第6回:ウェイストランド猟友会が荒野を行くぜ!

 放射能溢れる大自然を満喫! 人類ほぼ滅亡後の動物園にて生死を賭けた行動展示をご案内! 敵は人間ばかりじゃない。ウェイストランドの真の住民はアイツらなのである。

 

 というわけで、今回は『Fallout 3』に登場する人間以外の敵、その中でも動物系について報告したいと思う。ウェイストランドは核戦争後の200年という経年ダメージによって、もとは合衆国首都とは思えないほど土地は荒廃。瓦礫の山となり通行も困難な市街地はともかく、かつてはベッドタウンの住宅地だった面影が残る地域は半分が原野に飲み込まれた状態で、およそ人間の住めるような状態ではなかったりする。

 そう、『Fallout 3』における荒野とは“試練の道”。ハンパにクエストをこなすよりも、よっぽど強敵が出現する可能性が高いのが特徴である。とくに動物類は、人間型の敵と比較すると圧倒的に動きが速く、攻撃も容赦ない。レベル5に到達するぐらいまでの間は、暴走族くずれのクソレイダー連中よりも動物のほうが厄介な存在と感じた人も多いのではないだろうか。

 ウェイストランドの荒野において、序盤で頻繁に出くわすのは動物と昆虫が半々ぐらいの割合となるが、強さという点では実にバリエーション豊富で、下手すれば唐突に初期レベルでは絶対に倒せそうにないような化け物に鉢合わせする可能性もあるのが、このゲームの心底恐ろしい部分でもある。

 

▲今回はウェイストランド版『野生の王国』をお届け! 人間とはいかに弱きものなのか、人は最悪のタイミングで思い知らされる。

 

 まずザコレベルとしては昆虫類。アリ、サソリ、ハエ、そしてゴキブリがいて、そのルックスこそ戦前と変化ないが、それぞれ大きさがハンパではなく、ラッドローチと呼ばれる巨大ゴキブリの場合は“ジャイアント馬場のスリッパ”レベルの大きさ。もしこいつと対峙したら、オレは必ず素手でぶっ殺すように心がけている。

 V.A.T.S.システムで狙いをつけ、大ぶりのスローモーション描写のまま、渾身のストンピングを繰り出しゴキブリを踏みつぶすというビジュアルのパワフルさと馬鹿馬鹿しさには一見の価値あり! もしゴキブリに遭遇したら迷わず素手で! もし持っていればアイアンフィストとかグローブ系武器を装着してブン殴ると、さらにステキだと付け加えておこう。

 

 ゴキブリは素手でも空気銃のBBガンでも倒せるが、それより大きくなると本格的な銃火器の出番となる。その筆頭がアリ。大きさは大中小に分かれていて、小で大体ゴーカートぐらい。大は立派なF1マシンぐらいの大きさという厄介な敵だが、アフターマス映画好きならば、この巨大アリという敵の設定にはピンと来るハズ。

 おそらくこの敵の元ネタは1953年にワーナー・ブラザースが製作したSFモンスター映画の古典的名作(ただし部類としてはB級)としてマニア好みの人気を誇る『放射能X』しかない。米ソ冷戦の真っ最中に公開されたこの映画には、ニューメキシコ州の核実験場付近において、度重なる核爆発と放射能汚染の影響でアリが巨大化! 小さな田舎町に襲いかかってきて大パニック! というわかりやすい作品で、当時の特撮の技術的な限界により人間が巨大アリに襲われるシーンでは、そのためだけに実物大モデルを用意。チャチいの一言で済まされるかもしれない造形だったが、その思い切りの良さが買われてアカデミー賞にノミネートされてしまうんだから、アメリカってホントにステキな国だ。最後は正義のアメリカ軍が出動して、巨大アリ軍団を女王アリの巣穴ごと火炎放射器で豪快に焼き払ってTHE END。

 しかも『Fallout 3』では、この巨大アリが人間に逆襲するかのように火を吹いて襲いかかってくる街があり、そいつらを根こそぎ駆除するクエスト名が“Those !”なんだから、これは間違いなく確信犯。なにしろ『放射能X』の原題は『Them !』である。

 “核=巨大アリ”という方程式は、映画好きには絶対に正しい。ディストピアには無法者と巨大生物がよく似合うんだから、しょうがない。

 

▲ワンちゃん、かわい〜!(目はブッ飛んでるけど) レイダーが飼っていることも。

▲双頭牛バラモンにも野良と家畜の両方がいる。殺すと“バラモンステーキ”が手に入るのだが、ここはやっぱり焼いておきたい。

 

 アリよりも強力な敵ラッドスコルピオンも忘れてはいけない。ようするにデカいサソリなんだけど、こいつの装甲マジで固い。しかも動き早! 毒針に3〜4回突っつかれると瀕死など、出会うようになってからは、カサカサカサという音を聞いただけで身震いしてしまうだろう。至近距離からショットガンをぶっ放せば数発で倒せるうえに、死体から回収できる毒腺は自作武器の素材でもあるので、がんばりりたいところだが。

