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ファイナルファンタジーXI●Bekunaiタブ変換コラムH な【ナイト】


2007年07月05日

 ヴァナ・ディールには2種類の冒険者がいる。
特定のジョブに強い思い入れを持つ者と、それ以外の者だ。
「あなたのメインジョブは?」と聞かれたときに、
つねに同じ1つのジョブを答える者と、
そのときにレベルを上げているジョブを答える者、とも言える。

 わしは、表向きは後者のタイプで、「そのジョブをやっているときに楽しければ、
それがメインジョブ。レベルが低くても、それがメインジョブ」と言い続けている。
しかしその実、いつどんなジョブをプレイしているときでも心から離れないものがある。
それが、ナイトだ。

 わしがヴァナ・ディールにやって来たのは、2002年の8月だった。
当時、ジョブの数はいまと比べてずっと少なかった。誰もが選ぶことのできる基本の6ジョブ、
すなわち戦士、モンク、白魔道士、黒魔道士、赤魔道士、シーフと、
特定のクエストをクリアーすることで選択の権利が生じるエクストラジョブ、
つまりナイト、暗黒騎士、獣使い、吟遊詩人、狩人の合計11種類だった。

 当時のわしは、「侍になる!」と心に固く誓ってしまった。
ヴァナ・ディールにジョブとしての侍が登場するのは2003年4月に
『ジラートの幻影』を待たねばならず、そもそも当時は侍が追加されるという話など微塵もなかった。
それなのにわしは「侍はかならずジョブとして選べるようになる。そして、わしは侍になる!」
と決めたのだった。つまりこれ、妄想である。
 妄想はそれだけでは終わらない。
「侍もエクストラジョブとして追加されるはずだから、
侍になるにはなんらかの条件をクリアーする必要があるだろう。
優れた体術はモンクで、忠誠心などのメンタリティーはナイトで養っておくとよいにちがいない。
侍になるための条件、それはモンクとナイトのふたつのジョブレベルが30以上であることだ」。
暴走した妄想に引っ張られるように、わしはまずモンクを選択した。

 モンクは順調にレベル30に到達した。初心者にありがちな勘違いや、
いまだからこそ笑える珍道中をくり返しつつ、レベル30に達した。
よし、侍修行の半分は終わった。つぎはナイトだ。
 ナイトになるためのクエストは、南サンドリアの”騎士登用試験”。
かいつまんで言えばダボイの奥地にある井戸のなかから”騎士の魂”を入手する、
という内容だ。このクエスト、いまではそう難しいものではない。
遠方までのお使い、程度の感じで出来るものかもしれない。
しかし、わしがナイトを目指した当時は、かなりの難関クエストだったのである。
なぜなら、いまでは探索行動に必須とされているインビジやスニークといった
知覚遮断魔法が存在しなかったからだ。
 クエストの舞台となるダボイは、言わずと知れたオークの本拠地だ。
オークはアクティブでリンクもするし、おまけに嗅覚追尾までも備えている。
オークに見つからずに目的の井戸がある場所まで、歩を進めることは困難を極め、
当時のダボイは、阿鼻叫喚、といった言葉の意味を実感できる場所だったのだ。

 ダボイで”騎士の魂”さえ入手できればナイトになれる状態で、
わしは足踏みしていた。そのころのわしはリンクシェルに所属しておらず、
「ソロでできないことは世の中に存在しないのと同じ」だったのだ。
 ある日ジュノ下層で耳に飛び込んできたシャウトが、
わしの運命を変え、行く道を決めた。
それはナイトのジョブ取得クエストの参加者を希望するシャウトで、
記憶を頼りに書いてみれば、
「ダボイに騎士の魂を取りに行きます。ナイトになりたい方、いっしょに行きましょう」
といったものだった。
 そのシャウトで集まったナイト希望者はわしを含めて3人だった。
意外だったのはリーダー、つまりシャウトの主がすでにナイトだったことだ。
つまりこの人は、自分がナイトになりたいから仲間を募ったのではなく、
最初からナイト志望者の手助けをするつもりでシャウトしたのだった。
リーダー、かっこいい。ナイトっぽい行動だ、と思った。

 すんなりとは決して言えない状況を経て、
3人のナイト志望者は“騎士の魂”を手にすることができた。
リーダーが巧みに3人を誘導し、
それでも誰かがオークに見つかってしまったときにはそのオークを引きつけ、
川を使って嗅覚追尾を振り切り、それでも最後には戦闘不能になり……。
リーダー、かっこいい。まさにナイト!

 こうしてめでたくナイトとなったわしだが、
リーダーの颯爽たる騎士ぶりをに憧れを抱いていた。
すでにわしにとってのナイトは、(勝手な妄想による)侍への通過点ではなくなっていた。
また、当時はゲームを離れた現実の世界で自分の計画どおりに事が進まないことが多く、
己の無力さを痛感していた時期でもあった。
そのせいで、「せめてゲームのなかだけでも人を”守りたい”」
と思ったことも無関係ではない。

 以後3年とすこしのあいだ、わしはナイト一筋で突っ走った。
フレンドに「ナイトだからって優等生みたいに行動する必要はないんだよ」
なんて言われながらも、サンドリアの芝生には足を踏み入れず、 
道の端を通るようなナイトだった。

 ナイトがわしにとって特別なジョブである理由は、
字義どおりのロールプレイに没頭出来たからだと考えている。
ナイトはこんなジョブである、と自分で考え、自分で決め、
そして自分でそのとおりに行動する。
デジタルデータとして与えられる機能に、
アナログな感情を加えることがロールプレイなのだ。
 わしにとってのナイトは”守る者”であり、”信じる者”だった。
モンスターの攻撃を華麗にかわすのではなく、一身に攻撃を受け止める。
徐々に削られてゆく自分のHPをケアルで回復し、
それだけでは足りない分はパーティの回復役を信じて
モンスターの標的であり続ける。
洗練されたアーティファクトで泥臭さを包むのが、
わしにとってのナイトだった。

 ナイトのジョブ取得クエストでお世話になり、
その後3年間のわしのヴァナ・ディールでの生き方を変えてしまったリーダーの名前は、
そのときに作り始めた”恩人リスト”のトップに、いまでも残っている。

●Bekunaiプロフィール
Alexanderワールドで活動するガルカ。所属国はバストゥーク。読みかたはそのまま「べくない」で、落語の『やかんなめ』の登場人物からの借用。「武士に仕える者」の意味だとか。ヴァナ・ディールでの冒険暦は古く、今年で5年目に入り、プレイ時間は550日以上。白魔道士、赤魔道士、シーフ、ナイト、狩人、コルセアの6ジョブがレベル75。メインジョブはコルセアだと言い張っているが、白魔道士か赤魔道士でいる時間が全体の8割を占める。鍛冶スキル100。ヴァナ・ディールでの趣味は通りすがりの辻ケアル・辻プロテスで、辻ケアル隊の隊長を自認するものの隊員は自分だけ。このごろは「ふとした出会い」を求めてヴァナ・ディールをぶらついていることが多い。本名の田原誠司で週刊ファミ通のクロスレビューに時々登場する。

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投稿者 online_editorial_dept : 2007年07月05日 13:03

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