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実録!オンラインゲーム人生記

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『出会い:DOOM』

2006年11月14日

1992年春。僕は晴れて社会人になった。

バブルの最後っ屁の年に僕は東京にある小さな広告代理店に就職したのだ。その社会人最初の年の初夏のある日の朝礼で、

「今年度ボーナス100パーセントカット!」

というわけの判らない洗礼を浴びた新社会人はきっと僕だけではなかった筈だ。

隣に立っていた先輩が、
「初年度のボーナスなんて元々スズメの涙だから
 もらえなくてもそんなにがっかりすることないよ」
とこれまた意味不明な慰めを発した。
と言うか全然慰めにならないよ・・・

高校時代から使っていた愛機FM-77AVはすでに骨董品の部類に入っていた。元々ゲームが好きで高校時代に親に借金までして僕はパソコンを購入していた。

(就職したら新しいパソコンを買おうと思っていたのに・・・)


しかしながら、この事態が後のゲーム人生に多大な影響を与えることになったんだと自覚するのはかなり後になってからのことである。

新しいゲーム環境を購入する資金をいきなり断たれた僕はやるせなくていつも飲んでばかりいた。ただそんな飲んだくれの不満とは裏腹に、バブル崩壊とは実はもっと深刻なものだった。

その年会社はリストラを行い、30人ほど希望退職者を募った。
前述の先輩からは「会社も新卒採用者をいきなりリストラすることはしないだろうから安心しな」と再び意味不明の慰め
希望者枠はあっというまに埋ったそうだ。
先の先輩もその内のひとりだった。


そうして迎えた2年目。


ボーナスはスズメの涙だった・・・ OTZ

そんな僕にとって僥倖だったのは、PC関連のクライアントがメインの広告代理店だったことだ。PC関連商品とかPCソフトがデスクの周りに無造作に置かれているような環境。それらは僕の収入に対する不満とか人生への漠然とした不安を覆い隠すには補って余りある材料だったのだ。
もちろん会社の自分用のパソコンは自分では買えないような高性能マシンだったし。

こうして僕は残業後に会社でゲームをするようになった。
まるでボーナス無支給のうっぷんを晴らすかのように。


1994年。

営業マン3年目の僕は仕事も一通りこなせる様になり、それなりに仕事も任されるようになった。残業も多くなり、改善されない収入の問題と相まって、あまりゲームをしない生活が続いていたある日のこと。

その日は企画書かなにかの作業で残業が遅くなっていた。
会社に残っているのは僕と同期入社のU野君とのふたりだけ。

いつもは一緒に「飲みに行くか」となるのだが、その日は結構な雨が降っていた。残業も一段落して手持ち無沙汰にタバコを吸う僕の目にふと留まったのは、無造作に机の上に置かれていた1本のDOSゲー

『DOOM』


言わずと知れたFPSの金字塔である。

あまりの人気の為、アメリカでは極端にオンライン対戦の負荷が増え、会社や大学のネット回線に支障をきたすケースが続出しDOOM禁止令が出たとか、アメリカの某高校で起きた銃乱射事件の実行犯が所持していたと報道をされたりして、あっというまに伝説のゲームとなった。

その理由としてゲームソフトが最初シェアウェアとして公開されたことや、しばらく後にゲームエンジン自体を他社に公開したことなど、前例を見ない施策があったことは無関係ではないだろう。
後に『Heretic』などのDOOMエンジンを使った名作も生まれてる。

いろいろな面で稀有でフロンティアな作品だったのだ。


92年に発売された『ウルフェンシュタイン3D』を会社で遊び倒していた僕とU野君がそれを手に取らない理由はどこにも無かった。

置いてあったのはPC-98シリーズ用のパッケージで僕とU野君のPCもPC-98。 説明書きにはネットワーク対応と書いてあった。 要するにPCとPCをケーブルで直接繋ぐとふたりで遊べるってことらしい。(当時会社にLANなんてなかった)そして運の悪いことにその辺にPCケーブルが転がってるような会社だった。

U野君にそのことを話したら、彼の目の色が変わった。当然の流れでちょっと繋いでみようということになり、小一時間ほどで接続とインストールが終わった。


さあ、戦場だ(笑


何のことはない、群がるエイリアンをふたりで協力して殺していくFPS。
時に援護し、時に挟み撃ちでエイリアンを殲滅していく。
ただウルフェンシュタインに比べてギミックやグラフィックが格段に素晴しい。

ゲームにのめりこむのにグラフィックが非常に重要な要素であることは後の歴史が証明してくれる。


味方の弾も味方に当たるとダメージを食らい、バズーカやロケット砲は慎重に使用しないとお互い即死させてしまう。

(なるほど、ふたりのチームワークが鍵なわけか)

どちらかがスイッチを操作すると遠くのドアが開き
無数のエイリアンどもに囲まれたり、
二手に分かれて挟み撃ちをしたり、
ふたりでうまく協力していくつも難所を越えた。
エイリアンには小さいのもいればでかいのもいた。
飛び掛ってくるものいれば遠くから光の弾を 吐き出してくる目玉のおばけみたいなのもいた。

いま考えると2台だけとは言えラグらしいラグもほとんどなく、改めてDOOMエンジンってすごかったんだと思う。


エイリアンとの戦いは熾烈を極め、何度も死ぬステージもあったが、持ち前の粘り強さと若さとチームワークでふたりはそれらを乗り越えていった。

ひとりが殺されるとエイリアンはもう片方に群がるから、うかつに死ぬと(相棒が)大変なことになる。

実際敵のAIは賢くなく、どちらかと言えばまっすぐ向ってくるだけに等しい。それが帰って怖い面もあるわけだが・・・


そんな孤独な戦場で、
ふたりというのがこれほどまでに心強い
ものなのかと素直に感動した。


オンラインゲームというものが持つゲーム性の面白さの片鱗に触れてしまったのは、まさに感想を持った瞬間だったのだろう。


そしてふたりはもはや新米兵士ではなく、歴戦のパートナーのような連携プレイでどんどんステージをクリアしていった。

・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・

もういくつステージをクリアしたかわからない深夜、次のステージに出た瞬間それまでとなにかが違った

いままで基本的に屋内や比較的狭い通路構造のエリアばかりだったのに、そこには天井がなく黄色い空が見えていた。

ここは・・・
地球なのか・・・?


