●オープン・ワールドのゲームを作るためには、その世界の生活全体を見せなくてはいけない
(編集部より:前回に引き続き、ロックスター・ゲームスのダン・ハウザー氏へのインタビューをお届けします。)
<『RDR』の時代考証>
マスク・ド・UH(以下、UH) 100年前の当時の西部の人々の生活や風俗の再現が非常に細かいのですが、どんな資料を調べて再現したのでしょうか?
ダン・ハウザー(以下、ダン) それはもう“調査”に尽きる。R★には、フルタイムでリサーチだけを専門とするチームがいるんだ。オープンワールドのゲームを作る際には、その世界における生活全体を見せなくてはならない。西部の風景を作るだけならば、サンディエゴのスタジオ周辺が、まさにそういう風景なので簡単に作れるど(笑)、当時の人々の暮らし方については、本を読んだり、米国議会図書館へリサーチャーを送って写真を集めたり、"Sears"という老舗デパートの古いカタログなどを見て当時使われていた商品の広告を見たり、昔の新聞記事を参考にして情報を集めたんだ。
このゲームの根底に流れるテーマでる、旧世界と新世界がぶつかり合っている様子がわかる情報を徹底的に拾い集めるのが重要だった。モダン・コンシューマー・アメリカン・グッズ(大量生産品)の誕生の時代だよ。
UH 登場人物たちが、女性キャラのボニーをはじめ、みんな歯が汚いところが細かいと思いました。
ダン 非常に優れたキャラクター・モデリングだね。コンピューターでは難しいことだが、フィーリングを大事にした。土で汚れた、有機的な質感の中から、人々が吹きさらしの世界で生きている感じなど、開拓時代の人たちの厳しい生活を表現している。そうでないと田舎がデジタル化して見える。
<ゲーム史上最高の馬>
UH もう1つの『RDR』の主役といえば「馬」ですよね。馬を作るにあたって、一番苦労した部分は、どこでしょうか?
ダン アニメーションと、それを取り扱うメカニズムだ。GTAでは50種類くらいのクルマとバイクが走っていれば良かったけど、馬には個性がある。だから、苦労したのは馬のコアの部分のデザインと、乗馬を楽しくすることかな。馬は、このゲームでは重要な部分を占めるので、乗っていて楽しくて、しかも本物のように感じられないといけないと考えていたんだ。
UH ロデオの時の激しい動きや、太ももの筋肉、尻尾の動き、鬣(たてがみ)が風でなびくところなど、ゲーム史上最高の完成度の馬でした。
ダン それが我々のゴールだ。大きくて強い馬もいれば、小さくて弱い馬もいる。このゲームを作り始めて、色々新しいことを試したわけだが、最初から神経を尖らせたのが馬だ。馬の完成度が低いと、このゲームは駄作になってしまうからね。見た目もメカニズムも、これまでのゲームで登場した中では、一番いい馬だと思うよ。
UH 野良馬を捕まえてロデオで馴らすのは、GTAでクルマを盗むのと同じくらい興奮しますよね。長く乗り続ければ、馬との信頼度が増すところも、クルマでは味わえなかったです。
ダン それ以上に楽しいよ。GTAではクルマは乗り換えられるので、そういう興奮はない。乗り続ければ、それに従って馬の行動も上達するから、ぜひとも馬との交流を楽しんでほしいね。交流すれば、信頼度が上がり、それに従って馬の行動も上達するからね。
<オープンワールドのゲームデザイン論>
UH 『RDR』のマップは、実際どのぐらいの広さがありますか?
ダン これまでで最大。『GTA:サンアンドレアス』の倍くらいか、それより大きいかも。しかし重要なのは、プレイヤーが完全に入り込んで、自分がどこにいるのか、わからなくなるようなマップにすることだった。荒野の探検を実感して欲しかったんだ。古典的な西部劇の様々な風景、山脈からメキシコの砂漠まで、それぞれが大きくてボリュームがある。これはとても重要なことだ。アメリカの西部は、特に英国や日本から来た人にとっては、とにかく巨大に感じるからね。このフィーリングをゲームに入れたいと思ったんだ。
UH 植物や岩といった自然の造形物を作るのは、ビルや家といった人口構築物を作るより大変だったのではないでしょうか?
