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目覚めを知らない悪夢〜『Alan Wake』とモダンホラーの世界 PART2

2010/05/28 (金曜日)

 堂廻り、目眩み、そして『Alan Wake』…。
 前回までのあらすじー筆者はこのゲームを"フルHD時代に甦ったモダンホラーゲーム"として解釈し、その由緒正しい血脈について思う存分書かせてもらったが、肝心のゲームそのものには、ディティールに突入する前に文字数、そして自分の体力が尽きてしまった。というワケでPART2では、サスペンスアドベンチャーとしての『Alan Wake』から少し離れて、アクションゲームとしての『Alan Wake』に注目してみたい。
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 本作には、主人公アランを襲う謎の存在が多数登場し、アランの謎解きを妨害してくる。“影の存在”もしくは“闇の住人”とされる襲撃者たちは、常に全身を黒い霧状のものに包まれ、容姿などは判別できない。しかし明らかな敵意に満ちており、ナイフや斧、時にはチェーンソーまで持ち出してアランをブッ殺さんばかりの勢いで襲いかかってくるし、実際ブッ殺されることもしばしば。ヤツらに対抗するには“光”と“弾丸”が必要になので、それらの効果がある武器を手に立ち向かわなければ、アランは悪夢から目覚めることはできないのだ。そう、闇の住人たちは夜しか襲ってこない。夜はアランにとって安らぎの就寝時間ではなく、戦いの幕開けに他ならないのだ。
 “光”は懐中電灯を使い、“弾丸”には拳銃を入手しなければならないが、光源や武器には様々なランクがあり、状況によって使い分けることで窮地を脱出することができるだろう。闇の住人どもにフラッシュライトを当てて、ひるませたところに弾丸を撃ち込めば倒せるが、中には足が早くて補足が難しいヤツ、ガタイがでかくて頑丈なヤツなども出現するため、撃ち損じて接近された場合には攻撃に対する"避け"を発動させて回避しつつ反撃に転じるというテクニックを磨くのも重要だ。
 このへんのバトルのゲームデザインは、さすが開発REMEDY社といったところだろう。REMEDY社は日本では馴染みが薄いが、ROCKSTAR GAMESのハードボイルドアクションシューター『マックスペイン』の開発元でもあり、グラフィックのレベルは言わずもがなの最高潮で、夜と霧、光と闇を利用したアクションや状況設定がプレイヤーの恐怖心を煽ってくる。
 黒くモヤモヤした霧に包まれた闇の住人たちにフラッシュライトを最強レベルで当てることでひるみ、そのスキに弾丸を撃ち込むのだが、真っ暗な森の中で閃光が走る様が美しく奇怪なコントラストを演出しているあたりに卓越したセンスを感じた。まさにこれこそモダンホラーの世界観だからだ。スゲエぜREMEDY!
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 武器は拳銃のみならず、遠方の敵を仕留めるライフルや、複数の敵を同時に倒せるショットガン、そして敵に囲まれた場合に有効な閃光手榴弾や、一定時間敵を接近させない発炎筒などがあり、さらにフラッシュライトのバッテリーは弾丸なみに消費するために電池のストックも欠かせない。それらを完全装備していたところで、どうしても厳しい局面に立たされる場合もあるが、そういう危機の時は大抵周囲にガスボンベや工事用照明器具が設置されているので、それらのオブジェクトを破壊するなり発動させるなりで、危機を乗り越えることができる。  しかし筆者が最も厄介な敵と感じたのは人間型の闇の住人よりも、無機物が突然自分に襲いかかってくる“ポルターガイスト”だ。相手はドラム缶や廃車といった、単なるゴミでしかないので銃なんか撃ってもひるむワケない。こちらに向かって飛んでくる粗大ゴミに最強フラッシュライトをブチ当てて消滅させるしかないのだが、もし電池を切らすと直撃を喰らってしまい、運が悪けりゃ死ぬので、やはり電池の残量は常に気にしておきたい。ポルターガイスト以外にも黒いタールのような物体(触れるとダメージを受ける)や、集団で遅いかかる鳥の群れなどもいるので、アランにとっては周囲に存在するあらゆる物体、生命体が敵となる。これはかなりの恐怖だ。
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 電池や弾薬、発煙筒などは探索中のステージ内のそこかしこで回収できるが、回収できるものは何も攻撃アイテムだけではない。例えば、アランが書いたとされる最新作の原稿。全てを拾い集めて読むことで、この物語に隠された謎を紐解く鍵になるのだが、ここにも簡単には全て集められない仕掛けが施されており、なかなか憎たらしい。
 原稿以外にもブライト・フォールズ内の史跡や観光名所の調査、収集系アイテム、地元DJがしゃべくるラジオなどが用意されているが、筆者が注目したいのはズバリ“テレビ”だ。ゲーム内に登場するテレビモニターは単なるオブジェクトではなく、鑑賞することができる。プログラムは短編ミステリードラマ『NIGHT SPRINGS』。約5分ほどの実写ドラマ(ココ重要!)で、奇怪で不可思議な物語が展開する。観る人が観れば、それが『トワイライト・ゾーン』へのオマージュであることが察知できるだろう。
1969年にアメリカで制作されて以来、幾度となくリメイク、リバイバルが繰り返されたモダンでありながら古典でもあるSFミステリードラマシリーズで、『ウルトラQ』や『世にも奇妙な物語』の元ネタともされている。そんな『トワイライト・ゾーン』ソックリのドラマがゲーム中に何本も鑑賞できるんだから、全部観ないと気が済まないというもの。粋な仕掛けとは、まさにこのことである。ちなみに筆者は『トワイライト・ゾーン』なら1983年の劇場公開版『トワイライトゾーン/超次元の体験』がフェイバリット作品。細かく語り出すと横道に逸れたまま戻ってこれなくなるので割愛するが、ジョン・ランディスという名監督の運命を変えた1本とだけ書いておく(蛇足ながら、筆者は『トワイライト・ゾーン』よりも『アウター・リミッツ』のほうが好みだったりする)。
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 様々なホラー作品、それも血飛沫切り株系ではなく、ジワジワと恐怖を煽るモダンホラーの世界をゲーム化した『Alan Wake』。演出、グラフィック、ゲームデザインのどれもが及第点以上のハイ・クォリティな洋ゲーである、と思った。しかし筆者は気づいてしまった……。
「この話、以前も何か読んだ記憶がある……もしかして?」
 この既視感の正体が気になって、蔵書を引っくり返して調べたところ発覚した事実は、トンデモないものだった。またまたズバリ断言してしまおう。

 『Alan Wake』とは『ドグラ・マグラ』だと!

