ファミ通.com

ファミ通媒体メニュー



大塚角満の ゲームを“読む!”

鉛筆アイコン【MH3】第2回!? 泣きたくなるほど、すばらしい作品があった

2009/07/03 (金曜日)

 俺は今日、何度会場で鳥肌を立てたであろうか。そして何度、心が奮えたのか……。心臓を鷲づかみにされて、ブンブンと揺すられたような衝撃。その衝撃の向こうにあった、とてつもない感動。『モンスターハンター3(トライ)』完成披露会で観た数々の映像とプレイ体験、そしてこのソフトの開発に力を尽くした関係者の言葉を聞き、俺は心から「このシリーズを追いかけ続けてきて本当によかった!」と思った。完成披露会の詳細はリポート記事に譲り、ここでは俺の主観で大作『モンスターハンター3(トライ)』を綴りたい。

 ……しかしそのまえに告白するが、じつは俺と江野本ぎずもはこの間、『3(トライ)』の登場が楽しみなあまり、「できるだけ何も知らない赤ん坊のような状態で発売日を迎えよう!!」と言い合い、「どっちが『3(トライ)』の情報を仕入れないでいられるか、競争しよう!!」という、ゲーム雑誌の編集者にはあるまじき競い合いを展開していたのである。これにより完成披露会直前までの最新情報は、俺が“ウラガンキンは四天王”、江野本に至っては“ボルボロス”止まりであった。この事実を完成披露会の会場で“ミスターモンハン”こと『3(トライ)』の藤岡要ディレクターに話したら、「その健気な情報規制のダムは、本日あえなく決壊します(笑)」と爆笑されてしまった。そして藤岡さんの言葉どおり、俺と江野本は完成披露会が終わるとすぐに、「いままで無駄な努力をしていたアホな記者はトリになって飛んでいきました!!」と叫び、「へへへ、編集部に帰ったらバックナンバー読み漁るぞっっっ!!!!」と恥も外聞もなくわめき散らしたのでありました……。

 さて。

 この日、まず最初に衝撃を受けたのは、初公開された『3(トライ)』のオープニングムービーだ。映像の詳細はネタバレになってしまうので書かないが、これを観て俺は瞬時に「ああ……。藤岡さんたちはずっと、こういう世界を描きたかったんだな……」と得心したのである。『3(トライ)』のオープニングムービーに描かれているものは、胸が締め付けられるほど圧倒的な“命の力”だ。力溢れる生物が跋扈する荒野の中で紡がれる命と、“生きるために”奪おうとする荒ぶる生命力。それが、このオープニングムービーの中に息づいているのである。俺はこのムービーを観て、改めてモンスターたちを「怖い」と思った。そしてそれ以上に「綺麗だ」と思った。生きるために行われるフィールド上のフェアなやりとりが鮮烈な映像と相俟って、ハンターたるプレイヤーを感動させるのである。抽象的な表現の連続ではなはだ恐縮だが、この文章の意味は8月1日になれば必ずわかると思う。なのでぜひ、ソフトを手に入れてオープニングムービーをご覧になったら、もう一度この文章を読み返してみてください(笑)。

 オープニングムービーの上映が終わったあと、ステージ上では辻本良三プロデューサーと藤岡ディレクターによる『3(トライ)』のデモプレイが行われた。なんと今回は“オンラインデモ”ということで、ステージ上のWiiをネットに接続し、東京の会場と大阪の『モンハン3(トライ)』開発部をつないで待望のネットワークモードの一端が紹介されたのである。

 藤岡さんの操るキャラは、“街門”(がいもん)と呼ばれる街の玄関口に佇んでいた。プレイするサーバーを選択したあとは、まずこの街門にハンターはやってくるのだ。この街門でハンターが集う“街”を選択。このへんの流れは、プレイステーション2の『モンハン2(ドス)』とほぼいっしょである。藤岡さんは良三さんと大阪の開発スタッフが待つ街を選び、その中へ飛び込んでいった。

 街の施設で真っ先に紹介されたのが、『3(トライ)』で新たに導入された“アイテム交換所”だ。読んで字の如く、手持ちのアイテムを別のアイテムと物々交換することができるという新機軸の施設である。このアイテム交換所、おもしろいことに1日ごとにリストに現れるアイテムが変化するとのこと。こういった“ゆらぎ”の要素は前作『2(ドス)』でもいくつか導入されていたが、懐が寂しいときでも余り気味のアイテムを放出することで、欲しかった素材が手に入るかもしれない……というアプローチは、非常にわかりやすくておもしろい。「もしかしたら、何か掘り出し物が手に入るかも!?」と、近所のリサイクルショップを覗くときのようなワクワク感を感じられそうだと思った。

