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遊戯中毒者的『但丁的地獄之旅』(英題:『Dante's Inferno』)!

2010/03/01 (月曜日)

但丁的地獄之旅!
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 いきなりアジア版のタイトル名で恐縮だが、ようするに『Dante's Inferno』のことデス! DEATH! DESTROY!!!! つい先日、日本版もリリースされた吟遊詩人ならぬ極悪十字軍戦士の地獄巡り旅アクションゲーム『ダンテズ・インフェルノ』。14世紀に詩人にして政治家だったダンテ・アリギエーリが執筆した大長編叙事詩『神曲』にて描かれた、キリスト教文化における"地獄"の様相と世界観をモチーフに、『ゴッド・オブ・ウォー』を彷彿とさせる良質のアクション満載のタイトルに仕上げたEAの意欲作であることはご存知の通り。
 しかし、このゲームの本質を知るにはキリスト教文化圏における"地獄"に対する思想や、ダンテというイタリア史のみならず文学史上からみても重要な作家の人生観、十字軍による聖地エルサレム奪還を巡る果てしなき戦いの歴史、悪魔崇拝や中世ヨーロッパの政治状況などなど様々な文化人類学、宗教学に関する教養と考察が必要であると考える。


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▲左は海外で発売されているアニメ版のブルーレイ。

 もちろん筆者がプレイしているのは北米版と同じ仕様のアジア版の"DEATH EDITION"(アジア版表記は"死神特別版"……かなりカッチョイイ語感&字面じゃありませんか!)なのだが、さすが14世紀の物語というべきか、英語の台詞回しが妙に古くさくて聞き取りにくいのが難点(時代劇の「それがしは」とか「そこもとは」みたいな感じのイメージね)。その点、日本版はキッチリとフルボイスのローカライズとなっているので台詞も聞き取りやすいのは間違いない。
 しかしこのゲーム、先述の通り西欧文化の宗教史や文化について造詣が深くないと、その本質は理解できないのだが、残念なことに日本における本作のプロモーションでは、作品の持つ背景や制作者たちの意気込みなどをフルスイングでスッ飛ばした、近年稀に見る予想GUYなスタイルだった。これでは作品の持つ本当の魅力が全く伝わらないではないか! と、憤慨した筆者は、自らが『ダンテズ・インフェルノ』に隠された(いや、別に隠されてはいないが)壮大すぎる設定、欧州の歴史と宗教文化を伝えようと決意した次第。ちなみに筆者は無神論者&無宗教なので、日本人であることも含めて中立的立場で本稿を執筆させていただく。特定の人種、国家、勢力、宗教に肩入れする気はないし、あくまでエンターティメントの中の文化史として読み進めてもらえれば幸いだ。