 この論説は、あくまで筆者の妄想にすぎない(それこそアラン並みの)。しかし、ゲームを進めれば進めるほど、『ドグラ・マグラ』との共通点が数多く発見できるのだ。そもそも『ドグラ・マグラ』とは何か? ご存知ない読者もいるやもしれないので、簡単に説明させてもらおう。『ドグラ・マグラ』は、いまから75年前の1935年(昭和10年)に刊行された、日本を代表する幻想文学作家・夢野久作による探偵小説である。しかしその内容は狂気に満ちており、「読了後は必ず発狂する」とまで云われた複雑怪奇な物語は“日本探偵小説三大奇書”の1つに数えられている。なにしろそのタイトルの意味すら「隠れ切支丹の呪詛の言葉」だとか「堂廻り、目眩み」の訛ったものなど諸説あるものの、どれも定かではない。果たしてどんな物語なのか?
 舞台は大正15年頃の、九州帝国大学医学部精神科の独居房に閉じ込められた青年が一人称で語る独特のスタイルで奇怪な事件が進行する。その詳細は要約はおろか、まともに読んでも内容を他人に説明するのが難しい。故に大変ザックリとした解説をしてしまうと、自分(主人公)は過去に発生した殺人事件に関わっているが、自分は物語の中で、精神病患者が執筆したと思しき書物『ドグラ・マグラ』を発見し、そこでは自分の関わったとされる多数の殺人事件に関する真相が記されていたが、その犯人は胎児の見た夢だったというもの。非常に難解ではあるが、『Alan Wake』と同様のロジックが多く見受けられるのも事実。
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 ゲームの中でもアランはエミール・ハートマンというメンヘル専門の医師と関わり、精神を病んだ人間として扱われる。ネタばれになるのでコレ以上は書けないが、このハートマン医師との関係性やアランの置かれた状況は『ドグラ・マグラ』にソックリだと思う。ブライト・フォールズの街中にも、ちょっと言動や行動がアレな感じの人物がアランの周囲に暗示的に登場し、謎掛けめいた言葉を残していくあたりもだ(その中でも70年代に活躍したという設定のヘビメタじいさんコンビは最高!)。
 前後編に渡って散々モダンホラーだのスティーブン・キングだのと書いたが、行き着いた結論は夢野久作の世界。考え過ぎなのかもしれないが、様々な文化が洋ゲーを通して発信され、最終的には日本に帰結するのだと、こじつけることもできるし、マジでそう信じる自分もいる。何だか筆者自身がアランになったような、胡蝶の夢を見ているような不思議な感覚に包まれてしまったが、実はそんな心理状態に陥ること自体が、『Alan Wake』というゲームの最終目的だったのかもしれない。
 さて、そろそろ文字数も尽きてきたので、またあの鬱蒼としたブライト・フォールズに戻ろう。まだ原稿が全て集まってないし、観てないテレビもあれば聞き逃したラジオ放送もある。ゲームを最高難易度にすると大変シビアかつハードコアな戦いを余儀なくされるが、それを乗り越えなければ、『Alan Wake』の真実は永遠に闇に飲まれたままなのである。
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※『Alan Wake』公式サイトはこちら
青空文庫『ドグラ・マグラ』
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目覚めを知らない悪夢〜『Alan Wake』とモダンホラーの世界 PART1

2010/05/27 (木曜日)

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 “胡蝶の夢”という説話をご存知だろうか?
 中国の思想家・荘子の残した説話で、“自分が蝶になって空を飛んだり蜜を吸った楽しんだところで目が覚める。果たして自分が夢の中で蝶になったのか? それとも蝶が今夢の中で自分になっているのか?”という内容だが、ズバリ断言すると『Alan Wake』は、こんな説話を地で行く内容のモダンホラーのゲームである。この“モダンホラー”という言葉も重要だ。
 ホラー映画と一口に言っても、実に様々なジャンルが存在する。血飛沫タップリのスプラッター、ヨーロッパには伝統のモンスター映画や“ジャッロ”と呼ばれる残虐サスペンスがあり、幽霊や超常現象や悪魔信仰だってあるのだが、中でも現代社会を舞台にしてサスペンスフルな事件や怪現象を等身大の設定の主人公が体験するタイプが“モダンホラー”としてジャンル分けされている。
 その旗手は何と言ってもスティーブン・キング! アメリカを代表する小説家であり、モダンホラーの生みの親とも言われているし、氏の作品はベストセラーが多く、何本も実写映画化されているので、ご存知の読者も多いだろう。『ショーシャンクの空に』や『グリーンマイル』、『スタンド・バイ・ミー』などが最も有名な作品だが、キングの目玉はやっぱりホラー小説。残念ながらキングのホラー小説の映画化は正直言って駄作が多いのだか、『Alan Wake』の世界観は、とてつもなくスティーブン・キング的なものだ。しかもホラー小説の方の。