 アイテム交換所のつぎは“ゲストハウス”が紹介された。いわゆる宿屋で、システム的には『G』や『2(ドス)』と大きな差はなさそうに見えたが、なんと『3(トライ)』では部屋に好みのインテリアを飾れるようになっていた。インテリアを作ってもらえる“インテリア工房”もあるとかで、キャラクターだけでなく部屋も自分好みにカスタマイズすることが可能になったようだ。

 そして、ほかのプレイヤーとの“コミュニケーション”の部分でクローズアップしたいのが、クエストに行っているハンターにチャットを送ることができるようになったこと!! じつは5年まえに初代『モンハン』を遊んでいたとき、クエストに行っているハンターともチャットができると思い込んでいて、しきりに「おーい。街に戻ってこいよー!」なんていう発言を恥ずかしげもなくしていたことがあったのだが、そのときの夢(?)がついに『3(トライ)』で実現されたわけである。実際にステージでは、ひとりでクエストに行っていた開発スタッフに向かって「もどってこいよー」っとチャットでメッセージを送り、受け取った側が「オッケー」と応えて街に戻ってくる……というデモが披露された。これ、何気にものすごく便利な機能追加である。

 街の解説がひととおり行われたあと、4人のハンターは新フィールド“砂原”を舞台にしたボルボロス(もちろん新モンスター!)討伐のクエストに出発した。注目は『3(トライ)』で新たに導入された武器“スラッシュアックス”。藤岡ディレクターが操るハンターが、これを装備しているようだ。“斧と剣の要素を併せ持った変形する武器”という触れ込みだが、さて、実際に振り回すとどうなるんだ……?

 さてここからは、『3(トライ)』の体験リポートとなる。じつは完成披露会終了後に会場に設置された試遊台がオープンになって、我々報道陣も自由に遊ぶことができたのだ。情報規制のダムが決壊した俺と江野本ぎずももこれに取り付き、会場が閉まる直前にプレイさせてもらった。

 クエストは、ラギアクルス討伐、ボルボロス討伐、クルペッコ討伐の3つから選ぶことができたのだが、ラギアクルスは昨年の東京ゲームショウなどで顔を合わせているし、クルペッコは『3(トライ)』の体験版でさんざん遊んでいるので、ここはやはり初顔合わせとなるボルボロスを選択するしかない。武器はすべてのカテゴリーから選ぶことができたので、俺は迷わず、新武器のスラッシュアックスを選択。ちなみに堅実派(?)の江野本は、片手剣を手にしたようだ。さあさあ、ついに夢にまで見たスラッシュアックスを持っての“初トライ”(シャレじゃないヨ)である!!

 我が分身がキャンプに降り立ったのを確認し、とりあえずWiiリモコンとヌンチャクをガチャガチャと振り回して操作方法を確かめる。すると俺の後ろに開発スタッフの若い男性がやってきて「Wiiリモコンでの操作、大丈夫ですか?」と親切に声をかけてくれた。最近、『G』でばかり遊んでいてしばらく『3(トライ)』の体験版をWiiリモコンで遊んでいなかったので「いやぁ……ちょっと危ういかも……」と言って助けてもらおうと思ったら、俺の真横に現れた開発スタッフのTさん(顔見知り)が「おいおい! この人は世界一のガンランサー(笑)と言われた、あの大塚角満さんだぞ! 平気に決まっているでしょう!ww」と笑いながら突然の断言。俺はぶったまげて、「ちょっとTさん!! 変なプレッシャーかけないでよ!!」と言ったが時すでに遅く、若き男性スタッフは「失礼しました! あの大塚さんでしたか! いつも読んでますよ!(ニヤニヤ)」と言ってニヤリと笑う。それでもスラッシュアックスを選んだ俺を見て「さすがにスラッシュは初めてですよね。使いこなせるとメチャクチャかっこいいですから、操作方法を解説しましょう」と助け舟を出してくれた。これで怖いものナシだ。

 スラッシュアックスは、斧と剣というふたつの顔を持った特殊な武器だ。カシャカシャと瞬時に形態を変化させることで、斧と剣のふたつの特徴をモンスターにぶつけることができるらしい。解説によると、斧モードのときは基本の攻撃力が高く、通常攻撃で大ダメージが見込めるようだが、攻撃がガキンと弾かれることがある。逆に剣モードのときは斧よりも攻撃力は低いが攻撃が弾かれることがなくなり、何より属性攻撃をすることができるようになる。斧から剣、剣から斧へと瞬時に形状を変化させることが可能で、たとえば剣で突きのモーションを出したときにヌンチャクのZボタンを押すと、一瞬で斧に切り替わった。当然、この流れの中で斧から剣に変えることも可能。形状の変化を攻撃の流れに組み込むことで、延々とコンボを続けることができるようだ。

