ファミ通.com

ファミ通媒体メニュー



実録!オンラインゲーム人生記

« 『兆し:DIABLO』 | 実録!オンラインゲーム人生記のホーム | 『不安(後編):DIABLO』 »

『不安(前編):DIABLO』

2006年11月28日

プレイ開始から数えて最初の週末でシングルプレイはクリアーしてしまった。シングルにしか出てこないアイテムがあったり、ストーリーがよくできていることもそうなのだが、これをクリアーしてオンラインを早くプレイしたいという欲求が大きかったからだ。

そしてシングルプレイクリアーの余韻も冷めぬ内に早速オンラインプレイ開始。モデムは100万円のローンと引き換えに得た288のモデムを使う。

オンラインプレイはまたレベル1からスタートになるが、1度目のプレイで能力値の育て方やアイテムの良し悪しをある程度把握している僕にとって、それはまったく苦にならなかった。

『DIABLO』のオンラインプレイ用にBLLIZARD社が利用無料のゲームサーバー、Battle.Netを提供している。いま風に言えばロビー&マッチングサーバーでキャラクターはクライアントにセーブされる形式だ。
オンライン対戦の盛んなメジャーFPSゲームでさえ対戦用ホストIPアドレスを有志のユーザーに頼っていることを考えると、メーカーがオフィシャルにオンライン用サーバーを提供するというのは画期的なことだ。

キャラクターはシングルと同じくソーサラーでいくことにした。
魔法の書を使うために必要なMAGIC値があればウォリアーでもローグでも魔法は使えるということはシングルプレイで気づいていたが、最終的なダメージ量がソーサラーだと桁違いなのでここはやはりほかの選択肢はない。

オンラインプレイは3段階の難易度でプレイすることが可能だ。
それぞれノーマル、ナイトメア、ヘルと呼ばれている。
ノーマルはシングルプレイと同じ難易度。
ただナイトメアはノーマルをクリアーしないとプレイできない。
ヘルも同様だ。


それからというもの仕事から帰るとすぐ『DIABLO』、
土日も風呂と寝る時間以外はほぼ『DIABLO』。
そしてプレイ開始から数えて2回目の週末、僕はオンラインのノーマルをクリアーした。

そして間髪を入れずにナイトメアへ突入。
敵も強くなり、ひとりで生き抜くのは厳しいのでこれからは基本的にマルチプレイが主体になるが、強くなっただけ得られる経験値も増えているし、なんといっても敵がドロップするアイテムの質が格段によい。雑魚ですらそこそこいいものをぼろぼろ落とす。
その証拠にナイトメアの中盤あたりで既にノーマル難易度で得た装備アイテムはすべて新しく得たものに置き換わっていた。

アイテム。
とにかく『DIABLO』というゲームはアイテムに始まりアイテムに終わるっていうくらいアイテムが重要である。
その理由のひとつとして、銀行とか倉庫とかいうシステムがないということが挙げられるだろう。

そうなのだ。つまり得たアイテムは自分で常に持ち歩くか、売るか、捨てるかなのだ。当然アイテムを持ちすぎるとダンジョンからの戦利品すら持てなくなるのでその取捨選択は非常に重要であり、自ずとアイテムの目利きを迫られることになる。
しかもお金もアイテム扱いでアイテム欄の1マスに最大5000gpという嘘の様なシステムのせいでますますアイテム欄が圧迫されてしまう。


そんな『DIABLO』のオンラインモードで、村の空き地に良質アイテムやゴールドを置いておきゲームを抜けるときに回収するという習慣が生まれたことはごく自然なことだと言える。そして世界中の大部分のプレイヤーが人のものを勝手に持っていかないというマナーを自ずから共有したという事実は、オンラインゲーマーの誇りにも通じるんじゃないだろうか。

まあそれでもやはり泥棒はいるので、本当に大事なものはアイテム欄に入れておくわけだが。


さて、今日にもナイトメアをクリアーしそうなある冬の日曜日。
そう、忘れもしないとても天気の良い日曜日。

と言ってもその週末は一歩も外に出かけてはいないし、いや、むしろ金曜の夕方から誰とも喋ってないことのほうが問題なんだろうけど。だって『DIABLO』やってると電話が通じないのだからしかたがない。

当時はまだテレホーダイもブロードバンドも手頃な携帯電話もなかった。


夕方、レベル的にもそろそろナイトメアクリアーが行けそうだったので、
"MARE/HELL ITEM & EXP"というパブリックゲームを作った。

これは難易度ナイトメアで地下13階からアイテム、経験値目的で遊びますという意味。地下16階にDIABLOがいるので必然的にクリアーも視野に入るというわけだ。

すぐに僕よりひとつレベルの低いローグが入ってきた。
お互い「hi」と挨拶を交わす。
その後何人か入ってきたが挨拶もせずに抜けてしまったので
とりあえずふたりで行こうということになった。