ダン 技術面、モデリングで一番苦労したのは“断崖絶壁”だね。このワールドには崖がたくさんあるが、これを良く見せるのに大変苦労した。崖はすべて手作業で作ったんだよ。どうしてもコンピューターは直線が得意だからね。それを風や雨や太陽で曲げられたように見せ、環境が有機的に感じられて、風が吹いて埃が立って、陽が照り返しているように見せることが重要だ。それが全体としてのチャレンジだった。過去のゲームでは、片田舎をあれほど美しく見せていなかったからね。これはチャレンジだったが、全てのゴールでもあったんだ。
UH なるほど。天候変化や夜空の美しさなどは、尋常ではない完成度だと思いましたが、そのような苦労があったわけですね。
ダン そしてゲームデザイン上の重要なポイントだが、ゲームを作り始めると起こる問題には、それに直面するまでわからない。このゲームを作っていて、自分たちは、オープンワールドについては誰よりも作り方を知っていると思い、ゲームデザインに真面目に取り組んでいたが、ここでGTAでは直面しなかった問題に直面した。それは「片田舎がとても退屈」だということ。これを解決する方法を見つけなくてはならなかった。GTAではクルマや人間があちこちにいて、警察がいて、エンターテイメントを提供してくれるし、あれこれインタラクションが可能なので、様々なミニゲームを作れば、それで完成する。これは過去にやってきたことだが、今回は町があって、誰かがミッションをくれても、それが終わればやることがなくなってしまう。そこでシステムを見直して、新しい発明しなくてはならなかったんだ。そのためにコンテンツを二層のレイヤーに分けてみた。1つは「ビーツ」と呼ぶシステムだが、これはプレイヤーにタスクをたくさん与える。道を進むと強盗が他人を襲っているとする。そこに加担して強奪することも出来るし、助けることも可能なら、何もせずに見ていることもできるようにしたんだ。
もう1つは「フェリコ」システムで、鳥や熊などの動物が登場して、逃げ惑う人たちを食べてしまうかもしれない。動物を倒すこともできるし、放っておくことも可能だ。この2つのシステムが相互に働く、二層に構築されたイベントが有機的にプレイヤーの周りで発生する。動物はプレイヤーを追いかけたりもする。これが『RDR』のゲームデザインの上で、大きな突破口となったんだよ。
UH 二層のレイヤーによるゲームデザインですか! そうやって解り易い言葉で表現できることが、すごいです。
ダン ありがとう。プレイヤーは常にそのワールドにいるという感覚を持っているけれども、ストーリーに沿ったミッションをやってもやらなくても、実はあまり変わりはない。ストレンジャーも野生動物も関わるミッションも、ミニゲームにも、すべてテーマに一貫性があれば、プレイヤーには「自分はこの世界に生きているキャラクターだ」と感じてもらえるからね。もちろん、新しい何かを求めるゲーマーたちとの戦いみたいなところもあるよ。だからこそプレイヤーの没入感を高めることに努力しているんだ。
<DLCと今後のR★の展開>
UH 『RDR』は、本編以外にもオンライン・マルチプレイヤーが作り込まれていますよね。また、すでに海外では、マルチプレイヤー・モード対応のDLCが何本か配信されていますが、今後の展開を教えていただけますか?
ダン 近い将来、日本でもDLC展開ができるはずだから日本のファンは期待して待っていてほしいね。今は『RDR』の世界にゾンビが登場する『Undead Nightmare(アンデッド・ナイトメア)』が最新リリースのDLCとなる。きっと日本のファンにも気に入ってもらえると思うよ。コンセプトとしては、1970年代の映画スタジオを想像してもらえると解り易いかもしれないね。昼間は上質の西部劇を作り、夜はB級ゾンビ映画を作っているような感じだね。1970年代のゾンビ映画風に仕立ててある。ゾンビにもゲームとしては退屈な部分があるけれども、自分たちは西部劇にゾンビを入れることで、面白いアングルを見つけたと思うんだ。何しろオープンワールドのゾンビゲームへのリクエストが一番多いからね。
UH 様々な映画のエンターティメントの味わいを、ゲームに持ち込んでいるんですね。
ダン YES! ゾンビ映画は、ある意味でカウボーイ映画と同じようにアメリカ的だ。2つのアメリカン・シネマの伝統を同じ世界で体験できるんだよ。他のタイトルではなく『RDR』にゾンビを取り入れたのは、どちらも同じぐらい映画的だったからなんだ。
UH また新しいチャレンジですね!
ダン そうだ。DLCは、今までと違うこと、主流でないことをやるには面白い手段だと思ったんだ。(R★が)完全なゾンビゲームを作りたいかどうかは、わからないが、このような小さなゲームを作ることは、既存の世界を面白く使う1つの方法だと思うよ。ゾンビがアメリカの片田舎にある丘を歩いているのを見ると、70年代のクラシック・ゾンビ映画のようで楽しいしね。ミッションにはシングルとマルチの両方が用意してある。そうそう! 是非とも「ゾンビ馬」の完成度も見てほしい。
UH 非常に楽しみです! では、最後になりましたが、日本人には少し馴染みの薄い西部劇の世界ですが、日本のプレイヤーには、『RDR』のどんな部分を楽しんでもらいたいですか?
ダン 一番楽しんでもらいたいのは、ゲームデザイン全体だ。ワールドにいるという経験。このゲームの強みは、そこにあると思う。西部劇には、黒澤明の映画などを通じて侍文化や日本文化に繋がる部分もあるから、日本のファンにも楽しんでもらえると期待しているし、ある意味GTA以上に共感してもらえると考えているよ。
UH 最後に、今後のR★の展開を教えてください。どんな新作を準備しているのか知りたいですね。
ダン 現在は『マックス・ペイン3』を作っている。そして『LAノアール』も開発中だ。この2本のタイトルに総力を費やしていて、両方とも順調に進んでいるよ。日本のファンにも、きっと気にってもらえると思うよ!
UH 期待してます! 本日は長時間のインタビュー、ありがとうございました!