携帯電話の方はファミ通MAXをご覧ください。

« 人間狩り!人間狩り!(『Aliens VS. Predator』) | DIARY OF A MAD GAMERのホーム | A FISTFUL OF VIDEOGAME!! 『RED DEAD REDEMPTION』REVIEW:SECONDO TEMPO »

A FISTFUL OF VIDEOGAME!! 『RED DEAD REDEMPTION』REVIEW:PRIMO TEMPO

2010/05/24 (月曜日)

rdr_360_fob_eng_jpg_jpgcopy

 THE BAD, THE UGLY, THE ROCKSTAR!!
 恐ろしいほど面白いゲームが遂にリリースされてしまった。ロックスター・ゲームズ最新作にして、オープンワールドタイトルとしては『GTAIV』以来3年半ぶりとなる超大作『RED DEAD REDEMPTION』(以下『RDR』)である。そもそもゲーム史上稀にみる数奇な運命を経て世に送り出された歴史のあるタイトルが、ここまで凄まじい進化と完成度に到達してしまうものなのか! と、思わず感心せずにはいられない。とにかくこの『RDR』に関しては、筆者的には語りたいことが多すぎるので、独断で前後編の二回に分けてレビューさせていただきたい。


 『RDR』の前評判を聞いて、多くの人が「GTAの西部劇バージョン」を連想したに違いない。確かにそれは間違っていない認識だが、正確ではないと思う。なぜなら『RDR』の目指した西部劇の世界とは、“西部開拓時代の北アメリカ大陸”の雄大な大自然を徹底的に再現するという究極のオープンワールド! これまで都市部が中心だったGTAシリーズよりも更に踏み込んだ表現を模索した結果が、失われた大自然のモデリングだった。もちろんゲームの基本的なシステムはGTAを踏襲している。馬の乗り方はGTAでいうところのクルマの操作とほぼ同じ感覚。乗り降りのボタン配置まで同じなので、GTAシリーズを遊びこんでいた人なら、速攻で西部の荒くれ男になれるだろう。
RSG_RDR_Screenshot_082
 操作感覚が慣れ親しんだゲームと同じでも、情景も違えば時代も違う。舞台は100年以上前のアメリカ大陸であるから、雄大な自然の美しさに目を奪われることもあれば、その渇き切ったに荒野に抱かれて命を奪われることもある。そこはルール無用の男の世界……テキーラ、拳銃、硝煙、サボテン、ガラガラヘビ、そして死体。『RDR』は確かに西部劇のゲームだ。ロックスターがオススメする西部劇映画も『ワイルドバンチ』『荒野のストレンジャー』などハリウッド製が多い。なにアメリカの開拓史を描いているんだからハリウッド映画で当たり前だろって? なるほど確かにその通りだ。しかし『RDR』を遊べば遊ぶほど、実は細かい部分ではハリウッド式西部劇とは似て非なるものだ。従来のハリウッド式西部劇とは、『シェーン』『真昼の決闘』に代表される、ジョン・ウェインやゲーリー・クーパーが悪党を“正義のために”射殺する勧善懲悪の世界が決まりである。日本で例えるなら『水戸黄門』の世界。「みね打ちでござる!」ってことだ。しかし『RDR』に描かれた西部劇は、ズバリ“マカロニ・ウエスタン”そのもの。粗野で、泥臭く、残酷で血なまぐさい、死と欲と悪が渦巻く西部劇の裏面映画史をベースに物語が構築されているのは間違いないだろう。その影響の度合いを分析する前に、そもそもマカロニ・ウェスタンとは何か? もしかしたらご存知ない読者もいるやもしれないので、その存在と定義について解説させていただこう。少し長くなるが、しばしお付き合いを願いたい。
RSG_RDR_Screenshot_075
 マカロニ・ウエスタンとは、1960年代から70年代にかけて、イタリアで制作された西部劇映画全般を指すジャンル名だ。その起源は1950年代後半。ハリウッドの映画業界が『ベン・ハー』など中世ローマが舞台の大作映画を撮影するため、第二次世界大戦後の復興し、美しい景観を取り戻したイタリアに押し寄せた。そして地元の映画スタッフの大量雇用を生み、同時にイタリアの映画業界はハリウッド映画の新作のエッセンスを吸収。自国の映画産業の発展に大きく貢献することになる。
 しかしそこでいきなりマカロニウエスタンが生まれたわけではなく、どんなものにも歴史と段階がある。最初のイタリア映画界はローマ近郊で撮影された『ベン・ハー』などの影響もあって“ハーキュレイス(ヘラクレス)ムービー”と呼ばれる一風変わったジャンルが人気だった。その名の通り筋骨隆々のヘラクレスがサンダル履きでデカいカタナを振り回して暴れるマッチョ極まりない映画で、ものすごい本数が制作されているが、ジャンルの特殊性から日本ではほとんど未公開。アメリカでも最近になって“SWORD & SANDAL”と呼ばれ定着しはじめたばかりである。そんな映画でもテレビも満足に普及していなかった当時のイタリア情勢の中では大ヒットを記録。大衆は映画を求めるが、もう撮るものがない。そういえばアメリカはもう西部劇映画を作ってないじゃないか。じゃあ、俺たちで思いっきり面白い、俺たち好みの西部劇を作ろう。荒野だって砂漠だって、ちょっとスペインまで行けばアリゾナに負けないぐらい広大な自然がある……!