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 キングのホラー小説の映画化は『IT』や『炎の少女チャーリー』(主演ドリュー・バリモア!)や『地獄のデビルトラック』(日本公開時の邦題)など、マジでどうしようもない作品が多いが、だからこそキング原作の映像化の難しさを物語っている。それだけに映像化に成功した作品の面白さは、どれもホラー映画史に残る名作ばかり。『キャリー』や『シャイニング』、『デッドゾーン』や『ミザリー』などは、恐怖映画としては超一級品であることに間違いない。
 『Alan Wake』は、そんなキングによる一級品のエッセンスを惜しげもなく投入し、さらにアメリカン連続ドラマの手法を取り入れた意欲的なタイトルと表現したくなる出来映えで、誤解を恐れずに表現するなら“遊ばせるモダンホラー”。目的はモダンホラー小説の世界の主人公になりきることであり、モダンホラー色の強いゲームは過去にも色々登場していたが、ここまで徹底してモダンホラーを題材として引用し、再現したのは初めてではないかと思う。
 ちなみにゲームの中には、実際キング作品から引用された台詞も登場するが、よりによってそれが『地獄のデビルトラック』が元ネタだとわかった時には、さすがの筆者も驚きを隠せなかった。“わかってる”連中の作るゲームは違うねぇ!
 ちなみに筆者が最も好きなキング作品は……『地獄のデビルトラック』も当然フェイバリットだけど、やはりキングが別ペンネームのリチャード・バックマン名義で発表し、アーノルド・シュワルツェネッガー現カリフォルニア州知事主演で映画化された『バトルランナー』が最高すぎると思う。近未来の殺人テレビショーを舞台に、オペラを歌いながら登場する殺人鬼のスーパースター、ダイナモや、電飾オムツ姿のチェンソー怪人バズソーなど尋常じゃないキャラがオンパレード! 最後はシュワちゃんが殺しを喜ぶみのもんたのような番組司会者をブッ殺して映画はズバッと終わる。ちなみに日本では正月映画として公開されたのだが、正月早々映画館まで足を運んだのも筆者の忘れ難い思い出になっている(できれば忘れたい)。
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 いつも通りの展開で話が横道に逸れてしまったので本題に戻ろう。すでに公式サイトで日本語版も配信中の実写ドラマ“ブライトフォールズ”も、かなり手の込んだプロモーションだ。鑑賞してもらえればわかると思うが、その世界は完全に連続サスペンスドラマである。このドラマを観ながら、そのままゲームの中に完全に入り込み、主人公アラン・ウェイクになりきって閉鎖的な田舎町で発生する怪事件に挑む……。このスムーズな流れの演出も洋ゲーらしくて見事で、北米におけるプロモーション展開を見れば、まさにアメリカ人にしか作れないモダンホラーのゲームではないかと思う。

 『Alan Wake』の世界を構築する要素として、もう1つ重要な作品がある。デヴィッド・リンチ製作総指揮による連続ドラマ『ツイン・ピークス』だ。ゲームの内容の大きなウェイトを占めるのが、この『ツイン・ピークス』の影響力なのだ。謎めいた言葉を残す登場人物、湖に沈んだ女の死体、そしてシンボリックな小高い山と、それだけしか観光産業のない閉鎖的な田舎町などなど、設定の時点で『Alan Wake』と被る部分は多く、このタイトルが『ツイン・ピークス』や『X-FILE』などの怪奇ドラマを意欲的かつ確信犯的に再現しようとしているのが理解できる。しかもハンパな情熱ではないのがヒシヒシと伝わってくるではないか! 『ツイン・ピークス』は日本でもアメリカ製ドラマとしては久々のヒット作となり、ビデオレンタル屋では高回転率を常にキープ。リンチ独特の思わせぶりな演出や伏線の連続にかつてトリコになった人も多かったはずだ。『ツイン・ピークス』の存在がなければ、その後の『X-FILE』や『24』も存在しなかったであろう、アメリカンドラマのエポックメイキング作品である事実を忘れてはならないし、『Alan Wake』を遊ぶ前に、もしくはプレイの合間に鑑賞すれば、ゲームもドラマも相乗効果で面白くなることを保証しておきたい。
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 『Alan Wake』は、スランプに陥ったベストセラー作家のアラン・ウェイクが、妻とともにブライト・フォールズと呼ばれる田舎町で静養するために到着するところから物語は始まる。ブライト・フォールズは風光明媚な土地だが、そこでアランが謎の老婆と接触したことで、物語は不穏な方向へと転がりはじめる。湖畔の小島に建つ小さなバンガローを借りた晩に事件は発生し、妻は湖に転落して行方不明。救出に飛び込むアランだったが、なぜか目覚めると事故車の中に。しかも到着してから一週間も経過していた。一体自分の身に何が起きて、妻は一体どうなったのか?警察に事情を話しても信じてもらえず、しかも夜になるとアランの周辺に奇怪な事件が連続で派発生。人間ではない何者かに絶えず襲撃されるアランは、単身で妻の居所を探すために調査を始めるのだったが……。
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 これが物語の導入であり、この時点でゲームはチュートリアル程度を終わらせただけ。ここからは長く険しいサスペンスドラマが展開し、夢とも現実とも区別できない異様な世界に、次第にアランは足を踏み入れてしまう。そしてプレイヤー自身もまた、最初に引用した“胡蝶の夢”の世界に迷い込んでしまう。アランは書いた覚えのない自分の最新作の小説と、そっくり同じ殺人事件が現実に次々と発生している事態を知り困惑するが、一方では小説を書くためにジレンマに苦しむアランと、嬉々として新作を執筆しまくるアランが存在し、それが夢か現実かもわからない(ちょっとこの辺の展開はキングの『ミザリー』の影響も感じる)。一見すると難解なストーリーではあるが、シナリオが非常に練り込まれているので次の展開が楽しみになる。実際にゲームもドラマ仕立てで進行し、ステージにはオープニングや前回までのあらすじ(前にクリアしたステージの解説)、そして1ステージをクリアするごとにエンディングテーマが流れる徹底ぶりを評価したい。
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 まずは元ネタ解説から開始したが、『Alan Wake』を構成する要素は、決してこれだけでは終わらないし、モダンホラーでアドベンチャー要素の強いゲームだが、実はアクションシューターとしても非常に完成度が高いので、次回更新のPART2では戦闘システムやサバイバル術にも迫りつつ、『Alan Wake』と日本を結ぶ驚きの元ネタについても解説したいので、更新を刮目して待て!