 そして、スラッシュアックスの真骨頂となるのが“属性開放”という攻撃だ。スラッシュアックスを剣モードにしたときに発動する特殊な攻撃方法で、ガンランスの竜撃砲のようにしばしのタメ時間のあと、一気に属性のカタマリ(としか言いようがない)を剣の切っ先から放出する。コンボの流れの中から発動させることもできるし、足止めをしたモンスターを狙い、いきなりお見舞いすることも可能だった。でも、タメ時間がわりと長かったので「俺にできるかな……?」と少々心配だったのだが、江野本の攻撃で転倒したボルボロスを見て後ろにいた開発スタッフの方が「属性開放のチャンスですよ!!」と叫んだのをきっかけに、俺は「チャチャチャ、チャーンス!!!」と絶叫。のた打ち回るボルボロスに接近し、「うおおおおっ!!!」とツバを撒き散らしながらマイナスボタンを連打。徐々にスラッシュアックスの切っ先に属性の力が溜まっていって……!

 ボワンッ!!!

 吐き出された属性のカタマリが、ものの見事にボルボロスに直撃した。

 「ややや、やった!!! 当たった!!」と俺。

 「当たりましたね!!!」とまわりにいた開発スタッフの方々。な、なんて気持ちいいんだ、スラッシュアックス……。

 そして俺はこのとき、『2(ドス)』で初めてガンランスを持ち、初めて竜撃砲をブチかましたときのことを鮮明に思い出していた。あのときも、いまとまったく同じように“初めての出来事”に感動して居ても立ってもいられなくなっちゃったんだよな……。このスラッシュアックス、姿、形はぜんぜん違うし使い勝手もガンランスとはかけ離れている。でも、その佇まいとスピリッツの中に、俺は確かに、ガンランスの姿を見た気がした。

 しかし残念ながら、俺が属性開放をぶっ放したところで閉館の時間となり、クエストは終了となってしまった。プレイできた時間は、10分弱といったところだろう。それでも、俺と江野本は興奮の極みにいた。個人的情報規制なんてやってる場合ではない。このすばらしい作品の魅力を、もっともっといろんな人に伝えて歩かなきゃ!!

 帰り際、俺はたくさんの開発スタッフの方々に声をかけてもらった。数年に及ぶ開発が終わったばかりでその顔には疲れの色も残っていたが、それ以上に彼らは、充実感に満ちたステキな笑顔を見せてくれた。

 「大塚さん、やっと完成しましたよ!」

 開発スタッフのHさんは弾けるような笑顔でそう言った。重要なポジションにいる彼の苦労とプレッシャーは、並々ならぬものがあったに違いない。それでもHさんは別れ際に、決意に満ちた口調でこう続けてくれた。

 「本当にみんなで、魂を込めて作りました」

 ひとつの仕事をやり遂げた男の、これ以上はないってくらい気持ちの詰まった言葉を聞いて、なんだか無性に、泣きたくなった。


投稿者 otsuka-eb : 22:54

鉛筆アイコン【MHG】第23回 死神に取り憑かれた日 その2

2009/07/01 (水曜日)

「6月22日にアップした”死神に取り憑かれた日 その1”の続きはどうなったんスか!! きしゃーーーっ!」

 と、ある人が突然グレムリン化して襲いかかってこようとしたので、件のコラムをアップしてから1週間以上が経過したいまになって、その続きを書こうと思います。「ネタ、忘れちゃった」なんて口が裂けても……いや、指の股が避けても書けません。

 その日、俺と江野本ぎずもは、ハンターランク27以上の高級ハンター(?)だけが行けるクエストに出発した友だち3人に怨嗟の熱視線を照射しながら、半ばいじけてG級のゲリョス討伐クエストに出発したのである。で、とりあえずゲリョスは無視して採取に走り江野本がメラルー軍団に身ぐるみ剥がされた……ってところまでは”虫が湧く森と丘”というコラムで書いた。今回はその続きとなる。

 メラルーに盗まれた物品の奪還をあきらめ、「肉がなくて走れん」とブーたれている江野本に「しょうがねえなあ」と言いながら肉を分け与えてから、俺は「よし! こっからはマジメにゲリョス討伐に精を出すぞ!」と元気に宣言したのだ。ゲリョスとはいえ、相手は百戦錬磨のG級モンスターだ。ちょっとでも油断したら、あっと言う間にこちらが三途の川を渡るハメになる。

 しかしさすがは逆鱗日和ファミリー。『モンハン』のプレイ時間の長さだけは自慢できるものがある。ゲリョスなんてこれまでに、何百頭狩ってきたことか。俺たちは”対ゲリョス”のセオリーに則って、頭側に陣取ったランスの俺がトサカを破壊。片手剣の江野本は伸縮するゴム質の尻尾の長さを見切って距離を取り、軽いフットワークを駆使して巧みに斬り込んでいた。もう、カンペキ。この美しいチームワークと立ち回りを見て、俺たちがオチる様を想像できるヤツがこの世にいるわけがない

