核戦争で荒廃し、破壊し尽くされた文明を再建するのに不可欠なもの。それは文明の歴史を記録した媒体の研究である。そしてその研究に最も必要なのは"本"である……。
つうわけで今回は『Fallout 3』に登場するアイテムの中で、最も特殊な効果を発揮してプレイヤーキャラの成長要素にも影響を与える“本”の価値について書き飛ばしてみたい。
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▲ウェイストランドでの自宅にて、読まずにためておいた蔵書を撮影。科学辞典からアメコミまでいろいろあります。中身を読めないのが残念! |
RPGに登場する“本”といえば、魔法を覚えられる巻物的な存在。それはこのゲームでも変わらず、本を読めば確実にスキルを伸ばすことができる。もちろん、特定のスキルを上げるためにはそれに対応した特定の書物を読む必要がある。しかしそれを探し出すのは非常に困難な作業だったりする。というのも、スキルが上がる本は、雑貨屋など商店で入手することはできないからだ(一部例外あり)。つまり、この広大な廃墟キャピタル・ウェイストランドをひたすら探索して拾い集めるしかないのである。
本の種類は付加できるスキルに比例しており、読めばスキルが1ポイント上昇。しかし、レベル4から付加できるPerksであるComprehensionがあれば、本を1冊でアップするポイントが2ポイントになるので、どうせ読むならこのPerksを付加した後にまとめ読むのが望ましい。序盤は本を拾っても焦って読まないように!
ちなみに筆者の場合は、机の引き出しの中に本を貯め込んで、毎日寝る前に1冊読むのを日課にしていた。読み応え(つまり効果テキメン)がある本はSmall gunsのスキルが上がる『銃と弾丸』。おそらく内容は「コ●バットマガジン」みたいなもんだろう。ゲーム中では表紙しか見られないけど、きっと中身はステキな通販広告とかが載ってるハズだ。
ビジネス啓蒙書のごとくBarterのスキル(物の売買が有利になる)が上がる『ゴミ商人の馬鹿な話』も拾ったら必ず読みたい1冊。Barterは、序盤における成長要素としては後回しにしがちなので、この本の存在は大きい。爆発系武器のダメージや投擲時のコントロールを上げてくれる『伏せろ!』や、スピーチ能力がアップする『政治家に学ぶ嘘のつき方』などの書籍は真っ先に読破しておきたい。さらにMedicineが上がる医学書(きっと中身は死体写真満載だと思います)、Scienceが上がる『科学の大きな本』、そして読むと素手のケンカが強くなるという伝説のアメコミ『グロクナック・ザ・バーバリアン』などなど、実に様々な種類の本が拾えるウェイストランドは、まさに古本天国というべき世界だ。
しかし通常の探索で落ちているのは破れた本とか汚れた本とか焦げた本とか、基本的に古書的価値のないゴミばかり。価値のある本を発見するまでの道程は遠く、現実でも古本屋めぐりが趣味の筆者にとっては、ウェイストランドが巨大なワゴンセール100円コーナーに思えてくる。数百、数千のゴミ本の中から貴重なお宝本を探し出す行為は、まさに古本用語で言うところの"セドリ"そのものではないか!
"セドリ"という言葉に馴染みがない読者諸兄もいるかもしれないので、ここで軽く解説しておこう。セドリを漢字で書くと"背取り"。古本屋の棚に埋没した膨大な書籍の中から、価値のある本を背表紙で見つけて回収し、その本を高価買い取りしてくれる店に持ち込む行為を指す。
主に絶版マンガや写真集など古書的価値の高いジャンルが狙い目で、時には地方にまで遠征してセドリすることもあるし、このセドリだけを生業にするプロもいる。最近ではセドリした収穫ブツをネットオークションにて高値で売りさばく猛者も現れ、かつてのような奇跡は起きにくくなった(奇跡の一例:藤子不二雄ランドの初版本をブッ●オフの百円コーナーで数十冊発見など)。セドリ師と呼ばれるプロの方々は、転売目的か、もしくは本気のコレクターかのどちらかで、マメな市場調査や目利きの確かさが要求されるため、いきなり素人が始めようとしても無理な趣味(商売)なのは間違いない。しかし、『Fallout 3』においては、ゲームをプレイする誰もが即席セドリ師になれるのである!