※『Alan Wake』公式サイトはこちら
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投稿者 マスク・ド・UH : パーマリンク|00:38

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A FISTFUL OF VIDEOGAME!! 『RED DEAD REDEMPTION』REVIEW:SECONDO TEMPO

2010/05/25 (火曜日)

 IF YOU SHOOT KILL!! ROCKSTAR!!
 PRIMO TEMPO(前編)では、ロックスターゲームズ最新のオープンワールド・アクションゲーム超大作『RED DEAD REDEMPTION』(以下『RDR』)というタイトルが、いかにマカロニ・ウエスタンの影響を受けているかを検証しようとしたが、マカロニ・ウエスタンの周辺文化を掘り下げている内に文字数が尽きてしまい、肝心なところまで語れなかったので、今回お届けする後編ではゲーム、映画、音楽、そして歴史が複雑に絡み合う『RDR』の特筆すべきポイントについてタップリと語ってみたい。なにもマカロニ・ウエスタンを知らなければ遊べないゲームではない。その間口とてつもなく広く、探れば探るほど面白い。そこに興味を持ってもらえるかどうかで、このゲームの遊び方は全然変わってくるという事実を是非知ってほしいのであります。
 そもそも『RDR』とは、どういう物語なのか? あんまり細かく書くとネタばれになってしまうので、来るべき日本語ローカライズ版発売時まで割愛させていただく。主人公は孤高なガンマン、ジョン・マーストン。妻子が行方不明の状況で、大きな目的を持って西部の街に殴り込んできた。しかしそこは法はあってないような荒野の世界。あらゆる悪がはびこる中で、ジョンは妻子の行方の手がかりと、ある男を探し始めるのだった……。ここではメインストーリーに関してはネタバレ防止も兼ねて一切追わず、その脇道に用意された膨大な“ゲーム”の要素について解説しておきたい。
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 開拓時代の混沌とした北アメリカ大陸が舞台というだけでなく、果てしなく続く大自然の再現は圧巻の一言に尽きる。もうどこをほっつき歩いていてもキメカットになってしまうフォトジェニックさは尋常ではない。同じ原野でも、雨の日、風の日、晴天、そして昼夜それぞれが全く違った景観を楽しませてくれるのだ。この天候のプログラム技術だけでも相当大したもんだが、狂ったように照りつく太陽もまた、ゲーム中にリアルに喉の渇きを覚えてしまうピーカンぶりで、日陰に入ると思わずホッと一息ついてしまうほど。風景、景観を楽しむだけでゲームが1日終わってしまうだろう。メキシコ側から昇る日の出の素晴らしさは、特等席で数分はガマンしなければ味わえない。遮蔽物と空気汚染のない世界の夜は、こんなにも美しいものなのか! そんな観光スポットを探し出すゲームではないのだが、思わず写真に撮りたくなる世界を作り上げたロックスター・ゲームズに改めて賛辞を贈りたいのだ。
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 しかし、なにも原野をウロつくだけがゲームじゃない。原野にはレアな野草や花も生息していれば、珍獣から猛獣までアニマルパニックのオンパレード!登場する全ての動物(昆虫以外)は全て捕獲可能で、ナイフで五体を裁き皮革や肉、牙や角や爪やらを売る事で生活費(回復と弾丸の購入にほとんど使われる)を確保。『モンハン』のように、その場で調理して喰うことはできないものの、狩猟の楽しみは存分に味わえる。仕留めた獲物にナイフを差し込み解体する作業のゾクゾク感がたまらない。見晴らしの良い場所の岩陰の暗がりに陣取り、コヨーテや狼をライフルで射殺する度に「これで15ドル、あいつでまた15ドル」と計算している自分がいて、そら恐ろしくなった。
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 指名手配犯を“ALIVE(生)”か“DEAD(死)”で捕獲、または射殺したことで報酬を頂戴する“バウンティハンター”もイケてる職業だ。逗留している街や村に警察署や保安官事務所があれば、定期的に指名手配犯の情報ポスターが貼り出される。そのポスターをひっぺがせばミッション開始となるのだが、手配者が1人だからといって馬鹿正直に1人で行動しているワケない。最低でも4〜5人以上相手にすることを覚悟して、回復アイテムや周囲の行動がスロー効果になる“デッドアイ”モード維持のためのアイテムは補充を欠かさず、ついでに弾薬もタップリと持っていきたい。手配犯は情勢が悪くなると早馬で豪速球で逃亡したりするので厄介。さらにフリーランスの山賊や詐欺師、押し込み強盗などが荒野をウロついているので、「他人に会ったら敵と思え!」を合い言葉に行動しないと逆に殺されるのが、百年前のアメリカなのである。
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 そしてアメリカといえば“銃”である。銃社会アメリカの礎となった西部開拓時代ではあるが、とりあえず細かい時代考証は抜きにして、実に様々な銃火器が楽しめる。最初は装填数の少ないリボルバーしか所持していないが、ゲームを進行させれば次々と新しい武器が入手できる。遠くのカモシカも1発で仕留めるライフルは、スコープ付きセミオートなら同時に複数匹をぶっ殺すことも可。単身バレルのショットガンで『ケオマ・ザ・リベンジャー』のフランコ・ネロ気分を味わうことも可能なら、ユニーク武器で掟破りの連射殺戮までも可能であり、ついでに据え置き型銃器(キャノン砲、バルカン砲など)で大量殺戮を演出してジャンゴ気分全開。拳銃ならモーゼルをゲットして『殺しが静かにやってく来る』のサイレンスになりきりプレイ!(もちろん雪原エリア限定!)などなど、また話がマニアックな方向に行ってしまったが、ウエスタンの真髄は銃にあるので、その銃に対するコダワリは並大抵ではない。アウトロー、そしてカウボーイとは一体どんな人間だったのか? それを、これまでにないスケールで追体験をさせてくれるゲームが、『RDR』なのではないかと思う。
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 銃を手に入れたら射撃のテクニックを磨かねばいけない。前作に当たる『レッドデッド・リボルバー』から引き継がれた“DEAD EYE(デッドアイ)”システム(編注:発動するとスローモーションになる)は、より進化を遂げて凶暴になった。人質を盾にした敵の親玉のアタマを正確に撃ち抜きたい時、敵が多すぎて集中砲火を喰らっている時、馬で流している最中に背後から襲われた時、その全ての危機に“デッドアイ”が炸裂する。“デッドアイ”が洗練されていなければ、狩猟や護衛といったゲームとしての面白さの根幹に関わる要素までツマラなくなる。デッドアイ発動のタイミング、薬効の有無(ゲージ残量の回復など)、装弾数と敵の数を瞬時に判断しながら戦いを攻略する流れは非常に興奮する。GTAシリーズとは違った高揚感が確実にあるのだ。特に乗馬時のチェイスおよび銃撃戦の恐ろしさは『GTA: サンアンドレアス』における“ドライブバイ”の比ではない。
