« 『不正:DIABLO』 | 実録!オンラインゲーム人生記のホーム | 『新生活:ULTIMA ONLINE』 »『聖夜:ULTIMA ONLINE』2006年12月26日クリスマス、いい響きだ。 恋人どうしでも家族でも暖かい部屋で楽しく過ごす夜。窓はうっすら曇り、かすかに覗き見る外の暗闇に静かに舞い落ちる雪。食卓にはとっておきの料理とケーキ。 ああ、世界が毎日クリスマスならきっと戦争なんて起こらないのにと本気で思える。それがクリスマス。クリスマスにはそんな慈愛に満ちた不思議な力が宿っていると思ってました。 昨日までは。 クリスマスイブに彼女が遊びに来た。そして僕はマジで金欠でした。なにも買えないし、どこにも行けない。僕は例のクレジットカードのキャッシングで生まれて初めてお金を1万円借りました。そのお金で映画を見に行き、ケーキを買っていっしょに僕のアパートに行きました。
僕はクリスマスイブの夜に、 彼女に「別れよう」と言った。 彼女とのお付き合いをこの先続けていくのは無理だと判断したから。
幸せなクリスマスを過ごす、そんな彼女の夢も僕には叶えてあげられませんでした。それはきっとこれからも続きます。 なにを決め付けているんだと。 はい、わかってます。深く考えてないわけじゃなくて、むしろ考えすぎるくらい考えて出した結論でした。いっしょにいられればほかに何もいらないとそれこそ勝手に決め付けて、何の準備もしないでただいっしょに過ごすだけのクリスマスを平然としていられるほど僕は強くない。確かにクリスマスイブに別れ話をするという一点に関しては、本当に申し訳ないと思いました。でもこのままオンラインゲームを続けながら彼女と付き合っていくのはとてもじゃないけどいまの僕には不可能でした。 それは天秤に掛けるべきことではないのは重々承知してます。でも成り立たないものは成り立たないのです。付き合っているという言葉だけを交わし、電話もせず会いもせず何ヵ月も遠く離れて過ごすのは付き合っていると言えるんだろうか……
なんていう指摘はなしです。それを言ったらなんだって言えます。じゃあ野球をやめろ、じゃあパチンコをやめろ、じゃあ仕事を変えろ、じゃあ趣味を変えろ、じゃあ引っ越せ、じゃあパソコンを捨てろ、じゃあ車を手放せ、じゃあバイクを降りろ…… 誰にでも譲れないモノはあるはず。 僕にとってはたまたまそれが"ゲーム"だっただけの話。 彼女は泣きました。 そんなことを言えば言うほど僕は追い詰められるし、自分を追い詰めるんだよ。 それに僕はそんなことするほどの価値もない小さい人間だから。 会話はループし時間だけが過ぎていく。 ふられるよりふるほうが心底辛い。何度も「本当は他に好きな子ができたからなんだ」という嘘が喉まで出掛かっては飲み込んだ。このクリスマスに別れ話をする状況が辛いんじゃなくて、人の心を傷つけることが自分の身を切るような痛みに感じて辛い。 無言の沈黙が続き、夜が朝になった。 朝になって冷静になったのか、彼女は少し落ち着いてきたように見えたので、僕はちょっと散歩しようかと誘った。彼女は小さく頷いてコートとカバンを手に取った。もしかしたらそのときすでにもうこの部屋には戻らないと彼女はわかっていたのかもしれない。俯いてふたりで駅のほうに歩く。肌寒い朝の空気は気持ちよく、空には高く透明な青空が広がっていた。 昨日までと同じ調子で「コーヒーでも飲む?」「お腹がすいたから何か食べようよ」と話す。その変わらない雰囲気が、ただひとつ付き合っていた昨日までといまの違いを余計に際立たせて涙が滲むけど、僕が泣くわけにはいかない。 ふたりでファミレスに入って朝ごはんを食べた。 とりあえず友達の関係に戻るだけで、話したり遊んだり電話したりはしようという約束を交わした。その約束がなんの意味も持たないことはきっとふたりともわかっていたと思うけど、それをお互い口に出さないと身動きが出来なかったから。 ファミレスを出て少し遠回りして駅まで手を繋いで歩いた。そのあいだ、どちらもなにも喋れなかった。ホームまでいっしょに行き、電車が来たので彼女はそれに乗った。閉まるドアのガラス越しにお互いの目が合った瞬間に、彼女の目から涙が溢れて流れ落ちる。僕は無理やり笑顔を作り手を振った。彼女が小さなその手を振ろうと上げかけたところで電車は速度を上げ彼女は見えなくなった。