 そして、ゲリョスのヤツもセオリーどおりに地面に倒れ伏し、ピクリとも動かなくなった。

「ハイ、ルーキーハンターの皆さーん。ここで油断しちゃダメですよぉ。このゲリョスというモンスターはですね、自分の体力が減ってくると”死んだフリ”をするんです! そう、自然界の動物もよく見せる”擬態”というものですね。これを見た捕食者が「あ、死んでもうた」とびっくりして去っていくのを狙っているわけです。ホラ、「死に勝る護身なし!」って郭海皇も言ってるでしょう。 『バキ』の27巻に出てますよー。ココ、テストに出ますからねー。まあとにかく、ゲリョスはまさにこれを実践しているわけでえす」

 てな感じでゲリョスの死に真似は、テストに出てしまうくらい(?)、『モンハン』世界の常識なわけです。ゲリョスは死に真似から起きあがるとき、イタチの最期っ屁を彷彿とさせる強力な攻撃をしてくるが、距離さえキチンと保てていればそうそうこれを食らうことはない。ましてや俺は、『モンハン』歴5年、ゲリョスと付き合いだしてからも5年の”ゲリョスのベテラン”である。こんな、1発逆転を狙った大振りのパンチが当たるわけがない! 俺はゲリョスが死に真似から復帰したらすぐに攻撃を加えられるよう、ランスの切っ先が当たるギリギリの位置に身体を置いた。ベテランハンターの血だけが知る、究極のベストポジション。さあ、ゲリョスが起きるぞ。数秒後に追撃だ!!

 ガウーン!!!

 MIDOは力尽きた

 あっそ。

 ……とまあ、ここまではよくある話です(そんなことない)。問題は、このあとなのだ!

 さてここから、またまた『モンハン』とはまったく関係のないことを書きます。極めつけに関係ないうえに、とてつもなくおぞましい話です。ぶっちゃけ、ショックに弱い方、お食事中の方、そして虫が嫌いな方は読まないほうがよろしいかと。覚悟ができた方だけ、ここから先にお進みください……。

 同じ日。

 ちょっと時間が取れたので、その日の晩酌のつまみを自分で作ることにした。こう見えて俺は料理が好きなので、酒のツマミはもとより、お客さんが来たときに振る舞う料理なんかも自分で作ったりする。まあでも、それはどうでもいい話だ。

 俺は築35年ほどの古い一戸建て住宅に住んでいる。当然ながらリフォームしてから暮らし始めたのだが、これだけ使い込まれていると多少の手直しくらいじゃ追いつかず、壁にいかにも虫が自由に出入りしてますよ的な穴が空いていたりする。まあどこの家も、似たようなものだろう(そうだと言ってくれ)。

 で、そんな古いキッチンで料理を作っていたわけです。季節は梅雨真っ盛りでその日の湿度は70パーセントオーバー(たぶん)。我が家にはネコが2匹もいるので、エサの皿にはつねに栄養価の高いカリカリエサがコロコロと転がり、燃えないゴミを入れる袋にはネコのウェットフードが入っていた空き缶が詰め込まれている。当然、缶も洗ってから捨てているが多少のネコエサの名残は残っているものです。そんな環境にありますからこの時期になると必ず、激昂ラージャンよそこにひれ伏せと言わんばかりの貫禄をまとって”ヤツ”が現れるのだ。『英雄の証』がいくら流れようが、”ヤツ”への嫌悪感と恐怖心はいっこうに消えてくれない。”ヤツ”とはそう、ゴキブリだっっ!!

 ヤツはその日、俺がすばらしいスピードで長ネギをスパパパパと切っている最中に現れた。ホントにいきなり、現れた。その神出鬼没っぷりはたとえるなら、渋谷駅前のスクランブル交差点を「ケッ! ペッ!」と意味もなく粋がりながら横断しているときに、いきなり目の前にオオナズチがぼわわんと現れたときに似ている。そんな経験はいまのところしていないけど(当たり前だ)、それくらい突然、俺の眼前に茶色の裸体(でいいのか?)をさらしたのだ。

 体長は目測で、約2センチといったところか。このまま無事に成長すれば、立派なチャバネゴキブリになると思われる。っていやいや、無事に成長されちゃ困るんだよ!! クイーンランゴ……じゃなくてクイーンチャバネゴキブリになられるまえに討伐しなければ!!