 ある夜、いつものように未到達ポイントを探して荒野を探索していたオレは、例によって連中のカサカサ音を耳にして、即座に2匹の巨大ラッドスコルピオを岩陰に発見し、ありったけのグレネードを投げつけてやった。勝負は火力で上回るオレが勝利したものの、ちぎれた2匹のサソリの隙き間から小さなサソリが現れて、なにか怨みのこもった鳴き声を発しながら猛スピードで向かってきた時には、“ウェイストランドの破壊者”と呼ばれて、奴隷市場でもビビられているオレでも、

 

「もしかして、一家団欒を破壊しちゃった?」

 

 よくよく周囲を見れば、岩には繭が。間違いない、ここはサソリさんのお宅だった。ごめん! といいつつグレネードを投げて毒腺を回収。この世界に来てから、もう涙なんてとっくに枯れ果てたよ。泣いてほしいんなら“きれいな水”でもよこせってんだ。

 

▲人間のNPCが秀逸なので、ナマモノどもにもバックストーリーがあるんじゃ? と思わされることもある。“クマの三連星”がジェットストリームアタック!

▲嫌になるほどのスピードと積極性を持つヤオ・グアイ。野生の動物は見切れていることなど気にしない。ムツゴロウさん並みの動物転がしを覚えたいところだが……。

▲ウェイストランドのマタギが「殺(と)ったどー!」 叫んでもひとり。きっちりRADが上がっているのは気にしない。

 

 昆虫系の次は、もう1つの生態系である哺乳類。ネズミとモグラが変異したモールラット、核戦争前と生態系に変化がみられない野犬軍団。双頭の牛バラモンは、おとなしくて肉が美味だが頭突きには結構なダメージがあるので甘くみないほうが懸命だ。

 恐ろしいのは以前の冒険記でも報告済みの、クロクマの子孫である巨大熊のヤオ・グアイ。敏捷なのでV.A.T.S.を使って速やかに倒さなくてはいけないが、その肉には他の食材とは違う栄養効果がある。腕に自信があるならば、ハードボイルドな野獣狩りを生業にしてみてもいいだろう。ヤオ・グアイ肉を大量に買えるなら何キャップ払っても惜しくないからな!

 しかし動物ワールドの生態系の頂点には、このヤオ・グアイも尻尾をまいて逃げ出す超凶悪アニマル“デスクロー”が君臨している。デスクローは正直いって、ヌカグレネードを所持していても逃げ出したくなる破壊王的存在。倒せばその爪で自作武器が作れるので無視はできないが、一度に何匹も来られたらお陀仏である。マグナムを持ってしても、完勝は難しいだろう。

 

▲速い、アブない、キモいと、近付きたくない要素が3拍子揃ったデスクロー。至近距離で撮影した貴重(?)な1枚は、世界で一番嫌な抱擁シーン。

▲ウェイストランドのマタギが「ひと狩り、いっとく?」デスクローは嫌です。

 

 そして昆虫、哺乳類の間には海産物ミュータントのミレルークを忘れてはいけない。なぜか二足歩行に進化した巨大ガニであるミレクルークは、顔面以外が装甲で覆われているうえに両腕が巨大なハサミ(ま、カニだからね)。こいつにバッチンやられると手足に大ダメージを受ける。しかし、やはり肉は美味らしいが。

 人間とメカ系以外の生物は、だいたいこんな感じである。ザコ中のザコに毒針を飛ばしてくる変異ハエとゴキブリがいて、その上には果てしない食物連鎖の輪が広がっている。広がりすぎて、よくNPCが襲われて死んでしまったり、動物同士でもブチ殺し合っているのに遭遇すれば、いかにこの世界が無法と絶望に満ちてるかを実感させてくれるだろう。

 

 次回更新はクリスマス本番ということで、核戦争後でもお洒落を忘れない“勝負服コレクション”を大特集! オススメのヘアスタイルから珍奇ファッションまで大公開しよう。

 もちろん、それまであの世界で生きていればの話だが。

 

次回2277年モードのファッションを着こなすぜ!

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マスク・ド・UH

洋ゲーの魅力を日夜伝道する謎のマスクマン。その正体は、超有名な某海外デベロッパーの元社員との噂もあるが……詳細は不明という設定。
週刊ファミ通にてゲームクリエイターの須田剛一氏と共に「洋ゲー発着便AIR PORT51」を毎週連載中。月刊ファミ通Wave DVDでは、須田剛一氏とともに映像コンテンツ「未確認洋ゲー基地AREA51」を毎月連載中。座右の銘は「毒蛇は急がない」。