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マスクド刑事の『L.A. NOIRE』密着24時!(前編) 10年先のスタンダード〜『L.A. NOIRE』に秘められたADVの理想郷

2011/07/05 (火曜日)

 I'm Baaaacccckkkkkkk!!!!!!!!!! そしてMAD GAMERブログ再開!!!!!!!!!!!!!!!!!
と、気を吐く前に、まずは読者諸兄の皆様に3ヶ月以上まったく更新してなかったことをお詫び申し上げます。3.11の東日本大震災以降、日本社会は大きく変わってしまいました。筆者も震災以降、色々思う所あって全ての仕事を一旦休止を決意。相棒・須田剛一氏の了解も得て週刊ファミ通連載の『未確認洋ゲー基地AREA51』も最終回を迎え、働き詰めだったここ数年間分の休暇を一気に消化する形で東南アジア長期旅行に出立。約3ヶ月の放浪を経て帰国したのがつい先日だったという次第。もちろんMAD GAMERの見聞旅行であるからして、その釣果は絶大かつ膨大極まりなく、次週以降にもこのブログで報告する予定ですので、今後ともご愛読よろしくお願いします!

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 そんなご挨拶はともかく、まずは我らがROCKSTAR GAMESが2011年に満を持して送り出した最新オープンワールド作品『L.A. NOIRE』を語らねば、MAD GAMERの名が廃るってもんである。既に本作の魅力はゲーム専門誌のみならず、様々な媒体で語られている。そのポイントは主に4つ挙げられるだろう。

「新技術MotionScanにより役者の演技と表情を完璧に再現した」
「戦後の好景気に沸き立つアメリカ合衆国社会の時代性を再現した」
「アクション性を追求ではなく、本格推理アドベンチャーに挑戦した」
「ハリウッド黄金期に制作されたノワール映画の世界観を追体験させる」

 いずれの媒体も、『L.A. NOIRE』を語る際にはこの4点に重きを置いている。そこで筆者が同じ視点で本作を語っても、それは単にプレスリリースの内容を踏襲するだけに終わってしまい面白みに欠けるので、やはりここは筆者ならではの別の切り口から本作の魅力を引き出すのが筋だろう。その切り口とは何か?


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 それは“映画”である。もちろん、1940〜50年代のフィルムノワールを語らずして、『L.A. NOIRE』を語ることはできないが、それらの映画の魅力を理解するには、相応の知識が必要となる。『L.A.コンフィデンシャル』が元ネタだということも散々語られているし、本作の元ネタとして挙げられているレイモンド・チャンドラーの探偵小説は決して若者向けのジャンルではない。3D映画や最新のド派手な演出に慣れている現代人たちにとって『L.A. NOIRE』は、ある意味非常に共感が難しいジャンルであるといえる。しかし、そこに敢えてチャレンジするROCKSTAR GAMESの思想こそ、最も語られるべきポイントだ。昨年度の最高傑作と断言できる『レッド・デッド・リデンプション』は、かつてどこのメーカーも成功しなかった西部劇というジャンルを敢えて選び、そこに最高峰の技術とセンスを投入して世界の賞賛を得た。世間の流れに逆行しつつ、そこから新たなサムシングを開拓する思想が重要であり、それは『L.A. NOIRE』にも当てはまるだろう。
 本作で描かれる世界は、単にフィルムノワールの世界を踏襲したものではない。従来のゲーム制作現場と、映画の制作現場が合体した全く新しいジャンルへの布石なのである。この論説のタイトルに「10年先のスタンダード」と書いたのは、そういう意味なのである。すでにハリウッド映画はCGI技術が進歩しすぎて内容が伴わない足踏み状態にあると筆者には思える。しかし、『L.A. NOIRE』で表現された世界観は、これまでの映画やドラマが「観るだけ」で終わっていたのに対し、これからは「観客が介入する」ことができる映画に変わることが証明された。映画作品をゲーム化するのとは全く違う、映画と同じ……否、映画以上に手間ヒマかかった手法で丁寧に作り込むことで、我々はスクリーンの中に飛び込むことが可能になったのだ。スクリーンから飛び出すのが映画の進化ではない。重要なのは、映画に参加することだ。



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 これまでのビデオゲームの制作手法は、良くも悪くもアニメに近いものだった。ポリゴンモデルがどんなにリアルになろうと、背景がどんなに美しくなろうと、アニメーターやデザイナーが作り上げたモデルに声優ないし俳優が声を吹き込み、演技のモーションをつける。その技術がどんなに進化したところで、根本部分には変化がない。
 だが、『L.A. NOIRE』は、その根本部分を変えた。役者の演技、表情、感情の機微、動きは全てトレースされ、ゲーム内に反映される。映画制作におけるCGI技術ではとっくに確立されていた手法だったが、それがビデオゲームに取り入れられるのは初めてだ。逆にいえば、実在する俳優の顔をソックリそのままポリゴン化しても、そこに命が感じられなければ意味がない。瞳の輝き、視線の動き、表情筋の微細な変化などが見えなければ、それは俳優によく似たマネキン人形でしかない。そこを極限までにリアルにすることで、初めて物語の素晴らしさやゲームへの没入感が上がる。ROCKSTAR GAMESが目指す地平とは、恐らくゲームモデリングにおける不自然さの排除であり、過去最高の没入感を目指したものではないか。そして、その思想が最も顕著に表現できるジャンルが、アドベンチャーゲームだったのではないか。筆者はそう考える。自分の足で捜査し、証拠を集め、あちこちに移動して聞き込みをし、真犯人を追い詰めてタックルで捕らえる。従来のADVではできなかったことが、すべてできる。映画のようなド派手な銃撃戦やカーチェイスもあれば、陰惨な殺害現場でシリアルキラーの残忍な犯行を目の当りにすることもある。良き相棒もいれば、汚職に塗れた腐敗役人もいる。単なるADVでもなく、壮大なオープンワールドでもない、『L.A. NOIRE』はプレイヤー自らが本当の意味で主人公として"参加できる映画"なのである。



