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実録!オンラインゲーム人生記

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2007年01月12日

『新生活:ULTIMA ONLINE』

プレイヤーが多いとラグ(通信遅延)が酷くなるということがわかった。というかふつうに考えれば当たり前だ。プレイヤーごとに様々な装備で身を固めているわけだし、動き回ってもいる。人が多ければそれだけ画面に表示される情報や会話も多くなる。
つまり人が多い場所は身動きが取りにくくなるわけだ。なんだか現実世界っぽい表現に苦笑してしまう。調べてみたらどうやらブリテンの街は王都でありこの世界で最大の街でもあるらしいことがわかった。お店も充実しており、生活の拠点となる宿屋や銀行も複数存在するでかい街だった。当然、往来を行きかう人も多く、人が多ければそこで商売する人も増えるというのは道理。結果、ブリテンの街はとにかくラグがきつい状況になっていた。パソコンのスペックがそれほどよくもない僕にとってはラグはなんとか避けたい問題でもあった。幸い僕が当面目指そうとしているのは魔法使いであり、他人相手に商売をするわけでもないので、僕は最初の街はブリテン以外にすることにした。

最初に作ったキャラクターは消して別の街に作り直そうかとも思ったんだけど、生来の意地っ張りな性格が災いしてかとりあえずやれるとこまでやることにした。こんな些細なことでいちいち作り直していたらこの先が思いやられる。なあに、別の街と言っても地面は続いているのだから歩いていけばイイのだと僕は安易に決め付けた。

まずはラグの嵐の中でログアウトしたままの魔法使いを別の街まで移動させなければならない。作戦と言うほどのことではないが、人が多くなってくる時間帯を避けるために早寝して明け方にログインすることにした。日本のプレイヤーが徐々に減ってくる時間帯ということもあるにはあるが、日本の明け方がアメリカの午前中から昼にかけてにあたるからだ。


目覚ましに起こされコーヒーで目を覚ました僕は午前3時にログインした。ロスが昼の10時、NYが昼の1時。朝7時までプレイしてそのまま会社の予定だ。

入ってみるとこないだほど酷いラグはやはりなかった。とは言え、それでもこんなに!?と思うくらい人がいる。僕は牛歩を進め、まず銀行前から離れた。街外れまで来ると楽になったので、とりあえず荷物を確認してみる。おそるおそるカバンを開けてみるとそこには見事になにもなかった。

"宿屋や酒場以外の場所でログアウトするとログアウト後数分間キャラクターだけが残った状態になるので危険です。なるべく安全な場所でログアウトしたほうがいいでしょう"的なことが取説にも書いてあったが、まさか街中の銀行前が危険な場所とは思いもよらなかった。でもまあ盗られてしまったものはしかたがない。次からは気をつけることにして、僕はパッケージに付いてきた紙製の世界地図を眺めた。ふと以前『UO』を先に始めていた知り合いがべスパーがどうしたみたいなことを言っていたのを思い出した。捜すとVesperという地名を見つけた。ブリテンの街から北東に位置し、地図で見る限りそこも結構大きな街で海に隣接しており港町のようだ。それに地図で見たらそんなに遠くないように思えた。

(よし、なにはともあれべスパーに行こう)

その地図で見る限り、『UO』の世界を東京近辺に例えるとしたら品川からお台場ぐらいの位置関係だろうか。関東地方に当てはめて言うと東京23区から鹿島ぐらい? ううむ、たとえに無理がありましたね。とにかくブリテンから北東の方角に向えばべスパーの街があるはず。僕はとりあえず北東に向って歩き出した。

ゲーム内でもいちおうマップを表示は出来るんですが、この表示範囲がまことに狭い。それでも周囲の街道とか森の俯瞰図が確認できるのであるのとないのとでは大違いではあるんですが、その範囲にべスパーの街並みが入ってくるまで方向があってるのかどうかがさっぱりわからない。通れない崖などの地形を迂回しつつなんとなく僕は北東方向へ歩き続けた。

街道の両脇には森が広がっていた。そこにはいろいろな野生生物がうろついている。犬、ネコ、馬、牛、小鳥、ワシ、熊、ニワトリ、豚、鹿、兎、ネズミ、羊。彼らはどうやら近づいても襲ってくるわけではなく、こちらにあまり関心がないようだった。と、ふと不安になった。全くの初期装備の僕はもしいま何かに襲われたらひとたまりもない。これらの動物が襲ってこないのは幸いではあったが、モンスターみたいなのがいたらやばいよなあ。森のなかは木の葉に隠れてしまい、他の生物が見えにくい。だからすぐ近くまで動物がいることに気がつかなかったりもした。

なんかだんだんドキドキしてきた。森の中は木や木の根っこに引っ掛かるので非常に歩きづらい。これはなにかから逃げるときにも邪魔になるよなあ・・・

(ここはやはり森の中を歩くのはよそう)

僕は森を抜け、一旦南に下り海岸線に出ることにした。べスパーの街が海沿いにあるわけだから海岸線を北上すれば必ず着くはずという計算だ。程なくして僕は海に出た。そこから海岸線沿いに北を目指す。このあたりは緑も多くのどかな風景が広がっている。岸壁から望む海をイルカが2匹泳いでいた。そのイルカがキューと鳴いた。この海を船で渡ったらどこにいけるんだろうとちょっとなごんでみたりして。


あ!


