![]() « 『ファイナルファンタジーXI』●気分はタブ変換B | ファミ通コネクト!オンブログのホーム | 『ファイナルファンタジーXI』●気分はタブ変換D » 『ファイナルファンタジーXI』●気分はタブ変換C2007年03月01日5日間にわたって、コネクト!オンライター・田原誠司ことAlexander在住のBekunaiさんのコラムを掲載。5つのコラムの見出し冒頭の文字をつなげると、ある言葉が浮かび上がってくるギミックとともに、ヴァナ・ディールで感じたことを綴ってもらいましょう。 なお、コネクト!オンVol.04は先週の23日(金)に発売されました。
今回の特集は、「ゲームのお金」。人気オンラインゲーム内の通貨をテーマに、金策の知恵や悲喜こもごもの面白エピソードなどが満載です。どうぞ、楽しんでください。 サイトもスタートしました。覗いてみてください! そして、3月27日発売のVol.05記事作成用のアンケートを募っています。 ………………………………………………………………………………………………………………… ト 【友達】 ヴァナ・ディールには2種類の冒険者がいる。少しでも多くのMPを欲する者と、それ以外だ。 2002年12月、わしは競売所の売買履歴のなかにチャンさんの名前を見つけた。彼が20万ギルで【アストラルリング】を落札した記録だ。なぜ? わしは考え込んだ。チャンさん、【モンク】なのに。 アストラルリングは高性能な指輪だ。装備するとHPが25減るかわりにMPが25増える。MPを少しでも増やしたいと願う魔道士にとっては憧れの装備である。ただし気軽に買える値段ではないから、「いつかはアストラルリングを」と願う者も少なくない。反面、体力重視のジョブにしてみれば何のメリットもない装備品でもある。チャンさんのジョブはMP不要のモンクだから、アストラルリングは25害あって一利なし、のはずなのだ。 さかのぼること3ヵ月、2002年の9月にわしはチャンさんと出会った。ふたりともレベルは10前後。それまでずっとソロ、つまりひとりっきりで冒険を続けていたわしに「1時間ほどいっしょに遊びませんか?」と声をかけてくれたのがチャンさんだった。わしにとって初めての【パーティ】プレイ。言葉を交わしながらの冒険には、ソロとは別次元の楽しさがあった。チャンさんは、「私はソウルの韓国人です。【日本語】のタイプが遅くてごめんなさい」と言った。事実、彼のタイピングは速くはなかったが、それは遅いのではなく、正確な日本語を使いたいという気持ちの表れなのだと感じた。 そして、チャンさんはわしにとって初めてのフレンドになった。初めての【リンクシェル】に誘ってくれたのもチャンさんだった。会うたびに彼の日本語は上達し、粋とか野暮という微妙な言葉まで使えるようになっていた。 ふたたび2002年12月。指輪を買った理由を尋ねると「プレゼントしたんです」とチャンさんは答えた。チャンさんがヴァナ・ディールでお世話になった人が、現実の世界で父親になったそうだ。「韓国では生まれた赤ん坊に指輪を贈るんですよ」と教えてくれた。お祝いとお礼の指輪、だ。リンクシェルで「チャンさんのホームポイントって【ダボイ】なの?」と彼がからかわれていた理由がわかった。チャンさんは高価な指輪の購入資金を貯めるために、何日も何日も獣人の本拠地にこもってギル稼ぎに励んでいたのだ。オンラインゲームならではの贈り物。データのかけらでしかないアイテムに、チャンさんが想いや時間を注ぎ込んだ。そしてデータはかけがえのない記念品となった。ゲームと現実の生活、デジタルとアナログ。両者が紡いだ螺旋が、人の心を動かすのだ。いいね、粋だよねと感心するわしに、チャンさんは意外なことを言った。「私は来年の3月でこの世界から【引退】します」。えっ? なんだって? 2003年3月。チャンさんの引退の理由は”徴兵”だった。多くの日本人冒険者にとっては、高校の日本史の教科書に載ってたな程度の徴兵という制度は、韓国の若者にとっては現実そのものなのだ。チャンさんにはすでに覚悟も決意もあった。