 かいつまんで説明すると、そんな経緯で誕生したのがマカロニ・ウエスタンというジャンルだ。その最初のヒット作を飾るのは、セルジオ・レオーネ監督、クリント・イーストウッド主演『荒野の用心棒』('65)。すでにアメリカ製のクリーンな西部劇の代表的作品ともいえるテレビドラマ『ローハイド』でも主役を演じていたイーストウッドが、無精髭ボサボサ、ポンチョに葉巻、羊皮のベストに泥だらけの履き古されたブーツという出で立ちでスクリーンに登場した瞬間、西部劇というジャンルが劇的なまでの変貌を遂げた。ロックンロールがグランジとハードコアに同時進化したような感じというか、とにかく下品に、衝撃的に、そして卑怯になったのだ。
 マカロニの世界には正義はない。あるのは金だけ。金のためだけに人を助け、金欲しさに人を殺す。『荒野の用心棒』の原題が“A FISTFUL OF DOLLERS(一握りのドル札)”というのも、実に簡潔にその路線を表現している。この『荒野の用心棒』なくしてマカロニは語れない理由は他にもある。邦題が示す通り、この作品は黒澤明監督、三船敏郎主演の日本映画史に残る大名作『用心棒』の存在を抜きには語れないのだ。
 監督を務めたセルジオ・レオーネは『用心棒』を鑑賞して衝撃を受け、すぐさま西部劇版のリメイクを検討。テレビ契約のために他のハリウッド映画に出演できないイーストウッドをイタリアで撮影することで主演を合意させ、ほぼそのまんまの脚本の随所に西部劇らしいロジックを多数織り込み映画を完成させたのだが、後に黒澤サイドから訴えられてしまう騒動に発展した。
 しかし『荒野の用心棒』の大ヒットにより、イタリア映画界は一気にウエスタン作品の増産体制に突入する。そして『続・荒野の用心棒』(原題『DJANGO』)の登場により、マカロニウェスタンとは何であるかが、決定づけられるのだった。
RSG_RDR_Screenshot_069
 『続・荒野の用心棒』('66)は、タイトルこそ“続”と付いているが、セルジオ・レオーネ作品とは全く関係ない、別の映画である。監督はイタリア映画界が誇る“2人のセルジオ”の、もう1人、セルジオ・コルブッチ。主演はフランコ・ネロ。まずは泥だらけの道なき道を、馬にも乗らず徒歩で、しかも棺桶を引きずりながら登場する主人公ジャンゴの衝撃は忘れられない。まだ未見の人がいるのなら、万難を排してでも観てほしい超ド級の傑作ウェスタンである。汚泥にまみれたゴーストタウン“トゥームストーン村”を舞台に、サディズムとスプラッターの阿鼻叫喚地獄が展開! 映画が始まってから終わるまでの間に述べ百人以上が死ぬという豪快にもほどがある作品で、手持ちカメラを多用した生々しいアクションシーンと、登場人物が全員超ワケアリという設定も凄い。南軍の生き残りで人種差別主義者の白人地主ジャクソン少佐は、大勢の部下に赤い頭巾を被せたカルトを結成し、農地代が払えないメキシコ人農夫を面白半分に射殺する毎日を過ごし、対立するメキシコ反乱軍の落人集団ウーゴ将軍一派は、パンチョ顔も濃ければパンチョ魂も濃く残忍。密告者の耳を切り落とし、さらにソレを喰わせて大笑いする性格の持ち主。そんなどうしようもない対立構図の中に、これまたワケありの美女を救って衝撃デビューを飾るジャンゴの運命や如何に!

 この作品の凄いところは物語や設定のディティールなどではなく、画面全体を支配する湿った異質な空気感である。棺桶、墓場、十字架、十字を切る踊り子、死体、祈り等々、ジョン・ウェインの映画には存在しなかった異様な空気感こそが、マカロニウェスタンの醍醐味と言わんばかりの演出である。乾いた空気と湿った空気の混じり合う瞬間に銃弾が飛び交い死体が増える。この無情な演出こそマカロニ!
 日本から飛び火したマカロニの火種は『続・荒野の用心棒』によって再び日本に帰ってくる現象にも注目したい。独特のアクションシーンが展開する本作の演出は、70年代以降に制作された東映ヤクザ映画の実録路線にもピタリと当てはまる。特に深作欣二監督はサム・ペキンパーの影響が強いとされているが、筆者の私見ではセルジオ・コルブッチの手法のほうが深作演出のソレに非常に近いと感じる。読者諸兄にも是非観て比較してみてほしい。実によく似ている。
 マカロニウエスタンが盛況だったのは約10年ほどの間だったが、その間にありとあらゆる手段で殺戮が繰り返され、ありえない設定の珍ヒーローや、もはやSF的発想のユニーク武器が多数登場する有り様。その“何でもアリ感”は、第二次世界大戦後の世界を支配したアメリカ的マチズモへのイタリアからの反抗であり、正義ではなく金のために動く主人公こそ英雄という歪んだヒロイズムこそがマカロニの真骨頂なのではないか。

