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作家・長嶋有とE3を歩く!B あるいはロスサントスの街の3人


2006年05月17日

現地不良コーディネーターの案内で、
『グランド・セフト・オート・サンアンドレアス』の舞台を歩く。

In-N-Out Burgerのテラスで、フレッシュなバーガーを楽しむ。
日本では聞けない鳥のさえずりが心地いい。
Amoeba Musicで、日本では売っていないソフトをドカ買いする。
半袖のユニフォームに隠れきれないほど大胆に、
日本的なイレズミを彫った店員さんが前を塞ぎ、指を突きつけて脅してくる。
「Don't you go up the stair with that paper bag!!(紙袋を持って2階に上がるな)」
「I'm sorry」
この場所では、とても正しい接客術だ。
仕事熱心な店員さんに感心した。

ああ、楽しい。
長嶋有さんも、アテンドのM君も、僕も、
5月にしては熱い陽光を受けながら、
ロスサントスの街を堪能していた。
午前中にE3会場の取材は済ませてある。
夜は長嶋有さんがSCEのパーティーに出席だ。
いまだけ、観光客でもいいよねぇ。

夕方。
用事があるとグズる現地不良コーディネーターと、
ロスサントスの街に似合う、男っぽい握手で別れる。
そろそろ、パーティーの時間だ。
長嶋有さんを会場であるDodger Stadiumの巨大駐車場に送らねばならない。
通りに出て、タクシーを捜す。
なかなか来ない。
通り沿いに進み、交差点で待ち構える。
やっと1台が来て、手を上げる。
目の前を通り過ぎた。あれ、乗車拒否?
仕方がなく、遅れてやってきたもう1台のタクシーを止める。
乗り込むとき、乗車拒否をしたタクシーがUターンをしてこちらに走ってくるのが見えた。

ドライバーに場所の説明。
なかなか伝わらない。
そんなとき、Uターンしてきたタクシーのドライバーが近づき、
窓ガラスを激しくノックした。
僕らを乗せたドライバーに大声で何かをまくしたてる。
どうやら、
「この日本人たちは俺の客だ、勝手に乗せるな」
と言っているらしい。
そのまま、怒ったドライバーは客席のほうにもやってきて、
指輪の部分で、ガツンガツンと窓ガラスを殴る。
「俺を止めておきながら、なぜ違うタクシーに乗っている!」
めっちゃ、怒ってるよ。こえ〜。
僕らを乗せたドライバーは、
「クレイジーマン」
と言って、怒ったドライバーを置き去りにしたまま走り出した。

後ろを見ると、怒ったドライバーがタクシーに乗り込みあわてて走り出した。
数分後、後ろを見ると、ついてきている。
そのまま、車間距離を短く、意思を顕にした走り方で離れようとしない。
同じ方向に走っているだけ?
それとも目的地に着くまで追いかけてくるつもりなのだろうか?
ハイウェイに入っても、ピッタリと後ろをついてくる。
決定的だ、これは。
流しのタクシーがハイウェイに入ることはありえない。
執拗。変質的。嫌な意思がもっと顕になった。
僕らが目的地で降りるのを狙ってる!
追いかけてくる、ブルーとイエローのツートンのタクシー。
カーチェイスが始まったわけだ。

僕らを乗せた運転手は、またもや
「クレイジーマン」
と言い、神経質にバックミラーを気にしだす。
車内の僕らも、
「こりゃ、やばいねぇ」
と動揺しだす。
これから向かうのは、Dodger Stadiumの巨大駐車場。
昨年も出席した長嶋有さんの記憶では、
広大な敷地すぎて、まず人がいないそうだ。
そこで降りて、置き去りにされた僕らが会場まで向かう間がマズイらしい。
怒ったドライバーと僕らしかいない駐車場。
何か危険にさらされても誰も気づかない……。
ロスサントスの街から拾ってきたトラブル。
どうするどうする?

後ろにピッタリとくっついてくるドライバーの目的は、
僕らにしたら最悪かもしれない、と長嶋有さん。
芥川賞受賞作『猛スピードで母は』の中で、
主人公・慎は、夜中になっても帰ってこない母親とその恋人を心配し、
最悪の事態を想像する。はたして、実際もそうなってしまうのだった。
作家・長嶋有の創作の個性というべきもの。
それは今の状況でも発揮され、このトラブルの結末も同様になりそうだ。
「職業柄なんだろうか、最悪の展開をついイメージしてしまうんだなあ(笑)」
長嶋有さんの業のようなもの。すげーと思った。

いよいよ、ハイウェイの降り口が近づいてきた。
シートに深く沈みこんで後ろを伺う。
長嶋有さんは大胆にもデジタルカメラを向けてモニタリングしている。
込んでいたハイウェイだからか、
怒れるタクシーの前に数台の車が割り込んでいた。
タイミングよく、僕らのタクシーは降り口に逸れる。
そのまま、蛇行の激しい山道のカーブを上る。
もしかして、怒れるドライバーを目隠ししたまま、
降り口に避難できたのではないだろうか。
期待を込めてうかがう。
少し遠くに車が1台。しっかりと後ろにいた。
ボディの色はわからない。
しばらく進み、僕らのドライバーが道に迷いだした。
崖際のカーブでタクシーを停め、地図を確認しだす。
何してんのさ、ヤバイじゃんか!
後ろの車が近づいてくる。
何色? タクシーか? 怒れるドライバーか?

まるで意思を持たない、そのワインレッドの車は僕らに近づき、そのまま通り過ぎた。
それ以外、車は見当たらない。
……よかった。
怒れるドライバーは僕らを見失ったのか、
それとも飽きたのか、
とにかく、追跡者はもういない。
車中、延々と心配したものの、最悪の結果は回避できたわけだ。
ただ、それ以後、我らがタクシードライバーは散々道に迷った。
思いつく場所に進み、間違いを確認するとUターンし、あるいはカーブを曲がり、
いやというほど迷走を続けた。
ロスサントスの街から乗ってきたタクシー。
僕らの受難はしばらく続いた。

翌日、帰国を前にFedexで日本に送る荷物を梱包する、長嶋有さん。
中古ショップで買ったジェネシスを大事そうにしまっている。
懐かしき名機、ジェネシス!
今週の金曜日に発売される週刊ファミ通のゲームソムリエにあるとおり、
物自体に宿る思い出をアメリカで手に入れたのだろうか。
何本かの中古ソフトもある。
それらに混じって、『グランド・セフト・オート・サンアンドレアス』のソフトが見えた。
ロスサントスの街のトラブル。カーチェイス。そして道に迷うタクシードライバー。
長嶋有さんは、プレイのたびに思い出すのだろうか。


●オンラインゲームで何か思い出深いエピソードがあったら、
 教えてください。最初に、そのゲームのタイトルを明記してね。

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投稿者 online_editorial_dept : 2006年05月17日 17:54

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