 俺はいまや、イャンクックが見たら裸足で逃げ出すくらいの鳥肌をまといながらも努めて冷静を装い、「はいはい、逃げちゃダメでちゅよー……。ちょっとそこでおとなしくしていてくだちゃいねー……」とネコ撫で声を発しながら、ダイニングテーブルの下に設置されている殺虫剤を手に取った。ぐへへへへ。これで俺の勝ちだ。覚悟しろよコンニャロ。俺はヒュンヒュンと触覚を蠢かせている若きチャバネゴキブリに向かって叫んだ。「毒ケムリ玉を食らえええ!!」と。

 そして、間髪入れずに殺虫液を大噴射。近代兵器の煙は見事、憎きランゴ……じゃなくってチャバネゴキブリを直撃した。しかし量が足りなかったのか致命傷を与えることは叶わず、ゴキブリは台所のシンクの上を右往左往している。でも、こやつを討伐するのは時間の問題だ。もうひと噴射、殺虫剤の煙を直撃させれば三途の川を渡らすことができよう。俺はガンランスの切っ先のつもりで殺虫剤の噴射口をチャバネゴキブリに向け、いままさに竜撃砲を発射せんと身構えた。さあこれで終わりだ! さらばチャバネゴキブリ! 食らええええ!!

 ……しかしそのとき、不思議なことが起こった。

 本当に突然、目の前にいたチャバネゴキブリが消えたのである。ほんの1秒前までガンランスの切っ先の先にいたのに、俺が瞬きでもした瞬間にパっと消えてしまったのだ。これ、誇張でもなんでもなく、ワープでもしたかのようにいなくなってしまったのよ。俺は思わずゾッとした。こいつはもう丸っきり、心霊現象の世界である。でも「ゴキブリの幽霊が出た!」と言ったところで誰も驚かないどころか笑われるだけなので、俺は無理矢理納得しようとした。前述のとおり俺の家にはそこらじゅうに隙間があるから、きっとそこに滑り込んだのであろう、と。なーんだそうか。そうだよな。ゴキブリなんて神出鬼没なんだから、消えるときも一瞬なんだよ。俺は簡単に自己暗示にかかり、「驚いて損した」とため息をついた。

 そして、俺は料理を再開した。料理を始めてしまえば一瞬まえのイヤなことなんて簡単に忘れてしまう。まもなくやってくるステキな晩酌のときを思って、俺は思わず舌なめずりした。しかし、そのときだった。

 ガサガサガサ!!!

 いきなり首筋を、37年の人生で一度も感じたことのないおぞましい痒みと微かな痛みが這いまわった。うわあああ!! なんだなんだ!! 俺のうなじのあたりになんかいるよ!! 俺はオカマのような声で「ひゃーーーー!!」と悲鳴を上げて、「やめろやめろ!!」と言いながらバシバシと首筋を叩いた。すると「べしゃ」というイヤな音を立ててながら、キッチンの床にナニモノかが着地したのが目に入った。恐る恐るそいつを見ると……!!

 うわ。チャバネゴキブリ!!!!

 そいつは明らかに、数分まえに俺の眼前から消え失せた、あのチャバネゴキブリだった。いったいどうやって俺の背後に回り込んだのか見当もつかないが、俺がひっかけた殺虫剤と思われる液体にまみれていたので、こいつが先ほどのヤツと同一ゴキブリであることは間違いなかろう……。

 俺は料理をすることを止め、ゴキブリに這い回れた我が身体を呪い、すぐにシャワーを浴びて布団に潜り込んだ。そして、今日あった出来事を震えながら反芻した。

「行けると思っていたクエストに行けなくて1オチ、ゲリョスの死に真似ごときにやられて素で2オチ、そしてゴキブリアタックに当たって3オチ……」

 こんな日は、もうこりごりです……。

投稿者 otsuka-eb : 11:45

鉛筆アイコン【MHG】第22回 ゲームと関係ない話でスミマセン

2009/06/24 (水曜日)

 ゲームとはまったく関係ないけど、あまりにもおもしろかったので書かせてくれ。

 とある日の午前10時ごろ、俺は会社に向かう通勤電車に揺られていた。座席は当然のようにすべて埋まっていたので、ドアにもたれかかって呆然と、窓の外を眺める。明け方まで音を立てて降っていた雨はいつの間にか上がっていたが、空を覆う梅雨色の雲はいまなお不安げで、自然と傘を持つ手に力が入った。

