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目覚めを知らない悪夢〜『Alan Wake』とモダンホラーの世界 PART2 |
2010/05/28 (金曜日) 堂廻り、目眩み、そして『Alan Wake』…。
前回までのあらすじー筆者はこのゲームを"フルHD時代に甦ったモダンホラーゲーム"として解釈し、その由緒正しい血脈について思う存分書かせてもらったが、肝心のゲームそのものには、ディティールに突入する前に文字数、そして自分の体力が尽きてしまった。というワケでPART2では、サスペンスアドベンチャーとしての『Alan Wake』から少し離れて、アクションゲームとしての『Alan Wake』に注目してみたい。 “光”は懐中電灯を使い、“弾丸”には拳銃を入手しなければならないが、光源や武器には様々なランクがあり、状況によって使い分けることで窮地を脱出することができるだろう。闇の住人どもにフラッシュライトを当てて、ひるませたところに弾丸を撃ち込めば倒せるが、中には足が早くて補足が難しいヤツ、ガタイがでかくて頑丈なヤツなども出現するため、撃ち損じて接近された場合には攻撃に対する"避け"を発動させて回避しつつ反撃に転じるというテクニックを磨くのも重要だ。 このへんのバトルのゲームデザインは、さすが開発REMEDY社といったところだろう。REMEDY社は日本では馴染みが薄いが、ROCKSTAR GAMESのハードボイルドアクションシューター『マックスペイン』の開発元でもあり、グラフィックのレベルは言わずもがなの最高潮で、夜と霧、光と闇を利用したアクションや状況設定がプレイヤーの恐怖心を煽ってくる。 黒くモヤモヤした霧に包まれた闇の住人たちにフラッシュライトを最強レベルで当てることでひるみ、そのスキに弾丸を撃ち込むのだが、真っ暗な森の中で閃光が走る様が美しく奇怪なコントラストを演出しているあたりに卓越したセンスを感じた。まさにこれこそモダンホラーの世界観だからだ。スゲエぜREMEDY! 原稿以外にもブライト・フォールズ内の史跡や観光名所の調査、収集系アイテム、地元DJがしゃべくるラジオなどが用意されているが、筆者が注目したいのはズバリ“テレビ”だ。ゲーム内に登場するテレビモニターは単なるオブジェクトではなく、鑑賞することができる。プログラムは短編ミステリードラマ『NIGHT SPRINGS』。約5分ほどの実写ドラマ(ココ重要!)で、奇怪で不可思議な物語が展開する。観る人が観れば、それが『トワイライト・ゾーン』へのオマージュであることが察知できるだろう。 1969年にアメリカで制作されて以来、幾度となくリメイク、リバイバルが繰り返されたモダンでありながら古典でもあるSFミステリードラマシリーズで、『ウルトラQ』や『世にも奇妙な物語』の元ネタともされている。そんな『トワイライト・ゾーン』ソックリのドラマがゲーム中に何本も鑑賞できるんだから、全部観ないと気が済まないというもの。粋な仕掛けとは、まさにこのことである。ちなみに筆者は『トワイライト・ゾーン』なら1983年の劇場公開版『トワイライトゾーン/超次元の体験』がフェイバリット作品。細かく語り出すと横道に逸れたまま戻ってこれなくなるので割愛するが、ジョン・ランディスという名監督の運命を変えた1本とだけ書いておく(蛇足ながら、筆者は『トワイライト・ゾーン』よりも『アウター・リミッツ』のほうが好みだったりする)。 「この話、以前も何か読んだ記憶がある……もしかして?」 この既視感の正体が気になって、蔵書を引っくり返して調べたところ発覚した事実は、トンデモないものだった。またまたズバリ断言してしまおう。 『Alan Wake』とは『ドグラ・マグラ』だと! この論説は、あくまで筆者の妄想にすぎない(それこそアラン並みの)。しかし、ゲームを進めれば進めるほど、『ドグラ・マグラ』との共通点が数多く発見できるのだ。そもそも『ドグラ・マグラ』とは何か? ご存知ない読者もいるやもしれないので、簡単に説明させてもらおう。『ドグラ・マグラ』は、いまから75年前の1935年(昭和10年)に刊行された、日本を代表する幻想文学作家・夢野久作による探偵小説である。しかしその内容は狂気に満ちており、「読了後は必ず発狂する」とまで云われた複雑怪奇な物語は“日本探偵小説三大奇書”の1つに数えられている。なにしろそのタイトルの意味すら「隠れ切支丹の呪詛の言葉」だとか「堂廻り、目眩み」の訛ったものなど諸説あるものの、どれも定かではない。果たしてどんな物語なのか? 舞台は大正15年頃の、九州帝国大学医学部精神科の独居房に閉じ込められた青年が一人称で語る独特のスタイルで奇怪な事件が進行する。その詳細は要約はおろか、まともに読んでも内容を他人に説明するのが難しい。故に大変ザックリとした解説をしてしまうと、自分(主人公)は過去に発生した殺人事件に関わっているが、自分は物語の中で、精神病患者が執筆したと思しき書物『ドグラ・マグラ』を発見し、そこでは自分の関わったとされる多数の殺人事件に関する真相が記されていたが、その犯人は胎児の見た夢だったというもの。