昨年末、プレイステーション2、ニンテンドーゲームキューブ、Xboxの3プラットフォーム同時発売を果たした『ソニック
ヒーローズ』と、2004年ぷよの年に日本を席巻する『ぷよぷよフィーバー』。RenderWareを使って開発されたこの2本のタイトルの中心人物お2人と、ソニックチームとRenderWareのパイプ役となってくださっているプログラムセクションの山本氏にお話を聞きました。
株式会社ソニックチーム
ソニック誕生から12年。全世界でシリーズ販売3,300万本を超える大ヒットを記録している「ソニック」シリーズなど数々の名作を手がける。株式会社セガの開発スタジオで2000年4月にセガ第8ソフト研究開発本部から株式会社ソニックチームとして分社化。代表取締役社長は、株式会社セガ常務執行役員であり著名ゲームクリエイターの中裕司氏。 |
【ゲスト】
株式会社ソニックチーム
『ソニック ヒーローズ』ディレクター
飯塚 隆 氏
ソニックシリーズの企画とディレクターを務める。現在、開発スタッフと共に、サンフランシスコを拠点に制作を行っている。
株式会社ソニックチーム
『ぷよぷよフィーバー』ディレクター
湯田 高志 氏
ソニックチームでは初の『ぷよぷよ』タイトルとなる『ぷよぷよフィーバー』プロデューサー。『スペースチャンネル5』などを手がけ、同作に登場するキャラクター“ヒューズ”の声も務める。
株式会社ソニックチーム
プログラマ
山本 正伸 氏
ソニックチームでの現場を経て、現在全プロジェクトに携わるプログラマのマネージャーとして、開発現場の環境作りを担う。
【インタビュアー】
株式会社クライテリオン・ソフトウエア
技術部部長
吉岡 直人
その細い体でRenderWareサポートチームを率いる、おちゃめでホットなスーパープレイヤー。
株式会社クライテリオン・ソフトウエア
営業販促部 営業課
野原 智彰
生まれながらの営業マン。産まれた病院のベッドで看護婦さんにもトークしていた!? クライテリオンの若手ホープ。
【司会】
株式会社クライテリオン・ソフトウエア
営業販促部 販促課
吉廣 麻子
東京・代官山にある卓球のできるレストランで行われた、3時間30分に及ぶロングインタビューとなりましたので、前編・後編の2回にわけてお届け致します。(前回のインタビューはこちら) |
野原:御社の開発スタイルの中で、ミドルウェアとどのようにおつきあいされていますか?
湯田:3プラット創るとなると、通常作成基準への対応というのがあるんですけど、ミドルウェアを使えばかなり意識しないで創れるんですね。かっこいいこと言うと、ゲームをどれだけ楽しくできるかって言うところに時間を割きたいわけじゃないですか。色んなハード別に時間を拘束されるのがすごく嫌なんで、嫌なところを請け負ってくれているっていうのがすごく良かったと思いますね。昔ゲームはすごく単純で、制作期間はもっと短かったですけど、昨今どんどん長くなってしまって、苦労もすごく多いです。だから(ミドルウェアがこの先進化して)昔の感覚で、純粋にゲームを考える時間が増えて行くと思いますね。今回ミドルウェアで助けられたというのはありますね。
吉岡:でも例えば、全て自前のエンジンで創られていた時っていうのは、逆に見通しが利くメリットもきっとあったと思いますし。与えられたものをそのまま使う苦労と言うのは……。
湯田:それはもちろんあります。そういう時にサポートの方を利用していましたね。『ヒーローズ』とかはハードの限界目指すみたいなところがあるんで置いておくとして、『ぷよぷよ』は何万ポリゴンが出ることなんて誰も望まないので、ゲームに集中したいですよね。そういう時にはすごく助かりますね。
