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『ファイナルファンタジーXI』●気分はタブ変換A


2007年02月27日

5日間にわたって、コネクト!オンライター・田原誠司ことAlexander在住のBekunaiさんのコラムを掲載。5つのコラムの見出し冒頭の文字をつなげると、ある言葉が浮かび上がってくるギミックとともに、ヴァナ・ディールで感じたことを綴ってもらいましょう。

なお、コネクト!オンVol.04は先週の23日(金)に発売されました
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ネ 【眠くなりました】

ヴァナ・ディールには2種類の冒険者がいる。寝落ちに対して寛容な者と、そうでない者だ。たまに、またはしばしば寝落ちする人と、絶対にしない人、とも言える。

 いまさら説明するまでもないとは思うが、寝落ちとは「プレイ中にいつのまにか寝てしまうこと」だ。キャラクターはヴァナ・ディールにいるのに、いわゆる「中の人」が意識不明になっちゃう状態。ヴァナ・ディールにいるキャラクターは棒立ちかヒーリングしたまま動かなくなってしまう。ときには移動中に寝落ちして、そのまま走っていったあげくに壁にぶつかって、体全体でいやいやをするようにじたばたし続けることもある。いずれにせよ、【パーティ】や【アライアンス】のメンバーにとっては困った事態となる。そこで、機能を使って音を出したりコントローラーを振動させたり、場合によっては携帯に電話をかけたりして起こすこともある。それでも起きない場合は、そのままほ放っておくしかない。放置、放置。

わし自身は寝落ちに対してはとても厳しく考えていて、自分では絶対に寝落ちしないことにしている。「しない」と決意すればしなくて済むのが寝落ちだからで、【リンクシェル】では「一度でも寝落ちしたら【引退】する」とまで言い切ってしまっている。
これほどまでに寝落ちに神経を尖らすのは、わしが4年まえに体験した、パーティメンバーの初めての寝落ちが原因となっている。

当時は北米でのサービスが始まるまえで、ヴァナ・ディールにいる冒険者の99%以上が日本人だった時代だ。たしか、わしはレベル30台中盤の【ナイト】だったと思う。パーティでの戦闘が楽しくなってきたころで、その日は【ダボイ】でのレベル上げパーティに参加することができた。
   
細い通路を【キャンプ】として、時々キャンプ地のどまんなかに出現するオークに慌てたりしながらも、狩りは順調に進んでいた。異変が起きたのはスタートから1時間ほど経ったころで、パーティの【白魔道士】の動きが怪しくなってきた。【ケアル】のタイミングが極端に遅れたり、MPが尽きているのに立ちっぱなしだったり、逆にいつまでもヒーリングし続けたり。そしてその白魔道士は、ついに立ったまま動かなくなった。これが、わしにとって初めての寝落ち目撃体験となった。パーティの他のメンバーも同様だったようで、「白魔道士さん、寝ちゃったみたいだけどどうしましょうか?」「起きるかもしれないから、このまま続けてみましょうよ」ってな会話があって、狩りを続行した。 当時、機能はまだ実装されていたかったと思う。寝てしまった人に音や振動で刺激を与える方法がなかったのだ。
パーティのメイン回復役である白魔道士さんが寝てしまったことで、ケアルができるのは【赤魔道士】と、ナイトであるわしのふたり。毎回総力戦といった様相になったが、それでも死者を出すことなく5人でがんばった。ときにはキャンプ地に出現したオークが意識不明の白魔道士にからんだりして、「白さんに手を出すなー」なんて叫びながら、それなりに楽しい時間を過ごした。
これだけなら、どちらかといえば良い思い出だ。しかし、1時間ほどあとに目覚めた白魔道士のセリフがよくなかった。それまでまったく動かなかった白魔道士が、わしに突然ケアルをし、こう言ったのだ。「寝ちゃってたか。でも経験値増えてラッキー。じゃ、本格的に寝るわ」。そして【デジョン】。
白魔道士が寝ている間は一致団結して、まるで眠り姫を守る衛兵のように奮闘していたわしらだったが、この言葉を聞いてしらけてしまった。そして疲労感だけを残して解散したのだった。これが、わしが「寝落ちダメ! 絶対!」と思うようになった原因である。

それから4年。【クロウラーの巣】でのレベル上げパーティでのこと。レベル40台中盤のパーティである。

 わしは即座に「それならすぐにやめたほうがいいね」と答えた。冗談じゃない。

そのパーティーは【英語】【日本語】混成で、わし以外の日本人は【ヒューム】女の白魔道士だけだった。白魔道士は英語を使うことが一切なく、わしとの会話でも「ほむ」しか言わないので、それが否定の意味なのか肯定なのか、どっちでもないからテキトーに打っている相槌なのかわからない人だった。