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 と、色々な論説を展開したが、ここに辿り着くまでには様々な試行錯誤がゲーム業界でも繰り返されていた。本筋からは少し脱線するが、ゲーム+映画=演技論という部分においては、実に意外な人物が革命を起こしている。故・深作欣二監督が演出を担当した『クロックタワー3』である。実は深作演出の遺作とされる『クロックタワー3』では、ブルーバックでモーションを付ける現場において、「役者だけでなく小道具まで細かく配置することでリアルなモーションが確立する」という深作監督の指示により、これまでのパントマイム的な演技からの脱却に成功した。もちろん、フィルムノワールは深作監督にとっても重要なファクターなのは言うまでもない。あの時代に活躍した映画監督は、おしなべて皆フィルムノワールの洗礼を受けている。『サンセット大通り』、『第三の男』、『マルタの鷹』、『現金に体を張れ』…無声映画からトーキー(音声付き)映画に移行し、撮影機材の大幅な進化により夜間撮影が可能になり、技術の進歩は映画の内容にも多大な影響を与えた。そこで生まれた映画で描かれた物語は、大戦を終えて空前の好景気に沸き立つアメリカ合衆国の二度と戻らない黄金時代の象徴であり、その成熟した文化に世界中が影響を受けたのは、紛れもない歴史的事実だ。その歴史を追体験させるのが『L.A. NOIRE』なのである。  ちなみに、こういったノワール映画の影響を最も受けていた人物として筆者が連想するのは、深作欣二でもリドリー・スコットでも神宮寺三郎でもなく、『まんが道』の満賀道雄こと、藤子不二雄A先生だ。『まんが道』の富山新聞社編において、満賀は毎日のように映画のタダ券を片手にノワール映画の鑑賞三昧。特にオーソン・ウェルズの『第三の男』は衝撃的だったらしく、A先生特有の黒ベタ塗りの多い描写は、そのままノワール映画の多大なる影響を感じる。いや、思い過ごしかもしれませんが、実際に漫画界にもノワールの影響は色濃いことは、フランク・ミラーの『SIN CITY』を例に挙げるまでもなく事実である。だからきっとA先生も……(この証言は"疑う"を選んでください)。


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 いまそこにある技術に満足することなく、基礎研究を繰り返すことでカルチャーは進化する。ROCKSTAR GAMESは常に基礎研究を怠らず、数年越しでしか結果の出ない地味な作業に途方もない予算を投入し、試行錯誤を繰り返すことで新しいジャンルを築き上げた。そこに注目せずして『L.A. NOIRE』は語れないと筆者は考える。  と、まぁ色々と難しい論説を繰り広げたが、ゲーム自体は決して難しくはない。本気で刑事になったつもりで頭を使い推理すれば、おのずと真実は見えてくるだろう。その推理の合間に、是非とも細かく作り込まれた小道具に注目してほしい。フィルムノワールと連呼しているが、同時代には"B-MOVIE"と呼ばれる珍作駄作も大量に公開されていたという時代背景がある。とある事件で捜査に訪れた映画プロデューサーの仕事場には、どうしようもないタイトルの映画ポスターが数多く展示されており、そのデザインも細かく再現され、B級映画好きの筆者は思わず苦笑してしまった。  ゲーム内で捜査する事件の多くは、実際に発生した犯罪や、それを元ネタにした映画などのタイトルをひねったものが多いのも、痒いところに手が届くROCKSTAR流のお遊びである。フィルムノワール黄金時代の裏では、アメリカ政府が啓発目的でハリウッドに作らせた啓蒙映画や、テレビ以前の情報源としてのニュース映画が大量に出回っていた。ノワールの名作をオススメするのも悪くないが、本当に面白いのは、こういった評価されることのない不毛のジャンルであり、そんな重箱の隅までキッチリ再現しているのが『L.A. NOIRE』の本当に凄い部分なのである。DLCで配信予定の追加シナリオ『REEFER MADNESS』は、まさにそういった政府主導による啓蒙映画の代表的タイトルであり、その内容もまた元ネタをキッチリ踏襲している。その特殊性から日本国内では鑑賞が難しく、日本版ビデオ/DVDなども発売されていないジャンルだが、こういった文化的背景に対する理解も深めるキッカケとしても、『L.A. NOIRE』を楽しむことができるだろう。


 今回はゲームそのものの世界観を考察するという趣旨なので小難しい内容になってしまったが、次回後編では、いよいよマスクド刑事の事件簿を報告したい。両津勘吉からスタートして警視庁殺人課(リスペクト菅原文太!)、ヤクザGメンを経て火付け盗賊改めに出世するまでのマスクド犯科帳を乞うご期待!
 犯人はお前だ!!!!(と、自信満々に誤認逮捕)


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マスクド刑事のB級ノワール映画コレクションの数々。ホラーパンクバンド、THE MISFITSのトレードマークとして有名な"CRIMSON GHOST"(実は1946年の作品。『L.A. NOIRE』の時代にドンズバ!)も、この時代に登場した名キャラクターであり、『月光仮面』の悪役サタンの爪に多大なる影響を与えた……とはマスクド刑事の推理。



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※画像はすべて海外版のものです。

投稿者 マスク・ド・UH : 2011年07月05日 17:15

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