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 移動は馬以外にも駅馬車(タクシーと同じ)や蒸気機関車などがあり、ゲームを進めていけばアッと驚く乗り物も用意されている。移動機関を乗りこなせば時間の節約にもなるし、どこの場所で放り出されても、愛馬は口笛ひとつで主のもとに飛んでくる。GTAにおけるクルマと同じ役割とはいえ、お気に入りの馬に出会うと愛情まで芽生えてくるから驚きだ。愛馬のケツに生け捕りにした山賊のボスをのっけて帰る道すがら、何度か山賊の待ち伏せをくぐりぬけ、最後は興奮剤を使用したラストスパートで安全な集落に突っ込んだ時には、異常な達成感が愛馬との間に生まれたことも付け加えておきたい。  また駅馬車は乗るだけでなく護衛ミッションや自ら運転するハメになる時もある。4匹の馬を駆動力に活かした駅馬車は、ダンプカーさながらのスピードで荒野を爆走してくれる。古き良きアメリカンバイオレンス&カーチェイスの世界に、いま『RDR』を介して飛び込むことができるのは、実に素晴らしいことではないか!
 カウボーイ、男の世界では時に男同士でじゃれ合うこともある。指の股をナイフで高速往復するミニゲームでは、意地と度胸と正確な動体視力が試される。酒場に行けば、いかつい男たちがポーカーを囲み、交わればハードボイルドの世界。帰ってミルクでも飲んでな的な硬派な戦いがテーブル越しに繰り広げられることに! もしポーカーを興じているのを見つけたら、迷わずゲームに参加して、相手の顔に注目してほしい。そこにあるのは、まさしく"ポーカーフェイス"。どんな手札を持っていようが顔色ひとつ変えない男たちとの争いこそ、西部男のライフスタイル! 勝利したらカウンターで一杯テキーラを飲んでしまおう(はんなりデッドアイゲージが回復する恩恵あり)。
C
 ここまで書いたものの、まだ『RDR』全体から見れば一部分にすぎない要素ばかり。もう書き続けていたらキリがないので、ここらで一旦マトメに入ろう。
 前編では、マカロニウエスタンと呼ぶのは日本だけで、海外ではスパゲッティ・ウエスタンが正しい名称となっていることを締めの部分で触れた。なぜマカロニではなくスパゲッティなのか? ここがものすごく重要で、長い映画の裏面史が巡り巡って『RDR』にまで辿り着いてしまうからである。
 そもそもスパゲッティは、東方の麺類がシルクロードを通じてローマにもたらされた出自の料理。日本が世界に誇る名作時代劇『用心棒』を源流にイタリア映画を代表する巨大ジャンルに育ったのだから、同じルーツを持つスパゲッティを組み合わせて生まれたのは実に自然なことだと、名付け親の1人である映画史研究家のクリストファー・フレイリング氏が語っていた。スパゲッティ・ウエスタンとは、遠く離れた日本とイタリア結ぶリスペクトの証であり、一言でジャンルの内容を簡潔に表現しているのである。
 そしてスパゲッティ・ウエスタンはスプラッター映画にも多大なる影響を与えている。いや、むしろ直接の源流として考えるべきだろう。『続・荒野の用心棒』の耳削ぎシーンやジャンゴに加えられた壮絶なリンチ。『さすらいのガンマン』ではマチェーテ(ナタ)が脳天に食い込み、頭皮が引き剥がされる。『ソルジャーブルー』のクライマックスは北軍による先住民キャンプ急襲虐殺事件を丹念に描き、女子供も容赦なく殺戮の対象となり、首が宙を舞った。この残酷表現の元ネタも、実は黒澤映画『用心棒』にある。チンピラの腕が三船の太刀で切り落とされ、真っ黒な血飛沫を吹き上げるシーンこそ、世界最初の露悪的リアリズムに乗っ取った切り株描写である。その影響は遠く海を越えた先で百花繚乱の時代を迎えるに至った。
 『サンゲリア』を送り出したイタリアの職人ホラー監督ルチオ・フルチは1960年代にフランコ・ネロ主演で『真昼の用心棒』('66)を撮っているし、『サスペリア』のダリオ・アルジェントは、若き脚本家時代にウエスタンを2本作った。その内の1本は仲代達矢主演の異色ウエスタン『野獣暁に死す』('68)。仲代が器用されたのは、もちろん黒澤映画『椿三十郎』における仲代が演じる室戸半兵衛の壮絶な死に様への、アルジェントのリスペクトから決定したそうだ。そして三船敏郎もテレンス・ヤング監督作品、チャールズ・ブロンソン、アラン・ドロンの二大巨頭と共演した珍道中西部劇『レッドサン』('71)に主演。三船のウエスタン出演は時期的には完全に遅刻だったが、日本とヨーロッパの間で盛んに映画交流が繰り広げられていた点は見逃せない。そしてスパゲッティ・ウエスタンのえげつない物語、残虐描写は日本に逆輸入され、勝新太郎率いる勝プロダクションは特にビビットに反応。『荒野の用心棒』を更にハードコアに、そしてアシッドにアレンジしたかのような『新座頭市物語 折れた杖』は精神的には“和製すぱげってぃ・ウエスタン”とでも区分できる異常な傑作。そして若山富三郎主演による東宝の劇場版『子連れ狼』のマシンガン乳母車などは、原作の時点で『続・荒野の用心棒』のようなトンデモ武器系ウエスタンの影響を色濃く受けている。さらに日・伊の共演合作は白熱し、『暁の用心棒』シリーズのトニー・アンソニーが主演した『STRANGER IN JAPAN』('69)という、難破したスペイン船からガンマンが日本に流れ着き京都の史跡名所で大暴れするという大怪作まで存在するからビックリだ。
 もちろん日本だって負けてはいない。日活アクション路線といえば小林旭が有名だが、二番手に追っ付く“エースのジョー”こと宍戸錠は、日活の和製ウエスタン映画(なんじゃそりゃ?と、思うがソバ・ウエスタンということか?)『メキシコ無宿』では日本人なのに特濃のパンチョを熱演。世界で“三番目の早撃ち”というキャッチコピーも微妙で良かった。しかし日本とは環境も背景もDNAも違いすぎたので和製ウエスタンはすぐに廃れたが、男のロマンを求める観客はそのままいる。マカロニ・ウエスタンは、そんな市場に流れ込んできた強大なムーブメントだったのだ。
 かつて日本とイタリアの映画界は、ここまで濃密な関係を結んでいた時代が確かにあった。その流れは現在は完全に断絶されているが、そのミッシングリンクを結ぶのが『RED DEAD REDEMPTION』なのである。日本映画の模倣から始まったイタリア製西部劇。『用心棒』へのリスペクト抜きには語れない『荒野の用心棒』の存在あっての『RDR』である。全ての事象、歴史、文化は遠い旅路を経て原点に帰結したのだ。最新鋭のゲームに生まれ変わって。しかも、である。『RDR』も元々はカプコンが開発していた『レッドデッド・リボルバー』(略称はRDRのまんま!)がロックスターに移譲されたタイトル。日本製アクションゲームのシステムと欧米人の心の故郷・ウエスタンの世界の融合は、我々が気づかない間も常に行われていたのだ。この輪廻を深く考えずにはいられない。
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『Red Dead Revolver』
 ゲームのレビューとしては、ずいぶん長い文章になってしまったが、筆者としてはこれでも説明不十分ではないかと自問してしまう。書きたいことは山ほどあるが、それをうまく伝えられない自分の筆力を恨むしかない。そして『RDR』は本当に面白い! クリアまでこの先どれほどの時間がかかるか全く予想もつかないが、今は大自然の中に溶け込んだ、百年前のワイルドライフを思いっきり楽しみたい! それだけである。
 こうして筆者は今日もアリゾナの荒野を歩きまわり、ミッションそっちのけで鹿探しに熱中して不用意に茂みに足を踏み入れ、猛毒ガラガラヘビに噛まれて死にかけるのだった……。

