【MHP 2nd】第26回 トラウマ古龍、ナナ・テスカトリ
『モンスターハンター2(ドス)』を精力的にプレイしていた時代、夢中になって尻を追いかけ回していたモンスターがいた。意外に思われるかもしれないが、そのモンスターとは炎の雌古龍、ナナ・テスカトリ。シングルプレイ時のみに出てくる特殊な古龍だったのだが、俺は彼女の素材から作る"エンプレス"シリーズの防具にひと目惚れし、ヒマを見つけては「ナナ、ナナ〜っ!」と、まるでフラれた女にしつこく付きまとうおっさんのようにナナとのランデブーに勤しんでいたのであった。
しかし白状してしまうが、やたらと怒りっぽいこのオンナをうまくあしらえたわけではない。とにかく徹底的に、ボコボコにされていたのだ。もう、取り付く島がない、ってのはまさにあのような状態を言うのだろうとシミジミと納得してしまうくらい、相手にされなかった。「あっち行けゴミ!」とナナが俺に向かって言っているようであった。……またこういうことを書くと河合リエが「大塚さんマゾだからナナが好きなんすね」なんて言ってきそうだが、本当にMの方にはガンランスを背負ってナナ討伐に向かうことをオススメする。それくらい、彼女の相手はキツい。それでも俺はエンプレスシリーズの青いヨロイに魅せられていたので、冷たく(熱く、か)あしらわれるのはわかっていながら、来る日も来る日もガンランスを背負ってナナ討伐に出向いていたのである。しかしいつまで経っても、ガンランスでナナを討伐することはできなかった。さすがのマゾ男もここまで冷たく扱われると疲れ果ててくる。「ガンランスでナナを倒すことは不可能だろう……」。俺はすっかりあきらめの心境なった。「もう武器を換えて出直すしかないな……」と。
ところがある日、俺がいくら口説いても跪かせることができなかった炎の女を、ガンランスでボコボコにしばいている男を見てしまった。それもまったく、危なげなく。その男は、対峙しているのは炎の古龍なんかではなく、悲しそうにぴーぴー鳴いている捨てネコなのではあるまいか……と俺を錯覚させるくらい、圧倒的な武力をもって凶暴なモンスターを手玉に取っていたのである。
男の名はスレイヴ間々田。週刊ファミ通の編集者だ。この男は「本当にゲームがウマイ人っているんだなぁ……」と驚きを通り越して呆れ果てて見てしまうくらい、ゲームが上手だ。これは『モンスターハンター』シリーズに限ったことではなく、どんなゲームも、こっちの顎が外れるくらい信じられない実力をもって制圧してしまうのだからタマラナイ。"天才"なんて言葉を簡単に使いたくはないのだが、俺のような凡人ではスキマから覗いて見ることすら許されない世界で生きている人間がいるんだな……とちょっと感動混じりに思ってしまうほど、彼のプレイはずば抜けている。彼の前に立てば、ナナだろうがテオだろうが、そこらにいるちょっと熱があるネコくらいの存在に成り果ててしまうのであろう。
ではこういう天才肌の人間が頼りになるのかというと、じつはそうでもない。もちろん、いっしょにクエストに行ったらこれほど力強いパートナーはいないのだが、自分がシングルプレイで挫折し、アドバイスを受けようと思っても、もともとハンターとしての資質に天と地ほども差があるのだから、彼の言っていることの意味もよくわからなかったりする。「あいつは突進してきたあとに0.5秒くらい隙ができるのでそこで攻撃してください」とか、「こいつは首の付け根だけ肉質が柔らかいのでそこのみ狙うといいですよ」なんて言われても、それを実践できるだけのテクニックが絶無なので何の役にも立たない。なので彼がナナをボコっている映像を見ても驚愕が込み上げてくるだけで何のインスピレーションも沸いてこず、けっきょく俺は武器を片手剣に換えて、彼女を追い回すことになったのであった。……要するに俺は、ナナに負けたのだ。ガンランスでナナに勝てなかったことが、じつはいまでも小さくないトラウマとして俺の中に居座っていたりするのである。
さて『2nd』においてももちろん、ナナ・テスカトリは登場する。村のクエストで対戦できるのですでに多くの人が挑んでいるだろうが、じつは俺はまだ、この炎の古龍とは戦っていない。ナナのダンナ(?)であるテオ・テスカトルは何度も屠り去っているのだが、ナナだけは手をつけていないのだ。
それはなぜか。
いま俺の脳裏には、『2(ドス)』の時代にガンランス片手にナナと華麗に戦っていた間々田のキャラクターの動きがフラッシュバックしている。『2nd』になって、ガンランスはパワーアップした。そして俺も、すでに200時間以上もガンランスを振り回しているので『2(ドス)』のときを凌駕する"ガンランス使い"としての蓄積ができているだろう。そう、俺はこのときを待っていたのだ。いまこそあのときの間々田のような流麗な動きで、ナナ・テスカトリを翻弄してやる!
近々、俺のトラウマとの戦いの模様をここに掲載したいと思う。