非常に難解ではあるが、『Alan Wake』と同様のロジックが多く見受けられるのも事実。 前後編に渡って散々モダンホラーだのスティーブン・キングだのと書いたが、行き着いた結論は夢野久作の世界。考え過ぎなのかもしれないが、様々な文化が洋ゲーを通して発信され、最終的には日本に帰結するのだと、こじつけることもできるし、マジでそう信じる自分もいる。何だか筆者自身がアランになったような、胡蝶の夢を見ているような不思議な感覚に包まれてしまったが、実はそんな心理状態に陥ること自体が、『Alan Wake』というゲームの最終目的だったのかもしれない。 さて、そろそろ文字数も尽きてきたので、またあの鬱蒼としたブライト・フォールズに戻ろう。まだ原稿が全て集まってないし、観てないテレビもあれば聞き逃したラジオ放送もある。ゲームを最高難易度にすると大変シビアかつハードコアな戦いを余儀なくされるが、それを乗り越えなければ、『Alan Wake』の真実は永遠に闇に飲まれたままなのである。 ※『Alan Wake』公式サイトはこちら 青空文庫『ドグラ・マグラ』 ©2010 Microsoft Corporation. All Rights Reserved. 投稿者 マスク・ド・UH : パーマリンク|15:16 ソーシャルブックマーク |
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目覚めを知らない悪夢〜『Alan Wake』とモダンホラーの世界 PART1 |
2010/05/27 (木曜日) “胡蝶の夢”という説話をご存知だろうか? 『Alan Wake』は、そんなキングによる一級品のエッセンスを惜しげもなく投入し、さらにアメリカン連続ドラマの手法を取り入れた意欲的なタイトルと表現したくなる出来映えで、誤解を恐れずに表現するなら“遊ばせるモダンホラー”。目的はモダンホラー小説の世界の主人公になりきることであり、モダンホラー色の強いゲームは過去にも色々登場していたが、ここまで徹底してモダンホラーを題材として引用し、再現したのは初めてではないかと思う。 ちなみにゲームの中には、実際キング作品から引用された台詞も登場するが、よりによってそれが『地獄のデビルトラック』が元ネタだとわかった時には、さすがの筆者も驚きを隠せなかった。“わかってる”連中の作るゲームは違うねぇ! ちなみに筆者が最も好きなキング作品は……『地獄のデビルトラック』も当然フェイバリットだけど、やはりキングが別ペンネームのリチャード・バックマン名義で発表し、アーノルド・シュワルツェネッガー現カリフォルニア州知事主演で映画化された『バトルランナー』が最高すぎると思う。近未来の殺人テレビショーを舞台に、オペラを歌いながら登場する殺人鬼のスーパースター、ダイナモや、電飾オムツ姿のチェンソー怪人バズソーなど尋常じゃないキャラがオンパレード! 最後はシュワちゃんが殺しを喜ぶみのもんたのような番組司会者をブッ殺して映画はズバッと終わる。ちなみに日本では正月映画として公開されたのだが、正月早々映画館まで足を運んだのも筆者の忘れ難い思い出になっている(できれば忘れたい)。 『Alan Wake』の世界を構築する要素として、もう1つ重要な作品がある。デヴィッド・リンチ製作総指揮による連続ドラマ『ツイン・ピークス』だ。ゲームの内容の大きなウェイトを占めるのが、この『ツイン・ピークス』の影響力なのだ。謎めいた言葉を残す登場人物、湖に沈んだ女の死体、そしてシンボリックな小高い山と、それだけしか観光産業のない閉鎖的な田舎町などなど、設定の時点で『Alan Wake』と被る部分は多く、このタイトルが『ツイン・ピークス』や『X-FILE』などの怪奇ドラマを意欲的かつ確信犯的に再現しようとしているのが理解できる。しかもハンパな情熱ではないのがヒシヒシと伝わってくるではないか! 『ツイン・ピークス』は日本でもアメリカ製ドラマとしては久々のヒット作となり、ビデオレンタル屋では高回転率を常にキープ。リンチ独特の思わせぶりな演出や伏線の連続にかつてトリコになった人も多かったはずだ。『ツイン・ピークス』の存在がなければ、その後の『X-FILE』や『24』も存在しなかったであろう、アメリカンドラマのエポックメイキング作品である事実を忘れてはならないし、『Alan Wake』を遊ぶ前に、もしくはプレイの合間に鑑賞すれば、ゲームもドラマも相乗効果で面白くなることを保証しておきたい。 ※『Alan Wake』公式サイトはこちら ©2010 Microsoft Corporation. All Rights Reserved. 投稿者 マスク・ド・UH : パーマリンク|00:38 ソーシャルブックマーク |
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