HOME> アニメ・声優> 『鏡音リン・レン』の人気曲を、下田麻美がみずからカバー!? CD『Prism』の制作秘話を下田麻美に直撃インタビュー
●自分の声で作られたボーカロイドの曲を、自分でカバー!
歌詞と音符を入力して、“初音ミク”などの仮想アイドルに歌を歌わせる音声合成ソフト『VOCALOID2』シリーズ。同シリーズ第2弾の『鏡音リン・レン』を使って作られた人気楽曲を、鏡音リン・レンの声を担当した声優・下田麻美みずからがカバーするCDアルバム『Prism』が、2009年6月10日に発売される(価格は3000円[税込])。
下田麻美が声を充てたソフトを使って作られた曲を、下田麻美本人がカバーするという一風変わった本CD。収録曲はYouTubeやニコニコ動画、ピアプロといったインターネットの投稿サイトで人気となった楽曲から12曲と、下田麻美自身の新曲1曲を収めた、全13曲となっている。
今回はレコーディングが終わったばかりという下田麻美を直撃! 本CDへの意気込みや、制作秘話についてうかがった。
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▲下田麻美(写真上)と、彼女が声を演じる鏡音リン・レン(写真下)。下田麻美はゲーム『アイドルマスター』の双海亜美・真美役や、アニメ『今日の5の2』などで活躍中の人気声優。ちなみに、本CDは下田麻美名義として初のソロCDアルバムでもある。 |
――『Prism』の企画を聞いたときにどう思いましたか?
下田麻美(以下、下田) そもそもクリプトンさんの企画として、「リン・レンの歌を歌ってみない?」という話をいただいたのは2008年の夏でした。そう考えると、このCDまでけっこう時間がかかってしまいましたね。初めて企画のお話を聞いたときは、またリン・レンといっしょにお仕事させていただける日が来るとは思っていなかったので、驚きと喜びを感じました。さらに、キャラクターソングとは別の声優・下田麻美としてのアルバムを出させていただけるということにも驚きと、うれしさがありましたね。最初は……どういうきっかけでお話をいただいたんでしたっけ?(広報さんに尋ねる)
広報 ネット上にも鏡音リン・レンを使った人気の曲があるということで、「それも下田さんが歌ってみるというのはどうでしょう?」というお話をさせていただいたんです。そうしたら、じつは下田さんご自身が、どういう歌があるんだろうといくつか聴かれたことがあって、気になっている曲もあったようで、、すんなり決まっていったんですよね。
下田 ちょっと前の話なので記憶が薄れつつありますが、そんな感じでした(笑)。
――収録曲の中の1曲は、応募された作品の中から下田さんが選ばれたということですが、選ばれた基準は?
下田 今回、まず2008年末に、ピアプロさんというサイトで、“皆さんが『鏡音リン・レン』を使って作った曲を下田麻美が歌います”という公募企画をさせていただきました。その企画に、1ヵ月という短期間で合計278曲も応募をいただきまして。公募という企画に、ピアプロさんやボーカロイドをご利用いただいているファンの方からどれだけ反応があるか想像できなかったので、その数だけでも皆さんが鏡音リン・レンを愛してくださっているんだということがわかりました。でも、それだけ応募をいただいても、実際に歌えるのは1曲だけ……ということでしたので、スタッフさんに手伝っていただきながら、下田本人が全曲を聴いてセレクトしました。1ヵ月以上の時間をいただいて聴いていたのですが、皆さんがとても素敵な曲を作ってきてくださっているので、その中から1曲しか選べないということと、それを自分が選ぶということに、とてもプレッシャーを感じましたね。でも、私ができることは、その中から私がとことん「歌いたい!」と思う曲を捜すことだと考えて、全部歌いたいという気持ちを抑えつつ、古い表現ですが、もっとも自分がビビッと来たものをセレクトさせていただきました。
その中で選ばせていただいた曲は、“さむそんP”さんという方が作られた『イタズラムスメ』という曲です。いまは21世紀ですが、なんとも昭和な雰囲気の漂うGS(グループサウンズ)風の曲になります。じつは私個人が、昔からそういう懐メロが好きなんです。子供のころによく親から聴かされていたということもあるのですが、それ以上にGSのノリが時代と関係なく好きで。それもあって『イタズラムスメ』を聴いたときに、「あ、私が好きな曲調だ」という雰囲気を感じましたね。歌詞を見ていただけるとわかるのですが、思春期の女の子の素直になれない感情がストーリー性を持たせていて、おもしろおかしく描かれているんです。曲を聴きながらそのストーリー性を感じたときに、これを歌で表現したらどうなるのかなと考えたり、どんな風に歌おうかなという楽しみが膨らんだりしたので、この歌を選ばせていただきました。ほかにも最終段階で20曲以上の候補があってとても悩んだのですが、「下田さんが選んでいいんだよ」とスタッフさんが言ってくださったので、最後まで私本人の意志で選ばせていただきました。
――さきほどレコーディングを終えられたということですが、実際に歌ってみた感想はいかがですか?