飯塚氏:一時期、ほんの数人で短い期間で制作していたっていうのはもう10年前の話であって、今は一つのメディアとしてテレビ業界、映画業界に競争力を持つ位ゲーム産業というのが大きくなって来ましたから、ゲームを創る人が全てを創るわけではないですよね。例えば映像はCG制作会社におまかせして、音楽は音楽のプロの方にお願いしたりとか、映像を圧縮するのはその専門の会社の人に、って……。ある意味、分業化が進んで、ゲームを創るのを専門としている我々なんかは、本当にゲームを創るだけに専念できる環境を整える。そういう風になっていくべきでしょうね。
吉岡:真似できないところを皆でやっていくっていう。
飯塚:そういった意味でミドルウェアというのは、分業の一つとして成長していってほしいセクションではありますね。
吉岡:若い子でゲーム業界出身のスタッフでも、ライブラリ創りたいっていう人がぽつぽつでてきて、彼らはゲームそのものも大好きなんですけど、ゲーム創ってる人に喜んでもらいたいからこの仕事をしたい、と言ってますね。
山本:ライブラリの認知度があがってきてるんですね。
飯塚:ゲーム制作とライブラリの区分の仕方って、創ったことのない人にはわからないところじゃないですか。でも業界自体はやはり大きくなってきて、区分が内部ではしっかりして来ましたよね。それを業界外の方にもわかってもらえれば、ライブラリがどれだけ大切なのかがわかって、それを支えたいという人ももっと増えるかもしれないですね。テレビ業界とか映画業界とかと一緒ですね。
吉岡:うちの会社でよく話すのが、クライテリオンがゲーム業界で何になりたいか?というのは、映画で言うところのPANAVISIONなんですよね。カメラを一手に創っている会社で。映画を見る方は毎回エンドロールでPANAVISIONて見てるわけですよね。多分PANAVISIONだからその映画を見に行くということはないでしょうけれど、業界の人に「やっぱりカメラはPANAVISION」って言ってもらえるような。
飯塚:ゲーム業界がこの先もっと大きくなっていくと、うちがやっている仕事がさらに分業化されていくと思うんですよ。ミドルウェアはその先駆けで、今物理エンジンだけをやっている会社とかあるじゃないですか。以前ならゲーム会社だけでやることだったので、それが商売として成り立っているっていうのは、分業化の顕著な現れですよね。
飯塚:分業という意味でいくと、例えば音楽やCG専門の会社に比べて、RenderWareみたいなミドルウェアは、非常に我々に近い立場なんですよ。例えば音楽が悪かったとしても、我々が直接手を加えるということはないじゃないですか。それに比べると、ミドルウェアは我々が直接手を下す余地がある、非常に近い関係にあるんですよ。なんで、より注文が激しいと思うんですね。「こんなの俺ならすぐできる」って。だからこそサポートも我々と苦労を共にしてほしい、と思いますね。
野原:ある意味二人三脚ですよね?
湯田:実際トラブったとき一緒に徹夜してもらったりしましたもんね。
吉岡:本当は徹夜なんかしないで一瞬ですかっと解決できればかっこいいんですけどね。
山本:近くにいない分もどかしい部分もありますけどね。
野原:将来的にはそれを感じさせないサービスを実現させようと思っています。
飯塚:わざわざサンフランシスコにも(技術ミーティングで)来ていただきまして。
吉岡:あれはもう単純に楽しかったですね。WEBでのサポートはお互いにやっぱりもどかしいんです。WEBでちゃんとやった方が解決早いのはわかっているんですね。でもなんでそうなるんですか?っていうのをインタラクティブにやらないといけない瞬間があって。
飯塚:そういう時期に足を運んでいただけたんで、助かりましたね。
吉岡:個人的にサンフランシスコに行きたかっただけなんですけどね。(笑)是非出張の言い訳を与えてください。
吉岡:外の会社のサポートやエンジンを使うとなると、僕らが逆にゲームを創る立場だとしたら、忍耐力がないとつきあいきれないんじゃないかな?と思うのですが、そういうストレスとかはお感じになりますか?