泣きながら考え、そして決めた。 僕はこの道を突き進むと。いつかゲームを諦めずに彼女も幸せにする男になるからと。 言葉にするとかっこ悪くてちっちゃい目標に聞こえるけど、それはイチローみたいな野球選手になるとか、いつか社長になって億万長者になるとかと同じだ。それが僕の価値観だ。 家に帰って寝ようと思っても悲しさがこみ上げて眠れなかった。うまく言えないんだけど、心の真ん中が真っ暗になっちゃうような空虚さに押しつぶされそうになる。なにかしてないとおかしくなりそうな状態。さすがにゲームをする気分じゃなかったけどそれしかないと思えてパソコンの電源を入れた。
『Ultima Online』には経験値(EXP)という概念がない。ゲームの中で焚き火をしたりケーキを焼いたりモンスターを攻撃したり、なにかをしたらそれに関連したスキルが上がっていく。キャラクターの成長はそれが全てだ。世界はとても広大で、船でしか渡れない島に不死のモンスターのダンジョンがあったりドラゴンが生息してたりした。空き地があれば自分の家を建てることもできる。自分の家に売り子を置いて自分で作った剣や鎧を売ることも出来る。その世界に決められた目的はなく、ドラゴンを倒すことが目的でもいいし、伝説の大泥棒を目指すのもいい。 実際このゲームにはさまざまなスキル(技能)があってどのスキルを成長させていくかで結果的にキャラクターが戦士になったり魔法使いになったりする。ひとつのスキルの上限は100で、ひとりのキャラクターのスキル合計値は最大700。複数のスキルの組み合わせが最終的にキャラクターの役割(ロール)を決定付けることになる。スキルは下げることも出来るので、戦士として育った後でも新たに裁縫職人を目指すことも出来る。 ちなみにどんなスキルがあるのかというと、ざっとこんな感じだ。 錬金術 −いろいろな薬(ポーション)を作れる 関連してそうなスキルも多いが、よく見ると何それ?っていうスキルも結構ある。 たとえば自分の作ったキャラの700のスキルを霊話、窃盗、覗き、牧羊、物乞い、検死、味見って育てたらそれどんなキャラクターなんだろうとか考えるだけでわくわくしてしまう。でもここはやっぱ魔法使いでしょう。 選択できるシャード(サーバーのこと)は4つ。Atlantic、Pacific、Great Lakes、Napa Valley。リアルの知り合いが既に始めていたのでPacificというサーバーにキャラクターを作った。最初にキャラクターを作る時にスキル100をふたつかみっつのスキルに振り分けることが出来るので、僕は魔術50、治療50にしてみた。魔法使いで治療も出来るってなんかお得じゃない? スタートはもっとも栄えているブリテンという街。 そして初めてゲームに入ったその瞬間に最初の衝撃を受けることになった。 人が多い! Σ(@o@ ) 上から見下ろしのゲーム画面内に何十人といて、画面中でいろんな人が英語でなにか話してる。会話はチャットウィンドウとかではなく、話したキャラクターの頭の上に表示されるのでリアルタイムで街のあちこちで誰かと誰かが会話してる。 す、すごい。これが全部どこかの誰かが操作してるんだ! その光景は渋谷のスクランブル交差点を彷彿とさせた。僕は呆然と見とれてしまった。 とりあえず気を取り直して、ええと、ここは銀行前か。なになに、bankって発言すれば自分用のバンクボックスが開くのか。ならまずはアイテムを整理しようかなと思って、自分のカバンと銀行を開いた。 あれ? カバンに入ってるはずのお金がない。マニュアルには少々のお金とスキルに必要なアイテムが少しカバンに入っているって書いてあるのに。 もしかして盗まれた? と思ってたら近くにいた見知らぬ人が突然他の人を剣で攻撃し始めた。「こいつ泥棒だ(英語)」って言ってる。ぎゃああと叫んで泥棒さんは殺され死体になった。見る間に死体の洋服が剥がされ裸になっていく。 (うわー、すごい世界だな) ふとまたカバンの中身に目をやると今度は魔法を唱える為に必要な秘薬がなくなってる! (うひー、恐いよ) く("0")> その場から離れようにもとにかくラグが酷い。人が多いのもあって一歩進むのに10秒以上かかる。人にぶつかると たいへんだ。逃げられない。 とりあえずキャラは作り直そう。 ログアウトすると急にお腹がすいてきた。もう昼だった。お金もないのでご飯と秋刀魚の蒲焼の缶詰で軽く済ませた。するとやっと眠くなってきたので僕はベッドに入り込んだ。 なにかを考える暇もなく僕はすぐ眠りに落ちていった。 投稿者 hero : 2006年12月26日 13:21 |