下田 初音ミクちゃんや巡音ルカさんも含めて、ボーカロイドには公式のキャラクター設定がないので、ユーザーさんが自分の中の理想の視点で彼女たちを作り上げていけることが、ボーカロイドのヒットのポイントになったと思うんですね。それゆえにネットに上がっている曲も、リン・レンというひとつのキャラクターにも関わらず、いろいろなストーリー性やキャラクター性が垣間見えるものになっています。ひとりのアーティストが歌っている歌と考えると違和感があるのですが、その分いろいろなジャンルの曲があります。さらに、ボーカロイドの“ジェンダーファクター”という機能を使うと、すごく子供っぽい声や大人びた声など、声に幅を持たせられるんですが、そういう機能を皆さんが好みや曲に合わせて使っているので、「リン・レンの曲をカバーしましょう」と言っても、曲によって声質が違うんですよね。どの曲もユーザーさんやファンの方に支えられて人気になっている曲ですので、その方たちが持っているイメージや、制作者が曲に込めた想いは絶対に崩したくなかった。ですので、すべての曲ではないのですが、作曲家さんが現場にいらっしゃったときに、その曲が持っているイメージやご要望をおうかがいしました。あと、どの曲もニコニコ動画さんなどの動画サイトに上がっていますが、中には映像と歌がともに存在したことでヒットした曲というのもあると思うんです。ファンの方がどうしてこの曲を好きになったのかを理解しておきたかったので、ただ歌を覚えてレコーディングに臨むのではなく、前もって動画サイトですべての収録曲のプロモーションビデオを観て、映像といっしょに曲を聴いて、自分の中でイメージを膨らませ、先ほど言ったクリエーターさんのご要望などと合わせてレコーディングさせていただきました。
――原曲がボーカロイドで作られた曲ということで、歌いづらかった曲はありますか?
下田 数え切れないほど(笑)。レコーディングに臨みながら、すごく「私、人間なんだな」と実感が湧いたんです。鏡音リン・レンは私の声ではあるんですけど、機械か人間かという決定的な差があって、それぞれに長所と短所があります。ボーカロイドの強みは絶対に音を外さないし、どんなに高い音、低い音でも出せるので、その分、自分の本当に作りたい歌を皆さんが作れるんですよね。誰でもそうだと思うんですけど、自分ができないことを簡単にやってのける人って、「すごい!」っていう尊敬の感情が生まれると思います。今回収録させていただいている曲にも、非常に音域の広い曲があるのですが、そういう曲が人気になったポイントとして、「こんな高い音がこんなにキレイに出るんだ」というリスペクトもあると思うんです。でも、私にはそれが簡単にできないということをまざまざと見せつけられて、リン・レンは本当にすごいんだなあと、彼女たちへの尊敬を感じましたね。高い歌に関しては、キーを変更させていただいている曲もあるんですが、できる限り全力を振り絞ってがんばらせていただきました。
――このアルバムをこんな場所で聴いてほしいといった希望はありますか?
下田 さきほども申し上げましたが、このアルバムにはいろいろなジャンルの曲が入っているんです。たとえば、「大自然溢れる場所で聴いてください」と言ったときに、マッチする曲もあれば違和感がある曲もあるんですね。それぐらいジャンルがバラバラになっているので、「ここで聴いてほしい」ということはそんなにありません。このCDをお買い求めくださる方というのは、リン・レンを日ごろから応援してくださっている方だと思うんです。そういった方々には皆さんにお気に入りの曲があると思うんですが、今回収録される13曲、うち1曲は新曲ですが、残りの12曲すべてを知っている方はそんなにたくさんいらっしゃらないんじゃないかなと。ですので、「この曲を聴きたい」と思って買ったけど、最終的に全部聴いてほかのお気に入りの曲を見つけていただけるとうれしいですね。あと、ニコニコ動画さんやピアプロさんで曲をアップしている方が参加してくださっているので、目当てじゃなかった曲を聴いたときに、その作家さんのほかの曲を聴いてみたいと思ったり、リン・レンなどのボーカロイドへの興味が広がっていったりすると、さらにうれしいです。
――下田さんが作詞された新曲が入りますが、どんなコンセプトで作詞されたのでしょうか?