山本:ミドルウェアって開発会社から見るとブラックボックスだと思って創った方が良いと思うんですよ。
飯塚:そうじゃないと、欲はどんどん出ますからね。
吉岡:こうやってこの上でゲーム創ってください、じゃなくて、この上でゲーム創るためのプログラム組んでくださいねっていう所に持っていきたいな、と。
山本:それぞれやりたいことを実現するために色んな道があるじゃないですか。色々表現する方法があるんで、それを企画の方に考えてもらって回避していけば、と思うんですよね。
吉岡:次回お使い頂く時は、ゲーム性どうのというんじゃなくて、アイディア段階から参画できたら楽しいですね。そうやるならRenderWareならこうやります、という方向を目指してはいるんですけどね。
飯塚:ゲーム制作って、ゲームを考える企画と、技術のプログラマと映像のデザイナが切磋琢磨して、アイディアの出し合いで良いもの創るんですよ。こういうゲームがあるからグラフィックと技術がついて来い、というのではなくて、こういう技術があるから、こういうグラフィック表現ができるからゲームに活かせないのかという具合に。
飯塚:私は『ソニック』シリーズのディレクタという肩書きをずっと務めているんですが、実際はディレクタ半分、ゲーム制作の企画半分やっています。『ソニック3』から『ソニック』に携わっているんですけど、ディレクタという仕事に専念せずに、マップを書いたりだとか、仕様創ってっていう仕事をメインにやっていますね。そういうのが自分の一番の得意分野だと思っていますから。
吉岡:ディレクタ兼「ゲームデザイナ」ということですか。
司会:日本で「ゲームデザイナ」と言う方はまだあまり使われていないですね。
吉岡:そうですね。「ゲームデザイン」というところが、日本ではまだ無感覚のうちにやっていらっしゃることなんでしょうけど、「ゲームデザイナ」という部分が職種として確立している例はすごく少ない気がしているんですよ。
山本:会社によってはないところもありますね。
吉岡:でも実はそれが一番なんですよね。どこにどんな仕掛けがあるのかとか。そういうところをうまく意識を共有できていけば、もっとおもしろいゲームができるんじゃないかと思いますね。
飯塚:ソニックチームではずっと、常に「ゲームデザイナ」と「グラフィックデザイナ」「プログラマ」の3つの職種に分かれてやっています。
山本:ディレクタがスケジュール管理して、メインプランナが「ゲームデザイナ」のような感じになりますね。
吉岡:全体のスケジュールとか、ゲームをきっちり期日までに完成させるのがディレクタさんの大事な仕事じゃないですか。で、同時にゲーム自体を一番愛してなきゃいけないのがゲームデザイナだと思うんですが、ここをどう両立させるかっていうのが、良いカツオ君と悪いカツオ君のせめぎ合いがないですか?
飯塚:まさしくその通りですね。スタッフに話をする時はディレクタとしての私が話をします。「次のβは来週、この日まで」って。でもゲームデザイナとしての私は声に出さずに「えっ、そんなの無理だよ」って自分に言っていますね。今回の『ヒーローズ』はゲームデザイナが一番スケジュール厳しかったんで、来週がβなんだ、言っちゃったからやらなきゃって思っていましたね。(笑)
吉岡:もっと創りたいっていう気持ちと、ここで止めなきゃっていう葛藤がずっと不思議だったんですよ。
飯塚:ビジネス的な見極めをするディレクタと、ゲームをもっと良くしたいというメインプランナがぶつかり合いながら、進めるのがいいんでしょうけど、僕の場合は自分の中でぶつかっちゃってますからね。そこに時々社長が入り込んでくるんですけど。(笑) |
司会:最後に、それぞれにとってゲームとは?
