」と少年B。まあランスを使っていればそういうこともある。俺はやさしく「気にしない気にしない! 突進はランスの華だ! ガンガン行け!」と吠えた。
その後。
突進で壁際に吹っ飛ばされること7回(苦笑)。
「おい待てコラ!!」と俺は暴走機関車のような少年Bにピシャリと言った。「突進ばっかすんじゃねえ!! 吹っ飛んでかなわんわ!!」。すると少年B、まったく悪びれた様子もなく「ぎゃはははは!!」と大笑いしたあと、「突進はランスの華だ!!」と意味もわかっていないくせに俺の口真似をして言い放った。それを聞いてた良三さん、再び腹を抱えて「あはははは!! めっちゃおもろい!!」と大爆笑。俺は良三さんを睨みつけて、「良三さんは弓だからいいんだよ! 突進食らわないからさあ!!」と思いっきり苦笑いをした。
しかしこんなことをやっていたのではクエストクリアーなんて夢のまた夢。俺と良三さんは「ここは手を組もう」と一致団結してナルガクルガをシビレ罠に誘導し、そのまわりに支給用大タル爆弾をズラズラと並べ始めた。「よし! 良三さん、早く離れて起爆を!」と俺が言い終わるかどうかというところで、巨大な爆風が俺と良三さんのキャラを包み込んだ。見ると、ランスを抱えた少年Bのキャラもゴロゴロと転がっている。爆破の犯人を知り、良三さんが叫んだ。「コラ! 爆弾置いてるのに突進するなや!!(笑)」。「福岡の暴走ランサーだ!!」と俺は悲鳴をあげた。
これでリズムを崩したのか、良三さんがやたらとナルガクルガに追い回されるようになった。ほうほうの体で逃げるも、良三さんの体力は目に見えて激減していく。「大塚さん!! 生命の粉塵で助けて!!」と絶叫するプロデューサー。俺、慌てて「飲むよ飲むよ! オチないで!」と言いながら生命の粉塵をゴクゴクとふたつ飲む。これで手持ちの粉塵はなくなってしまった。しかし、良三さんの何が気に入らなかったのかナルガクルガは攻撃の手を休めない。せっかく俺がナケナシの粉塵で体力を回復してあげたのに、再び良三さんの体力は残り1ミリとなってしまった。「大塚さん大塚さん!! 粉塵粉塵!! 助けて助けて!!」と悲鳴を上げるダブルミリオンプロデューサー。しかし俺は冷たく「もうねえよ!! 自分でなんとかしなさい!!」と言い捨てる。結果、腕白少年ふたりと腹黒編集者の目の前で、敏腕プロデューサーは天に召されてしまった。
「なにやられてんだよぷろでゅーさー!!」と少年A。
「あーあ! やられちゃった!」と少年B。こういうとき、年齢が低いハンターほど手厳しくなるのは世の常だ。俺などは「あはははは!!」と笑っているだけで何も言わず、逆に心の中で(やった!)と快哉を叫び、(良三さんが俺よりも先にオチた! これでひと安心だ!)と胸をなでおろしていた(苦笑)。
結局このチャレンジクエストは、暴走ランサーの少年Bが2オチしてクエスト失敗(笑)。でも結果なんかどうでもよくて、俺は久しぶりに自由気ままな狩猟風景に出会えたことに、意外なほど感動していた。少年の坊主頭を掴みながら、俺と良三さんは笑いながら言い合った。
「なんか、ものすごく楽しかったですよ。なんていうか、懐かしい感じがして」
と俺。ちょっとだけ、何をやっていいのかわからずに無我夢中で遊んでいた初代『モンスターハンター』のころを思い出していた。良三さんも「うんうん」と頷いたあと、
「型にはまった遊びも楽しいですけど、こうやって勝手気ままに遊ぶのも間違いなく『モンスターハンター』なんですよね。これくらいの年齢の子たちはふだん、いまみたいにぎゃーぎゃー言いながら楽しんでくれてるんだなぁ……ってことがわかって、途中からうれしくてうれしくて仕方なかったですよ」
とちょっとまぶしそうな表情でつぶやいた。思いがけない偶然から見ることができた『モンスターハンター』の原風景。こういった出会いも、モンスターハンターフェスタならではなんだろうな。俺は胸を熱くしながら、良三さんの肩を叩いてこう言った。
「でもね、良三さん。俺と少年ふたりの前でオチた事実は消えないから(笑)」
これを受けた良三さんは極めつけの苦い表情を作り、
「雰囲気ブチ壊すこと言う人やなあ(苦笑)。もう最悪の人の前でオチてもうたわ……」
と言って笑った。