 俺が乗った車両の乗車率は、150パーセントくらいだった。通勤電車にしては比較的余裕があるほうだ。座席争いに敗れた人たちは所在なげにたたずみ、新聞を広げたり、PSPを眺めたり、同行者とおしゃべりをしたりしている。車内に広がる喧騒はほとんどが日本語のはずなのに、どうしてガヤガヤザワザワという言語ならざる“音”にしか聴こえないのだろうか……? そんなことを考えていたら、ひと目で女子大生とわかる女の子ふたり組が俺の向かい側に立って、ドアにもたれかかった。これくらいの距離だったら、会話の内容もしっかりと聴き取ることができる。べつに盗み聴きをするつもりじゃなかったのだが、けっこう大きな声でギャゴーギャゴーとしゃべっていたので、イヤだろうがナンだろうが耳に飛び込んできてしまうのだ。なのでしかたないのだ。これでいいのだ。

 女子大生Aと女子大生Bは、どうやら共通の友だちの噂話をしているようだった。彼女たちはしっかりと登場人物の性格付けやバックグラウンドストーリーを理解しているようで(当たり前だが)、ところどころで「マジウケるー!」と言っては腹を抱えている。しかし、物語の途中からいきなりこの話を聴かされている俺からすると(勝手に聴いているだけだが)、登場する“サトウなにがし”や“ヤマモト先生”(もちろん仮名)がどんな設定がされたキャラなのか皆目わからないので、戸惑うやらイラつくやらでたいへんである。でも、「ちょっと、最初から順を追ってストーリーを説明してよ」とお願いするわけにもいかず、俺は少々キョドりながらもおとなしく、彼女たちの話すサトウなにがしとヤマモト先生の物語に耳を傾け続けたのであった。

 そして、聴衆からするとイマイチ盛り上がりに欠けるストーリーが終盤に差し掛かったころ(俺が乗り換える駅に近づいたので)、事件は起こった。そのときの女子大生A、Bの会話を再現する。

A 「なんかー、授業中にヤマモト先生がサトウを怒ったみたいでー」

B 「うんうん」

A 「すげえ怒ってぇ、ヤマモトさん」

B 「うん」

A 「なんかぁ、アレでサトウの机の上のものを叩き落したって!」

B 「アレって?」

A 「アレアレ。なんだっけ。棒みたいな……。サ、サ……

B 「サ??」

A 「思い出した! サルマタサルマタ! サルマタみたいな棒で落としたんだって!!」

 俺、本気でずっこけて、肩にかけてたカバンを落としそうになる。しかし、恐怖の会話はまだ終わらなかった。

B 「あー、サルマタw 怒りすぎだよヤマモトさんww」

俺の心の声 (突っ込むところそこじゃないから!! サルマタじゃなくてサスマタだろ!!)

A 「らしいよーw マジウケるwww

俺の心の声 (マジウケるのはこっちだ!!)

 という会話が、混雑する都内の通勤電車の中で行われていたのであります。でももしかしたらヤマモト先生は、本当にサスマタじゃなくてサルマタで机の上のものを叩き落したのかもしれない。だとすると、彼女たちの会話に大きな問題はないので、俺が反省しておきます。

 で、話を強引に『モンハン』に結びつけるが、こういう勘違いというか言い間違いは『モンハン』世界にもゴロゴロと転がっている。以前コラムでも書いたが、“紅玉”を“べにだま”、“逆鱗”を“さかりん”、“バサルモス”を“バルサモス”、“ガノトトス”を“ガトノノス”、“ラオシャンロン”を“ラオシェンロン”、“シェンガオレン”を“シェンガレオン”など、挙げ出したらキリがない。でもこれらはすべて既出のもので、じつは新ネタとしてWii版の『G』で出会ったおもしろい言い間違い、勘違いネタをたくさん仕入れてある。が、そういったものはすべて現在編集中の『逆鱗日和』新刊に盛り込むつもりなので、ぜひぜひそちらに期待していただければ! ……って、コレ、ただの宣伝コラムだな(苦笑)。

投稿者 otsuka-eb : 15:56

鉛筆アイコン【MHG】第21回 虫が湧く森と丘

2009/06/23 (火曜日)

 友だち3人が戦慄のイベントクエストに出かけていったのを見届け、イベントクエストを受注するにはハンターランクの足りない俺と江野本ぎずもはどのクエストに出かけるか相談を始めた。気分的には、重要な仕事に出かけて行くお父さんを見送ったあとの小学生のようなものである。俺は、恐るべきイベントクエストに物理的に参加できないことを知ってなぜかホッとした顔をしている江野本に向かってズバンと言った。

 「森と丘に行って達人のドクロなどを採集したい。よって、受注するクエストはG級★6の“毒の怪鳥、ゲリョス現る!”とするが、よいか?」

 江野本、目を輝かせてこう応えた。

 「わし、むし!!」

 翻訳すると、「あっしは森と丘で虫を捕りたい」となる。しかし、あまりにもあんまりな発言なので、俺は江野本を叱った。

 「ワムシが湧きそうな言いかたをするんじゃありません!」

 これを聞いた江野本、グレムリン化して食ってかかってきた。

 「失礼な!!! 虫なんて湧きませんよ!!!

