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ファイナルファンタジーXI●Bekunaiタブ変換コラムF あ【ありがとう。】


2007年07月03日

 ヴァナ・ディールには2種類の冒険者がいる。
 「ありがとう」、「おめでとう」と言うときにキーボードを1文字ずつちゃんと打つ者と、
タブ変換機能を使ったり、おめ、あり、などと省略する者だ。

 いずれのタイプであっても、「ありがとう」などの感謝を示す言葉と、
「おめでとう」といった祝福を表す言葉を言う、という点は共通している。
パーティ中、ほとんどチャットによる会話に参加しない無口な冒険者であっても、
「おめでとう」、「ありがとう」といった類の言葉だけはしゃべるようだ。
まるでそれがヴァナ・ディールにおける最低限の礼儀として定められているかのように、
「ありがとう」、「おめでとう」だけはちゃんと言うのである。

 しかしまあ、これだけ「おめでとう!」という言葉が飛び交う世界も考えてみれば珍しい。
 経験値稼ぎのパーティで誰かのレベルが上がると、
「おめでとう」、「【おめでとう!】」、「おめー」、「gratz」、「めめー」などと、
レベルが上がった以外の5人から祝福の言葉が飛んでくる。
ハイペースで敵を倒し続けるあわただしいパーティーだと、
レベルが上がった本人が気づかずに、いっしょになって「おめでとう」なんて言ったりもする。
 「おめでとう」は、ヴァナ・ディールで冒険者に起こるあらゆる変化に対して使われる。
レベルが上がったときはもちろんのこと、
デュナミスで希望しているアーティファクトを入手したときや、
「合成スキルが0.1上がった」、「新しいウェポンスキルを習得した」、
「クエストをクリアーした」、「レンタルチョコボの料金がいつもより安かった」などなど、
リアクションはほとんど「おめでとう」で済まされてしまう。
 ときには、「敵にからまれて戦闘不能になった」と言っても、
「おめでとう」と返ってくることすらある。
ヴァナ・ディールにいる限りは万能の合いの手と言ってもよいだろう。

 しかしこれは不思議な現象でもある。
なぜなら、我々は現実の日常生活において、頻繁に「おめでとう」と言ったりしないからだ。
すくなくともわしは、ほとんどない。「ありがとう」なら、
日常生活で人と接触する機会のある人なら、
自分でも気づかないうちにかなりの回数を口にしているはずだ。
しかし。
「おめでとう」は、結婚式場に勤めているといった、
かなり特殊な環境にある人しか口に出さない言葉だと思う。
 わしが「おめでとう」と言うのは、新年の挨拶を除けば、
誰かの誕生日だとか、子供が生まれたときとか、受験に合格したときか、
病院から退院したときくらいだ。
すくなくとも「今日は運がよくて、待ち時間全然なしで電車の乗り継ぎができたよ」
という人に対して「おめでとう」と言うことはない。
そんな状況で「おめでとう」と言えば、言われたほうが不思議な気持ちになると思う。
だいたいは、「そりゃよかったね」で済ませてしまう。

 現実の生活とヴァナ・ディールでは、「おめでとう」の使用頻繁にはかなりの差がある。
この原因は、現実の生活とは文字どおり「現実の生活」であり、
そうそうお祝いばかりもしていられないのに対して、
ヴァナ・ディールは基本的に「祭りの世界」だからなのだと思う。
とてもとても強い相手に対して剣を振りかざしたり、
2日に1回は蛮族が街に攻め込んできたりする世界では、
基本が祭り、祭りが日常なのだ。だから冒険者たちの体温もすこし高めで、
テンションも当然のように高くなっているのだろう。
そしてわしは、お祝いの言葉がひっきりなしに飛び交うこの世界が好きだ。

 ところで、同じ「おめでとう」と言うのに、
タブ変換機能を使ったり「おめー」などと省略せずに、
きちんとキーボードを打って「おめでとう」と言うことにこだわる人がいる。
 わしもかつては「おめでとう」は手打ちにすると決め、
その縛りを守っていた。タブ変換や「おめー」だと、どこかおざなりで、
薄ら笑いを浮かべながら口の端でとりあえずお祝いしてる、
という感じを与えてしまうかも、と考えていたからだ。
これは、手紙を書くのに、ワープロを使わずに手書きにしたほうが
心がこもっているように見える、という考え方とどこか通じるものがあるように感じる。
何にせよ手間をかけたほうがかけないよりはよいとする風潮は、ある。
それが正しい姿だと断言はできないが、
この辺にこだわる人と出会うたびに「日本人らしいなあ」と嬉しくなるのも事実である。

 とは言え、何かと忙しいパーティ中に手打ちで、
「おめでとう」と言うのがわずらわしい場合もある。
わしはものぐさの億劫がりだから、余計にそう感じることが多い。
かと言ってタブ変換機能を使うのも味気ないし……と考えた末、
わしは読みを「あり」にして「ありがとう」という単語を、
「おめ」で「おめでとう!」を、辞書に登録した。
楽をしてることはたしかだが、いいのだ、
タイピングをさぼっていないと伝わりさえすれば。

 あ、そうそう。
マクロなのか辞書登録を利用しているのかはわからないが、
わしのフレンドがお礼を言うときの文句が、「ありー(手打ち)」。
明らかに手打ちではないのだが、
わしはこの捻りの効いたユーモアが気に入っている。


●Bekunaiプロフィール
Alexanderワールドで活動するガルカ。所属国はバストゥーク。読みかたはそのまま「べくない」で、落語の『やかんなめ』の登場人物からの借用。「武士に仕える者」の意味だとか。ヴァナ・ディールでの冒険暦は古く、今年で5年目に入り、プレイ時間は550日以上。白魔道士、赤魔道士、シーフ、ナイト、狩人、コルセアの6ジョブがレベル75。メインジョブはコルセアだと言い張っているが、白魔道士か赤魔道士でいる時間が全体の8割を占める。鍛冶スキル100。ヴァナ・ディールでの趣味は通りすがりの辻ケアル・辻プロテスで、辻ケアル隊の隊長を自認するものの隊員は自分だけ。このごろは「ふとした出会い」を求めてヴァナ・ディールをぶらついていることが多い。本名の田原誠司で週刊ファミ通のクロスレビューに時々登場する。

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投稿者 online_editorial_dept : 2007年07月03日 04:35

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