進行方向の海沿いの崖の上にみるからにへんなものがいた。それは水が人の形になったような生物?で、ゆっくりと移動していた。なんかあからさまに嫌な予感。僕はおそるおそる名前を表示させてみた。

Water Elemental

ええと、たぶんやばいです。僕は魔法使いですが、魔法を唱えるために必要な触媒である"秘薬"を盗まれてしまっているのでいまは魔法が使えません。こいつがどの程度強くて、僕がどの程度弱いのかもわかっていません。立ちすくんだままその綺麗な水の人形を見つめていた間、時間にしてコンマ数秒くらいの間に僕は決断した。

(逃げよう)

そう決めて一歩後ずさった瞬間、それがこっちを向いた。

やばい気づかれた。僕は脱兎の如く駆け出した。そして走り始めてすぐに僕は意外なことに気がついた。あいつ意外と足が遅い。追いつかれない。

(なんだ逃げられるじゃん)

と安心したのも束の間、そいつがなにか魔法の火みたいなのを飛ばしてきた。

げっ

火の玉はホーミングしながら僕を追っかけてくる。

うひー

命中。ヒットポイントのバーがごっそり赤く削られた。はい、もう瀕死です。作りたてのキャラはヒットポイントも少ないのです。慌ててまた走り出そうとしたのだけどなぜか走れず歩くことしか出来ない。僕はヒットポイントバーの下にあるスタミナのバーもごっそり削られていることに気づくことすら出来なかった。

なんで走れないのー ε=ε=ε=(ノTдT)ノ

僕はほとんどパニックになりながら海岸線の崖の上を南に向って歩いた

徐々に距離が詰まってくる。

突然、僕に雷が落ちた。

「おおうあああああああぁぁぁぁ・・・」

そんな感じの悲鳴がパソコンのスピーカーから聞こえた。

死にました。

画面はモノトーンに変わり、その中心には灰色のローブを纏った僕がいた。その足下にはさっきまで僕が着ていた服装をした死体が横たわっている。どうやら僕は幽霊になってしまったみたいだった。気が動転しつつも、なんとかしなきゃと操作する。幽霊でも生身同様に移動はできた。でもカバンは開けない。そりゃそうだ。カバンはあっちの死体にある。

これ、どうしたらいいんだろう。もしかしてこのままずっと幽霊?

急いで取説を読む。ふむふむ。最高位の魔法に蘇生の呪文があるのか。それから街の医者が復活してくれるのね。なるほどなるほど。しかたない。街に戻るか。

僕は幽霊のまま、もと来た道を走り出した。

しばらく引き返したところで他のプレイヤーを見かけたので、僕はダメもとで話しかけてみた。

完全に無視された。

とほほ。

僕はまた走り出した。

あとでわかったことなんだけど、幽霊は他人には見えない。幽霊状態で戦闘モードに切り替えると姿だけは他人に見えるようになるが会話が通じないシステムになっているのだった。会話が通じないとはどういうことかというと、

たとえば、

「I need help」

と話したとしても、周りの人には、

「O OoOo ooOO」

みたいにOの羅列にしか見えないのだ。唯一霊話のスキルが高い人だけはI need helpと読めるようになっている。このときの僕はそんなことは知らないので、ただ単に人の冷たさに落胆しきりだったわけだが。なんのことはない、相手がこっちに気づいていないだけのことだったのだ。

ようやくブリテンまで戻り、医者を捜す。街中を走り回りながらブリテンと言う街の広さを呪った。やっと"HEALER"の看板を見つけ中に入ると、「復活しますか?」というウィンドウが開いた。当然YESだ。

僕はその医院のなかでまた生身に戻った。カバンはからっぽ。まあ、もともと空っぽだったからそれはいい。幽霊風のローブを脱ぐと僕は素っ裸だった。ええっと、つまりいま僕は数時間前に出発した場所に荷物も装備品も全部失って幽霊風おんぼろローブだけ纏って戻ってきたってーことになるのかな?


あはははは。


こうしてまたふりだしに戻った僕はログアウトし、意気消沈して出勤した。

会社へと向う電車の中で、

(だったら幽霊のままべスパーに走ってそっちで医者を探せばよかったんじゃねえかよ!)

と気づいたが後の祭りであった。

orz