 こういうことを言い始めるといつまで経ってもクエストに出かけられなくなるので、俺は「わかったわかった。ホレ、行くぞ」と江野本を促し、毒怪鳥とドクロと虫が待つG級の森と丘へと出発した。

 さあて、とりあえずは採集だ。俺は「じゃあ俺、最初にエリア12に行くから。ゲリョスはシカトね」と江野本に告げ、エリア12に向かって走り出した。江野本は再び「わし、むし!!」虫が湧きそうなことを言って、虫がわんさか捕れるエリア9の穴ぐらに潜り込んだ様子。ふたりはしばらくのあいだおとなしく、それぞれの採集ポイントで思い思いの時間を過ごした。

 エリア12、エリア11、エリア5で採集を終え、俺はゲリョス討伐に向かうことにした。しかし江野本はいっこうに、エリア9から動こうとしない。不審に思って、俺は彼女に声をかけた。

 「えのっち、ぜんぜんそこから出てこないけど、そんなに虫が捕れるの?」

 10秒ほどの沈黙のあと、江野本は「大塚さん」と言い、つぎのように言葉を継いだ。

 「ネコがにゃあにゃあ言いながら入ってきて身ぐるみ剥がされました。しかも穴の出口でずーっとゲリョスが見張っていてどうにもなりません」

 俺、大窃盗団に囲まれている江野本にかける言葉が思い浮かばず、ただ静かに「……ガンバレヨ」とキーボードを叩いた。しかし俺の激励のおかげかそのすぐあとに江野本は「あ!!」と言い、続けて「出られた!! 奇跡!!」と発言。どうやら長いこと閉じ込められていたエリア9の穴ぐらからの脱出に成功したようだった。でもとりあえずは、メラルーにかっぱらわれたものを取り戻さなければならない。江野本は元気に「エリア12にいってきやす!!」と宣言してメラルーの巣へと直行。なにやらゴソゴソと蠢いたあとに神妙な声で「大塚さん」と言った。ナンダナンダ。どうしたんだ? 俺が「どしたの?」と言うと、江野本は鎮痛な面持ちでこんなことを言った。

 「メラルーに盗まれたもの、虫の死骸しか戻ってきません。あとの肉焼きセットとか回復薬グレートとかこんがり肉はどこに行っちゃったの??」

 俺、ゲラゲラ笑いながらこう答えた。

 「虫の死骸で打ち止めですwww ぷぷぷ!」

 江野本、ショックのあまりしばしのあいだ「…………」と立ちすくんでいたがすぐに「ふん」と言って立ち直り、なぜか俺に向かってキレた発言をしてきた。

 「ふーん。あーそうですかそうですか。じゃあ大塚さん、ゲリョスはひとりで討伐してくださいね

 俺、江野本の発言の意味がまったくわからず、怒りながらこう言った。

 「ちょ……。なんでそうなるんだ!! 盗んだの、俺じゃねえだろ!!」

 江野本、まったく悪びれずにこう応える。

 「だって、こんがり肉も肉焼きセットも盗まれちゃったんだもの。もうすでに、走れない

 こいつ、走れないのをいいことにサボタージュを決め込むつもりだな……。しかたなく、俺は言った。

 「ったく、しょうがねえなあ。肉あげるからエリア3に来なよ」

 ヨタヨタと酔っ払いのような足取りでエリア3に現れた江野本に向かって、俺は「ホレ」と言いながらアイテムを差し出す。これに「わーい」と言いながら飛びつく江野本。しかしすぐに彼女は本日2回目のグレムリンと化し、烈火のごとく怒りだした。

 「ちょっと!! 生肉じゃないすかコレ!! いらねえ!!!」

 討伐目標のゲリョスをほったらかしにして、いつまでもこんなくだらないやり取りを続ける逆鱗日和ファミリーだった。

投稿者 otsuka-eb : 13:56

鉛筆アイコン【MHG】第20回 死神に取り憑かれた日 その1

2009/06/22 (月曜日)

 昨夜、久しぶりにミナガルデに足を伸ばした。まともにオンラインしたのは、おそらく2週間ぶり。友人から「いま出ているイベントクエストを手伝ってほしい」と連絡をもらい、「ぶへえ!! い、いつのまにそんなクエストが!! 行きます行きます!!」と大興奮状態でピョンピョンと飛び跳ねながら、震える手でWiiの電源を入れたのだ。さあさあ、イベントクエストだ! こいつを成敗してあんな武器やこんな防具を作っちゃうぞ!! いやあ、コーフンするなあ!! でも俺ひとりじゃ何の戦力にもならないから、江野本ぎずもとEffort Cristalのゴッディに連絡。「すぐにオンします!!」と快諾をいただき、俺たちは友人が待機する街で待ち合わせすることになった。