あまり効率が良いとは言えないものの、それでも着実に経験値は増えていた。 突然、それまでほとんどしゃべることのなかった白魔道士がこう言ったのだ。
 「先にあやまっておきますね。寝落ちしたらごめんなさい」
白魔道士が、タブ変換機能を使って「【眠くなりました。】」と言わなかったのは、通訳してくれという意味だったのだろう。
 わしは「それならすぐにやめたほうがいいね」となかば反射的に言ったあと、ちょっとキツかったかなあと思い、「白魔道士の寝落ちはパーティにとって致命的だからね」と加えた。このへんがわしの気の弱いところである。パーティにとって致命的であろうがなかろうが、寝落ちは絶対にしちゃならんのだ。寝落ちが許されるジョブは、いまのところは実装されていないとわしは考えている。

 彼女にしてみれば、いきなり寝落ちするよりはましだと思って言ったのだろうし、たしかにそうだ。しかし、経験値稼ぎのパーティに限らず、ふたり以上で行動している最中での寝落ちは絶対悪だと思っているわしにとっては許せないセリフだった。
 このセリフは、「先にあやまっておきますね。あなたのお金を盗んじゃったらごめんなさい」と言うのとたいして変わらないと、わしは思う。「お金」を「時間(とその他のもろもろ)」に置き換えれば、まんま寝落ちのことになる。

 わしは、人がソロで何かをしているときに寝落ちするのは自由だと思っている。権利と呼んでもいいかもしれない。その結果、抵抗することもなくアクティブなモンスターに戦闘不能にされ、経験値をごっそり失うのも個人の自由だ。
 しかしふたり以上の集団行動では「各自がコントローラーを持ち、モニターの中で起きることに対して集中していること」が暗黙の了解だと信じているわしにとって(バレないように冷蔵庫に飲み物を取りに行ったりはするけど……)、寝落ちは「できれば避けてほしい」ではなく「絶対にしてはならない」行為なのである。
 寝落ちは避けることができる。途中で寝てしまいそうならパーティに入らなければいいし、猛烈な睡魔が突然襲ってきたら、その旨を告げてパーティに対処法を相談すればいいだけの話だ。
 その場でパーティを抜けてくれたほうが、そのときになって初めて、いると思っているのに寝ちゃってたと判明するよりはずっとましだ。事態は、ドライブ中に助手席の彼女がいつのまにか寝ちゃってた、ということより遥かに深刻なことになるのだから。

 ヴァナ・ディールにはいろんな冒険者がいて、わしのように寝落ち絶対反対派もいれば、寛容な人もいる。寝落ちを一度もしたことのない人もいれば、常習者もいる。
 寝落ちをしてしまう人は、おそらく心のどこかで「しかたがない」と思っていて、寝落ちすることを自分に対して許しているのだろう。寝落ちすることがキャ ラクターの色付けのひとつとなってしまっていて、周囲からもネタの一種のように容認されている人もいる。実際、わしにとっても、寝落ちが立腹の種にならない人がいる。昇華して芸となった寝落ちだ。
 でも、「さっきまで走り回ってたのに寝ちゃったわ。かわいいものね」で済まされるには、子供と大人という立場の絶対的な違いが必要だと思う。すくなくとも冒険者同士は、冒険者であるという一点において、対等の関係であるはずだ。

 やっぱり、寝落ちはいかんなあ、とわしは思うのだが、一度だけ「一本取られたな、こりゃ」と思ったことがあった。
それは、パーティ中に寝落ちしたメンバーへのNAナイトの行為だった。彼は/emotionの機能を使って、こうしたのである。
「○○(ナイト) laid a blanket on △△(寝落ちした人) softly」(ナイトは△△にそっと毛布をかけた)
ちくしょう、あんた、本物のナイトだぜ。

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●Bekunaiプロフィール
Alexanderワールドで活動するガルカ。所属国はバストゥーク。読みかたはそのまま「べくない」で、落語の『やかんなめ』の登場人物からの借用。「武士に仕える者」の意味だとか。ヴァナ・ディールでの冒険暦は古く、今年で5年目に入り、プレイ時間は400日を超えた。白魔道士、赤魔道士、シーフ、ナイト、狩人、コルセアの6ジョブがレベル75。メインジョブはコルセアだと言い張っているが、白魔道士か赤魔道士でいる時間が全体の8割を占める。鍛冶スキル100。ヴァナ・ディールでの趣味は通りすがりの辻ケアル・辻プロテスで、辻ケアル隊の隊長を自認するものの隊員は自分だけ。このごろは「ふとした出会い」を求めてヴァナ・ディールをぶらついていることが多い。本名の田原誠司で週刊ファミ通のクロスレビューに時々登場する。

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投稿者 コネクト!オン編集部 : 2007年02月27日 16:50

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