そんなニッチな要素がゲームの売りではないと思うが、古本好きの筆者にとってこの要素は嬉しさ1万倍! いまは誰に自慢するわけでもなく、『グログナック・ザ・バーバリアン』だけを蒐集するアメコミコレクターを目指して奮闘中なのだ(ウェイストランドに散らばる全てのアメコミを集めれば全巻コンプリートだ! と、勝手に思っているだけで、実はそんな設定も実績もない)。全ては自己満足のための俺ジナルプレイ要素。ゲームであろうと現実であろうと、古本を集めるのは実に楽しい行為である。
だが、世の中そんなに甘くはない。スキルが上がる本を集めているなら、それをそのまま転売すれば本格的なセドリ師になれる、と思うのは早計だ。それはそれでこれはこれ。実際のところスキル系の書籍に対する古書的価値は低く、転売しても大してキャップを得られない。スカベンジャーやトレーダーに売っても二束三文でしか買ってくれないのだ。ならば自分で持っているほうが徳である。
しか〜し! 本当に高い本も存在する。とくに読んでもスキルアップという効果はないが、特定の業者に持っていくと高価買い取りの上に経験値までくれる奇跡の本があるのだ。
そのタイトルはズバリ"戦前の本"!! 表紙は地味だし内容も不明だが価値は最高クラス。ただしスカベンジャーやトレーダーに持ち込んでも高価買い取りはしてくれない。買ってもらうには"アーリントン図書館"に行くしかないのだが、そこまで移動する価値は十分にあると断言できる。もしも戦前の本を発見したら迷わず拾って大切に保管しておこう。一定量集まったら買い取りカウンターに持ち込んで大量のキャップと経験値をゲット! 本を集めるだけで成長できて金も儲かるなんて最高じゃないか! セドリの奇跡をゲームで味わえるとは、なんて粋なシステムなんだ!
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▲すっかり恐怖の館っぽくなっているが、ここが戦前の本高価買取でウェイストランドの古書狂におなじみ、アーリントン図書館。 |
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▲ウェイストランドには学校も試験もなんにもない(私塾はある)ので、席を占有している高校生とかがいない快適な図書環境を実現。暖房(焚き火)も完備している。 |
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▲失われた過去の知の再集積は重要な事業。親切買取でお待ちしております。 |
ただし間違っても、以前紹介したゴミ専門の旅商人クレイジー・ウルフギャングなんかに売ってはいけない。あいつは“歩くブッ●オ●”だからな。超安値で買い叩かれるうえに、あいつが売ってくれる戦前の本は種類が違うらしく、図書館では買ってくれないので注意しよう。
ちなみに筆者はプレイ序盤に、“戦前の本”の買い取り制度を知って、そこら中の本(“戦前の本”そのものとは違う、汚れた本、破れた本、焦げた本など)を拾い集めまくり、持ち込んで一蹴された経験がある。どうやらこの手の本は、クレイジー・ウルフギャングに売ったほうがマシのようだ。
あと、触れるのが最後になってしまったが、本作の世界観上重要なのが、非業の天才科学者ニコラ・テスラの存在である。ゲーム内で蒐集できる本の中に『ニコラ・テスラとあなた』という書籍があり、これを読むと光線銃などエネルギー・ウェポンのスキルが上がるのだが、テスラは実際にレーザー兵器の基礎ともいうべき殺人光線に関する論文を1920年代に発表しており、その先を行きすぎた天才的な発想には米軍も注目。テスラの死の直後に、FBIが金庫から大量の論文や設計図を持ち去ったという逸話も残されている。
『Fallout 3』には、他にもテスラの名前が付けられた装備が登場するなど、パラレルワールドの歴史においては、テスラの発明が世界を席巻したことになっているのだ(テスラによる奇跡的な科学実験の多くは、論文が残されておらず、その原理は謎となっている)。
まさにSFならではの“if”の要素が存分に発揮されており、そういう設定の端々からも『Fallout 3』が本当に細部まで練り込まれた作品であることを、改めて実感させられる。テスラに興味を持ったら研究文献を読むのが一番だけど、簡単に知りたければ荒木飛呂彦/鬼窪浩久・共著によるコミック『変人偏屈列伝』(集英社)を読むとわかりやすいかも(かなり簡潔な内容だけど)。
やっぱエジソンよりもテスラですよ!
本以外にも、様々な蒐集系アイテムが用意されている『Fallout 3』の世界。今回は古書に言及したけど、集める価値があるものは他にも大量にある。次回は、そんな蒐集系アイテムの中でも価値の高い、つまりコンプリートコレクションを達成することで、多大なるメリットが授けられる逸品について解説しよう。
それまであの世界で生きていればの話だが。
次回:「俺は孤高のコレクターだぜ!」
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▲ゲームにあやかって現実のテスラ本を読み、光線銃に関する知識を仕入れてスキルアップ中の筆者。無線技術や蛍光灯、交流電流の父と呼ばれるテスラは、晩年には高周波による地震兵器などマッド・サイエンティスト真っ青の奇抜なアイデアを数多く発表していた。 |
洋ゲーの魅力を日夜伝道する謎のマスクマン。その正体は、超有名な某海外デベロッパーの元社員との噂もあるが……詳細は不明という設定。
週刊ファミ通にてゲームクリエイターの須田剛一氏と共に「洋ゲー発着便AIR PORT51」を毎週連載中。月刊ファミ通Wave DVDでは、須田剛一氏とともに映像コンテンツ「未確認洋ゲー基地AREA51」を毎月連載中。座右の銘は「毒蛇は急がない」。