 最後に前編に引き続き、マスク・ド・UHオススメの西部劇映画リストをオマケに付けておくので、各自DVDを探すなり借りるなりして、是非プレイ前プレイ中プレイ後のカンフル剤にお役立てください!

『クイック&デッド』(監督サム・ライミ!)
『カンニバル!THE MUSICAL』(監督トレイ・パーカー!)
『サボテンブラザース』(監督ジョン・ランディス!)
『盲目ガンマン』(主演リンゴ・スター!)
『夕陽のガンマン』
『ウエストワールド』
『ミスター・ノーボディ』
『郡盗荒野を裂く』
『真昼の用心棒』
『野獣暁に死す』
『サルタナがやって来る 虐殺の一匹狼』

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A FISTFUL OF VIDEOGAME!! 『RED DEAD REDEMPTION』REVIEW:PRIMO TEMPO

2010/05/24 (月曜日)

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 THE BAD, THE UGLY, THE ROCKSTAR!!
 恐ろしいほど面白いゲームが遂にリリースされてしまった。ロックスター・ゲームズ最新作にして、オープンワールドタイトルとしては『GTAIV』以来3年半ぶりとなる超大作『RED DEAD REDEMPTION』(以下『RDR』)である。そもそもゲーム史上稀にみる数奇な運命を経て世に送り出された歴史のあるタイトルが、ここまで凄まじい進化と完成度に到達してしまうものなのか! と、思わず感心せずにはいられない。とにかくこの『RDR』に関しては、筆者的には語りたいことが多すぎるので、独断で前後編の二回に分けてレビューさせていただきたい。