 まず本作の骨子となっている「ダンテの神曲」と地獄の関連性について。「神曲」は恋人を失い、政争に巻き込まれて故郷を追放されるに至ったダンテの絶望と悲しみを込めた、中世イタリア文学を代表する作品であるだけでなく、まるで見てきたかのような生々しい地獄の描写と悪魔たちの生態は、怪奇幻想文学の古典でもあるのは周知の通り。その世界観はキリスト教文化圏の国に深く浸透しており、いわゆるRPGの基本設定も元を正せば「神曲」から来ていると言っても過言ではなかろう。つまり、ものすごくアクションゲーム向きの題材なのである。ギリシャ神話を題材にした『ゴッド・オブ・ウォー』も、北欧神話を題材にした『ディアブロ』もまた然り、なのだ。
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 ゲームでは主人公ダンテが十字軍の兵士という設定になっているが、この十字軍という存在も日本人にとっては馴染みが薄い。十字軍に関する歴史的な事実に関してはウィキペディアでもチェックしてもらうとして、重要なのは本作に登場する十字軍が非常に凄惨極まりない虐殺に手を染めていたというショッキングなストーリーだ。キリスト教文化圏でも十字軍の捉え方は国によって様々だが、基本的には聖地エルサレムを奪還するために戦った英雄とされており、ブッシュ元大統領も9.11直後に「我々は十字軍だ」と発言(後に撤回)しているところからも理解できるとおり、正義=十字軍という思想が欧米諸国に存在するのは事実である。
 しかし奪還のために襲われる側となったイスラムの人々にとっては、十字軍は蛮族の襲来に他ならず、聖地を巡って流された血の量は、そのままキリスト教暗黒の歴史につながっている。そして近年になって歴史が見直され始めると、十字軍に対する冷静な史実が多く日の目を見るようになり、かつての惨劇や悪行を一般人も知れ渡る(その流れが目に見えて変わったのは、キリストの受難をサディスティックに描いたメル・ギブソン監督作品『パッション』あたりからだと記憶する)。そして今回、『ダンテズ・インフェルノ』のようなエンターテイメント作品にも設定として取り込まれるに至ったのだ。
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 イスラムの話が出たところで情報を付け加えておくと、『ダンテズ・インフェルノ』は中東では発売中止になったという海外ニュースがあったことは、北米のゲーム情報サイトなどをマメにチェックしている人ならご存知だろう。詳しい理由は発表されてないが、別にイスラムの敵である十字軍が主人公だから、なんて単純な問題ではない。そもそも「神曲」の作者ダンテが反イスラム思想の持ち主であり、「神曲」の中ではイスラムの指導者も地獄に落ちる描写があることから、イスラム教文化圏でダンテに関する書籍は全て発禁。ゲームなんてもってのほか(つうか、EAだって最初から中東版の発売なんて考えてないでしょ)。ダンテと名の付くものは徹底的に憎まれているので、ダンテ・●ーヴァーも中東に行ったら同名というだけで襲われるなんて予想外の展開が待ってるかもしれない……なんて、プロモーションに対する皮肉は置いといて、本題はゲームの話である。
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 宗教や歴史の話が多くなってしまったが、本作で描かれている地獄の情景や登場する悪魔や獄卒の設定は、驚くほど「神曲」に忠実である。現代風にアレンジなんかこれっぽっちもされていない。"9th(ナインス) サークル"と呼ばれる地獄の階層図は中世に描かれた設定と変わらず、罪状によって分かれる階層の設定も全く同じなのには、ゲーム製作者たちの意地を見た気がする(余談だが、『Fallout 3』に登場するグールの町の酒場も"ナインスサークル"って名前だった。深いなぁ)。日本人は基本的に仏教に描かれる地獄しか知らないので、ダンテの地獄は馴染みが薄いかもしれないが、興味があったら近所の図書館にでも行って調べてみるといい。ダンテやキリスト教、地獄に関する本は山ほどあるので、ゲームの予習復習、そして毎度お馴染みの"没入感"を高める意味でもオススメしておきたい。しかしどの本も難しい話ばかりで、筆者のような低学歴の人間には理解できない箇所も多々あり、思わずウ〜ンと考えさせられる……といえば、ロダンの彫刻"考える人"である。あの彫刻、ダンテの神曲に着想を得た作品で、地獄の門の上に座っているって設定なんですね。ごく最近まで筆者は、ずぅ〜っと便器に座っているんだと信じ込んでいました。バカでスイマセン。
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 ちなみに筆者が今回のゲームプレイおよび原稿執筆の参考にしたのが、今は亡き立風書房が35年前に発行したハイテンションな児童書"ジャガーバックス"シリーズの『地獄大図鑑』である。世界三大宗教に登場する地獄の様相を総ルビで細部に至るまで解説。"いちばんくわしい"を豪語するだけに、資料的価値も大変高く重宝させてもらった(まさかゲームレビューで活躍する日が来るとは思ってもみなかったが)。ちなみに古書市場では現在かなりのプレミア価格で取り引きされており、状態が悪くても5千円以上、美本なら数万円の値が付いてしまう。嗚呼、どこか復刊してくんないかなぁ。
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 話が逸れてしまったが、とにかく『ダンテズ・インフェルノ』は深い設定と物語に裏打ちされた、気合い十分すぎるアクションゲームである。筆者が特に気合いを感じたのは北米版(もしくはアジア版)のソフトに同梱されているダンテのスペシャルコスチュームの無料ダウンロード・コード。なんと、あの血みどろ宇宙スプラッターゲーム『DEAD SPACE』の主人公アイザックのコスチュームが使用可能になるのだ!!!!! これはデベロッパーが同じ(スタッフは違うけど)ということで実現したスペシャルサプライズ。DLCのダンテ詩人バージョンのコスも良いが、やはりアイザックにはかなわない。コスチュームが変わっただけで緻密な神学と宗教文化に裏打ち世界観が一気に破壊されるので、こちらのプレイもオススメしたいところだが、ダウンロードには北米版かアジア版が必要なうえ、北米アカウントがないとアクセスすらできないので、その敷居はバベルの塔なみに高いのであった。
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 以上、筆者が『ダンテズ・インフェルノ』をプレイして導き出した論説である。なるべく海外文化、とくにキリスト教文化に馴染みがない人にも興味を持ってもらえるように執筆したつもりだが、やはり要所要所で難しい話になってしまう。これでは通常のプロモーションでゲームの魅力を知ってもらうのは無理だろうなぁ。だからってアレはないと思いますが、ゲームはアクションゲームとして完成度が高く、かつ面白い。日本版で乳首が見えないとか色々差異があると思うが、乳首はゲームデザインに直接関係ないので、そんなに気にする必要ない。むしろ日本語フルボイスローカライズの遊び易さを誉め讃えたいのだった。
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※『ダンテズ・インフェルノ 〜神曲 地獄篇〜』の日本公式サイトはこちら
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投稿者 マスク・ド・UH : 2010年03月01日 03:45

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