飯塚:私はゲーム業界入ってからアクションゲームしか創ったことがないので、これからもアクションゲームでしか味わえない感動をユーザさんに常に与えていきたいですね。「感動」っていう言葉って、RPGは音楽だとかストーリーだとか、どんな風にでもできると思うんですよ。だけどアクションゲームってまた違った感動があるんです。ずっと一体となってプレイして、一段階成長した時の感動は他のゲームや映画では味わえないと思うんです。
クライテリオン一同: いい話ですね〜。
野原:では湯田さんは?
湯田:やっぱりこれだけクリエイティビティに富んだ仕事ってないですね。初めは一ユーザの立場かいつまでも自分がはまっちゃうようなゲーム創りたいなって思って、でも今は自分で創ったゲームで遊ぶっていうのは意外に少ない。今考えると昔からずっと同じで、人に喜んでもらうためにゲームを創っていますね。昔アメリカに出張した時、大きなおもちゃのデパートに行ったんです。その地球の反対側のおもちゃ屋で、小さい男の子が自分の創ったゲームをやっていたんです。自分と全然関係ないあんな遠くにいる人が自分と関わってる気がしちゃって、感動でしたね。
吉岡:「それ、俺」とか思いながら見てたんですか?
湯田:なんかアピールも必要ないなって、ただその子のプレイを見てましたね。
飯塚:それはありますね。全く自分とはかけ離れてると思っている人たちが、自分が(自分の関わったゲームの)「おーっ!」て思うところで同じように「Oh!」って言う、すごく当たり前のことがすごく嬉しいんですよね。
吉岡:私たちがゲーム屋さんの棚見てにやりとしちゃうのと同じですね。パッケージの裏見てロゴ入ってるの確認しちゃったりして……。ゲームを通じて繋がってる気がしますよね。苦労して創ったのが報われる瞬間ですね。
湯田:ほんと、ふっとびますよ、その時は。
飯塚:そう、リリースする度にもうこんな業界辞めてやるって思いますけど、リリースし終わって遊んでいる子どもたちを見ると、次はどんなことをしてやろうかなって考えるんですよね。
吉岡:山本さんはいかがですか?プログラミングってある意味裏方じゃないですか。
山本:プログラマはプログラマなりに、自分が作ったものがそのまま反映されて、その反応がダイレクトに帰ってくる。キャラクター創る時って、動き一つ一つ、プログラムちょっと変わっただけですごく変わるんですよ。そういう意味でプログラマが表現ができるところがあって、他の人とは違う、プログラム一行一行で、自分なりのキャラクターの動きを出せるんですよ。
飯塚:まさに自分なりの、ですね。『ソニック3』でソニックとナックルズが戦うシーンを創ったのは山本さんですから。スペック(仕様書)には「ソニックとナックルズ戦う」しか書いてなかったんですけど。(笑)
吉岡:そうやって山本さんがコードにして、パターンをタイミングに合わせて動かして、それを見せた時に、デザイナの方にちょっと違うなんて言われたりするんですか?
山本:そんな時もありますね。(笑)
湯田:それはデザイナでもありますね。描いた絵が意外な使われ方をする時もあります。でもゲーム的に考えたらいいなと思うんで、その時は(自分の描いたものが)使われなくても文句は言いません。
飯塚:僕はゲームデザイナとして、誰にも言わずにこっそりヘンな物セットしたりしますよ。今まで誰にも言ってないんですけど、『ソニックアドベンチャー2』で、“オモチャオ”って言うヒントをくれるキャラクターを持ったままゴールすることができるステージが少しだけあるんですよ。そうすると実はおもしろいことをしゃべるんです。実際は持ったままゴールするなんてことはありえないんですけど、誰にも内緒でセットして、自分だけで楽しんでいます。(笑)
一同:お〜っ。
野原:それはユーザさんから反響があったことはあるんですか?
飯塚:ないと思います。
一同:お〜っ。
と、最後に特ダネをいただいたところでインタビューは終了し、その後卓球大会になりました。ソニックチームの皆さん、長い時間ご協力いただき、本当にありがとうございました。皆さんの素晴らしいクリエイター魂をサポートするべく、これからもよろしくお願いします。 |
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