 『RDR』の前評判を聞いて、多くの人が「GTAの西部劇バージョン」を連想したに違いない。確かにそれは間違っていない認識だが、正確ではないと思う。なぜなら『RDR』の目指した西部劇の世界とは、“西部開拓時代の北アメリカ大陸”の雄大な大自然を徹底的に再現するという究極のオープンワールド! これまで都市部が中心だったGTAシリーズよりも更に踏み込んだ表現を模索した結果が、失われた大自然のモデリングだった。もちろんゲームの基本的なシステムはGTAを踏襲している。馬の乗り方はGTAでいうところのクルマの操作とほぼ同じ感覚。乗り降りのボタン配置まで同じなので、GTAシリーズを遊びこんでいた人なら、速攻で西部の荒くれ男になれるだろう。
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 操作感覚が慣れ親しんだゲームと同じでも、情景も違えば時代も違う。舞台は100年以上前のアメリカ大陸であるから、雄大な自然の美しさに目を奪われることもあれば、その渇き切ったに荒野に抱かれて命を奪われることもある。そこはルール無用の男の世界……テキーラ、拳銃、硝煙、サボテン、ガラガラヘビ、そして死体。『RDR』は確かに西部劇のゲームだ。ロックスターがオススメする西部劇映画も『ワイルドバンチ』『荒野のストレンジャー』などハリウッド製が多い。なにアメリカの開拓史を描いているんだからハリウッド映画で当たり前だろって? なるほど確かにその通りだ。しかし『RDR』を遊べば遊ぶほど、実は細かい部分ではハリウッド式西部劇とは似て非なるものだ。従来のハリウッド式西部劇とは、『シェーン』『真昼の決闘』に代表される、ジョン・ウェインやゲーリー・クーパーが悪党を“正義のために”射殺する勧善懲悪の世界が決まりである。日本で例えるなら『水戸黄門』の世界。「みね打ちでござる!」ってことだ。しかし『RDR』に描かれた西部劇は、ズバリ“マカロニ・ウエスタン”そのもの。粗野で、泥臭く、残酷で血なまぐさい、死と欲と悪が渦巻く西部劇の裏面映画史をベースに物語が構築されているのは間違いないだろう。その影響の度合いを分析する前に、そもそもマカロニ・ウェスタンとは何か? もしかしたらご存知ない読者もいるやもしれないので、その存在と定義について解説させていただこう。少し長くなるが、しばしお付き合いを願いたい。
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 マカロニ・ウエスタンとは、1960年代から70年代にかけて、イタリアで制作された西部劇映画全般を指すジャンル名だ。その起源は1950年代後半。ハリウッドの映画業界が『ベン・ハー』など中世ローマが舞台の大作映画を撮影するため、第二次世界大戦後の復興し、美しい景観を取り戻したイタリアに押し寄せた。そして地元の映画スタッフの大量雇用を生み、同時にイタリアの映画業界はハリウッド映画の新作のエッセンスを吸収。自国の映画産業の発展に大きく貢献することになる。
 しかしそこでいきなりマカロニウエスタンが生まれたわけではなく、どんなものにも歴史と段階がある。最初のイタリア映画界はローマ近郊で撮影された『ベン・ハー』などの影響もあって“ハーキュレイス(ヘラクレス)ムービー”と呼ばれる一風変わったジャンルが人気だった。その名の通り筋骨隆々のヘラクレスがサンダル履きでデカいカタナを振り回して暴れるマッチョ極まりない映画で、ものすごい本数が制作されているが、ジャンルの特殊性から日本ではほとんど未公開。アメリカでも最近になって“SWORD & SANDAL”と呼ばれ定着しはじめたばかりである。そんな映画でもテレビも満足に普及していなかった当時のイタリア情勢の中では大ヒットを記録。大衆は映画を求めるが、もう撮るものがない。そういえばアメリカはもう西部劇映画を作ってないじゃないか。じゃあ、俺たちで思いっきり面白い、俺たち好みの西部劇を作ろう。荒野だって砂漠だって、ちょっとスペインまで行けばアリゾナに負けないぐらい広大な自然がある……!
 かいつまんで説明すると、そんな経緯で誕生したのがマカロニ・ウエスタンというジャンルだ。その最初のヒット作を飾るのは、セルジオ・レオーネ監督、クリント・イーストウッド主演『荒野の用心棒』('65)。すでにアメリカ製のクリーンな西部劇の代表的作品ともいえるテレビドラマ『ローハイド』でも主役を演じていたイーストウッドが、無精髭ボサボサ、ポンチョに葉巻、羊皮のベストに泥だらけの履き古されたブーツという出で立ちでスクリーンに登場した瞬間、西部劇というジャンルが劇的なまでの変貌を遂げた。ロックンロールがグランジとハードコアに同時進化したような感じというか、とにかく下品に、衝撃的に、そして卑怯になったのだ。
 マカロニの世界には正義はない。あるのは金だけ。金のためだけに人を助け、金欲しさに人を殺す。『荒野の用心棒』の原題が“A FISTFUL OF DOLLERS(一握りのドル札)”というのも、実に簡潔にその路線を表現している。この『荒野の用心棒』なくしてマカロニは語れない理由は他にもある。邦題が示す通り、この作品は黒澤明監督、三船敏郎主演の日本映画史に残る大名作『用心棒』の存在を抜きには語れないのだ。
 監督を務めたセルジオ・レオーネは『用心棒』を鑑賞して衝撃を受け、すぐさま西部劇版のリメイクを検討。テレビ契約のために他のハリウッド映画に出演できないイーストウッドをイタリアで撮影することで主演を合意させ、ほぼそのまんまの脚本の随所に西部劇らしいロジックを多数織り込み映画を完成させたのだが、後に黒澤サイドから訴えられてしまう騒動に発展した。
 しかし『荒野の用心棒』の大ヒットにより、イタリア映画界は一気にウエスタン作品の増産体制に突入する。そして『続・荒野の用心棒』(原題『DJANGO』)の登場により、マカロニウェスタンとは何であるかが、決定づけられるのだった。
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 『続・荒野の用心棒』('66)は、タイトルこそ“続”と付いているが、セルジオ・レオーネ作品とは全く関係ない、別の映画である。監督はイタリア映画界が誇る“2人のセルジオ”の、もう1人、セルジオ・コルブッチ。主演はフランコ・ネロ。まずは泥だらけの道なき道を、馬にも乗らず徒歩で、しかも棺桶を引きずりながら登場する主人公ジャンゴの衝撃は忘れられない。まだ未見の人がいるのなら、万難を排してでも観てほしい超ド級の傑作ウェスタンである。汚泥にまみれたゴーストタウン“トゥームストーン村”を舞台に、サディズムとスプラッターの阿鼻叫喚地獄が展開! 映画が始まってから終わるまでの間に述べ百人以上が死ぬという豪快にもほどがある作品で、手持ちカメラを多用した生々しいアクションシーンと、登場人物が全員超ワケアリという設定も凄い。南軍の生き残りで人種差別主義者の白人地主ジャクソン少佐は、大勢の部下に赤い頭巾を被せたカルトを結成し、農地代が払えないメキシコ人農夫を面白半分に射殺する毎日を過ごし、対立するメキシコ反乱軍の落人集団ウーゴ将軍一派は、パンチョ顔も濃ければパンチョ魂も濃く残忍。密告者の耳を切り落とし、さらにソレを喰わせて大笑いする性格の持ち主。そんなどうしようもない対立構図の中に、これまたワケありの美女を救って衝撃デビューを飾るジャンゴの運命や如何に!