そしてそのステージのスタート地点からは左右に広く緩やかに湾曲した回廊が続いている。カーブした廊下はぐるっと一周してもとの位置に繋がり、巨大な円形の壁を形作っていた。


僕のゲーム脳が直感的に悟った。
なるほど。この内側がきっと終着地点なのだ。


コロシアムの壁の一ヵ所に大きな(というかあまりにも巨大で最初は壁の一部かと思っていた)ドアがあった。


とりあえずぐるっと回って他に何もないので中に入ってみることにした。

(というかそれしかすることはないがw)

うじゃうじゃ敵がいるのを想像していたわけだが、実際は内側にはなにもなかった。天井の空いたドーム球場のようなだだっ広い空間だけが広がっている。 これまでのパズル的構造を考えると拍子抜けするほどシンプルなステージだなと。


(ふーん、なにをすりゃいいのかな・・・)


ん?

いや、真ん中に人がひとりいる。

だんだんこちらに近づいてくる。
どんどん近づいてくる。

どんどん・・・
って、

で、でか!


あまりに広く何もない空間のせいで距離感が乏しく、最初人かと思ったそれはふたりの10倍はあろうかという超巨大人型エイリアンだった。
まじで目の前にくると足しか見えないくらいでかい(w
とりあえずマシンガンやらショットガンやらをぶっ放してみるが効いてるのやら効いてないのやら・・・


そいつは右手に埋め込まれた巨大ロケット砲みたいなのをおもむろにこちらに向け、ロケット弾を狂ったように連射してきた!


ロケット弾はふたりのあいだをすり抜け、後ろの壁に着弾した。
爆風でふたりは吹き飛ぶ。

強化して200パーセントあった体力が一瞬で瀕死になる。

ややや、やばすぎ。


大慌てで回廊に走り出て体力回復アイテムを探す。

コロシアムの内側では奴がロケットを撃ちまくる音がどっかんどっかん聞こえてくる。 僕とU野君は、あいつが外に出てきたらやばいという意見で同意した。 廊下は狭く爆風からの逃げ場がないからだ。

ふと見ると壁のくぼみに無限に取れるロケットランチャーを見つけた。
手短にそれを可能な限り叩き込もうという作戦会議を行う。

(というかそれ以外にないがw)

その後、何回目かのアタックの時にU野君が壁にひっかかりロケット直撃で死んでしまった。まあ、死んでも復活できるし、ロケットランチャーは拾い放題なのでそれほど問題はないかなと高を括っていたんだけど、

状況は思っていたよりも深刻だった。

U野君がドアに引っ掛かってるあいだに奴がドア付近まで来てしまったのだ。

そして奴は僕を殺しに一直線に廊下に出てきてしまった。


さらに最悪なことに、そのドアと復活ポイントが近かった。


ロケット弾が復活したばかりのU野君を直撃した!
当然即死。


もし復活ポイントまで奴が来てしまったら復活→死の無限ループの完成だ。

いま僕も死んだらやばい・・・

ここまでやってきた苦労がここで終わるのかと思うとそれだけは避けなければならなかった。


既にU野君は無間地獄を彷徨っている

爆風で少しずつ体力が削られる中、脅威的なテクニックで僕は奴を復活ポイントから引き離そうとした。


キーボードが濡れて滑る。

なんとかかんとか体力が0になる前に奴を復活ポイントからちょうどぐるっと反対側の廊下まで誘導して僕は安堵のため息をついた。

「ふぅ〜〜」


そして手短に作戦会議。
廊下の両方から挟み撃ちにするように同時にアタックをする。
片方が死んだら復活ポイントに来ない様に全弾打ち尽くして相棒もその場で死ぬ作戦で。

じゃそれで(笑

そして作戦は何度も実行され、もう何度目のアタックなのかも判らなくなった。
何回も、
「もうやめない?」
「あとちょっとで倒せると思うけど・・・(根拠なし)」
という会話をくり返す。

そうして最後の瞬間は来た。

減らしていく敵の体力と作戦遂行作業の必然的な結果ですよというように、奴は倒れた。


ふうぅ〜〜〜〜(X2)


これでまだ次があったら即電源OFFとPCを睨みつけていたが、一瞬の暗転の後、エンディングロールが静かに流れ始めた。


(ああ、やっと終わった)


その瞬間にどっと疲れが襲ってきた。
ふたりとも放心状態でモニターを見ていた。

はぁ〜。マジ疲れた。けどこの達成感はなんだ?
いままで体験したことのない高揚感があったのは、ひとりじゃなくてふたりだったからだろうか。


一服しながらふと見上げた目に入ってきた窓越しの空はいつのまにか雨も止んでいた。

(  ̄凵P)y-~~

というかもう空は明るくなっていた。


げっ 、もう朝8時かよ!

( ̄O ̄lll)


家に帰る時間ないじゃん!今日はこのまま出社だよ(泣


この時の体験が僕の全てのオンラインゲーム体験の始まりになっている。

そしてそれは僕のオンラインゲーム人生において重大な転機となった。

なぜなら1+1は2じゃなく3にも4にもなるということを僕は実感してしまったのだから。

投稿者 bb_admin : 2006年11月14日 09:04