下田 私の人生のスローガンに“強く生きる”というものがあります。じつは私ってすごく泣き虫だったり、神経質でまわりからの意見、顔色をうかがっちゃったりするところがあって打たれ弱いんです。でも、私がずっとやりたかった声優というお仕事をさせていただくうえで、いろいろな人に支えられているので、いつまでも弱虫じゃいけないなと思っていることもあって。そういうことがきっかけで“強く生きる”ということを思うようになったんですけど、「本当は弱いけど強くなりたいんだ」と思う気持ちが下田麻美という人間だと思っているので、オリジナル曲にはその部分を入れさせていただきたいなと思いました。そのオリジナル曲を作ってくださったのが、“シグナルP”さんという方なのですが、シグナルPさんには「私の“強く生きていたい”という気持ちを歌で表現したいんです」ということをお伝えして、それから曲を作っていただきました。作詞家ではないので、詞的に美しい表現ができたかはわかりませんし、器用なテクニックが使えたとも思っていません。ただ伝えたいことはすごくストレートにぶつけたつもりですので、これから聴いていただく方の胸に同じようにストレートに伝わればいいなと思います。
――リン・レンにない下田さんならではの表現を歌の中に盛り込まれましたか?
下田 彼女たちはすごい高い音、低い音を出せるのがうらやましいのですが、その一方、私の中にも彼女たちに負けない魅力があるはずだと思うんです。私は常日頃から歌のお仕事をよくさせていただいているのですが、そのときにうまく歌おうとか、キレイに歌いたいということよりも、私は声優であり役者であるので、言葉を表現することに全力を尽くしたいと考えている部分があります。ですので、歌を歌うときにただ言葉をメロディーに乗せるのではなく、言葉の意味を表現して皆さんにお伝えしたいと思っています。たとえば、『soundless voice』という曲に“笑う”という歌詞があるのですが、そこはほんのり笑っているように聴かせたいなと思いながら歌っているんです。その曲以外にも同じように、感情やその場の情景が皆様にはっきりと伝わるように表現をがんばらせていただきました。
――遊び心を入れた曲や、ここに注目してほしいといった部分はありますか?
下田 私は歌で遊ぶというのが大好きなんです。公募曲を選ぶときに、そういう遊び心をどれだけ入れられるかを考えながら曲選びをさせていただいた側面もあります。その公募曲の『イタズラムスメ』は、「この言葉はすごくおもしろくできそうだな」ということを曲選びのときに感じて、それを表現したいということに火をつけられた歌なので、ふんだんに遊び心を入れています。どの曲にも遊び心だけでなく、挑戦を入れているのですが、ほかの曲で言うと、『リンリンシグナル』という曲では男の子パートと女の子パートがハッキリわかるように歌わせていただいていますね。それ以外の曲では、“レンの曲だから男の子で歌う”ということはなく、あくまで下田本人のカバーということを大事にしているんです。それが『リンリンシグナル』というデュエット曲だけは例外で、キャラクターソングに近い形で歌っていますね。皆さんの中にリン・レンのイメージが固定されずに存在していると思うので、「これがリンとレンです」というわけではなく、下田麻美が表現したデュエット曲として非常におもしろいできあがりになっているので、ぜひ聞いていただければと思います。
――ファンへのメッセージをお願いします。
下田 日頃から下田麻美、そして鏡音リン・レンを応援してくださっている皆様、ありがとうございます。今回、このような素敵なCDを出させていただけるようになったのも、ふだんからリンとレンを含めた私たちを支えてくださっている方のおかげだと思っています。この場を借りて、本当に感謝の気持ちを伝えさせていただきたいと思います。これからCDが発売されますが、皆様がとても楽しみにしてくださっているということをいろいろなところで聴かせていただいております。その皆様が喜んでいただける内容になっているのではないかと、下田本人は自信を持って収録に挑ませていただきました。CDが皆様のお手元に届きましたら、大事にしてくださるとうれしいなと思います。これからもよろしくお願いいたします!
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▲マイクを前に、レコーディングをイメージして撮影。インタビュー時は、ひとつひとつの質問に丁寧に、そして思い入れたっぷりに答えた。「ファンへのメッセージを」という質問には、録音されるレコーダーへ向き直りつつ、その先にいるファンを思い浮かべるように答える姿が印象的だった。 |
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なお、公募企画で選ばれた『イタズラムスメ』は、iTunes
Storeやミクモバ、超!アニメロのサイトなどで先行配信されている。iTunes Storeなどでは試聴もできるので、CDの発売が待ち切れない人はチェックしてみよう。
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▲『Prism』のジャケット写真は、白を基調としたシンプルなイメージ。 |
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鏡音リン・レン feat. 下田麻美 『Prism』 |
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発売日 |
2009年6月10日発売予定 |
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価格 |
3000円[税込] |
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おもな収録曲 |
『リンリンシグナル』 |
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発売元 |
Peertone |
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販売元 |
ユニバーサルミュージック |
(取材・文:T.M)
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