 この作品の凄いところは物語や設定のディティールなどではなく、画面全体を支配する湿った異質な空気感である。棺桶、墓場、十字架、十字を切る踊り子、死体、祈り等々、ジョン・ウェインの映画には存在しなかった異様な空気感こそが、マカロニウェスタンの醍醐味と言わんばかりの演出である。乾いた空気と湿った空気の混じり合う瞬間に銃弾が飛び交い死体が増える。この無情な演出こそマカロニ!
 日本から飛び火したマカロニの火種は『続・荒野の用心棒』によって再び日本に帰ってくる現象にも注目したい。独特のアクションシーンが展開する本作の演出は、70年代以降に制作された東映ヤクザ映画の実録路線にもピタリと当てはまる。特に深作欣二監督はサム・ペキンパーの影響が強いとされているが、筆者の私見ではセルジオ・コルブッチの手法のほうが深作演出のソレに非常に近いと感じる。読者諸兄にも是非観て比較してみてほしい。実によく似ている。
 マカロニウエスタンが盛況だったのは約10年ほどの間だったが、その間にありとあらゆる手段で殺戮が繰り返され、ありえない設定の珍ヒーローや、もはやSF的発想のユニーク武器が多数登場する有り様。その“何でもアリ感”は、第二次世界大戦後の世界を支配したアメリカ的マチズモへのイタリアからの反抗であり、正義ではなく金のために動く主人公こそ英雄という歪んだヒロイズムこそがマカロニの真骨頂なのではないか。

 だいぶ遠回りになってしまったが、以上でマカロニウエスタンに関する基礎知識は終わり。とにかく『荒野の用心棒』と『続・荒野の用心棒』の2本を観ずして『RDR』を遊ぶなかれ、である。いや遊ぶのは自由だが、絶対に観ておいたほうがゲームが面白くなる。
もちろん単なるマカロニウェスタンのゲーム化に終わっていないのがロックスターゲームズのスンゴイところ。過去最強とも呼ばれる壮大なマップの中に封じ込められた緻密な演出にも注目だし、爽快感とテクニック性の両面を追求したシューティングシステムと、西部ナンバーワンの早撃ちを目指す“デッドアイ”モードの迫力もたまらない。さらに移動手段として大活躍する、スピードに性能差がある馬たちは、大衆車からスタミナ満点の赤兎馬クラスまで多種多彩。そんな自由空間を用意された筆者が、まずどんな状況に陥ったか? 
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 ある月夜の晩に狩った狼の革を売ろうとバザーに向かうも、明け方に到着してしまい時間つぶしにボケーッと村の入り口に馬を停めて立っていたら、おっさんが近寄ってきて「小麦泥棒やらね〜か?」と持ちかけられ、軽い気持ちで引き受けるも、バザー内に駐車していた小麦業者の馬車を奪った瞬間指名手配。全速力で逃げて国境警備隊を巻くも、今度はお尋ね者の賞金首に。そうとは知らずに国道を馬で闊歩してたら背後から銃撃され、また全速力で逃走。スタミナ切れそうな馬に興奮剤を投与すれば一定時間ターボ効果で逃走は無事成功。しかし逃げすぎて迷い込んだ場所は狼の巣窟。一匹殺せば、その血の匂いを嗅ぎ付けてドンドン茂みから出現する。3匹以上を同時に相手にすると危険なので、片っ端からデッドアイモードで始末。デッドアイのためのゲージが足りない場合は“嗅ぎ煙草”で復活! もれなく殺したら死体から革を剥ぎ、また売る。嗅ぎ煙草を買う。モルヒネも買えばデッドアイの効果時間が延長されるから買えるだけ買う。金を使い切ってバザーを出ると、指名手配の張り紙を発見。捕縛すれば400ドルは稼げる! そっと剥がしてほくそ笑み、口笛で愛馬を呼んで現場に向かうの繰り返し……って、俺ぜんぜんミッションやってないじゃん!
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 現時点で筆者の西部開拓史は、こんな調子で全く進んでいない。進めたくても進められないほど、この作品に用意された寄り道、いや、ただブラブラしているだけで楽しいのだ。そんなゲーム、きょうびなかなかございやせん!

 とりあえず前編はマカロニ・ウエスタンの何たるかを語ることで文字数が尽きてしまったが、より細かいゲームレビューと、『RDR』というタイトルが行き着いた約束の地について、そして現代まで強い影響力と再評価のブームを繰り返すマカロニウエスタンというジャンルのゲームの関係性までドップリと語りたい。ちなみに“マカロニ・ウェスタン”というジャンル名は日本だけで使用されているジャンル名で、海外では“スパゲッティ・ウェスタン”が正式名称。外国人の友達と話す時があって「マカロニウエスタン」と言っても通じないので気をつけよう。(そんな機会はそうそうないと思うが)。そして“スパゲッティ・ウエスタン”という言葉にも、ジャンル名を体現する深い意味が込められているのである。その詳細は後編にて!
 最後にマスク・ド・UHオススメのマカロニ映画リストをオマケに付けておくので、各自DVDを探すなり借りるなりして、是非プレイ前プレイ中プレイ後のカンフル剤にお役立てください!

『殺しが静かにやって来る』
『情け無用のジャンゴ』
『ハチェット無頼』
『地獄から来たプロガンマン』
『さすらいのガンマン』
『ソルジャーブルー』
『ガンマン大連合』
『ウエスタン』
『西部悪人伝』
『夕陽のギャングたち』
『荒野の1ドル銀貨』

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