 しかし、この日の俺はついていなかった。

 まずミナガルデに行こうと思ってボタンをポンポンと押していると、画面に見慣れぬメッセージが表示された。そこに書いてあった文字を翻訳すると、どうやら、

 ハンティングポイントが切れたからオンできんヨ

 と書いてあるっぽい。ぬおお……。よりによってこんなときにポイントが切れるとは!! みんなを待たせてるのにぃー! でも、払うものはキチンと払わんといかん。俺はすぐにWiiショッピングチャンネルを起動してWiiポイントを1000円分購入。流れる手つきで『G』を起動し、ハンティングポイントを買う画面にたどり着いた。とりあえず1000円分しかWiiポイントを買っていないので、ハンティングポイントは30日券(800Wiiポイント)にしておこう。これなら1000円で間に合うからね。えーっと、これで俺のWiiポイントの残額は200ポイントに……って、ア、アレ!? なんでこんな数字が……? 俺のWiiポイントの残額はつぎのようなものだった。

 Wiiポイント残額 4200Wiiポイント

 な、なんで俺、こんなにWiiポイントセレブなんだ……? ……ってそうだ!! 思い出した!! 10日ほどまえに急に「昔のゲームで遊びたいなあ」と思い立ち、その勢いで大量のWiiポイントを購入。バーチャルコンソールから『フォゴットンワールド』とか『ゴールデンアックス』とかとか、少年時代(?)に夢中になって遊んでいたゲームをドカドカとダウンロードしまくったんだった!! くぅぅ……。キチンと残額確認していれば追加購入する必要なんてまったくなかったのに……。

 でもいいや。Wiiポイントなんてどうせすぐに足りなくなるんだから、ちょっとでも多めにストックされてるほうが便利でいいんだ。そうだそうだ。これは先行投資なのだ。いいんだいいんだ。

 俺はあっさりと納得して、今度こそキチンとログイン。3人の仲間が待つ場末の酒場に急いで駆け込んだ。さあさあ、ようやくクエストに行けるぞ。イベントクエだイベントクエ!! 俺は3人に向かって宣言した。

 「さあ狩ってくれようじゃないか!! このクエストは強大だが、我々4人だったらいけるはず!!」

 ゴッディが元気に「はい!!」と応じ、すぐにクエストを貼る。しかしここで、冷静な彼にしては珍しく「あ!!」と声を上げ、俺と江野本に向かって申し訳なさそうにこう言った。

 「あの……。まことに申し上げにくいのですが、角満さんとぎずもさんはこのクエストに行くには少々ハンターランクが足りないようです……w」

 な、なにぃ! 俺を見くびるんじゃねえ!! こう見えてオイラも、G級ハンターになったんだぞ!! その俺に行けないクエストなんてあるわけがっ!! 俺はゴッディに言った。

 「少々足らない……って、どんくらい足らないの?」

 悲しそうな口調で、ゴッディが答える。

 「このクエストへの参加条件、ハンターランク27以上なんです」

 えー? しばらくオンラインしていなかったから忘れているけど、俺もボチボチそのくらいのランクになってるんじゃないかなあ? 俺は再度、ゴッディに言った。

 「27ね。なるほどね。でも俺も、そろそろそのくらいのランクになるでしょう?」

 江野本も同調して「うんうん。ウチもそう思う」と言っている。しかしゴッディはこの世の終わりを告げる預言者のような口ぶりで、ピシャリと冷たく言い放った。

 「ぎずもさんはハンターランク23、角満さんに至ってはG級になったばかりの、ハンターランク21じゃないですか!!www」

 ハイ、スンマセン。

 けっきょく俺たちふたりがまるで役に立たないことが判明したので、急いでイベントクエストの戦力にと超絶テキトーハンター・ゴメさんを招集。そちらには屈強な3人で行ってもらい、意気消沈した俺と江野本はいじけながら「んじゃ、ゲリョスにでも行きますかね……」と言い、森と丘へと旅立った。

 しかし、この日俺に取り憑いた死神は、これくらいの不幸じゃ許してはくれなかったのである。

 以下次回?

※お知らせ※
 すっかり遅くなってしまいましたが、改めまして『逆鱗日和』シリーズ新刊の企画にご投稿くださった皆様、ありがとうございました! じつにじつにたくさんの体験談が集まり、僕も江野本も涙を流さんばかりに喜んでおります!! 本来、もっと早く採用候補者の皆様にはご連絡する予定だったのですが、遅くなってしまいました……。採用候補者の皆様にはメールか電話をさせていただくと思いますので、よろしくお願いいたします!

投稿者 otsuka-eb : 17:53