そのうえで彼は徴兵まえの貴重な時間を割いて、ヴァナ・ディールでの冒険を楽しむことを選んだのだ。わしにできるのは共に楽しむこと、それだけだった。1週間、10日、1ヵ月。時間は淡々と、しかし着実に過ぎた。 チャンさん、あなたって人はまったく……と思ったのは、彼の引退を1週間後に控えた日のことだった。チャンさんとの出会いこそ彼が誘ってくれたふたりパーティだったが、そのとき以来わしらがレベル上げのパーティでいっしょに組むことはなかった。チャンさんのほうがつねに5〜10レベル分ほど先を行っていたからだ。毎日のようにヴァナ・ディールのあちこちで、珍道中と呼べなくもない冒険をくり返してきたチャンさんとわしだったが、一度はレベル上げのパーティで暴れてみたい。わしはそう思っていた。チャンさんは1ヵ月ほどまえからからレベルを上げることを止めていて、その間にわしが追い上げる形でふたりのレベル差は2となり、なんとか同じパーティーに入れるようになっていた。 わしらが入ったパーティは、【エルディーム古墳】でスケルトン族を相手に経験値を稼ぐことになった。【リーダー】は【エルヴァーン】の【暗黒騎士】。わしはこっそりリーダーにテルをし、チャンさんが1週間後に引退してしまうことを告げ、彼に連繋の〆をさせてあげたいという希望を告げた。「もちろん!」、リーダーは快く受け入れてくれた。「我は拳を極めし者なり!」という、誰も韓国人とは気づかないような【マクロ】とともに乱撃を放つチャンさんは輝いていた。 2時間ほどのパーティが終わった。「やっとチャンさんとパーティが組めたね」と喜ぶわしに「ありがとうございました」と返すチャンさん。そのときに、鈍いわしはようやく気づいたのだ。チャンさんがレベル上げを止めていたのは、こうしてわしとパーティを組むためだったんだ、と。わしが追いつくまでの間に、チャンさんから「はやくいっしょに組めるようになりましょう」などと急かされたことなど一度もない。仮にわしのレベルが追いつかなかったとしても、チャンさんは何も言わずに静かに去っていったのだと思う。チャンさん、あなたって人はまったく……。 そして引退の前日。わしは、チャンさんがいちばん好きな場所で写真を撮ろうともちかけた。しばらく考えてから、「行きたい場所が決まりました」と、チャンさんは走り出した。着いたのは【バストゥーク港】の海岸。【飛空艇】の発着の様子がよく見える場所だった。「レベルが低かったころ、いつか飛空艇に乗りたいと思って毎日ここから見てました」。ヴァナ・ディールでは相当な経験を積まないと飛空艇に乗ることができない。もちろんわしらはとっくに乗れるようになってはいたが、憧れを抱いていた日々を忘れないのがじつにチャンさんらしいと思った。 引退当日、リンクシェルによるチャンさん送別イベントが催された。【サンドリア】を舞台とした隠れんぼだ。15人のメンバーが街のあちこちに散り、物陰に潜む。鬼のチャンさんが街中を走り回り、仲間たちを見つけていく。見つかった者はチャンさんといっしょに残りのメンバーを捜す。見つけてほしいけれど見つかりたくない。わしはそんな気持ちで隠れていた。仲間の姿を捜しながら、チャンさんは何を思っただろう。ひとり、またひとり。ついにチャンさんは全員を見つけた。グラフィックに変化はないのに、チャンさんの顔が火照って見えた。【北サンドリア】の【モグハウス】前で、LSメンバーが2列に並んでチャンさんのための花道を作る。その真ん中を駆け抜け、モグハウスに消えてゆくチャンさん。「おかしいですね。私は男なのに涙が止まりません」。 チャンさん、行ってらっしゃい! (週刊ファミ通 2003年5月30日号 ソフトウェアインプレッションに掲載された原稿に加筆・修正) ………………………………………………………………………………………………………………… ●Bekunaiプロフィール 投稿者 online_editorial_dept : 2007年03月01日 19:09 トラックバックこのエントリーのトラックバックURL: |