 だいぶ遠回りになってしまったが、以上でマカロニウエスタンに関する基礎知識は終わり。とにかく『荒野の用心棒』と『続・荒野の用心棒』の2本を観ずして『RDR』を遊ぶなかれ、である。いや遊ぶのは自由だが、絶対に観ておいたほうがゲームが面白くなる。
もちろん単なるマカロニウェスタンのゲーム化に終わっていないのがロックスターゲームズのスンゴイところ。過去最強とも呼ばれる壮大なマップの中に封じ込められた緻密な演出にも注目だし、爽快感とテクニック性の両面を追求したシューティングシステムと、西部ナンバーワンの早撃ちを目指す“デッドアイ”モードの迫力もたまらない。さらに移動手段として大活躍する、スピードに性能差がある馬たちは、大衆車からスタミナ満点の赤兎馬クラスまで多種多彩。そんな自由空間を用意された筆者が、まずどんな状況に陥ったか? 
RSG_RDR_Screenshot_066
 ある月夜の晩に狩った狼の革を売ろうとバザーに向かうも、明け方に到着してしまい時間つぶしにボケーッと村の入り口に馬を停めて立っていたら、おっさんが近寄ってきて「小麦泥棒やらね〜か?」と持ちかけられ、軽い気持ちで引き受けるも、バザー内に駐車していた小麦業者の馬車を奪った瞬間指名手配。全速力で逃げて国境警備隊を巻くも、今度はお尋ね者の賞金首に。そうとは知らずに国道を馬で闊歩してたら背後から銃撃され、また全速力で逃走。スタミナ切れそうな馬に興奮剤を投与すれば一定時間ターボ効果で逃走は無事成功。しかし逃げすぎて迷い込んだ場所は狼の巣窟。一匹殺せば、その血の匂いを嗅ぎ付けてドンドン茂みから出現する。3匹以上を同時に相手にすると危険なので、片っ端からデッドアイモードで始末。デッドアイのためのゲージが足りない場合は“嗅ぎ煙草”で復活! もれなく殺したら死体から革を剥ぎ、また売る。嗅ぎ煙草を買う。モルヒネも買えばデッドアイの効果時間が延長されるから買えるだけ買う。金を使い切ってバザーを出ると、指名手配の張り紙を発見。捕縛すれば400ドルは稼げる! そっと剥がしてほくそ笑み、口笛で愛馬を呼んで現場に向かうの繰り返し……って、俺ぜんぜんミッションやってないじゃん!
RSG_RDR_Screenshot_081
 現時点で筆者の西部開拓史は、こんな調子で全く進んでいない。進めたくても進められないほど、この作品に用意された寄り道、いや、ただブラブラしているだけで楽しいのだ。そんなゲーム、きょうびなかなかございやせん!

 とりあえず前編はマカロニ・ウエスタンの何たるかを語ることで文字数が尽きてしまったが、より細かいゲームレビューと、『RDR』というタイトルが行き着いた約束の地について、そして現代まで強い影響力と再評価のブームを繰り返すマカロニウエスタンというジャンルのゲームの関係性までドップリと語りたい。ちなみに“マカロニ・ウェスタン”というジャンル名は日本だけで使用されているジャンル名で、海外では“スパゲッティ・ウェスタン”が正式名称。外国人の友達と話す時があって「マカロニウエスタン」と言っても通じないので気をつけよう。(そんな機会はそうそうないと思うが)。そして“スパゲッティ・ウエスタン”という言葉にも、ジャンル名を体現する深い意味が込められているのである。その詳細は後編にて!
 最後にマスク・ド・UHオススメのマカロニ映画リストをオマケに付けておくので、各自DVDを探すなり借りるなりして、是非プレイ前プレイ中プレイ後のカンフル剤にお役立てください!

『殺しが静かにやって来る』
『情け無用のジャンゴ』
『ハチェット無頼』
『地獄から来たプロガンマン』
『さすらいのガンマン』
『ソルジャーブルー』
『ガンマン大連合』
『ウエスタン』
『西部悪人伝』
『夕陽のギャングたち』
『荒野の1ドル銀貨』

投稿者 マスク・ド・UH : 2010年05月24日 14:42

ソーシャルブックマーク