このローグは弓を使うスタイルで、しかも鬼のように強い。
僕の魔法もファイヤーボールとファイヤーウォールがかなり
育っていることもあり、群がる敵は僕らに近づくことすらできない。

(なんだふたりでもぜんぜん行けそうじゃん)

そして15階。

15階のボス魔法使いLAZARUSとその側近のサキュバス2匹は、ソーサラーにとっては楽な敵に分類できると思う。部屋の外からファイヤーウォールを敷き詰めて雑魚を始末し、残った側近とボスを各個撃破するだけだ。とにかく魔法は育つと強い。
しかもこいつらはモンスターレベルが高く高級アイテムを落とす可能性も高い。要するにカモなのだ。


そして部屋にサキュバスとLAZARUSだけになったのを確認して、
「Charge」「yeah」と会話を交わし突入する。

まずはサキュバス2匹。

弓と魔法でそれほど苦労せず撃破。
RINGとLONGSWORDを落とす。これは期待できそうだ。

ふと気づくとローグが剣と盾に持ち替えていた

(へー、さすがじゃん)

と思った瞬間。いままで一度も使っていなかったテレポートの魔法
ローグが僕の隣に飛んだ。

え? と思うよりも早くローグが僕を斬りつける。

剣の振りが信じられないくらい速い。

僕はのけぞりモーションで固まって何もできない。

瀕死になったところにLAZの魔法が飛んでくる。

直撃。

そして死亡。

装備品をあたりにばら撒き、僕は倒れた。

赤く染まっていく画面の中、ローグは華麗にテレポで魔法を避けつつLAZの隣に飛びそのままLAZを切り伏せた。

僕は真っ赤になった画面を見つめながら呆然としていた。

ほんの数秒の出来事がうまく理解できない。

僕がばら撒いた装備をローグは品定めし終わったのか、
ローグは僕に蘇生の魔法を掛けた。
装備はなにも取られていない。
僕は装備を急いで拾おうとした。
その矢先に弓で撃たれまた死亡。
今度は装備は落とさずに僕は「」を落とした。

ローグはおもむろにその耳を拾った。

そして、
「im pk. but yours r poor. good luck 4 hunting ;-)」
と言うとさっさとゲームから抜けてしまった。

DIABLOにおける"死亡"には2種類ある。
敵に殺されるか、プレイヤーに殺されるかだ。

敵に殺された場合、
装備していたアイテム全てと所持金(の半分?)を死体の周りにばら撒いてしまう。もちろんばら撒いたアイテムは他人も拾えるし、もし回線落ちしてゲームが消えれば落ちたアイテムは二度と戻ってこない。

片やプレイヤーに殺された場合、
装備アイテムはばら撒かない。所持金の半分と"耳"(というアイテム)を地面に落とすだけだ。耳には死亡者の名前とレベルが明記される。つまりPK、Player Killingだ。

重要なのはとどめの一撃をもらったのが敵なのかプレイヤーなのか
ということ。どちらの場合も死亡者が経験値を失うことはない


"PK"
僕がPKという単語を知ったのはまさにこのときだった。
もちろんPlayer Killingの略なんだが、
当時の感覚として"Psycho Killer"に
意味を引っ掛けたような雰囲気で使われていたと思う。
とくに『DIABLO』でのPKにはメリットがあまりなく、
図らずもシステムが趣味的な殺人行為を演出する図式になっていた。
それがまた怖さを強調する結果になっていたわけだ。
耳集めを趣味にしているプレイヤーに会ったこともあるが、
集めた耳を村の空き地に大量にペチャペチャ並べる姿は
想像以上に怖いものがあった。

殺されたあと、僕はゲームメニューから村に戻って再開を選び復活した。空き地に置いておいた僕のアイテムには手もつけてない。ご丁寧なことにお金すら、もとのまま置いてあった。
初めてPKされたことよりも盗る価値なしと判断され、その上おそらく情けまでかけられたことが悔しかった。

最初何人かがゲームに入ってはすぐに抜けてしまったときに僕は気づくべきだったのだ。あいつはパブリックゲームを仕事場にしてるPKerなのだ。数ヵ月遅れて始めた僕は圧倒的にPKに対する経験値が足りないということを思い知らされた。ただ装備を失わなかったことは不幸中の幸いである。PKというリスクも実感することができた。

ただただ、とても悔しかった。

(後編へ続く)

投稿者 hero : 2006年11月28日 11:57